デジカメ Watch

【河田一規のデジカメナビ】
ソニー サイバーショット DSC-T9

〜現時点でもっとも魅力的な常用コンパクトデジカメ
Reported by 河田 一規

 ソニーから登場したサイバーショット DSC-T9(以下、T9)は、薄型ボディ、大型モニター、持ちのいい電池、光学式手ブレ補正、高感度撮影対応といった、コンパクトデジカメに求められる最近のトレンドをほぼすべて押さえたモデルとして注目の1台だ。

 撮像素子は1/2.5型の600万画素CCD、レンズは屈曲光学系による光学3倍ズーム、電池は専用のリチウムイオン充電池、使用できるメディアはメモリースティックデュオか同PROタイプといったあたりが主なスペックである。

 で、いきなり結論めいたことを書いてしまって恐縮だが、このカメラは個人的には大いに「買い!」だと思う。なぜなら、筆者はT9を買ってしまったのだから。


ソニー製としてはオーソドックスなボディデザイン

 編集部から送られてきたT9を箱から取り出した時は、正直いってデザインにはそれほど感心しなかった。T9と同じように上下へスライドするレンズバリアを持つ同社兄弟機であるT7やT5があれだけキレのあるソニーらしいデザインなのに比べると、T9の外観はコンサバで大人しすぎるように感じてしまったのだ。






 T9にはボディカラーがシルバーとブラックの2種類あって、送られてきたのは写真のシルバータイプ。このシルバーもごくごく普通の色味で、筆者がソニー製品に求めるサプライズはあまり感じられない。しかも、ボディ背面のモニター上部にあるモード切り替えのスライドスイッチはモロにプラスチッキーで色と質感の両方がボディ本体とまったくマッチしていないなど、ネガティブなところばっかりが気になってしまう。

 で、もうひとつのカラーであるブラックはどんな感じなのか気になったので、某量販店にて現物を確認してみると、こちらはなかなか渋くていい感じではないか。しかも、シルバーボディでは妙に浮いていたモード切り替えスイッチもブラックではボディ同色の黒いパーツが使われているためまったく気にならない。

 というわけで、筆者が後日買ったのはブラックボディのほう。ただ、貸出期間中、ずっとシルバーのT9を持ち歩いていたら、最初はイマイチと感じたデザインやカラーも徐々に「結構カッコイイかも」と思うようになってきた。逆に言うと、インパクトはそれほど大きくないが、使うほど良さがわかってくるデザインということになるだろうか。T7やT5に比べると確かにちょっと地味だけれど、万人向きなのは間違いなくT9である。



屈曲光学レンズとレンズバリアの相性は最高

 操作系はかなり良好だ。特に起動は前面のレンズバリアをスライドするだけで撮影可能状態になるため、ポケットから出したりバッグから取り出すその手で容易に起動でき、シャッターチャンスを逃しにくい。

 電源ボタンを押して起動させる一般的なデジカメでは、ポケットから取り出した後に目視で電源ボタンを探す→押すという手順になり、短気な筆者はこの段階で撮影するモチベーションが著しく下がってしまうが、完全にブラインドタッチで起動できるT9では構えた時にはすでに撮影可能状態であり、撮影意欲も増すというわけだ。バリアのスライド機構も剛性感と明快なメリハリがあり、開閉時の感触も上々である。

 T9の公称起動時間は約1.3秒。レンズバリアを開けてからモニターにスルー画が表示され、撮影スタンバイ状態になるまでの時間をストップウォッチで手動測定した値も約1.6秒と優秀だった。

 この手のレンズバリアをスライドさせて電源をON/OFFさせるデジカメの場合、電源を切る時にバリアとレンズがギロチン状態となってしまうため、繰り出されたレンズ鏡胴がボディ内へ収納されるまでおとなしく「待つ」必要があるわけだけど、屈曲光学系を採用するT9ではそもそもレンズが繰り出されないため、待つ必要もなく即座に電源を切れるのもいいところ。屈曲光学系とレンズバリア構造の相性が抜群にいいことをT9を使って改めて再認識した。

 それ以外の操作性もなかなか良好で、完全にセパレートした十字キーやメニューボタンなどは小さいながらもしっかりとキーストロークのあるスイッチが使われていて、操作の確実感は小型カメラとしては文句なしのレベル。モニターの表示切り替えボタンの高さを隣に並んだメニューボタンより一段下げて誤操作を避ける対策など、細かい部分までよく配慮されていると思う。


