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キヤノン IXY DIGITAL 800 IS【最終回】
サプライズはないが期待を裏切らない優等生

Reported by 奥川 浩彦


 発売から2カ月ほどIXY DIGITAL 800 ISを使ってきた。最終回はこれまで紹介できなかった機能と感想を書いてみたい。

 筆者はパノラマ写真が好きで、EOS 20Dのレポートでも最終回に桜並木のパノラマを紹介した。学生時代はL判にプリントした写真をハサミで切ってつなぎ、パノラマっぽい写真を作ったりしていた。IXY DIGITAL 800 ISには撮影時に絵をつなぐスティッチアシスト機能があり、撮影した複数枚の画像を自動的につなぐソフト「PhotoStitch」も同梱されている。

 パノラマ写真は、撮影素材のつながりが悪いとソフトでつないだ際にズレが出やすくなる。撮影のコツはまず三脚を使用すること。雲台は3ウェイタイプが望ましい。自由雲台は左右だけを回転させるのが難しく、画像が傾きやすい。筆者はスリックのマスタースポーツを主に使用しているが、前回の花火でも使用したベルボンの「ULTRA MAXi F」をパノラマ撮影で使用する場合、雲台だけスリックの「500GIII」に取り替えている。

 撮影の際、カメラを水平にすることも重要だ。今回紹介する花菖蒲の場合、ついつい光軸を下に向けて花を撮りたくなるが、そのままスティッチアシストで画像を横へつないでいくと180度回転するころには空しか写らなくなる。パノラマでカメラを水平にするには、雲台ではなく三脚自身で水平を出す必要がある。その上で雲台の前後左右を水平にして回していけば、合成する際にズレが少ない。

 また、広角端より少し望遠側にズームした方が画像が歪曲が少なくつながりがよい。IXY DIGITAL 800 ISの場合、スティッチアシスト機能で撮影すると、1枚目の画像でシャッター速度と露出が固定される。暗いところから始めると明るいところでは露出オーバーになるので、ある程度露出補正で調整してから撮影すると失敗が少なくなる。

 被写体にも向き不向きがある。例えば目の前に広がる海岸を180度撮影したいと思っても、波は常に一定ではないので綺麗につなぐことは難しい。人の多いところも同様で、つなぎ部分の人が移動すると不自然な画像となる。とはいえそれほど神経質にならず、遊び心で撮ってみていただきたい。

 今回はそれほど人がいなかったので、フレームの左右2割くらいに人がいないときを待って撮影をした。1枚撮影すると撮った画像の4割ほどが液晶モニターに表示されるので、それを目安に次につなぐ画像を撮影をする。三脚のセッティングがいいと撮影は効率よく進むだろう。

 画像をPhotoStitchに取り込むと、自動的に画像がつながる。そのままフルサイズで出力すると8,000×2,000ピクセルといった巨大な画像が保存できるが、筆者はモニターでの見やすさを考慮し、縦を800ドット程度にして保存している。環境にもよるが、このサイズなら縦方向が切れることがなく、左右の横スクロールだけで画像を楽しむことができる。


 PhotoStitchで自動的につなぐと、微妙にズレることが多い。その際は手動で調整すると多少つながりがよくなる。残念ながらPhotoStitchはそれほど高性能ではないので、筆者は「Panorama Maker」というソフトを使用している。つながりの良さは抜群で、PhotoStitchでズレが生じる画像でも、素材がよければ問題なく自動的につないでくれる。パノラマ写真は小さなお子様のいる家庭ならそれぞれの画像の真ん中に子供を入れて撮れば、1枚の写真に一人息子が5人といったことも可能だ。家族で楽しめる写真となるであろう。


比較用にPhotoStitchで写真2枚をそのまま合成。休憩所の左側にズレが目立つ

手動でズレの生じた付近を修正。それでもやや左側に小さなズレが残る

PanoramaMakerでそのまま合成。PhotoStitchより完成度は高い

6枚の画像を合成

11枚の画像を合成

筆者のマンションで東-北-西側を撮影。梅雨時で天気がイマイチ。晴れてるときに撮ればマンションの宣伝などにも使えそう

産業記念館の中庭でレンガの壁を撮影

 最近のIXY DIGITALシリーズのセルフタイマーには2秒と10秒に加え、カスタムという設定がある。デジカメのインターバルタイマーは、「5分おきに10枚」など定点観測向きの機能となっているが、IXY DIGITALシリーズのカスタムは記念撮影向きの設定だと思っている。設定できる時間は0〜10、15、20、30秒。撮影枚数は1〜10枚となっている。

 例えば家族で記念撮影をするときに10秒のセルフタイマーで1枚撮り、またカメラに戻ってシャッターを押して1枚撮る行為を繰り返すことは多い。カスタムで10秒後に5枚とセットすれば、1回シャッターを押し、5枚の撮影が済むまで家族がフレームに収まっていれば終了だ。スタート時間も30秒まで設定できるので、通常より離れた場所に三脚をセットできる。距離がある場合は、確認用に昼間でもストロボを常時発光にしておけば開始終了がわかりやすい。この機能も妙に子供ウケはいい。我が家では以前から使用しているが、1枚ごとに場所を変えたり、いきなりジャンプしたりと自然と笑顔の記念が残せる可能性も増える。あまり注目されない機能だが、IXY DIGITALシリーズを使用されてる方は一度お試しいただきたい。


