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[2009/02/20]

【第7回】ジャンクカメラで作るレンズバリア内蔵キャップ
[2009/01/26]


2008年

【第6回】マクロモードを生かす内蔵ストロボ用ディフューザー


コンパクトデジタルカメラがマクロに強い理由

フィルムカメラのGR1v(上)とデジカメのGR DIGITALとは、ほぼ同じボディサイズだ
 デジタル一眼レフでマクロ撮影する場合、専用のマクロレンズに交換する必要がある。それに対し、いまどきのコンパクトデジタルカメラは、たいてい5cmくらいまで寄れるマクロモードを装備している。一眼レフカメラではちょっと気合を入れる必要のあるマクロ撮影が、コンパクトデジタルカメラでは簡単気軽にできてしまう。

 コンパクトデジタルカメラはなぜマクロに強いのか? その理由をちょっと考えてみた。ポイントは「スケール」の概念である。スケールとは、プラモデル好きな人にはピンと来るかもしれないが、縮尺のことである。プラモデルはオートバイなら1/6、自動車なら1/24、戦車なら1/35と言うように、だいたいのスケールが決まっている。この概念をデジタルカメラに当てはめるとどうなるか?

 例えば、ぼくが普段使っているリコー「GR DIGITAL II」のレンズの広角端は「ライカ判換算28mm相当」の画角だが、実焦点距離は5.9mmである。そして28÷5.9=4.7(小数点第2位以下は四捨五入、以下同じ)となる。つまり、28mmレンズ搭載のフィルムカメラの名機リコー「GR1」を1/1スケール(実物大)だとすると、GR DIGITAL IIはその1/4.7スケールのミニチュアカメラと言うことになる。両機はボディの大きさにさほど違いは無いものの、「カメラ部分」を比較するとそれだけスケールの差があるのだ。

 ところで、フィルムカメラのGR1の最短撮影距離は30cmだが、その数値をGR DIGITAL IIの1/4.7スケールに換算すると、6.4cmとなる。GR DIGITAL IIはレンズ前1cm(実質)からピントが合うが、CCDからの距離はまさに6cmくらいである。レンズがミニチュア化されたコンパクトデジタルカメラは、最短撮影距離もミニチュア化され、必然的にマクロに強くなるわけだ(もちろんメーカなりの工夫はあるだろうけれど)。

 さらに言えば、1/4.7スケールのカメラで覗いた世界は、1/4.7スケールの人間(妖精?)の視界の再現であり、全てのものが4.7倍に拡大して見える世界でもある。例えば1/4.7スケールのカメラで8cmのバッタを撮影した場合、それはライカ判フルサイズのカメラで38cmのネコを撮影したのと同じ臨場感を得ることができる。つまり昆虫の小さな世界を、われわれ人間の世界の延長上として表現することが可能になるのだ。


画面サイズとレンズ焦点距離を比較すると、GR DIGITALはGR1の1/4.7スケールのミニチュアカメラであり、それだけ「小さな世界」を撮るのに適している

マクロモードを活かす工夫

これは、ぼくが初めて試作したコンパクトデジカメ用ディフューザー。適当な大きさにカットしたトレーシングペーパーを、マジックテープで「Caplio R3」ボディに止めている。散光効果はあるものの収納が不便で、ここから徐々に改良を加えることになった
 そのようなコンパクトデジタルカメラの特徴を活かし、ぼくは「路上ネイチャー」と言うコンセプトのもと、身近な路上で見かけた昆虫などを撮っている。その作例は最後に見ていただくとして、肝心なのは屋外のフィールドで昆虫などを撮影する場合、手ブレや被写体ブレを防ぐためにストロボを焚くことが欠かせない、という点である。

 しかしコンパクトデジタルカメラのマクロモードで内蔵ストロボを焚くと、露出オーバーになったり、被写体の影がきつく出て不自然になったり、レンズの影で画面の一部がケラレたりしてしまう。もちろん、そういう不具合の出方はカメラの機種によって異なるし、同じカメラでも撮影距離により変化する。いずれにしろ、コンパクトデジタルカメラのマクロモードをより有効に活かすには、何らかの工夫が必要なのだ。