操作性、デザインともに文句のない十字キー周り。メニューボタンの上は表示切り替えボタンだが、メニューボタンよりボタン頭頂部の位置を下げるなど、細かい配慮が行き届いている ボディ上部にはPOWERボタンがあるが、撮影モードで起動して再生へ移行した場合などはバリアの方で電源を切ることになるため、このボタンの利用頻度は低い。右端にあるのは手ブレ補正機能をON/OFFするボタンだが、一眼レフなどと違ってこのカメラで手ブレ補正機能を切ることは希だと思われるので、メニュー内でもよかったかなと……

 てなわけで、絶賛に値するT9の操作性だが、唯一気になったのがスチルとムービー、再生の切り替え方法だ。液晶モニター上にあるスライドスイッチを「再生」位置にしてレンズバリアを開けるかボディ上面のPOWERボタンを押すと再生で起動されるわけだけど、再生が終わったらスライドスイッチを必ずスチルかムービーの位置に戻しておかないと、いざ撮ろうというときに再生で起動してしまうのだ。もちろん、これは仕様であり、ユーザーの使い方で回避できる問題だけど、短気な上に慌て者な筆者はこのスイッチをたびたび戻し忘れ、「撮ろうと思ったら再生」というマヌケなことに……。

 こういったケアレスミスを誘発させないためにも、ダイレクト再生ボタンを別途作り、スライドスイッチの選択肢から「再生」を外してしまえば、レンズバリアを開けた時は常に「撮影」モードという好ましいロジックになるし、始めから再生したい時も現在の2アクションから1アクションへ操作の簡略化を図れるというメリットもあると思う。


撮影モード時の画面。ヒストグラムのリアルタイム表示や電池残量表示は邪魔なら消すことももちろん可能 メニューはサイバーショットシリーズに共通のもので、項目を選択すると選択肢がプルアップされる例のやつだ。一般的によく使うと思われるホワイトバランスとISOが並んでいるのはいい

セットアップ画面。設定できる項目はコンパクト機としては平均的なところ 手ブレ補正機能はシャッターボタンの半押しで作動する「撮影時」と、起動時は常に補正し続ける「常時」の2種類から選択可能。デフォルトは「撮影時」

再生時の各種項目表示は3段階から選べ、画像だけのシンプル表示も可能。これは最も表示項目の多い場合 拡大再生は最大5倍。モニタの解像度が高いこともあり、拡大時もかなり明確に確認できるが、できれば10倍程度の拡大率は欲しい

屋外でも見やすい液晶モニター

モニターの再現はコントラストがあり、視認性は良好。色もキレイに表示される
 液晶モニターは2.5型の「クリアフォト液晶プラス」で、表面に多層膜コーティングが施されているためか、明るい戸外でも視認性はかなり高かった。表示切り替えボタンを押すことで、一時的にバックライトの明るさを増光できるのも便利だ。

 また表示クオリティもなかなか良好。特にコントラストが高くてクッキリとしているため、非常に精細感のあるクリアで美しい表示だと感じた。モニターの解像度も23万画素と、文句なしだ。

 視野角も広いため、ローアングルやハイアングル撮影も比較的容易に行なえるなど、液晶モニターそのものについての満足度はフルマークに近い。


視野角を検証するため角度を付けて見たところ かなり狭角からでも明暗が反転したりせず、色も認識できるのはさすが

電池とチャージャー

 T9に使用する電池は薄型のリチウム充電池、NP-FT1。3.6V、2.4Whの容量だが、省電力化のおかげでフル充電時の撮影枚数は240枚と、薄い割には立派なスタミナである。実際に使ってみた感触でも持ちは良好で、筆者のペースなら1日は充分に乗り切れそう。ソニー独自のインフォ機能により残量がかなり正確に把握できるのも精神的には助かるところである。

 充電は付属のチャージャーで行なうわけだが、これが結構デカい。写真を見てもらえばわかると思うが、電池が薄型の割にチャージャーは明らかに大きめ。で、調べてみると、アクセサリーとしてBC-TR1というチャージャーが別途用意されていて、こちらの方が付属チャージャーよりもかなり小さいうえに、高速充電対応で、充電時間も約半分しかかからない。

 旅行に携行する時などはやはりチャージャーは小さい方がいいわけだし、せっかくカメラが小さくなってもチャージャーが大きいのでは仕方ない。オーナーとしては「うぎゃ〜、何でこっちの小さくて速いのが付属してないんだ!」と怒りたくなってしまうわけだ。この小さいのを買ってもいいのだが、そうなると付属チャージャーがまったく無駄になってしまう。

 ちなみにいわゆるクレードルは付属しておらず、こちらも別売でサイバーショットステーションCSS-TNAというのが用意される。クレードルは必要な人とそうでない人に2分されると思うので、オプションというのはいい考え方だと思う。


