デジカメ Watch
最新ニュース

富士フイルム FinePix F30【第7回】
外食メモに強力なマクロ機能

Reported by 本誌:折本 幸治


 今回はマクロ撮影についての報告だ。気軽なワイドマクロはコンパクトデジタルカメラの真骨頂。さらにオートで最大ISO1600、マニュアルでISO3200まで増感できるFinePix F30なら、マクロ撮影で気になるブレも低減できるだろう。

 FinePix F30の最短撮影距離は、通常撮影時約60cm、マクロ広角端で約5cm、マクロ望遠端が30cm。スペックそのものは前モデル「FinePix F11」と変わらない。メーカーによってはコンパクトデジタルカメラの最短撮影距離がだんだんと長くなるなか、10cm以下をキープしてるのはありがたい。本当は望遠端でもっと寄れれば、ボケを活かしたマクロレンズ的な作品が撮れるのだろうけど、そこまで本格的に撮るとなると、デジタル一眼レフカメラを使った方が気分が出ると思う。

 実は今、FinePix F11のときにチャレンジした「外食メモ」をコツコツと撮りためている。日々テーブルに出てきた食事をこっそり撮っておくのだ。たいしたものは食していないが、画像ビューアソフトで並べてみると結構楽しい。あまりにも偏り過ぎた食生活をキツく戒められそうなので、実家の母には見せられない。

 こうした用途でFinePix F11との違いは、なんといっても高感度ノイズの少なさだ。店内の光量ではISO1600、F2.8、1/60秒以下が圧倒的に多い。FinePix F30の実力を遺憾なく発揮できるだろう。どうせならおいしそうな見た目に撮りたいので、ノイズの多寡は重要だ。

 設定はFinePix F11のときと大体同じ。M(マニュアル)でワイド端、マクロモード、露出補正+1EV程度。ホワイトバランスは、そのへんのおしぼりとかで適当に合わせている。

 本当は絞り優先AEにしてF4くらいに絞り、パースがつかない望遠端での撮影を心がけたいところだが、いかんせん周りが暗い。ワイド端のF2.8で我慢することが多く、パースをごまかすような構図になってしまう。つまり料理そのものになるべく近づいて、パースが目立つ皿(特に四角い皿)のフチを写さないようにする。そうすると今度は被写界深度が浅くなり、手前にしかピントが合わない……。

 というわけで、撮れるといっても本職のカメラマンが撮った素晴らしい料理写真には比すべくもない。まあ、メモだとわりきって十分に満足している。狭い店内で一眼レフと三脚を取り出す訳にもいかないし。

 皿やテーブルの白に引きずられないためには、プラス補正が威力を発揮する。それだけシャッター速度が遅くなるが、FinePix F30なら最悪ISO3200にすることで、よほど暗い居酒屋以外は何とか撮れる(ノイズはさすがに目立つ)。「ナチュラルフォト」モードでも構わないが、露出補正ができないので、少々アドリブを効かせづらいかもしれない。

 面白いのは、FinePixカラーの「F-クローム」だ。デフォルトの「F-スタンダード」より原色が鮮やかになり、コントラストも増す。食材によっては「こりゃ食うと体壊しそう」というくらい鮮やかになりすぎるときもあるが、おおむねF-クロームにしたほうがおいしそうになる。特に卵とじの黄色は、店によっておそろしく色が薄いので(プラス補正のせいもある)、F-クロームでごまかす意義は大きい。


※作例のリンク先ファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
※写真下の作例データは、撮影モード / FinePixカラー / 記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。


M(マニュアル) / F-クローム / 2,848×2,136 / 1/45秒 / F2.8 / 0EV / ISO3200 / WB:マニュアル / 8mm M(マニュアル) / F-スタンダード / 2,848×2,136 / 1/105秒 / F3.7 / 0.67EV / ISO1600 / WB:マニュアル / 14.1mm

M(マニュアル) / F-スタンダード / 2,848×2,136 / 1/75秒 / F3.7 / 0.33EV / ISO400 / WB:マニュアル / 14.1mm M(マニュアル) / F-スタンダード / 2,848×2,136 / 1/75秒 / F4.7 / 0.67EV / ISO1600 / WB:マニュアル / 20.1mm

M(マニュアル) / F-スタンダード / 2,848×2,136 / 1/4秒 / F4 / 0.67EV / ISO800 / WB:マニュアル / 10.4mm(ミニ三脚使用) M(マニュアル) / F-クローム / 2,848×2,136 / 1/140秒 / F4 / 0.33EV / ISO200 / WB:オート / 16.1mm

