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キヤノン EOS 5D【第9回】
大きな誤算と見込み違い

Reported by 本田 雅一


 この長期レポート、本来ならば毎週掲載すべきところを、飛び石になってしまい、今やD200の連載に追いつかれそうな勢いになってきた。なかなか筆が進まない理由に“忙しい”という言葉を使うつもりはない。他に理由がある事が自分でもわかっているからだ。


不満のなさが悩みの種?

 製品レビューとは異なり、自分で購入した機材を使ってのレポートなのだから、普段の気付いた事からさまざまな提言を行なうことが本来の趣旨だろうが、EOS 5Dに関しては中級機として非常に無難にまとまってる。特にセンサーの素性やカメラ内現像処理といった映像を生み出す部分に不満がほとんどなく、加えてセンサーが大きい事でファインダーもとても見やすい。すでに挙げたレリーズラグやシャッターボタンのバネがやや強い、レリーズが深いといった細かな部分以外に、あまり文句を言うところがない。

 たとえばコンパクト機として現在愛用しているソニーの「DSC-T9」は、取材用あるいは普段使いのカメラとしてたいへん気に入っているが、それは多くの妥協の中で“これなら許せる”と思っているからだ。言い換えれば、どんな部分で妥協しているのかといった部分を掘り下げていけば、T9(あるいはその後継機やライバル機)の購入を検討している読者には、少しぐらい役に立つだろう。

 ところが5Dときたら、デジタルの中核部分がしっかりしているため、妥協すべき点もかなり限られてくる。それ以上言及しようとすれば、いきおい愚痴っぽくなってくるのだ。かといって、写真家でもない筆者の写真を毎週見せられるだけというのも、読者にとってはあまり興味が沸くものではない。

 そんなわけで、EOS 5Dで使えるアクセサリ群に走ったが、スクリーンやマウントコンバータはともかく、ニコンやオリンパスのマグニファイアアイピースを流用するといったネタは、むしろEOS 5Dの良さを減ずるように思う。

 キヤノン製のアマチュア向けカメラにも装着可能なニコン製のマグニファイアアイピースを所有しているのだが、もともとファインダー像の大きな5Dではファインダー周辺が見にくく、なによりディストーションがかなりひどくなる(現在はEOS Kiss Digital Nに装着しているが、こちらはそこそこ具合がいい)。

 実はこのレポートを引き受ける前は、もっともっと、色々な不満が見つかるだろうと予想していた。これだけセンサーに対して集中的にコストをかけたカメラなのだから、どこかに甘さがあると思っていたからだ。


EOS

 一番大きな見込み違いは、フルサイズ化により周辺部の画質や光量が、目に見えて落ちるのではないかという思い込みだ。斜めに入射させざるを得ないフルサイズセンサーの四隅の描写は、レンズとの相性がかなりシビアに違いないと考えていたのだ。サードパーティ製レンズを多く取り上げたのも同じ理由からだ。純正とは異なり、開発時にテストしていないだろうサードパーティ製レンズは、もしかすると不利なのかもしれないと考えたわけだ。

 確かに周辺部の光量落ちが目立つレンズもあれば、フォーカスが流れるレンズ、コマ収差が目立つレンズなど、EOS 5Dは様々なレンズのクセがよく見える。フィルムカメラで撮影した場合とは、ちょっと違った印象のレンズも少なくない。

 しかし、基本的にはレンズの能力がストレートに現れているという印象だ。ふと以前、銀塩時代の写真を見返してみても、デジタルフルサイズはレンズとの相性が厳しいという結論は見えてこなかった。レンズなりにきちんと写るのである。

 ただし、周辺フォーカスの流れに関しては、例外もある。マウントコンバータの回で簡単に報告したように、像面湾曲で周辺部のピンが来ないレンズの場合、センサー前面の保護ガラスやローパスフィルタを通すことで、センサー面までの光路が短くなり、むしろ全面でシャープに写るようになるレンズがある(というネタは、もともとあるレンズ設計者に聞いた話だが、実際に使っていてもその印象が強い)。

 むしろ像面湾曲がキレイに補正されたレンズの方が、周辺部のピンが奥に抜けて流れたように見える事もあるのだ。実際には僅かなもので目立つ事は少ないが、デジタルフルサイズならではの相性となると、周辺光量落ちよりもこちらの方が影響が大きいかもしれない。ちょっとだけ周辺のピンが奥に抜けているだけのレンズでも、デジタルではハッキリとした流れに見えてしまうからだ。

 この点をキヤノンだけではなく、色々なメーカーの技術者への取材で伺ってみたが、大きな影響がある、あるいは影響はほとんどない、他要素の方が影響は大きいなど、意見はまちまち。また、違うとは言っても差は僅かなもの。新旧のレンズをサードパーティ製を含めて徹底的に見る必要性は感じない。


 もうひとつの見込み違いは、センサー性能が予想を超えて良かったこと。もちろん、EOS-1D Mark IIと同じピクセルピッチで、より回路やプロセスは進化しているのだから、特性は良いだろうと思っていたが、ここまでキッチリと写り、S/Nも良いと、文句を言う場所を探す気にはなれない。

 もう少し白側の階調が粘って欲しい(といってもデジタル一眼レフカメラの中では、白方向のラチチュードは比較的広い方だが)とは思うが、これは現像ツール上のトーンカーブ調整でどうにでもなる。S/Nが良いのでISO200〜400の間ぐらいに設定し、RAW撮影で後から露出を補正するという、実にラフな撮影手法でも画質面への影響が少ないのもいいところだろう。