T9本体よりも大きい付属チャージャー。普段は問題ないけれど、旅行の時にはチト気が重くなりそう 電池は薄型のリチウム充電池、NP-FT1。付属チャージャーを使った時の充電時間は実用充電まで約160分。満充電までは約220分。オプションの小型チャージャーやサイバーショットステーション(クレードル)を使用すると充電時間は大幅に短縮できる

メディア関係

 T9に使用可能なメディアはメモリースティックデュオ、メモリースティックPROデュオ、メモリースティックPROデュオ(ハイスピード)のいずれかで、デュオではない通常のメモリースティックは使用することができない。ちなみにメモリースティックPROデュオ(ハイスピード)はすでに生産完了しているが、ハイスピードなのはPCへの転送速度だけで、T9での記録速度はハイスピードではないPROデュオと変わらない。

 T9にはメディアは付属していないが、内蔵メモリが58MBと大きいため、600万画素のスタンダード画質なら35カット撮影できる。ちょっとムリすればA4サイズまでのプリントにも何とか耐えられる300万画素/スタンダード画質では67カットも撮影できるため、300万画素の画質でもOKで、なおかつ撮影枚数が少ない人なら内蔵メモリーだけでも間に合ってしまいそうだ。もちろん、真価を発揮させるためには512MB以上のデュオを買うべきだが。

 ちょっと残念なのが内蔵メモリからデュオへのコピーは可能なのに、逆にデュオから内蔵メモリへのコピーができないこと。また内蔵メモリ内の画像をPCへ移動したりコピーすることはもちろん可能だが、その逆にPC内の画像を内蔵メモリへ書き込むことはできない(と、説明書にあったので実際にやってみたが、書き込みロックになっていた)。つまり、内蔵メモリはデュオがフルになってしまった時に緊急用として使用する予備的スペースという扱いなのだ。せっかく58MB内蔵もしているのだから、常に持ち歩きたいお気に入り写真とか動画を入れておきたいところだが、そうするためにはその画像やムービーそのものを内蔵メモリを使って撮影するしか方法がないのだ。これはもったいないとしか言いようがない。


インターフェイス関係は付属するマルチ端子専用USB・A/V・DC INケーブルでPCやAV機器との接続を行なう T9側の端子は底部にあるマルチ端子だけ

メディアスロットは電池室にあるが、電池の方にはロックが掛かっているため、メディア交換時に電池が飛び出してしまう恐れはない メディアは小型なデュオのみ。通常のメモステしか持っていなかった筆者は512MBのPROデュオを購入した

手ブレ補正+高感度の実力は

 T9最大の魅力は光学式手ブレ補正と高感度を両立させたことで、手ブレと被写体ブレの両方に効果が期待できることになる。

 まずは光学式手ブレ補正の方だが、こちらは確かに大きな効果があるようで、静止した被写体であれば、ムリに感度を上げなくても手ブレの歩留まりはかなり良好であることが確認できた。ワイド側では夜景の撮影も条件次第では可能なほどで、使ってみた感触としてはメーカーの見解どおりシャッター速度3段分の効果は充分あると思う。

 では高感度の方はどうだろうか。

 今までのカメラでも高感度設定そのものは可能であったが、ノイズが多いなど、実用画質に達していないものがほとんどであった。ところが富士フイルムが発表したFinePix F10は高感度でもノイズが少なく充分に実用的な画質を実現したことで、他社も高感度時の画質向上に取り組むことになったというのがこれまでの経緯である。ただし、富士フイルムのハニカム構造CCDはもともとハードウェア的に高感度に強い特性を持つのに対し、他社の場合はどちらかというとソフト的な処理を加えることでノイズ低減を実現しているという違いがあり、単なる高感度画質では現時点でも富士フイルムが1歩以上リードしているというのが筆者の見解である。

 T9の場合、最高感度はISO640だが、この感度が実用画質に達しているのであれば、光学式手ブレ補正と合わせて非常に「ブレにくい」カメラとなる。で実際にどうかというと、ISO400までは何とか実用範囲内だが、それ以上はちょっと……というのが筆者の感想である。もちろん、このあたりは人によって許容範囲が異なるので、あくまでも個人的な意見として読んで欲しいのだが、最高感度のISO640ではノイズリダクションが強く掛かりすぎたことによるディテールの消失がちょっと大きいと感じたのだ。ただし、富士フイルム以外の他社のノイズリダクションよりはディテールの残り方は自然だし、何が何でもノイズを消そうとせず、適度にノイズを残す代わりにディテールに対するダメージとバランスを取ろうとしている点では好感が持てる。

