デジカメ Watch

【試写レポート】コシナ カールツァイス プラナー T* 50mm F1.4 ZF

Reported by 根本 泰人

今回テストしたレンズ。手前がカールツァイス プラナー T* 50mm F1.4 ZF
 2006年1月、コシナから一眼レフ用のカールツァイス プラナー T* 50mm F1.4およびプラナー T* 85mm F1.4の発売が発表された時には、ツァイスレンズファンの多くは感激したことと思う。京セラがカメラ事業から撤退したことで35mm一眼レフカメラ用のツァイスレンズが消えていくことを惜しむ人は少なくなかった。

 それが新たにコシナの手で、ニコンFマウント仕様とM42マウント仕様(現在は50mm F1.4のみ)で登場したのだから、驚くべきことである。ある意味京セラの撤退で35mm判一眼レフについて新たな道が開けたと言えなくもない。戦前まで歴史をたぐれば、カールツァイスは様々なカメラメーカーに世界最高レベルと言える性能のレンズを供給したレンズメーカーであり、現在もハッセルブラッドやローライの6×6判一眼レフにはカールツァイス銘レンズが供給されている。

 特にZFマウントと呼ばれるニコンF(Ai-S)マウント仕様は、35mmメカニカル式一眼レフ最強の名機の名をいまだ欲しいままにしているニコンFからはじまるニコンF6までのFシリーズ一眼レフや、中古市場で高騰しているニコンFM3Aに代表されるコンパクトニコン、そしてデジタル一眼レフのフラッグシップであるニコンD2Xsや日欧カメラアワード3冠を達成したニコンD200などすばらしい性能のカメラを自由に選べるわけだ。ツァイスファンもニコンファンも興奮するのは当然のことだろう。


コシナ製カールツァイス プラナー

カールツァイス プラナー T* 50mm F1.4 ZF
 プラナー 50mm F1.4レンズは(変形)ガウスタイプ6群7枚構成で、このレンズ構成は京セラ時代のプラナー 50mm F1.4レンズによく似ている。というかそもそも近年の各社の一眼レフ用50mm F1.4級標準レンズのレンズ構成は、ほとんどが6群7枚構成で非常によく似ていている。長年の試行錯誤の結果、現時点では最良の性能を追求するとこのタイプに収れんしたということになるのだろう。

 外観デザインは1960年代に西ドイツを代表する超高級一眼レフであったツァイス・イコンのコンタレックス用交換レンズにかなり似たイメージである。特に先端部の銀色のクロームメッキされたバヨネット式シェード(フードのことをコシナ・ツァイス製品はシェードと呼ぶ)取り付け部は、まさにコンタレックス用レンズのデザイン上の特徴であった部分で、これはZMマウントシリーズのレンズ群と共通だ。それ以外の部分は黒色クローム仕上げで、絞りや距離環の文字は最近はやりのプリントではなく、手間のかかる彫刻仕上げであるなど、全体的に非常に精密感と高級感がある。ただしフィルターサイズが58mmと大きく、ニッコール50mmの標準サイズが52mmであることからもわかるように、ニッコールレンズよりは全体的に一回り以上大きいレンズである。

 各部の操作については、ピントリングと絞りの回転制御方向はニッコールレンズと同じとなっており、基本的な操作にとまどいはない。ピントリングの回転は非常になめらかな上に適度なトルク感があり、操作感は申し分ない。また絞りは1/2段ごとのクリックストップとなっている。ニッコールレンズの絞りクリックは1段ごとであるので、この点はニコンユーザーはとまどうかもしれない。絞りリングにはAi方式以前の絞り連動機構用のカニ爪まで用意されていて、いまだにニコン・フォトミックFTNをF36モーター付きで愛用する筆者には感涙ものである。


シェード(フード)を装着した状態
 付属品としてはレンズ先端の外爪バヨネットに装着する専用金属フードが用意される。また、スプリング式レンズフロントキャップやリアキャップもツァイスマーク入りの新しいものである。

 レンズは T* コーティングであるが、各面の反射の色は緑や紫、薄青といった複雑な様相を見せる。しかし非常に透明感を感じる。絞りは9枚だが今はやりの円形絞りではなく正9角形ではある。どの絞りでも形が非常に整っている。

 今回のレンズのシリアル番号は15566125で、カールツァイスの検査を受けた合格品はこの8桁のシリアル番号が与えられる。雑誌などで発売前にテストされるレンズの中には0ではじまる試作品もあり、必ずしも性能が保証されているわけではないが、今回のテスト品は発売されているレンズと同じものであるわけだ。コシナで製造したカールツァイスのレンズは1本ずつすべて検査を受けるため、出荷される製品の品質については万全であるとアナウンスされている。


オートトプコール

 今回の試写にあたっては、プラナー T* 50mm F1.4 ZFに加えて、コシナから2003年12月に限定発売されたオートトプコール 58mm F1.4(ニコンFマウント)もテストしてみた。これはこのレンズがコシナ自身によって設計された最新の一眼レフ用50mm級標準レンズであるからである。さらにニコンマウントの標準レンズの代表として、マニュアルフォーカス仕様のAiニッコール 50mm F1.4 Sと、オートフォーカス仕様のAFニッコール 50mm F1.4 Dを加えて、この4本を同一条件で比較した。