M(マニュアル) / F-スタンダード / 2,848×2,136 / 1/90秒 / F3.7 / 0.67EV / ISO200 / WB:マニュアル / 14.1mm M(マニュアル) / F-クローム / 2,848×2,136 / 1/120秒 / F3.7 / 0.67EV / ISO200 / WB:マニュアル / 14.1mm

M(マニュアル) / F-スタンダード / 2,848×2,136 / 1/10秒 / F4 / 1EV / ISO800 / WB:マニュアル / 14.1mm(ミニ三脚使用) M(マニュアル) / F-クローム / 2,848×2,136 / 1/10秒 / F4 / 1EV / ISO800 / WB:マニュアル / 14.1mm(ミニ三脚使用)

 料理に加えて一時期凝ったのが、花の写真だ。というのも、FinePix F30になってから、シーンモードに「花の接写」というモードが加わったため。このモードは単にマクロモードになるだけではなく、色見が暖色系にシフトすることが多い。何か別の味付けを施しているようだ。撮影した画像を付属ソフト「FinePix Viewer」で確認すると、Exifの項には「ホワイトバランス=AUTO」となっているので、本当のところは謎。

 ただ、このモードにするとISO感度や露出補正の変更ができなくなるので、汎用性は低い。また、FinePixカラーでF-クロームモードが選べなくなる。FinePixViewrで確認すると、FinePixカラーの項目が空欄となる。

 料理、花とも画質には大満足。デジタル一眼レフカメラには敵わないとしても、高感度での画質やレンズ前5cmのスペックにより、これだけ気軽に接写が楽しめるコンパクトデジタルカメラはないだろう。メモ用途ならこれでもう十分だし、上手い人ならさらに気合いの入った作品撮りにも利用できそうだ。

 ところで、手ブレ補正機構の有無が店頭でも喧伝されている昨今。しかし、ことマクロにおいては、光軸の位置のズレ(ピッチとヨー)に加え、カメラ位置の前後のズレが大きな要因になる。そのため、前後方向をカバーできない手ブレ補正機構では、効力が薄いといわれている。ある読者とのやり取りで認識を新たにした事柄だが、被写界深度の深いコンパクトデジタルカメラでも基本的には同じだろう。

 手ブレ補正機構があったとしても、前後の位置ズレをカバー可能な被写界深度が稼げないなら、速いシャッター速度で対応するしかない。そういう意味では、高感度に強いFinePix F30は「マクロに強いコンパクトデジタルカメラ」と言い切ってもいいだろう(もう少し望遠端でも寄りたいけど)。もちろん、FinePix F30に手ブレ補正機構が付けば、マクロに限らず鬼に金棒なのだが……


花の接写 / ― / 2,848×2,136 / 1/350秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 14.1mm 花の接写 / ― / 2,848×2,136 / 1/340秒 / F4 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 16.1mm

花の接写 / ― / 2,848×2,136 / 1/280秒 / F3.7 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 14.1mm M(マニュアル) / F-スタンダード / 2,848×2,136 / 1/300秒 / F4.3 / -1EV / ISO200 / WB:オート / 18.1mm

M(マニュアル) / F-スタンダード / 2,848×2,136 / 1/320秒 / F4 / -0.33EV / ISO100 / WB:オート / 8mm 花の接写 / ― / 2,848×2,136 / 1/340秒 / F4 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 8mm


URL
  富士フイルム
  http://www.fujifilm.co.jp/
  製品情報
  http://fujifilm.jp/personal/digitalcamera/finepixf30/
  気になるデジカメ長期リアルタイムレポートバックナンバー
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm.htm

関連記事
【河田一規のデジカメナビ】富士フイルム FinePix F30(2006/06/09)
富士フイルム、ISO3200で撮影できる「FinePix F30」(2006/03/16)
富士フイルム FinePix F11【第5回】
Fクロームモードで料理写真に挑戦(2005/12/07)



( 本誌:折本 幸治 )
2006/07/25 01:00
デジカメ Watch ホームページ
・記事の情報は執筆時または掲載時のものであり、現状では異なる可能性があります。
・記事の内容につき、個別にご回答することはいたしかねます。
・記事、写真、図表などの著作権は著作者に帰属します。無断転用・転載は著作権法違反となります。必要な場合はこのページ自身にリンクをお張りください。業務関係でご利用の場合は別途お問い合わせください。

Copyright (c) 2006 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.