 結論としては、光学式手ブレ補正との合わせ技でブレにはかなり強いカメラに仕上がっていると思う。ちなみにISOオートではどんなに暗くてもISO320までしか高くならないので、ISO400以上はユーザーが手動で設定する必要がある。


ISO感度


ISO感度を変えながら比較撮影してみた。個人的には実用画質だと思えるのはISO400がギリギリといったところ。すべてAWBだが、感度が変わっても色味の変化が少ないのはサスガである

※作例のリンク先は撮影画像をコピーしたものです。

※写真下の作例データは、レンズF値/露出時間/ISO感度/露出補正/35mm判換算時の焦点距離を表します。


F3.5 / 1/3(秒) / ISO80 / 0EV / 6.33mm F3.5 / 1/3(秒) / ISO100 / 0EV / 6.33mm

F3.5 / 1/6(秒) / ISO200 / 0EV / 6.33mm F3.5 / 1/13(秒) / ISO400 / 0EV / 6.33mm

F3.5 / 1/20(秒) / ISO640 / 0EV / 6.33mm

ISO100でシャッター速度は1/4秒。手ブレ補正の恩恵で、シャープに撮影できた
F3.5 / 1/4(秒) / ISO100 / 0EV / 6.33mm
ISOオートでは最高でもISO320以上にはならないようだが、手ブレ補正と組み合わせることで、ISO320まででも幅広い被写体に対応可能だ
F4.3 / 1/13(秒) / ISO320 / 0EV / 19mm

周辺まで高画質!

 次に高感度以外の通常時画質だが、これもなかなか良好だと思う。特に画面中央と周辺で画質差が少なく、均一なシャープさが保たれているのはレンズ性能がいいからだろう。色味もクリアだし、AWBや露出の精度もほとんど不満を感じなかった。


広角側で撮影
F5.6 / 1/250(秒) / ISO80 / 0EV / 6.33mm
望遠側で撮影
F7.1 / 1/160(秒) / ISO80 / 0EV / 19mm

周辺でも像の乱れが少なく、均質性の高い画質だ
F3.5 / 1/40(秒) / ISO80 / 0.7EV / 6.33mm
引きの画像と同じ場所だが、望遠側へズームアップしたら手ブレしないよう感度が自動的にISO320へアップされた。コンパクトデジカメのISO320にしては低ノイズと言えるだろう
F4.3 / 1/100(秒) / ISO320 / 0EV / 19mm

広角で遠景を撮影した時の解像感もなかなか高い
F3.5 / 1/50(秒) / ISO80 / 0EV / 6.33mm
近接撮影時でもAFの合焦はスピーディで、ピントが合うまで待たされることはない
F4.0 / 1/13(秒) / ISO320 / 0EV / 10.63mm

コクのある色調はなかなか味わい深い。線も細く、シャープな描写である
F5.6 / 1/320(秒) / ISO80 / 0EV / 6.33mm
こういった被写体だと空の部分に圧縮ノイズを確認できるが、それほど気になるほどではない
F7.1 / 1/250(秒) / ISO80 / 0EV / 19mm

ストロボの調光補正は標準をはさんでプラスもしくはマイナス側に補正可能。作例は標準とマイナス補正したもの
F3.5 / 1/3(秒) / ISO80 / 0EV / 6.33mm
F3.5 / 1/3(秒) / ISO80 / 0EV / 6.33mm

結論

 最初に書いたとおり、T9は買いだと思う。

 屈曲光学系+レンズバリアによる使いやすさや、手ブレ補正+高感度による実用性の高さ、基本的な画質の良さ、液晶モニターの見やすさなど、全方向的に秀でており、非常にバランスの良いカメラに仕上がっている。もちろん、日常的に持ち歩いても苦にならない大きさだし、ボディの作り込み完成度も高い。3倍ズーム搭載の常用コンパクトデジカメとしては、現時点でもっとも魅力的と言えるのではないだろうか。



URL
  ソニー
  http://www.sony.co.jp/
  製品情報
  http://www.sony.jp/products/Consumer/DSC/DSC-T9/index.html

関連記事
ソニー、高感度+手ブレ補正搭載「サイバーショットDSC-T9」(2005/11/01)



河田 一規
(かわだ かずのり)1961年、神奈川県横浜市生まれ。結婚式場のスタッフカメラマン、写真家助手を経て1997年よりフリー。雑誌等での人物撮影の他、写真雑誌にハウツー記事、カメラ・レンズのレビュー記事を執筆中。クラカメからデジタルまでカメラなら何でも好き。最初に買ったデジカメはソニーのDSC-F1。

2006/01/06 00:24
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