「35mm判換算で380mm相当の画角を活かそう」ということで、今週は動物園に行ってみた。ご存知の通り、動物園は被写体を引き寄せたい場面が多い。いつも標準域のコンパクトデジタルカメラで何度もくやしい思いをしているので、とても楽しみに門をくぐった。
ただし不都合なことに、COOLPIX S10にはシャッター速度優先AEがない。というより、液晶モニターにシャッター速度さえ表示できない。動体を撮るに何か楽な方法はないかと考えていると、アシスト付きシーンモードに「スポーツ」を発見した。他社のカメラの経験から得た先入観で想像するに、このモードはISO感度が上がってシャッター速度が速くなると同時に、AFがコンティニュアスAFへと切り替わるのではないだろうか。ちょっとぐらいISO感度が上がっても、とにかく速くシャッターを切ってくれれば問題ないと考え、おずおずと試してみる。
しかしこの「スポーツ」、実際にはストロボOFF、マクロOFF、AF補助光OFFになった上で、1.6コマ/秒の連写が設定されるモードだった。またこの時点で、COOLPIX S10にはコンティニュアスAFが存在しないことが判明した(後日、ニコンカメラ販売に問い合わせても「なし」との回答)。フェイスクリアーモードの顔認識AFがコンティニュアスAFに近いといえば近いが、そもそも動物の顔は認識しないことになっている。ここはすっぱりとあきらめて、COOLPIX S10における正攻法、つまりオートモード、ISOオート、ストロボOFFで撮ることにした。
案ずるより産むは易し。まだ明るかったこともあり、結果的には動物のアップが驚くほど簡単に撮れた。正直いって、被写体の動きが速くなければ、安価なデジタル一眼レフカメラのダブルズームキットに付属する暗い望遠ズームレンズより楽かもしれない。シャッター速度がわからないので不安だったが、液晶モニターでの再生画像を見る限り、「本当にこれでいいのだろうか」と首を傾げるくらいきれいに撮れている。被写体ブレを見るに、シャッター速度はかなり速そうだ。おそらく絞りはF3.5近辺なのだろう。超望遠域でこれだけ明るく、さらに手ブレ補正もあるとなれば、撮れて当たり前かもしれない。
- 作例のリンク先ファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
- 写真下の作例データは、記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。
|
|
2,816×2,112 / 1/185秒 / F3.5 / 0EV / ISO50 / WB:オート / 63.3mm
|
ビビッドカラー
2,816×2,112 / 1/77秒 / F3.5 / -0.7EV / ISO50 / WB:晴れ / 44.8mm
|
|
|
2,816×2,112 / 1/184秒 / F4 / -0.3EV / ISO50 / WB:オート / 63.3mm
|
2,816×2,112 / 1/78秒 / F3.5 / 0EV / ISO50 / WB:オート / 63.3mm
|
もうひとつCOOLPIX S10ならではの撮り方といえば、スイバル機構を活かした撮影だろう。動物園では、人の頭越しのハイアングルが威力を発揮した。もっとも、今回は超望遠域がテーマだったので、ハイアングルというよりも脚立代わりに垂直に腕を伸ばしただけのことも多い。それでも混雑した状況の中、待つことなく人気のある動物を撮れるのはありがたい。後ろの人に何度も邪魔者扱いされたけど。
気になる点もあった。まず、AFが遅い。寝ている動物なら問題ないが、落ち着きのない動物に対して的確に合わせるのは困難。コンパクトデジタルカメラとしてはまずますの速度なので、普段は気にしてなかった。どちらかというと、私が初心者なので、動物の動きを読めてない問題が大きい。
もうひとつ気づいたことがある。COOLPIX S10を撮影可能状態にして2秒ほど放っておくと、ISO感度設定や残り撮影枚数などの表示が液晶モニターからから消える。電源ON時は情報を確認でき、フレーミング時には余計な表示が消えるので、普段はとても便利に思っていた。ただしこの表示切替は、電源ON直後にフォーカスロックをしたまま被写体を狙っているときにも発生する。しかも、フォーカスロック中に発生すると、合焦を示す表示(画面中央上のAF●や画面中央の[ ])が一瞬消失する。今回は動物がこちらを向く一瞬を捉えようと、フォーカスロックして待つことが多かった。そのため、慣れないうちは表示が切り替わるたびに「ギクッ」と驚き、思わずAFを合わせ直していた。もちろん、そのままフォーカスロックを続けていればフォーカスロックが外れることはないし、手ブレ補正も継続して効いている。仕組みがわかってからは、液晶表示に惑わされることはなかった。
帰宅してから撮影画像のExifを確認すると、自分の予想以上にシャッター速度が速い。ISO50という低感度ながら、ほとんどのカットで開放F3.5になっているおかげだろう。比較的ワイド側だと1/60秒も存在するので、焦点距離に合わせてシャッター速度が決まっているのかもしれない。
また、同じ感度でよりシャッター速度をかせげるときは、F4に絞り込まれる。焦点距離にもよるが、望遠端だとVR ONの状態で1/180秒近辺を境に絞りが変化する。F3.5からF4になると、コントラストが若干上がるなどの効果が出るようだ。今回の場合、F4より絞り込まれるケースはなかった。
結果的には、カメラ任せのオートで十分な内容になった。もちろん動体が主体なら、デジタル一眼レフカメラ+明るい望遠レンズの組み合わせには敵わないだろう。ここまで寄れるなら、もっとボカしたい気もする。しかし、上着のポケットに入るコンパクトデジタルカメラでこれだけ撮れれば、個人的には満足だ。画質も気に入った。今回は時間がなかったので駆け足で園内を廻ったが、今度はゆっくりと動物を見ながら撮りたいと思う。
|
|
2,816×2,112 / 1/513秒 / F4 / -0.7EV / ISO50 / WB:オート / 32.7mm
|
2,816×2,112 / 1/150秒 / F3.5 / 0EV / ISO50 / WB:オート / 63.3mm
|
|
|
2,816×2,112 / 1/60秒 / F3.5 / 0EV / ISO131 / WB:オート / 24.7mm
|
s10_03_08l.JPG / 2,816×2,112 / 1/60秒 / F3.5 / 0EV / ISO56 / WB:オート / 44.8mm
|
■ URL
ニコン
http://www.nikon.co.jp/
製品情報
http://www.nikon-image.com/jpn/products/camera/compact/coolpix/s10/
気になるデジカメ長期リアルタイムレポートバックナンバー
http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm.htm
■ 関連記事
・ ニコン、手ブレ補正付きの10倍ズームスイバル機「COOLPIX S10」(2006/08/24)
( 本誌:折本 幸治 )
2006/11/27 00:01
・記事の情報は執筆時または掲載時のものであり、現状では異なる可能性があります。
・記事の内容につき、個別にご回答することはいたしかねます。
・記事、写真、図表などの著作権は著作者に帰属します。無断転用・転載は著作権法違反となります。必要な場合はこのページ自身にリンクをお張りください。業務関係でご利用の場合は別途お問い合わせください。
|
|