 筆者はIXY DIGITAL 800 ISを使いだす前、1年ほどIXY DIGITAL 55を使用してきた。デジタル一眼レフカメラのEOS 20Dを併用していたこともあり、当時はそれほど多くを期待していなかった。結果として特に不満はなかった。だがLUMIX DMC-FX9の手ブレ補正を使用し、その効果を実感してから心揺れていた。

 結果として、IXY DIGITAL 800 ISの手ブレ補正は期待を裏切ることなく満足できる性能だった。元々カメラの基本性能はそつなくまとまっているIXY DIGITALシリーズなので、手ブレ補正の搭載は大きな魅力となっている。夜景や食など静物の撮影では大いに活躍してくれた。

 高感度に設定したときのノイズは確実によくなっている。ISO400までは充分に実用範囲だと思う。ISO200までで自動的に変化するISOオートは、細かな設定が面倒な方にはお奨めできる。ノイズに関してIXY DIGITAL 55と大きな差を感じたのは動画の撮影だ。室内など暗いところでは圧倒的に差が出ている。水族館での撮影の際も、静止画が撮れない暗いシーンでも予想外の映像を撮ってくれた。大容量のSDカードをお持ちの方は動画撮影の積極的な活用をお奨めしたい。

 このクラスのデジカメにどこまで望むのかは難しいところだと思うが、改善して欲しいところをいくつか挙げたい。

 まずはシャッター速度と絞りの常時表示。手ブレ警告の時だけシャッター速度の表示がでるが、普段でも表示して欲しいと思うシーンは多い。DISPボタンの選択肢を1つ増やしてもいいので搭載して欲しい機能だ。さらに可能であれば、シャッター速度と絞りのコントロール。コンパクトデジカメに必要ないと考える方も多いと思うが、シリーズのフラグシップモデルとして多少の絵作りができる仕様があってもいいと思う。メニューの深いところに入らないと使えない機能であったとしても検討していただきたい。

 手ブレ補正と高感度ノイズの改善は、現在のコンパクトデジカメの2大改善要素であろう。どちらにもメリットは大きい。ユーザーが一番望むのはその両方に対応したデジカメだ。さらなる高感度ノイズの改善が達成できれば、完成度は飛躍的に向上すると思う。操作面では、メニューに入ることなく露出補正をボタンなどで直接操作できるようにして欲しい。細かなことをいい出すとキリがないが、露出補正だけはなんとか改善を望みたい。

 IXY DIGITAL 55と比較して筆者の不満な点はサイズとデザインだ。4倍ズームが3倍になってもいいので、もう少し小さなボディだと常時携帯するにはありがたい。デザインは好みの範疇だが、個人的には四角いIXY DIGITALが好きだ。IXY DIGITAL 55風のコンパクトボディに手ブレ補正と高感度ノイズの改善が盛り込まれたなら、筆者にとってよりお気に入りのデジカメになるだろう。

 IXY DIGITAL 800 ISはサプライズはないが、期待は裏切らない。コンパクトデジカメとしてはキヤノンらしい優等生、そつなくまとまったハズレのないカメラだと思う。

※作例のリンク先ファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
※写真下の作例データは、記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。


赤い傘をフレームに入れてやや雰囲気を変えて撮影。ボケ具合は悪くない
2,816×2,112 / 1/80秒 / F5.5 / -0.33EV / ISO80 / WB:オート / 23.2mm
ノリタケの森の噴水を撮影。シャッター速度を遅くできるともう少し雰囲気の出た絵が撮れるはず
2,816×2,112 / 1/400秒 / F3.5 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 9.97mm

外光と室内光のミックス光だが、オートホワイトバランスで問題なかった。手ブレ補正の効果も大
2,816×2,112 / 1/20秒 / F3.2 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 7.47mm
白が多めの画像だがオートで無難に撮れる。安心感は高い
2,816×2,112 / 1/125秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 5.8mm

ISO400でややノイズは目立つがお店などストロボが使えないシーンでは手ブレ補正はありがたい
2,816×2,112 / 1/13秒 / F2.8 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 5.8mm
出張中に駅のホームから都電を撮影。気楽に持ち歩けるのは一眼レフよりメリット大
2,816×2,112 / 1/200秒 / F5.5 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 23.2mm

通りがかった線路を撮影。気楽なスナップはコンパクトデジカメならではだ
2,816×2,112 / 1/400秒 / F5.5 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 23.2mm
名古屋港イタリア村。何も考えずにシャッターを押せば多くの場合問題なく撮れる
2,816×2,112 / 1/640秒 / F3.2 / 0EV / ISOオート / WB:オート / 8.64mm
動画はズームも可能。ノイズも少なく短いカットなら気楽に撮れる
AVI形式(18.9MB)
※画像をクリックするとダウンロードが始まります

※動画ファイルの再生環境はお使いのPCによって異なります。編集部では再生についての問い合わせにお答えできかねます。ご了承ください。



URL
  キヤノン
  http://canon.jp/
  製品情報
  http://cweb.canon.jp/camera/ixyd/800is/
  気になるデジカメ長期リアルタイムレポートバックナンバー
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm.htm
  パノラマメーカー
  http://www.arcsoft.jp/en/products/panoramamaker/

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( 奥川 浩彦 )
2006/07/07 01:04
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