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ニコン COOLPIX S10【第1回】
復活のスイバル機

Reported by 本誌:折本 幸治


 デジタルカメラのトレンドにおいて、かつて一世を風靡したスイバル機構がすたれて久しい。そんな中、おもむろにスイバルを復活させたのがニコンだ。2005年9月、同社として2年ぶりのスイバルモデル「COOLPIX S4」は、レンズ部を大きくとれるスイバルの利点を活かし、38~380mm(35mm判換算)、全域F3.5という強烈なレンズを搭載しての復活だった。

 かつてCOOLPIX950、COOLPIX990、COOLPIX995、COOLPIX4500とニコンのスイバル機を使ってきた私にとって、復活したスイバルニコン、COOLPIX S4には多大な魅力を感じたものだ。しかし1点だけ、購入を踏みとどまる理由があった。「手ブレ補正がない」――ただでさえブレ易い私に、F3.5通しとはいえ、380mm相当を手持ちで撮る自信はない。こうして、S4購入計画は私の中で封印される。市場でもあまり話題を聞かないまま、店頭から姿を消していった。

 しかし2006年9月、スイバルニコンは再度復活した。今度はCCDシフト式の手ブレ補正付きだ。さらにISO800での撮影も可能になったので、手ブレに関する不安はある程度解消した。もうためらう理由は特にない。で、入手しての連載第1回目は、手持ちのCOOLPIX900番台と4500を引っ張りだしての比較だ。

 同じニコンのスイバルといっても、S10とオールドスイバルニコンではコンセプトがはっきり違う。それは撮影モードに良く現れている。オールドスイバルニコンはP/A/S/M(COOLPIX 950はMなし)を選択できるのに対し、S10はオートとシーンのみ。コマンドダイヤルもなく、露出補正に関するボタンもない。メニューは現行COOLPIXシリーズと共通するデザインで、「とにかくオートとシーンモードを使ってください」という割り切りが感じられる。

 見た目も結構違う。まず、S10は小さい。かつてのスイバル機がこんなに大きかったことに驚いた。しかもS4の単三電池からリチウムイオン充電池になったこともあり、S10は畳むとかなり薄くなる(レンズ部は太いが)。


右はCOOLPIX950 COOLPIX950と背面を比較

上から見ると大きさが全然違う

ダイヤルが後ろになったCOOLPIX990 COOLPIX4500。オールドスイバルニコンの最終形

 その代わりオールドスイバルニコンは、ゴムパーツ付きのしっかりとしたグリップを備えている。COOLPIX950だとさらに、当時のニコン一眼レフカメラを思わせる赤いラインを採用。当時、このデザインに惹かれた人も多いだろう。対してS10にはグリップ部に相当するものがない。S4にあったゴムの縦ラインもなくなり、ボディ右端へと流れる曲線でまとめられている。右端が少ししゃくり上がっているので、ここをつまめということだろう。

 ローアングルやハイアングルといったイレギュラーな構え方をしがちなスイバルでは、グリップをしっかり握りたくなるもの。その点ではS10は頼りなく思える。手ブレ補正で何とかなるのだろう。また、左手側(レンズ側)が丸く膨らんでいるので、左中心のグリップがいいのかもしれない。

 シャッターボタン周りも違う。電源スイッッチとモードセレクタを兼ねたスイッチも、ニコン一眼レフカメラ共通の雰囲気だ(COOLPIX 4500はMODEボタンを押しながらダイヤルを操作)。対してS10のシャッターボタンは、クローム仕上げの四角いボタン。電源ボタンも普通にボタンだ。露出補正を含めた操作の多くは、ジョイスティック状のマルチセレクターを使い、メニューから行なう。そのため、ボタン類はオールドスイバルニコンに比べて少ない。もっとも操作系の集約は、比較的小さな本体に2.5型の液晶モニターを配置するためでもあるのだろう。

 オールドスイバルニコンが幅を利かせた時代、まだ手軽に買える一般向けのデジタル一眼レフカメラはなかった。そのためコンパクトデジタルカメラにも、一眼レフのようなカメラらしさを求める需要があったのだろう。今日、そうしたカメラっぽさへのニーズは、デジタル一眼レフカメラが請け負っている。デジタルカメラの利用層が広がり、銀塩コンパクトカメラに置き換わった結果、一部を除いたコンパクトデジタルカメラは、手軽に撮るための割り切りの方向に向かっているようだ。S10の装備とデザインもそれを裏付けるものだと思う。携帯電話の撮影機能が向上すれば、また状況は変わるかもしれない。


開閉式のレンズキャップ。S4のキャップより高級感が増したが……
 もうひとつ、大きく違うのがレンズキャップの扱いだろう。スイバルでは一般的なレンズバリアの実装が難しいのか、歴代オールドスイバルニコンでは取り外し式のキャップが付属していた。一眼レフカメラと同じ感覚なので、カメラマニアには問題ない。しかし、コンパクトデジタルカメラの感覚すると、外したキャップの扱いが面倒だ。その上、小さいのでなくしやすい。

 「キャップが面倒」という声に応えたのか、S10とその前身のS4では、ヒンジ付きの開閉式キャップが付属している。潜水艦のハッチみたいで、カメラのアクセサリーとしてはあまり格好いいとはいえない。キャップはレンズ周りのフチに取り付けるが、ここにフィルターなどを装着することはできないようだ。

 発売直後にPhotokina 2006に持参して使ってみたところ、素直に「こんなに楽に超望遠域が撮れるとは」と感動した。また、レスポンスや画質にもいまのところ不満はない。2000年のPhotokinaの取材機材がCOOLPIX950だったことを思い出し、電池の持ち、本体サイズ、画質面の進化に感慨深いものがあった。

 それにしてもカメラらしさという点では、オールドスイバルニコン、とりわけCOOLPIX950は今みても素晴らしいデザインだと思う。S10にCOOLPIX950と同じくらい愛着がわくかどうかは、これから使用を重ねないと何ともいえない。

 ただ当時と違って、私の環境もデジタル一眼レフカメラがメインになっている。これから2カ月間、デジタル一眼レフカメラやR-D1のサブ機として持ち出すつもりだ。デジタル一眼レフカメラでは「望遠レンズなしでのお気軽撮影行」を堪能したいし、R-D1では原理的に不可能なマクロと望遠域(レフボックスという手もあるが……)をS10に担当させたいと思う。

  • 作例のリンク先ファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 写真下の作例データは、記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。


2,816×2,112 / 1/226秒 / F4 / 0EV / ISO50 / WB:オート / 9.7mm 2,816×2,112 / 1/78秒 / F3.5 / 0EV / ISO50 / WB:晴天 / 14.6mm

2,816×2,112 / 1/266秒 / F4 / 0EV / ISO50 / WB:オート / 63.3mm 2,816×2,112 / 1/348秒 / F4 / 0EV / ISO50 / WB:オート / 11.7mm

2,816×2,112 / 1/124秒 / F4 / 0EV / ISO50 / WB:オート / 6.3mm 2,816×2,112 / 1/385秒 / F4 / 0EV / ISO50 / WB:オート / 44.8mm

おまけ。COOLPIX950、5年ぶりに通電。こんな画質だったっけ
1,600×1,200 / 1/637秒 / F7.7 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 8.3mm


URL
  ニコン
  http://www.nikon.co.jp/
  製品情報
  http://www.nikon-image.com/jpn/products/camera/compact/coolpix/s10/

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( 本誌:折本 幸治 )
2006/11/13 00:01
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