オートトプコール 58mm F1.4
 オートトプコール 58mm F1.4のレンズ構成は変形ガウスタイプ6群7枚構成で、構成図はプラナー 50mm F1.4とこれもよく似ている。名前の由来は東京光学機械(現トプコン)の名機トプコンREスーパー用の標準レンズ「REオートトプコール 58mm F1.4」であるが、レンズ構成はREオートトプコールと同じではない。外観形状についてはオリジナルはフィルター径が62mmに対してコシナ製は58mmで一回り小ぶりであるが、コシナ製レンズもレンズの外観デザインや付属のフードはオリジナルデザインに酷似している。コシナ設計のこのオートトプコールは、ニコンFマウントおよびM42マウントがそれぞれ800本の限定数販売され、すぐに完売となった。今では中古市場でもなかなか見かけない幻のレンズになりつつある。絞りのクリックは1/2段ずつで最小絞りはF16、最短撮影距離は45cmである。

 一眼レフ用ニッコールレンズのF1.4級標準レンズの歴史は長い。最初のレンズはニコンFが登場した翌年(1960年)3月、5群7枚構成のニッコールオート 58mm F1.4が発売された。この時代、一眼レフのミラーを避けるためにバックフォーカスを長くしなければならないため、F1.4級の標準レンズは各社とも58mm前後の焦点距離にせざるをえなかったのである。

 これに対し1962年3月、日本光学(現ニコン)はニッコールオート50mm F1.4を登場させ、F1.4の明るさでも50mmにできることを世に示した。それまでの58mm級F1.4レンズの最後群のレンズを改良して凸レンズ2枚にした6群7枚構成とし、バックフォーカスをのばすことで実現したのである。この構成はその後世界のカメラ・レンズメーカーが皆準じていて、今回のツァイスのプラナーも後群はその構成になっている。

 その後小改良が続けられながら1972年7月にマルチコート化されたニッコールオート 50mm F1.4 Cとなり、1974年11月にはピントリングがゴム巻きになるなど外観デザインが大きく変わったNEWニッコール 50mm F1.4が発売される。最短撮影距離もそれまでの60cmから45cmとなる。

 1977年3月、絞り連動方式がAi方式に変更されると同時に光学系が一新され、外観もコンパクト化されたAiニッコール50mm F1.4が登場する。新しい光学系は2群目に空気レンズ方式が採用された6群7枚構成となった。このレンズ構成は現在のAFニッコール 50mm F1.4 Dまで受け継がれているのであるから、実に30年という年月が経過しようとしていることとなる。1981年9月ボディからの絞り制御方式が若干変更されたAiニッコール 50mm F1.4 Sに代わり、MFのニッコールレンズはこれが現行品として販売が継続されている。今回使用したレンズは2005年秋にニコンでオーバーホール済みである。

 1986年4月にニコン初のAF一眼レフニコンF-501が登場した直後の7月に、AFニッコール 50mm F1.4 Sが発売される。光学系は先にも書いたがMF用レンズを継承しているため同一である。1995年4月、距離情報をボディに伝達できるDタイプレンズとしてAFニッコール 50mm F1.4 Dが登場する。これが現行品であるが、実はこのレンズは当初日本製(Made in Japan)であったが、現在は中国製(Made in China)になっている。手元には両方ともあるが、テストは現在販売されている中国製レンズで実施した。


Aiニッコール 50mm F1.4 S AFニッコール 50mm F1.4 D

撮影に使用したデジタル一眼レフカメラ

 今回はすべてのレンズがニコンFマウント仕様であり、テストに使用するデジタル一眼レフはニコン系の画素数が異なる3機種、ニコンD2X(約1,200万画素)、D200(約1,000万画素)、D70(約600万画素)を使用した。さらに本来は35mm判フルサイズをカバーするレンズであるため、今回は特別にニコンFマウントの35mm判フルサイズデジタル一眼レフであるコダックDCS14n/512Mでも撮影し、その性能を調べることとした。

 実写にあたっては、ニコン系デジタルカメラ3機種はいずれも画質に関する項目は標準設定とした。またコダックDCS14nについてては、仕上がり設定はランドスケープとした。ホワイトバランスはいずれもAWB(オートホワイトバランス)、感度の設定はニコンD2XとD200およびコダックDCS14nはISO100、ニコンD70はISO200である。今回はD70のみ撮影後にNikon Capture 4.4でバッチ処理してJPEGに変換したが、それ以外のカメラはRAWと同時に撮影したJPEG画像を使用した。画質設定はJPEGの最高画質にしてある。

 ニコンのデジタル一眼レフカメラはすべてDXフォーマット、つまりAPS-Cサイズであり、50mmレンズは35mm判換算で約75mm相当となる。コダックDCS14nは35mm判フルサイズであるから、50mmレンズは50mmのままである。

 撮影に際してピント合わせはAFニッコールはカメラのAF機能にまかせ、それ以外はフォーカスエイドを参考にしつつスクリーンでピントを判断した。絞りは開放F1.4からF11まで1段ずつ絞っていった。カメラはリンホフの大型三脚に固定して撮影した。D70とDCS14nはMFレンズの場合露出機能が働かないが、露出についてはD2XおよびD200を基準として設定した。D2XとD200はMFレンズでも焦点距離と開放F値を入力するとマルチパターン測光が可能であり、その測光データに基づく絞り優先AEで撮影した。ニコンの測光システムには高い定評があり、今回も安定した結果を得ている。

