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ソニー サイバーショット DSC-T9【第1回】
ベストセラーも納得のWブレ対策機

Reported by 元麻布 春男


 現在、コンパクトデジタルカメラで売れ筋となっているのは、スリムボディに広い意味での手ブレ補正技術を組み合わせたものだ。その先鞭をつけたのが、松下電器のDMC-FX7(2004年8月発売)であることに異論のある人はまずいないだろう。撮影感度はISO400どまりだが、光学式手ブレ補正を用いることで、失敗の少ないカメラ、暗いところにも強いカメラとして人気を博した。

 市場での競争が激化したのは、富士フイルムがFinePix F10(2005年2月)を出してからのこと。こちらは最高感度をISO1600まで引き上げることで、シャッター速度をかせぎ、手ブレを減らす算段。光学式と異なり、被写体ブレにも強い、というのがウリとなった。以来、両社は互いに自らのセールスポイントをアピール、ほぼ半年ごとのモデルチェンジ合戦を繰り広げている。

 こうして2社が始めた「手ブレ戦争」は、またたく間に市場全体に波及、他社にも影響が及ぶこととなる。確かに、画質に顕著な悪影響さえないのであれば、光学式手ブレ補正や高感度は便利なものに違いない。手ブレ補正というキーワードのないコンパクトデジタルカメラは、たちまち売りにくくなり、他社もとばっちりを受けることとなった。


DSC-T9のパッケージは断面が変則的な五角形
内容物一覧。記録メディアのメモリースティックDuo/Duo Proは付属しない

DSC-T9の上面。スライド式レンズカバー(電源スイッチも兼ねる)の断面が複雑なカーブを描いていることが分かる。このおかげもあって、カバーにはガタつきがなく、手にしたときの質感を高めている
2.5型の液晶がほとんどを占めるDSC-T9の背面。比較的手の大きな筆者は、カバーの開閉時にどうしても液晶を親指で押さえる形となる。液晶保護フィルムは必須か

 ソニーもその例外ではなかったと思う。2005年3月に発表したDSC-T7は、厚さが初めて1cmを切るスタイリッシュなデジタルカメラだ。1cmを切るために多数の専用部品を新規開発、発売に合わせて多数のアクセサリも用意した。発表後のフォトイメージングエキスポではカットモデルを用意するなど、ソニーの力の入れようはかなりのものだった。しかし、手ブレ戦争の只中にあった市場は、ソニーが期待したほどには反応してくれなかったのである。開発陣はさぞや悔しかったに違いない。

 DSC-T9は、手ブレ戦争の主兵器である「光学式手ブレ補正」と「高感度」の両方を搭載した、ソニー起死回生のデジタルカメラだ。最高感度ISO640は、FinePix F10/F11/Z2のISO 1600にはかなわないものの、このクラスとしてはかなり頑張った方で、ISO400どまりのDMC-FX7/8/9を上回る。FinePixにはない光学式手ブレ補正を備えていることを考えれば、ある意味、最強のブレにくいカメラといえよう。

 加えて、DSC-Tシリーズの特徴であるスタイリッシュな薄型ボディもしっかりと継承した。薄型ボディと光学式手ブレ補正の組み合わせなら、コニカミノルタのDiMAGE X1も該当するのだが、こちらは800万画素まで画素を欲張ったこともあって、最高感度がISO200どまり。ブレさせないというコンセプトの訴求力がちと弱い。動画が20fpsなのも他社製品に見劣りする部分だ。


ラスベガスの街を行くモノレール。モノレールの後ろに見えるWynn(最上部に筆記体でそう書かれている茶色のビル)は、最近できたラスベガスでも最高級のホテル
オートモード / ISO80 / 1/500 / F5.6 / 35mm判換算48mm相当
 薄型のスタイリッシュなボディ、光学式手ブレ補正、高感度CCD、さらには見やすい大型液晶ディスプレイ(2.5型)の採用にVGA解像度30fpsの動画と、DSC-T9は現在のコンパクトデジタルカメラに求められるフィーチャーを網羅した製品に仕上がっている。11月中旬の発売以来、ベストセラーとなったのも納得がいく。

 筆者も遅まきながら昨年暮れにブラックモデルを購入、デジタル一眼レフのサブカメラとして、1月に米国で開催されたInternational CES 2006のお供に加えた。果してDSC-T9は、スペックが示すとおりの優れものなのか。しばらくのお付き合いをお願いしたい。


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( 元麻布 春男 )
2006/02/10 00:29
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