 一眼レフのマクロ撮影用には、外付けのマクロストロボが用意されている。しかしこれはコンパクトデジタルカメラには一部の機種にしか装着できないし、装着できたとしても、そんな大柄なストロボと組み合わせて使うのはナンセンスに思えてしまう。

 そこでぼくは、コンパクトデジタルカメラの内蔵ストロボの発光部に、ディフューザー(散光板)を装着している。もちろんそんなディフューザーは市販されてないので、これまでいろんな形状のディフューザーを、文字通り切り貼りしながら試してきた。

 一番簡単なのが、半透明のトレーシングペーパー(文具店などで売っている)を被せる方式だ。しかしこの方式はディフューザーを使わないとき、取り外してバックなどカメラとは別の場所に収納しておかなければならず、面倒だ。何といってもコンパクトデジタルカメラの「手軽にすぐ写せる」という利点をスポイルしまう。それで、「ディフューザー不使用時にもカメラ本体に装着したまま、しかも携行のジャマにならない」というコンセプトを目指し、徐々に改良を重ね、最近になってようやく理想形に近づいてきた。

 以下、ぼくが使用しているディフューザーの作り方とその効果を、デジタルカメラの機種ごとに紹介したい。今回はどれも、カメラ本体が元の状態に復帰できる可逆改造である。また、ディフューザーの効果を確認するため、フィギュアを使ったテスト撮影もしてみた。



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※作例のリンク先は、長辺を1,024ピクセルに縮小した画像となっております。






機種別ディフューザー工作法

●R10

 リコー「R10」はコンパクトでフラットなスタイルなので、これをなるべく崩さない事をテーマに、ディフューザーを考えてみた。実のところ、「Caplio R3」から歴代Rシリーズの機種ごとに、色々な形状のディフューザーを試しており、徐々に小型化シンプル化して、今回紹介する形状に至った。


ディフューザーの素材には、ホームセンターで売っていた1.5mm厚の乳白色のアクリル板を使う。まずはこれを幅30mmでカットする。普通のカッターではなく、専用の「Pカッター」を使うのがコツ さらにカットして15×30mmの板にする

カットした板の4隅をヤスリで丸く削ると、見栄えがよくなり手にも優しくなる。とは言え、実用品なのでそれほど神経質に仕上げる必要は無い 角の適当な位置に2mmほどの穴をキリで開ける。穴の表裏からキリでグリグリすると、きれいに仕上がる

カメラ本体とアクリル板のそれぞれにマジックテープを貼る。マジックテープは白と黒が売っていたので、見栄えがいいようにそれぞれ使い分ける アクリル板の穴と、R10のストラップ穴に紐を通すとでき上がり。このままアクセサリーとしてぶら下げていても、それほどジャマにならない形状だ。紐は「GX100」のキャップ付属品を流用したが、似たものなら何でもいいだろう

ディフューザーを使うときは、ストロボ発光部にかぶせるように貼り付けるだけ(もちろん取り外しも簡単)。ディフューザーを装着したままでも形状はフラットなので、そのままポケットに入れることもできる

【配光テスト】


テスト撮影には、ぼくの作品「60倍の惑星」シリーズで使用したフィギュアを被写体として使用した。マットで使用した方眼紙から大きさが想像できるだろうが、身長約3cmである。まずはディフューザーなしで、ズームの広角端での撮影。画面左下がレンズの陰でケラレてしまい、被写体に強めの影が斜めに出て不自然だ ディフューザーを装着すると、画面左下のケラレや被写体の影は、幾分やわらかくなり目立たなくなる。この差は小さいようでいて、実際の撮影では意外に大きな差となって現れる

次に望遠端でも比較してみた。まずはディフューザー無し。被写体からストロボ発光部まで距離があるため、広角端よりは影の出方が自然に感じられる こちらはディフューザー有り。少し影が柔らかくなったようだが、それほど差はないように思える。もっと大型のディフューザーを装着すればさらに大きな効果が期待できるが、それではもとのデジカメの機動性をスポイルしてしまう