 なお、今回のテストはあくまでもこれらのデジタルカメラとの組み合わせにおける結果であり、銀塩フィルムで撮影した場合の結果とは必ずしも一致しないとお考えいただきたい。

※作例のリンク先は、撮影した画像です。等倍の画像(最大4,500×3,000ピクセル)を別ウィンドウで開きます。


遠景

  日中晴天下の撮影では、ISO100時各レンズのF1.4開放で1/8,000秒が必要で、DCS14nは1/4,000秒までしか対応しないためやや露出オーバー気味となるが、画質の判断は可能と判断し、F1.4から撮影した。

●[遠景]DCS14n+プラナー T* 50mm F1.4 ZF
 DCS14nではF1.4開放から画面全体に像はよく整っているがややコントラストが悪い。周辺部はわずかに甘くなるが、テストした4本の中ではこのレンズが一番良い。また白い被写体の周囲がわずかににじんだように見えるが、これは露出がややオーバー気味のためかもしれない。四隅で周辺減光が目立つ。

 F2に絞ると画面全体にコントラストが良くなり、かなり良い像である。周辺減光はまだ目立つ。F2.8ではさらにコントラストが向上し、周辺部までシャープに見える。周辺減光はまだ少し残るが、F4でほとんど解消する。F4では最周辺部まで非常にシャープで申し分がない良い画像である。F5.6以上に絞るとさらに周辺部がわずかに締まるが大きな変化はない。JPEG画像でディテールが失われ気味なのが残念だが、相当な高解像レンズと判断できる。歪曲収差はわからない。

●[遠景]DCS14n+Aiニッコール 50mm F1.4 S
 AiニッコールはF1.4開放では中心部は像が整っているが、周辺部では像がやや甘い。特に左端は像が変な形に崩れている。コントラストもあまり良くない。周辺減光はプラナーと同程度で目立つ。

 F2に絞ると全体的にコントラストが向上し、画面中心部はシャープな感じの画面となる。しかし左端部は像が崩れていて、右端部に比べて極端に悪いのはこのレンズ固有の問題と判断できる。良好な右端部を本来の性能と見なしたい。F2.8ではさらに画質が向上する。周辺減光は残る。F4になると左端部をのぞいた最周辺部まで像がきっちり整い、コントラストも良いシャープな画面となる。周辺減光はごくわずか隅に認められる。さらにF8まで絞ると左端部も含めて、全画面が均質なシャープな画像となる。歪曲収差はわからない。


●[遠景]DCS14n+AFニッコール 50mm F1.4 D
 AFニッコールはF1.4開放ではAiニッコール同様中心部は像が整っているが、周辺部では像がやや甘い。またこのレンズも右端より左端の像がやや悪い。コントラストもあまり良くない。周辺減光はAiニッコールやプラナーより大きく目立つ。

 F2に絞ると全体的にコントラストが良くなり、画面中心部はシャープな感じの画面となる。端部はまだやや甘い。周辺減光はかなり解消するがまだ目立つ。F2.8ではさらに画質が向上する。周辺減光は残る。F4になると最周辺部まで像がきっちり整い、コントラストも良い非常にシャープな画面となるが、反対に中心部はF2.8に比べてわずかに甘くなっている。この時にピント位置がそれまでとわずかにずれたようだ。この結果から推測できることとして結像面が平坦ではなくやや湾曲しているのではないだろうか。なお周辺減光はわからなくなる。F5.6では画面全体に非常にシャープになり、さらにF8までさらに良くなりプラナーとは甲乙つけがたい画像といえるだろう。歪曲収差はわからない。

●[遠景]DCS14n+トプコール 58mm F1.4
 トプコールのF1.4開放は中心部は像が整っているが、周辺部は像がやや甘い。また全体
にフレアがかかったようでコントラストが良くない。周辺減光も目立つ。

 F2に絞っても周辺部の像は少し良くなる程度だが、全体にフレアがとれてコントラストが大きく向上しF1.4にくらべて格段に良くなる。周辺減光はまだかなり目立つ。F2.8に絞ると中心部はさらに良くなるが、周辺部が期待したほど良くならない。このレンズはニッコールとは反対に右端の像が良くなく、絞ってもあまり改善しない。F4に絞ると右端をのぞいてくっきりシャープな像となる。周辺減光もほぼ解消する。さらに絞ると右端部の画像が向上し、F8でほぼ画面全体がシャープと言える状態となる。これもプラナーと甲乙つけがたい良いイメージだ。なお、歪曲収差はわからない。

【遠景 DCS14n】
プラナー T* 50mm F1.4 ZF
F1.4F2F2.8
F4F5.6F8
F11
Aiニッコール 50mm F1.4 S
F1.4F2F2.8
F4F5.6F8
F11
AFニッコール 50mm F1.4 D
F1.4F2F2.8
F4F5.6F8
F11
トプコール 58mm F1.4
F1.4F2F2.8
F4F5.6F8
F11


●[遠景]D2X+プラナー T* 50mm F1.4 ZF
 F1.4開放から画面全体に像が良く整っているが、拡大してみると細部はにじんだようで、コントラストがあまり良くない。周辺減光はわずかに認められるが、気にならない。