 またセンサーのS/Nが良いと、かなり思い切った設定の現像パラメータを使っても、階調がマダラになるような事がない。たとえば朝焼けや夕焼け、あるいは夕闇が空を包み込み始めた直後などの風景で、ホワイトバランスやターゲットホワイトの色を変えて(現実とは異なる)その場の雰囲気を頭の中のイメージ通りに出すといった処理をたまにやるのだが、S/Nの悪いセンサーの場合は階調が破綻することが少なくない。

 ところが5Dのセンサーは、かなり極端なホワイトバランスでも、破綻が見えてこないため、使っていて実に楽しい。おかげでRAW現像のパラメータで遊ぶ頻度が確実に増えた。


RAW+JPEG記録の悩み

 もっとも1,280万画素のRAWファイルをノートPC、それも超低電圧版プロセッサを搭載するような軽量機で扱うとなると、それなりにストレスを感じるものだ。1枚づつの現像処理であれば、それもしかたないと思える程度だが、大量の撮影結果から画像をセレクトする作業は荷が重い。

 そこで主にRAW+JPEGで撮影する事が多いが、同じ場面を撮した写真データが2個できてしまう。ファイル名が同じRAWとJPEGを、ビューア上では1枚の写真として扱ってくれればいいのだが、ほとんどの場合、ビューア上でも2個のデータとして見えてしまう。単にRAWファイルが邪魔なだけならば、ビューアの設定を変更してJPEGファイルだけが見えるようにすればいいだけなのだが、今度はセレクトした写真をRAW現像ソフトに渡す際の手順が面倒になってくる。

 このあたりの写真の管理手法に関しては、何年も前から画像管理ソフトやフォトレタッチソフトに関するヒアリングが開催されたときに扱い方の変更をお願いしてきた(おそらくそうした意見は他のユーザーからも多数あったハズだ)のだが、たとえばAdobe Bridgeなども対応していない。

 しかし(MacOS限定だが)、以前にデジカメWatchでレビューされていたアップルのApertureや、アドビが公開βテストを行なっているLightroomでは、同じファイル名のRAWとJPEGを(ユーザーに対しては)1つのまとまったデータとして扱ってくれる。

 だが、カメラ付属のソフトウェアがRAW+JPEGで撮影されたデータをひとまとめに扱えないというのは、どういう事なのだろう。“RAW+JPEGで撮影できる”という機能をサポートしているカメラメーカー自身が、その後のワークフローの事も考えて付属ソフトを開発しているのではないのかな?


自動スタックをはじめ痒いところに手が届く印象のアップルAperture。Windows版が望めないのが残念
アドビとしては珍しく公開βテストを行なっているLightroom。フォトグラファーのためのツールを目指し、ユーザーからの意見を募集中とのこと
モノクロ写真を作る際、各色のミクスチャを現像時に指定可能。オートで混合比を変更することも可能

 かつてのRAWデータにJPEGを埋め込めるファイル形式の時も、EOS File ViwerにはJPEG抽出機能はあっても埋め込みJPEGで高速にプレビューとセレクトを行なう機能はなかった。せっかくのカメラ側の機能なのだから、付属ソフトもそれを意識して欲しいのだが(付属ソフトを使わないという人も多いだろうが、ならば不要という話になる。その機器に最適なソフトだからこそ、付属させる意味もあるはず)。

 さて、今回の作例はLightroomβ2で現像したものだ。現像エンジンそのものはPhooshop CS2などと同じだが、現像機能はこちらの方が柔軟性が高い。Apertureと比較すると、スタックという概念がなかったり、写真の分類機能が弱かったり、異なる現像パラメータを別バージョンとして扱う機能がなかったりと、画像管理ソフトとしては明らかに落ちるのだが、現像機能や印刷機能を重視するならば、Lightroomの方が優れた面もある。

 中でもモノクロ現像機能は凝ったもので、RGBCMYの6軸で各色の混合比を細かく調整したモノクロ写真を簡単に作ることができる。また、カラー写真の内容を分析し、自動的に混合比を決める機能もある。まずは自動で混合させ、その後にマニュアルで調整すると作業が簡単だ。

 モノクロ化の処理は、手順をきちんと考えて処理しないと、階調が失われて疑似階調が出やすいものだが、RAW現像時のパラメータとして混合比を決めることができるため画質を落とさずに済む。

 またアドビではLightroomの機能や使い勝手に関して、ユーザーからのフィードバックを反映させて使いやすくするために公開βテストという手法を採用としたとの事。アドビ自身「手探り状態」と告白し、ユーザーからの要望に対しては幅広く応えていく用意があるという。英語でのコミュニケーションにはなるが、画像管理、閲覧、現像、印刷などをワンストップで解決できる製品いうのは選択肢が少ない。β版はMacOS X専用だが、対応機を持っているならば、使用してフィードバックを返してみてはいかがだろう。

※写真下の作例データは、使用レンズ/記録解像度/露出時間/レンズF値/露出補正値/ISO感度/焦点距離を表します。


EF 85mm F1.2 L / 4,368×2,912 / 1/640秒 / F4 / 0EV / ISO100 / 85mm EF 85mm F1.2 L / 4,368×2,912 / 1/125秒 / F1.2 / 0EV / ISO100 / 85mm

EF 85mm F1.2 L / 4,368×2,912 / 1/500秒 / F1.2 / 1EV / ISO100 / 85mm EF 50mm F1.4 / 4,368×2,912 / 1/160秒 / F1.4 / 0EV / ISO100 / 50mm EF 50mm F1.4 / 4,368×2,912 / 1/3,200秒 / F1.4 / 0EV / ISO100 / 50mm

EF 50mm F1.4 / 4,368×2,912 / 1/6,400秒 / F1.4 / 0EV / ISO100 / 50mm


URL
  レンズ交換式デジタルカメラ機種別リンク集(EOS 5D)
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/link/dslr.htm#5d

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( 本田 雅一 )
2006/02/16 15:58
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