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キヤノン EOS 5D【第3回】
レンズメーカー製17-35mmズームレンズ比較

Reported by 本田 雅一


 EOS 5Dに対する一般的な評価で必ずと言っていいほどあがるのが、「像の周辺で収差が大きくなるのではないか?」、「高画質を求めるならば、フルサイズセンサーはむしろ弊害の方が大きいのではないか?」といった話題だ。

 これに対してキヤノン開発陣へのインタビューでは「EOS-1Ds以降、すべてのフルサイズセンサーは、フォトダイオードへの集光パワーを最適化することで周辺光量落ちを抑えているから、フィルムと大差はない」と応じていた(ただし倍率色収差はやや強く出るとか)。集光パワーを多少弱めても、フルサイズならば画素ピッチは十分に確保できるから十分というわけだ。


普及価格帯の超広角ズームと5Dの組み合わせ

 しかし、超広角ズームレンズで四隅が流れた写真を拡大観察して「あぁ、やっぱり周辺ダメだね」と思っている方も少なくないのではないだろうか。

 個人的には銀塩時代から経験則として「四隅の描写は、特に超広角ズームでは厳しい」と思っているから、実はさほど気にしたことがない。が、どの程度の描写になるのかぐらいは把握した上で、各レンズの特徴を考えながらレンズは選びたい。

 ということで、EOS 5Dのβ版レポートでも使用したシグマの17-35mm F2.8-4 EX DG HSMに加え、さらに安価なタムロンの17-35mm F2.8-4 Diを加えて、簡単な作例を作ってみた。


シグマ 17-35mm F2.8-4 EX DG HSM タムロン 17-35mm F2.8-4 Di

 と、ここでひとつ告白を。実はキヤノンにもEF 17-40mm F4L USMをお借りして撮り比べていたのだが、レンズごとにメモリカードを切り替えながら撮影していたところ、キヤノンレンズの分を収めたCFをどこかに落としてきてしまった。

 しかも入れ替え間違い、入れ替え忘れなどで、一部の焦点域での作例までなくなってしまった。ということで、今回はあまり5Dとの組み合わせレポートが報告されていないシグマとタムロンの17-35mmの、17mm広角端で撮影したものを紹介したい。

 すでにEF 17-40mm F4Lは返却してしまったのだが、機会があれば作例のような中距離の被写体だけでなく、近接被写体、遠景、点光源を画面角に入れた場合、逆光時などの描写の違いを見る機会も作りたい。

 それぞれ絞り優先で開放からF16まで撮影しRAWモードで記録、現像した。マニュアルで撮影すればよかったのだが、AEでの撮影のため、一部、露出がズレているものもあったため、現像時に露出補正をかけて見映えを同等にしてある。

 作例は画面中央にピントが合っており、左下角の地面がピント位置に近い距離になるように三脚を立てた。右下角はピント位置より近い事もあり、かなり流れるので周辺のピントを見るなら左下隅を見るようにして欲しい。加えて周辺光量落ちがわかりやすいように、順光で上部角が両方とも空になるようにしている。


※作例はすべて絞り優先AE / ISO100 / 露出補正なし / オートホワイトバランス / 焦点距離17mmで撮影されています。


シグマ 17-35mm F2.8-4 EX DG HSM

1/1250(秒) / F2.8
1/320(秒) / F5.6

1/100(秒) / F11 1/50(秒) / F16

タムロン 17-35mm F2.8-4 Di

1/2000(秒) / F2.8
1/500(秒) / F5.6

1/125(秒) / F11 1/60(秒) / F16

特徴の異なる2(+1)本

 結果は見ての通りだが、さすがに広角端での開放F2.8では、いずれも周辺部の流れが見える。ややタムロンの方が周辺の流れは大きめに見えるが、最周辺部のみで中央部に関しては同等か、むしろ若干タムロンの方がシャープかもしれない。歪曲収差の傾向も違い、シグマがやや画面中央部に起伏を感じるような歪みが出ているのに対して、タムロンは比較的スッキリと直線が伸びている。

 周辺光量落ちに関してはタムロンの方が少なめ。両者ともF5.6まで絞ると、かなり周辺光量落ちは軽減される。個人的にはF2.8で撮れるだけでもいいんじゃないか? と思うが、いかがだろう。F4通しのレンズはマニュアル時には便利だが、AEを使う場合は(絞り優先時も含め)さほど気にせずに扱える。F4通しだと思って使い、しかし暗い場所やワイドマクロで背景を少しでもぼかしたい時にはF2.8も使えますよといった雰囲気で考えればいいと思うのだけど。

 周辺のフォーカス流れに関しては、F16でほぼ解消されるが、F11ぐらいの描写でも特に問題はない。ここではあげていないが、F8ではまだ多少流れが見える。ただしピクセル等倍だから「見える」のであって、キャビネ程度までの印刷ならば、さほど気にせずに済むだろう。

 個人的にはフルサイズ用の超広角ズームとして、十分なレベルの描写だと思う。最周辺部に注目して見るわけではない上、主被写体が四隅に配置されるケースも希だからだ。銀塩時代も、この手の超広角ズームはこうした描写だった。今は利用していないが、以前所有していたEF 16-35mm F2.8Lは、色味や最短焦点距離の短さなどのよい部分もある一方で、描写は甘く、もっとフォーカス感が乏しい印象だったから、それに比べればというのもある。

 なお、最周辺部以外の解像感に関しては、両者とも開放から十分だが、F5.6以上ではタムロンの方がややシャープ。タムロンは黒方向に引き込んだトーンカーブとなり、コントラストが強めに感じ、結果的に細かなテクスチャの立体感が増して見える。色味はタムロンが暖色系なのに対し、シグマはやや寒色方向にシフトする印象だ。

 こうした違いはあるものの、描写力に関しては大きな違いはない。価格面ではタムロンの方が安くお買い得感はあるがモーターは通常タイプ。シグマはHSM採用でフォーカス時の動作音が静かで速く、フルタイムマニュアルフォーカスが可能という長所がある。一方でシグマはやや大きく重め、タムロンは質感はやや落ちるがコンパクトで軽量という違いもある。


 ではシグマの方が携帯性が落ちるか? というと、実はシグマはフードがコンパクト。タムロンのフードは径がかなり大きく、バッグに収めておくときにフードの在るべき場所を作ってあげる必要がありそうだ。

 これにキヤノン純正のEF 17-40mm F4Lも考え合わせると、これからフルサイズ対応の超広角ズームレンズを購入しようという人には悩ましい限りだろう。最終的には価格との兼ね合いで決めることになろう。操作性と価格のバランスがよいシグマのレンズ、やや外見は悪いものの価格以上の写りのタムロン。

 デジタル対応のレンズメーカー製ズームは、実はなかなか5D向けとしてもよいぞ、という事がわかっただけも収穫。昔の安レンズメーカーのイメージは、そこには感じない。


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【インタビュー】EOS 5D開発者に聞く(2005/10/18)


( 本田 雅一 )
2005/11/25 16:52
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