 F2に絞ると中心部はコントラストが良くなるが、周辺部はもう一歩。周辺減光はもうわからない。さらに絞ると周辺部の描写が徐々に改善し、F4でほとんど良好、F5.6で最良となって以後は変化がない。F5.6の描写は最周辺部まできっちりシャープですばらしい。

●[遠景]D2X+Aiニッコール 50mm F1.4 S
 F1.4開放ではプラナーとほぼ同等の画像で、細部がにじみコントラストがあまり良くないが、中心部はプラナーが少しコントラストが良く、周辺部はニッコールの方が少しコントラストは良いようだ。また左端の画像がわずかに悪く、逆に右端はプラナーより良い。周辺減光はわずかだがプラナーよりは目立つ。

 F2では中心部のコントラストが改善するが、周辺部はあまり変化がない。周辺減光はほとんど認められなくなる。F2.8では急に周辺部が良くなるが、左端がまだ甘い。F4では本当に左の端をのぞいて画面全体にシャープな画像となり、F5.6で隅までシャープとなる。F8でさらにごくわずか改善するがそれ以上絞っても変化はない。

●[遠景]D2X+AFニッコール 50mm F1.4 D
 F1.4ではピントがやや甘い。カメラのAF機能で合焦させたのだが。画質については、プラナーやAiニッコールとよく似た状態である。周辺減光はわずかだが目立つ。

 F2に絞ってもピントは改善せず、中心部のコントラストが良くなる。傾向はAiニッコールによく似ている。F2.8でピントが合ってきて周辺部までコントラストも良くなるが、両端部で像がわずかに流れたように見えて甘い。F4では両端部をのぞいてシャープなイメージとなる。F5.6まで絞ると両端部もまずまずで全体に良いが、F8まで絞ることで画面全体が完全シャープとなる。このイメージはプラナーやAiニッコールと同等と言えるだろう。

●[遠景]D2X+トプコール 58mm F1.4
 F1.4ではいままでの3本と傾向が同じだが、中心部のフレアのようなにじみは一番多いようだ。像はAFニッコールよりはるかに整っているが、右端部が甘い傾向がある。周辺光量の低下はすこし目立つ。

 このレンズはF2に絞っても、まだ画像全体に薄いにじみが認められ、これがコントラストを低下させている。F2.8に絞るとこのにじみがきえて急にすっきりとした良い画像となるが、左端部がシャープなのに比べて右端部の像が甘いのは解消しない。F5.6で右端部もまずまずとなるのだが、満足するためにはF8まで絞りたい。F8の画像は他の3本同様非常にシャープとなって、甲乙つけがたい。

【遠景 D2X】
プラナー T* 50mm F1.4 ZF
F1.4F2F2.8
F4F5.6F8
F11
Aiニッコール 50mm F1.4 S
F1.4F2F2.8
F4F5.6F8
F11
AFニッコール 50mm F1.4 D
F1.4F2F2.8
F4F5.6F8
F11
トプコール 58mm F1.4
F1.4F2F2.8
F4F5.6F8
F11


●[遠景]D200+プラナー T* 50mm F1.4 ZF
 D200での撮影結果はD2Xに準じたものであった。ただ絞りF4で最良の結果となるようで、それ以上絞ってもほとんど変化はない。

●[遠景]D200+Aiニッコール 50mm F1.4 S
 D200での撮影結果はこれもD2Xに準じたもので、F4では左端部がごくわずかに甘いため、絞りF5.6以上で最良の結果になる。

●[遠景]D200+AFニッコール 50mm F1.4 D
 D2X同様D200でも絞り開放ではピントがやや甘いという結果になった。問題があるとしたらカメラではなく、レンズ側ということになろう。撮影結果はこれもD2Xによく似たものである。F5.6まで絞れば画面全体に高画質で、他のレンズに劣るわけではない。

●[遠景]D200+トプコール 58mm F1.4
 このレンズもD2Xでの撮影結果に準じたものである。F2.8で急に画面全体が良くなるが、右端部に甘さが残るのはこのレンズ固有の問題だろう。右端部もシャープにしたいなら、F5.6まで絞る必要がある。

【遠景 D200】
プラナー T* 50mm F1.4 ZF
F1.4F2F2.8
F4F5.6F8
F11
Aiニッコール 50mm F1.4 S
F1.4F2F2.8
F4F5.6F8
F11
AFニッコール 50mm F1.4 D
F1.4F2F2.8
F4F5.6F8
F11
トプコール 58mm F1.4
F1.4F2F2.8
F4F5.6F8
F11


●[遠景]D70+プラナー T* 50mm F1.4 ZF
 D200と同様で、絞りF4が最良で画面全体にシャープとなり、それ以上絞っても変化がない。

●[遠景]D70+Aiニッコール 50mm F1.4 S
 D200と同様の結果となった。F2.8まで絞ると左端をのぞき画面全体が非常に良いのだが、左端部が最良となるのはF5.6以上に絞った時である。

●[遠景]D70+AFニッコール 50mm F1.4 D
 D70でも絞り開放ではピントがわずかに甘いが、F4まで絞るとほぼ画面全体にシャープな画像となった。F5.6まで絞ると左端部の甘さもとれる。

