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キヤノン IXY DIGITAL 800 IS【第4回】
水族館で玉砕?

Reported by 奥川 浩彦


 この手の作例で定番ともいえる場所、水族館に出かけてみた。ストロボ禁止、三脚禁止、暗い水槽、動く被写体と基本的に悪条件が揃っている。正直いってこのレビューがあるから試したが、通常はコンパクトデジカメで撮影しようとは思わない。綺麗な作例ばかりだと何でも簡単に撮れると勘違いされることもあると思い、玉砕覚悟で撮ってみた。

 水族館といえば家族連れで出かける読者も多いと思われ、IXY DIGITAL 800 ISの実力が気になるところであろう。このカメラの最大の特徴は手ブレ補正だ。夜景など動かない被写体には絶大の効果を発揮してくれているが、被写体ブレを起こす動く魚には通用しないはず。高感度のノイズが減ったとはいえISO800はそれなりに盛大なノイズを発生する。過大な期待はしていないが、はたしてどれくらいの絵を撮ってくれるか試してみたい。

 場所は名古屋港水族館。ここの人気はシャチのクーで、水槽を泳ぐ姿とアトラクションの2カ所で見学することができる。入館してまずはクーを水槽越しに撮影してみた。幸いこの水槽は上部から外光が入っているので明るさは問題ない。目の前に現れたクーは……デカイ。人気者ゆえ人込みがすごく、水槽に近付くのも困難だ。水の透明度を考えるとなるべくガラス側に近付いたときに撮影したいが、目の前に来ると大きすぎて広角端でもフレームに収まらない。結局ガラス側に近付いてきたとき、斜めに撮影をした。入館者のシルエットも写っているし、ガラスも反射して作例としてはイマイチだが、シャチの大きさも伝わるし、見学者のほのぼの感もあって家族でお出かけの記念写真としては悪くないだろう。

 シャチのアトラクション(ここではトレーニングと呼ばれている)が始まるのでスタジアムへ移動。屋内と違って光量的には撮影条件の問題はない。強いていえば混んでいたため座った席が遠く、光学4倍ズームではやや物足りないことくらいだろう。IXY DIGITALシリーズはコンパクトデジカメとしては機敏な方だと思っている。一眼レフとは比較にならないが、そこそこの動きなら撮影できる可能性はありそうだ。

 ジャンプの瞬間を撮りたいところだが、どこから飛び出すのか予測がつかない。慌ててカメラを向けても間に合わないことがしばしばだ。幸い連続ジャンプは同じリズムで何回か飛んでくれたのでフレームに収めることができた。でき映えは微妙なところで、ノイズを覚悟してISO400にした方が、シャッター速度が上がってよりよい結果になったかと思っている。Lサイズプリント程度なら許容範囲であろうか。

※作例のリンク先ファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
※写真下の作例データは、記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。


シャチのクーはでかすぎるので斜めに撮影。作例としてはイマイチだが、大きさとほのぼのさが伝わってませんか
2,816×2,112 / 1/640秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 5.8mm
連続ジャンプを撮影。シャッター速度を上げたかった。ノイズ覚悟でISO400で撮影した方がよかったかも
2,816×2,112 / 1/250秒 / F11 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 23.2mm

シャッタータイムラグ、液晶モニターのブラックアウト、オートフォーカス速度など、コンパクトで動く被写体を撮るのは難しい 豪快にジャンプする雰囲気が伝わればOKと自分に言い訳の1枚
2,816×2,112 / 1/250秒 / F11 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 23.2mm

水しぶきを上げるシャチ。もう少し望遠があるとよかった
2,816×2,112 / 1/640秒 / F5.5 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 23.2mm

 IXY DIGITAL 800 ISは、手ブレ警告が出ないとシャッター速度を表示してくれない。しかも手ブレ警告の表示はシャッター速度が広角端で1/15秒以下、望遠端で1/50秒以下とかなり遅めに設定されているようだ。例えば1/125秒くらいでシャッターを切りたいと思っても、通常は撮影者にはわからない。被写体ブレを考えるとわざわざ隠す必要はないと思われ、改善が望まれる仕様だ。

 どうしても確認したい場合、筆者は露出補正を使って無理矢理手ブレ警告を表示させている。例えば広角端の場合ISO100に設定し、露出補正を+2EVにして手ブレ警告とともに1/15秒と表示されればISO100で1/60秒、ISO200なら1/125秒と換算している。実際に撮ると絞りも動くのでその通りにはいかないが、多少の目安にはなると思う。

 シロイルカ(ベルーガ)は水槽ではなく、チョット暗めの屋内プールといった撮影条件だ。なかなか愛想がよく、見学者のすぐそばまで近付き水を跳ね上げてくれる。その瞬間を撮ってみたが、ISO400に設定してもシャッター速度は1/40秒程度。ブレを防ぐことはできなかった。やはり動きが速い被写体はF2クラスの単焦点レンズを付けた一眼レフで、ISO1600くらいにして撮影しなければ難しそうだ。

 比較的条件のいい撮影でも苦戦しているが、水族館の多くの水槽はもっと暗い。レンズを向けても1/10秒以下のシャッター速度が表示されると、動く魚を撮る気にはなれない。それでも開き直って手ブレ補正モードのひとつ、「流し撮り」を使って撮影してみた。

 マグロやカツオがびゅんびゅん泳ぐ水槽はそこそこ暗い。ISO800にしても1/10秒程度のシャッター速度だ。目の前を通り抜ける魚を次々に撮ってみた。結果は50枚ほど撮って……なんとか我慢できるのが3枚程度。フィルムの時代だったら無駄遣い以外の何物でもない。マイワシの大群も同じでほぼ全滅状態だった。やはり無理せず外光の入る明るい水槽を狙うべきだろう。

 ということで、最後は明るい水槽をゆったり泳ぐ巨大魚、タマカイを撮影した。これも満足とは言い難いが、撮影した中ではましな方だろう。玉砕覚悟で撮影をしてみたが、予想通りに難しい。IXY DIGITAL 800 ISの性能というより、フィルムを含めたスチルカメラの限界を感じる1日だった。

 オマケ程度に撮った動画は予想以上に撮れていた。明るい水槽を泳ぐイルカも暗い水槽のマイワシも意外にましな映りだ。無理して静止画を狙うより、動画に切り替えて撮影するのも水族館では一つの方法ではないだろうか。


シャチとほぼ同じ条件で撮影。記念写真としてLサイズプリントを子どもに渡す程度なら充分だ
2,816×2,112 / 1/320秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 5.8mm
イルカの大ジャンプ。止まっていてはくれないのでピント合わせも困難
2,816×2,112 / 1/250秒 / F11 / 0.7 / ISO400 / WB:オート / 23.2mm

ゆったり泳ぐタマカイは何とか撮れた
2,816×2,112 / 1/50秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 5.8mm
比較的明るい水槽の魚。何枚か撮ってこの程度が精一杯。やはり水族館は難しい
2,816×2,112 / 1/50秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 5.8mm
●動画サンプル

AVI形式(15.2MB)
※画像をクリックするとダウンロードが始まります
AVI形式(18.4MB)
※画像をクリックするとダウンロードが始まります

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URL
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  http://canon.jp/
  製品情報
  http://cweb.canon.jp/camera/ixyd/800is/
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( 奥川 浩彦 )
2006/06/01 01:03
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