●GR DIGITAL II

GR DIGITALシリーズは初代から、リトラクタブル式ストロボが採用されている。それでディフューザーも折りたたみ式にしようと色々考え、かなり悩んでしまった。しかし結局は、R10の方式を応用したシンプルな取り外し式にした。


ディフューザーの素材は、R10用と同じ1.5mmの乳白色アクリル板で、マジックテープでカメラボディに装着する方式も同じ。しかしカメラの形状に合わせたアレンジを加えている ディフューザーの装着状態。アクリル板の角を斜めにカットしたのは、レンズに当たる部分の「逃げ」である。R10に比べストロボ発光部とディフューザーが離れているので、散光効果もそれだけ期待できる

R10と異なり、カメラ収納時はディフューザーを外す必要がある。しかしこれも小さなパーツなので、さほど不便は感じない。紐はGX200のレンズキャップ用を流用している

【配光テスト】


まずはディフューザー無しでのテスト撮影。画面右下がレンズの影で大きくケラレてしまい、非常に不自然だ ディフューザーを装着すると、レンズのケラレも無くなり、被写体の影も柔らかくなった。R10用ディフューザーに比べ、ストロボ発光部からの位置が離れており、拡散効果もそれだけ高い




●GR DIGITAL II+GW-1

 GR DIGITAL IIに、0.75倍の専用ワイドコンバージョンレンズ「GW-1」を装着すると、21mm相当の超広角になる。しかしこのワイコンは、カメラ本体から大きく突出するため、GR DIGITAL II用に製作したディフューザーでは効果がほとんど無く、マクロ撮影では画面が大きくけられてしまう、そこで、ワイコン専用にまた別のディフューザーを作ることとなった。


素材となるのはこのタッパーで、100円ショップで一番小さいものをセレクトした。右に並べたGW-1より外径が1回り大きいところがミソ まずは厚手のトレーシングペーパーをこんな形状にカットする。円のサイズや切込みの形は、現物合わせの適当である

カットしたトレーシングペーパーは、このようにタッパーの内側に押し当てる。タッパーの素材は透明度が高すぎるので、トレーシングペーパーでストロボ光を拡散させるのだ トレーシングペーパーはタッパーの内側に両面テープで貼り付け、さらに4カ所にマジックテープを貼る

さらに外側にも1カ所マジックテープを貼る ワイコン周囲の4カ所と、アダプタの1カ所にもマジックテープを貼る。これがディフューザーとの接続部になる

完成したディフューザーをカメラに装着してみる。21mm相当の超広角に対応するため、大きさもさることながら、ストロボ発光部を包み込むようなお椀形をしている しかもこのディフューザーは、不使用時にはワイコンのレンズキャップにもなる。この場合、レンズ周囲とタッパーの内側のマジックテープが、接続部になる。大きなパーツを無駄なく収納する場合、機能を兼用させると合理的だ

【配光テスト】


まずはディフューザーなしでのテスト撮影。案の定、レンズの影が大きく写り込んでしまった 次に、カメラ本体用の小型ディフューザーを装着してみた。しかし大きさが足りずにほとんど効果が無い

最後に、ワイコン専用ディフューザーを装着したところ、レンズの影が消え、被写体に照明が当たるようになった。ただし照明にはちょっとムラがあり、これは内蔵式ディフューザーの限界だろう。この特性を理解したうえで使いこなしたい




●GX200

 リコー「GX200」の内蔵ストロボは、先代の「GX100」用に作ったディフューザーをそのまま利用している。GX200はGX100より様々な改良が加えられたが、ボディ形状は基本的に同一で、アクセサリー類も共用できる。そこで今回はもうひとつ同じディフューザーを作りながら、その過程を紹介しようと思う。


ディフューザーの素材には、GX100、GX200兼用のレンズキャップ取り付けリングを使用する。このリングはボディにワンタッチで着脱ができるのが特徴だ まず、リングの外径48.6mmに合わせ、乳白色アクリル板を円形にカットする。まずはディバイダー(コンパスの両端に針が付いたような工具)で、同じ円を何度もなぞるように筋を掘ってゆく