●[遠景]D70+トプコール 58mm F1.4
 これもD200とよく似た結果となった。右端部の甘さを完全に解消するには、やはりF5.6以上に絞りたい。

【遠景 D70】
プラナー T* 50mm F1.4 ZF
F1.4F2F2.8
F4F5.6F8
F11
Aiニッコール 50mm F1.4 S
F1.4F2F2.8
F4F5.6F8
F11
AFニッコール 50mm F1.4 D
F1.4F2F2.8
F4F5.6F8
F11
トプコール 58mm F1.4
F1.4F2F2.8
F4F5.6F8
F11


近景

 いつものお寺の門を撮影した。ピントは瓦の屋根のひさしの最前部に合わせた。AFニッコールはカメラにピント合わせをまかせたが、MFレンズ群はカメラによってはファインダーでピントが合ってみえても撮影した画像が若干ボケているものがあったため、レンズのピント位置をわずかに前後させて最良のピントが得られた撮影結果を採用している。それでもピント位置が疑問が残ったレンズがあるが、ご容赦いただきたい。

●[近景]DCS14n+プラナー T* 50mm F1.4 ZF
 遠景同様DCS14nではF1.4開放から画面全体に像はよく整い、ピントがあった部分はシャープに見えるが、ハロの影響か瓦の部分は画像が青くなっており、また周辺に向かうほどコントラストが悪くなる。周辺減光の影響も認められるが、画像の歪曲はわからない。F2に絞ると画面全体にコントラストが向上して鮮明さがあがるが、周辺部ではまだわずかににじんだように見える。F2.8では周辺部のコントラストが大きく改善して、画面全体がとても鮮明な画面となる。周辺減光もほぼわからなくなる。F4以上に絞ると、被写界深度が深くなり周辺部の樹木の葉などがさらに鮮明になるが、全体としては大きな変化はない。非常に良好な描写である。

●[近景]DCS14n+Aiニッコール 50mm F1.4 S
AiニッコールのF1.4開放もプラナー同様周辺部まで像が良く整っているが、コントラストがやはり悪くこれも瓦の部分が青かぶりしている。また中心部の解像力がプラナーより劣ってみえるが、後ろの瓦のほうが鮮明に見えていることから、ピント位置が後ピンになってしまったようだ。周辺光量の低下は認められるが、画面の歪曲は感じられない。F2に絞ると画面全体にコントラストが大幅に向上し、鮮明な描写となる。周辺部はわずかににじむがプラナーより少ない。F2.8に絞ると周辺部のにじみが消え、全体的にコントラストが向上して非常に鮮明な描写である。周辺減光もわからない。F4以上に絞ると、これも被写界深度が深くなるが全体的にはほとんど変化がなく、すぐれた描写が続く。


●[近景]DCS14n+AFニッコール 50mm F1.4 D
 このレンズもF1.4開放から画面全体に良く整っている。またピント面の解像度も比較的高いが、周辺部では少し像が流れ気味で甘くなりその部分はプラナーより劣る。薄い紫色のかぶりが瓦の部分にあり、画面全体にコントラストがやや良くないが4本のレンズの中では一番よいかもしれない。周辺減光の影響もあるが、歪曲収差はわからない。F2に絞るとコントラストが良くなり、色かぶりも消えてくるが、周辺部にわずかな像の流れが残る。これがなければプラナーと良い勝負なのだが。F2.8では周辺部の像の流れもごくわずかとなり、F4に絞ると画面全体が非常にシャープな描写となる。他のレンズ同様これ以上絞っても画質にほとんど変化がない。

●[近景]DCS14n+トプコール 58mm F1.4
 トプコールもF1.4開放から画面全体に整った像だが、青紫のハロが瓦全体を覆っていてコントラストが悪い。ピント面の解像度は比較的高く周辺部まで維持されている。周辺光量の低下はこのレンズにもあるが歪曲はわからない。F2に絞っても他のレンズと異なって瓦部分の青かぶりがかなり残る。F2.8に絞るとコントラストがよくなり、画面全体に鮮明になるが、左端部はシャープなのに右端部はわずかに像の流れが残る。F4に絞るとこれも消えて画面全体が非常に鮮鋭になる。このレンズはこれ以上絞っても画質はほとんど向上しない。F4で十分良い画像である。

【近景 DCS14n】
プラナー T* 50mm F1.4 ZF
F1.4F2F2.8
F4F5.6F8
F11
Aiニッコール 50mm F1.4 S
F1.4F2F2.8
F4F5.6F8
F11
AFニッコール 50mm F1.4 D
F1.4F2F2.8
F4F5.6F8
F11
トプコール 58mm F1.4
F1.4F2F2.8
F4F5.6F8
F11


●[近景]D2X+プラナー T* 50mm F1.4 ZF
 F1.4開放ではDCS14nと良く似たイメージだが、周辺部の像がやや甘くなっている。特に左側が悪い。また瓦の部分は紫色にかぶっている。周辺減光はわずかにあるようだが目立たない。歪曲もわからない。F2に絞るとコントラストが少し向上する。紫色のかぶりはまだかなり残る。周辺部の像もまだ少し甘い。F2.8になると周辺部の像がほぼ整い、全体的にコントラストも良くなりシャープな画面となる。F5.6まで絞ると左端もきっちりとして、申し分のない画像である。それ以上絞っても被写界深度が深くなるだけで変化がほとんどない。

●[近景]D2X+Aiニッコール 50mm F1.4 S
 プラナー同様F1.4開放から像が良く整っていて周辺部はプラナーよりも良い。この画像も瓦の部分は少し紫色にかぶっている。周辺減光はわずかにあるようだが目立たない。歪曲もわからない。1段絞ってF2になると中心部のコントラストが大幅に向上する。また色かぶりもほぼ消え、周辺部の描写も良くなるが完全と言うにはもう一歩。F2.8まで絞ると端をのぞき画面全体が非常に良く、F4でまず申し分のない画像でプラナーと甲乙つけがたい。それ以上絞っても被写界深度が深くなるだけで変化がない。この結果はどの絞りもプラナーより1絞り分だけ良いようだ。

●[近景]D2X+AFニッコール 50mm F1.4 D
 Aiニッコール 50mm F1.4Sの画像と各絞りともきわめてよく似ている。レンズ構成やガラス材が同じはずだから、レンズの製造上のばらつきがなければ、こういう結果になるはずだ。

●[近景]D2X+トプコール 58mm F1.4
 これもF1.4開放から像は良く整っていて、周辺部まで解像度が高い。ただし特に中心部は紫色のかぶりとにじみがありコントラストが悪い。周辺減光はわずかにあるようだが目立たない。歪曲もわからない。F2に絞って色かぶりがかなり残っている。F2.8に絞ると色かぶりがほぼ消えてコントラストが急に良くなり、シャープなイメージの画像となる。ただし周辺部まで良いが右端部がわずかに甘い。F4でさらに良くなり、F5.6でコントラストも最良となり、周辺部まできっちりしたイメージで申し分ない。それ以上に絞ってもほとんど変化はない。

【近景 D2X】
プラナー T* 50mm F1.4 ZF
F1.4F2F2.8
F4F5.6F8
F11
Aiニッコール 50mm F1.4 S
F1.4F2F2.8
F4F5.6F8
F11
AFニッコール 50mm F1.4 D
F1.4F2F2.8
F4F5.6F8
F11
トプコール 58mm F1.4
F1.4F2F2.8
F4F5.6F8
F11


●[近景]D200+プラナー T* 50mm F1.4 ZF
 F1.4開放からD2Xに比べ周辺部まで像が良く整い、比較的解像力もある。やはり紫色のかぶりがありコントラストがやや悪いがD2Xの画像よりはかなり良い。F2に絞ると色かぶりが消えてコントラストが向上して、シャープなイメージの画像となるが、周辺部はまだ少し甘い。F2.8では周辺部の像もほぼ整い、画面全体がとてもシャープになる。絞りF4がさらに周辺部が良くなり、F5.6が最良のイメージでそれ以上絞っても変化はほとんどない。

●[近景]D200+Aiニッコール 50mm F1.4 S
 D2Xと似たイメージでF1.4開放から比較的色かぶりも少なく、周辺部まで像が整っている。F2で色かぶりが消えてコントラストが向上、中心部はシャープである。周辺部はまだ少し甘いが、F2.8まで絞るとそれもほぼ解消する。F4で最良のイメージとなり、それ以上絞っても被写界深度が深くなる以外の変化はよくわからない。

●[近景]D200+AFニッコール 50mm F1.4 D
 Aiニッコールとよく似た画像だが、F1.4の時にはD2Xの時より均質性が悪く、左端が流れている。F2.8で左端部以外はとても良い画像となる。左端の流れはF5.6で解消し全画面シャープな申し分のない画像である。しかしD2Xの時には認められなかった左端の劣化が現れたのが不思議だ。

●[近景]D200+トプコール 58mm F1.4
 これもD2Xとよく似た結果となった。F1.4とF2では紫色のかぶりがコントラストを著しく悪化させている。F2.8に絞るとコントラストが格段に向上して、周辺部まで良好な画面になる。F2.8ではこのレンズが4本の中で僅差で一番良いかもしれない。F4以上に絞ればさらに画面の均質性が増して申し分ない。

【近景 D200】
プラナー T* 50mm F1.4 ZF
F1.4F2F2.8
F4F5.6F8
F11
Aiニッコール 50mm F1.4 S
F1.4F2F2.8
F4F5.6F8
F11
AFニッコール 50mm F1.4D
F1.4F2F2.8
F4F5.6F8
F11
トプコール 58mm F1.4
F1.4F2F2.8
F4F5.6F8
F11


●[近景]D70+プラナー T* 50mm F1.4 ZF
 F1.4開放からかなり良い画像で、しかし周辺部が若干甘いのと瓦の部分の若干の紫色のかぶりが気になる。F2に絞るとコントラストが向上し、周辺部の描写も良くなる。F2.8まで絞ると色かぶりが完全に消えて、周辺部までまずシャープな描写となる。さらに絞ると周辺部がさらに良くなって、F5.6が最良そしてそれ以上絞っても変化がない。

●[近景]D70+Aiニッコール 50mm F1.4 S
 D2XやD200とよく似た結果で、F1.4開放では色かぶりのためにコントラストがやや悪いが周辺部まで像は整っている。F2でコントラストが良くなり、中心部はきっちりシャープ。周辺部でまずまずの良い画像である。F2.8でさらに周辺部が向上し、画面全体に申し分のない最良となるのはF4以上に絞った時である。

●[近景]D70+AFニッコール 50mm F1.4 D
 D2Xの時と同様に、上のAiニッコール 50mm F1.4Sとほとんど同じ結果となった。D200で認められた左端の像の悪化はまったくなかった。