丸い筋が適当に深くなったら、さらにPカッターでご覧のような切れ込みを入れる そして、余計な部分をパキパキと折り取ると、円形のアクリル板になる。残ったバリは、ヤスリで削り取る(以上の円盤の切り出し方は、ぼくが適当に思いついたやり方で、もっと合理的な方法があるのかもしれない)

次にリングの表面に5cm幅の両面テープを貼り、カッターナイフで内径と外形に切れ込みを入れる 裏紙をはがすと、リング状の両面テープだけが残る

そしてリングにアクリル板を接着し、ご覧の位置にマジックテープを貼る。接着に両面テープを使用したのは、元に戻せる可逆改造にしたため。それにこだわらなければ、エポキシ系接着剤でしっかり固定しても良いだろう カメラ本体の「RICOH」の銘板部分にもマジックテープを貼る。ここがディフューザーとの接続部になる

ディフューザーはこんな感じで装着する そしてこのディフューザーも、レンズキャップ兼用である。レンズキャップとしての着脱は、レンズ脇のボタンのワンタッチで行なえる。余談だが、昨年GX100用に製作したこの「キャップ兼ディフューザー」をリコー企画部の方にお見せしたところ大変にウケていただき、その後「GX200用の自動開閉キャップLC-1のヒントになりました」と言われ、驚いてしまった。こういうアイデアの連鎖は、とても面白いと思う

【配光テスト】


広角端のディフューザー無しでは、画面下がレンズの影で大きくケラレてしまい、全く実用にならない しかしディフューザーを装着するこのとおり。レンズのケラレも無くなり、被写体の影もほとんど目立たない

望遠端でもテスト撮影してみた。まずはディフューザー無しだが、影の出方もそれほど目障りでなく、なかなか優秀だ ディフューザーを装着すると被写体の影はさらに柔らかくなる。しかしこのディフューザーは、望遠より広角で使ってこそ効果があるようだ




作例

●R10


泥を団子状に丸め、巣の材料として持ち去ろうとしているスズバチ。場所が駐車場であることを示すため、低いアングルで背景に車を入れてみた。こうした決定的瞬間が散歩のついでに撮れるのが、コンパクトデジカメのスゴイところである コスモスの花に止まるツユムシ。植物に止まる虫は風で揺れやすく、ブレを抑えるためにもストロボの照明は欠かせない。R10は露出補正と、ストロボ調光補正が別に行なえる点が便利。この写真は曇り空を表現するため、露出をマイナス補正した

選挙ポスターの額の生え際に止まったオンブバッタ。この被写体がどう面白く表現できるか色々試しながら撮った。R10の「AFターゲット移動」を使い、画面端のオンブバッタにピントを合わせている 住宅地の一角に生えていたクヌギの葉に、1cm足らずの小さなゾウムシが止まっていた。夕方で背景が暗く、絞り開放で撮影したが、かえって小さな虫の存在が際立った。R10のFnボタンに「最小絞り切り替え」を登録すると、実質上絞り優先AEとして使えて便利だ

●GR DIGITAL II


このオオカマキリは、GR DIGITAL IIを入手したばかりの2007年11月に撮影した。なのでディフューザーは未装着だが、カマキリくらいの大きの虫だと、撮影にはあまり問題ないと言える。逆光のシチュエーションなので、ストロボ照明がなければ被写体は黒つぶれしてしまうだろう チャバネセセリは地味ながらチョウの1種。アベリアの花に止まっているところを撮ったつもりが、飛び立つ瞬間が写っていた。GR DIGITAL IIはストロボプリ発光のタイムラグがちょっと長めで、おかげでこんな偶然がたまに起きる

市民農園のジョウロに止まっていたクロヤマアリ。実は雨の中、カサを片手に撮影したが、こんな使い方ができるのもコンパクトデジカメならではだろう 夕方近く、ノゲシに止まって休んでいたヤマトシジミ。この草むらはマンション建設予定地なので、やがて消える運命にある。露出は空の色を出すため、マニュアルで暗めに設定。ストロボはオートしかないが、ディフューザーの効果もあって自然な照明となっている