●[近景]D70+トプコール 58mm F1.4
 これもD200と比較的似た結果となったが、右端部の像がやや悪い。またF1.4とF2では色かぶりでコントラストが悪い。F2.8でコントラストが急激に良くなるが、両端部特に右端部の甘さが目立つ。これを完全に解消するには、F8以上に絞る必要がある。

【近景 D70】
プラナー T* 50mm F1.4 ZF
F1.4F2F2.8
F4F5.6F8
F11
Aiニッコール 50mm F1.4 S
F1.4F2F2.8
F4F5.6F8
F11
AFニッコール 50mm F1.4 D
F1.4F2F2.8
F4F5.6F8
F11
トプコール 58mm F1.4
F1.4F2F2.8
F4F5.6F8
F11


近接撮影

 植え込みを約1mの距離で斜めに撮影した。画面の平坦性はわからないが、その代わり近接時のピントと特に前後のボケの変化がわかる。それぞれのレンズの特徴が良く現れると考えられる。

●[近接]DCS14n+プラナー T* 50mm F1.4 ZF
 F1.4開放ではピントの範囲は狭く、前後は大きくボケる。ピント面の像にややにじみがあってそれがシャープ感を損ねている。後ボケはややざらついた感じで光斑がやや目立つ。その後ろ側の光斑は中心方向ははっきりしているが外側はエッジがはっきりしない10日過ぎの月のような形である。前ボケはやや乱れてわずらわしい。ピントのあったところは少しにじんだ感じである。F2になるとピント面はにじみがわずかとなってシャープに見える。絞るにしたがいボケ量は減るが、F2.8からF4くらいの後ボケは素直な感じとなって好ましい。また前ボケも乱れがなくなる。

●[近接]DCS14n+Aiニッコール 50mm F1.4 S
 このレンズもF1.4開放ではピントのあった範囲は狭く、前後は大きくボケる。ピント面はプラナーよりシャープ感が強い。強い光があたるところにはわずかにハロなのかにじみがある。後ボケはわずかにざらついた感じで、後ろ側の光斑は放射方向にややいびつな楕円形になっているが外周方向のエッジは比較的はっきりしている。前ボケはややわずらわしい。ところがF2に絞ると前ボケの乱れが減って自然な感じとなり、同時に後ボケもざらついた感じがとれてなめらかな感じに変わる。さらに絞るとボケ量が減っていくが、全体的に癖がない素直な感じで好ましい描写だ。

●[近接]DCS14n+AFニッコール 50mm F1.4 D
 Aiニッコール 50mm F1.4Sときわめてよく似た結果である。

●[近接]DCS14n+トプコール 58mm F1.4
 このレンズもF1.4開放ではピントのあった範囲は狭く、前後は大きくぼける。他のレンズより後ピンになっているが、ピント面はシャープである。後ボケはすこしざらついた感じで、プラナーに似て後ろ側の光斑は中心方向ははっきりしているが外側はエッジがはっきりしない10日過ぎの月のような形でやや目立つ。前ボケはやや乱れてわずらわしい。ピントのあったところは少しにじんだ感じである。焦点距離がわずか長い分、ボケの量もわずかに大きいようだ。F2.8以上に絞ると光斑がほぼ円形となり、前後のボケはなめらかなな感じで好ましい雰囲気だ。

【近接 DCS14n】
プラナー T* 50mm F1.4 ZF
F1.4F2F2.8
F4F5.6F8
F11
Aiニッコール 50mm F1.4 S
F1.4F2F2.8
F4F5.6F8
F11
AFニッコール 50mm F1.4 D
F1.4F2F2.8
F4F5.6F8
F11
トプコール 58mm F1.4
F1.4F2F2.8
F4F5.6F8
F11


●[近接]D2X+プラナー T* 50mm F1.4 ZF
 D2XではDCS14nの中心部を取り出したような感じの画像である。F1.4開放では、DCS14n同様後ボケの光斑のいびつな形が目につく。ピント面の明るい部分のにじみも目立つ。これはF2でほぼ解消してすっきりする。バックの光斑はF2.8まで絞るとほぼ円形になり、同時に後ボケ全体が自然な感じとなる。前ボケはどの絞りでもあまり気にならない。

●[近接]D2X+Aiニッコール 50mm F1.4 S
 これもDCS14nの中心部をみているような画像であるが、F1.4開放から比較的後ボケの光斑の形が円形に近いため、比較的ボケはなめらかである。ピント面はシャープだが、明るい部分のまわりににじみが認められる。F2に絞ると光斑がほぼ円形になり、自然なボケで好ましい。ピント面のにじみは消えてすっきりシャープになる。さらに絞ると被写界深度が深くなっていくが、ボケは自然である。前ボケはどの絞りでもあまり気にならない。

●[近接]D2X+AFニッコール 50mm F1.4 D
 これもAiニッコール 50mm F1.4Sときわめてよく似た結果となった。この描写が現在のニッコール50mm F1.4レンズの特徴を示しているといえる。

●[近接]D2X+トプコール 58mm F1.4
 これもDCS14nの中心部を見ているような画像であるが、絞りによる光斑の形の変化がよくわかる。F1.4開放ではプラナーに似たいびつな光斑が目につくが、ボケはなめらかなほうである。ピント面はシャープだが、明るい部分の周囲ににじみが現れている。F2ではボケはあまり変わらず、F2.8で光斑がほぼ円形となり後ボケは自然な感じとなる。ピント面のにじみも消える。前ボケはどの絞りでもあまり気にならない。

【近接 D2X】
プラナー T* 50mm F1.4 ZF
F1.4F2F2.8
F4F5.6F8
F11
Aiニッコール 50mm F1.4 S
F1.4F2F2.8
F4F5.6F8
F11
AFニッコール 50mm F1.4 D
F1.4F2F2.8
F4F5.6F8
F11
トプコール 58mm F1.4
F1.4F2F2.8
F4F5.6F8
F11


●[近接]D200
 D200での撮影結果は、どのレンズもD2Xとほとんど同じイメージの画像となったため、個々の解説は省略する。

プラナー T* 50mm F1.4 ZF
F1.4F2F2.8
F4F5.6F8
F11
Aiニッコール 50mm F1.4 S
F1.4F2F2.8
F4F5.6F8
F11
AFニッコール 50mm F1.4 D
F1.4F2F2.8
F4F5.6F8
F11
トプコール 58mm F1.4
F1.4F2F2.8
F4F5.6F8
F11


●[近接]D70
 D70での撮影結果もD2XおよびD200とほとんど同じ結果となったため、ここの解説は省略する。レンズテストの再現性が確認できる。

プラナー T* 50mm F1.4 ZF
F1.4F2F2.8
F4F5.6F8
F11
Aiニッコール 50mm F1.4 S
F1.4F2F2.8
F4F5.6F8
F11
AFニッコール 50mm F1.4 D
F1.4F2F2.8
F4F5.6F8
F11
トプコール 58mm F1.4
F1.4F2F2.8
F4F5.6F8
F11


比較テストを終えて

 以前エプソンR-D1でツァイスのプラナー 50mm F2レンズをテストしたときにも書いたことだが、コシナは近年ではもっとも多数の35mm判50mm級標準レンズを設計・製造しているレンズメーカーである。最近までカメラメーカーの50mm級標準レンズは、1970年代頃に設計されたままのものが多かった。今回同時にテストしたAiニッコール 50mm F1.4はすでに書いたとおり1977年に登場し現在に至る。これに対してコシナは、最近約6年間でノクトン 50mm F1.5、カラースコパー 50mm F2.5、ヘリアー 50mm F3.5、ヘリアー 50mm F2、プラナー 50mm F2、ゾナー 50mm F1.5そして一眼レフ用のトプコール 58mm F1.4とプラナー 50mm F1.4を作っている。レンズタイプもガウス、ゾナー、ヘリアと様々で、その上非球面まで採用しているわけで、今標準レンズのことを世界で一番良く研究し理解しているメーカーではないかと個人的に思っている。

 今回のプラナー 50mm F1.4のテストを行って、名前こそ京セラ・コンタックス時代のプラナー 50mm F1.4と同じだが、性能は大きくリファインされていると感じた。それは特に絞り開放での解像力の高さと、近接撮影時の像の崩れの少なさからである。特にニッコールレンズと比較しても、このレンズは絞り開放からF2.8あたりの領域で高解像化され、またかなり周辺部まで画質が良い。その名の通り「平坦」な特性を持っている。つまりデジタル対応というこのレンズの宣伝文句は嘘ではないということだ。もう一つこのレンズの美点は他のレンズで見られたような画面の左右で画質が異なるということがなく、これは組み立て調整および出荷検査が丹念になされているということだろう。ツァイスの全数検査保証は、いわゆる「はずれ」をつかむ心配がなくなる点ですばらしいことである。

 ただすべてに完璧なレンズは存在しないわけで、このプラナーも開放からF2あたりの背景のボケには距離によってやや癖が現れることがある。それでも以前のプラナーは近接時に背景の光斑が円環ボケになったりしたので、それに比べれば改善されている。また近接時の絞り開放の描写は遠景や近景に比べてややソフトな印象である。もちろん少し絞れば非常にシャープになるので実用上問題は感じない。

 繰り返しになるが、今回のプラナー 50mm F1.4の性能の高さ、各部の機械工作の精度の良さは素晴らしいと言える。定価58,800円(専用フード付き)ということは、実売は4万円台が期待できるわけで、ツァイスというブランドの価値を含めても安いのではないか。ツァイスファンのみならず、ニコンファンもぜひ手元にこのレンズを1本置いて、その優れた性能を楽しんでみてはいかがだろうか。



URL
  コシナ
  http://www.cosina.co.jp/
  製品情報
  http://www.cosina.co.jp/seihin/co/zf-zs.html

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【試写レポート】コシナ カールツァイス T*プラナー50mm F2(2004/12/27)



根本 泰人
(ねもと やすひと)クラシックカメラの収集が高じて有限会社ハヤタ・カメララボを設立。天体写真の冷却CCD撮影とデジタル画像処理は約10年前から、デジカメはニコンE2/E900から。趣味は写真撮影、天体観測、ラン栽培、オーディオ(アンプ作り)等。著書「メシエ天体アルバム」アストロアーツ刊ほか。カメラ雑誌、オーディオ雑誌等に寄稿中。 http://www.otomen.net
http://www.hayatacamera.co.jp

2006/12/26 02:59
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