●GR DIGITAL II+GW-1


GR DIGITAL IIのワイコン用のディフューザーはこの記事を書きながら製作したので、あまり作例が無い。とりあえず近所の市民農園でウラナミシジミの飛翔を狙ってみたが、何とか撮影できた。ピントはマニュアルでレンズ前約5cmの位置に固定している このウラナミシジミも止まっているところを撮ったつもりが、ストロボのタイムラグのおかげで飛び立つ瞬間が写っていた。よく見ると羽の1部が透けたように写っているが、これはストロボの閃光時間と、シャッター速度の違いによる現象。まぁ描写の「味」と前向きに解釈しよう

ツワブキの蜜を吸うハラナガツチバチは、かなりおとなしいハチなのでレンズを近づけても平気である。ピントはマニュアルで固定し、ハチの動きと背景の入り方のバランスを見ながら、シャッターを切る ワイコン無しのGR DIGITAL IIで撮ったのと同じ個体のヤマトシジミを、反対方向から撮影してみた。このワイコン用ディフューザーは、画面左上に照明が強めに当たる特徴がある。そこでその部分に草の茎などが入らないよう、構図を調整しながら撮影してみた

●GX200


GX200を入手して間もないころの写真。地面にいたゴマダラカミキリの飛び立つ瞬間を狙ったら、レンズに向かってきたのでビックリしてしまった。ピントはマニュアルでレンズ前約10cmに固定したが、カミキリムシが近づき過ぎてピンボケに。しかしこれはこれで面白い写真だと思う これは東京ではなく、岡山市に立ち寄った際の写真。街中の植え込みに止まっていたシオカラトンボのオスに、ゆっくりと近づきながら撮影。トンボの羽の向こうに透けて見える街並みが、なんとも不思議な世界に見える

GX200で8cmのバッタを撮ると、ライカ判フルサイズのカメラで38cmのネコを撮った写真と、同等の臨場感で写る計算になる。これは深夜、友人宅のアパートの廊下にいたショウリョウバッタのメスだが、なかなかの存在感で写っている 秋になると街のあちこちで見られるツマグロヒョウモン。これはランタナの蜜を吸っているメス。逆光の中、チョウの姿がストロボ光で浮かび上がる。ぼくのGX200はピントも露出もストロボ調光もマニュアルで固定し、そこから微調整しつつ撮影する

まとめ

 ストロボ発光部にトレーシングペーパーを被せ、マクロ撮影用のディフューザーにする方法は、20年以上前に昆虫写真家の海野和男さんが始められた。しかしフィルムカメラの時代は、自作したディフューザーの効果を確認するだけでも、非常な時間と手間が掛かった。

 ところが、デジタルカメラは撮った直後に画像が確認できる。だからディフューザーの効果もリアルタイムで確認しながら、気軽に試行錯誤できるようになった。今回の記事を参考に、それぞれが自分のカメラや撮影用途に合わせ、いろいろなディフューザーを工夫すると楽しいだろう。

 ぼくははじめに書いたように、「ディフューザー不使用時にもカメラ本体に装着したまま、しかも携行のジャマにならない」と言うコンセプトのもと、改良を重ねてきた。その結果、ディフューザーとしての効果は、必ずしも十分とは言えないものになったかもしれない。その代わり、散歩のついでに気軽に虫が撮れるデジタルカメラに仕上がり、おかげで「路上ネイチャー」の撮影コンセプトが実現できたのだ。

 このように機材を工夫することも、写真を撮ることも、“コンセプト”をハッキリさせると良い結果に結び付きやすい。もちろんコンセプトは始めから明確に決める必要はなく、試行錯誤してるうちに徐々にハッキリしてくることもある。

 今回は、ちょっと季節を外した昆虫撮影の記事になってしまったようだが、実のところ11月から冬に掛けても意外に多くの昆虫が生きている。「寒い時期には虫はいない」と言うのは「都会には虫はいない」というのと同じ先入観である。そういう様々な先入観を外せば、何気ない日常に多くの発見が生じ、それが新たな写真のコンセプトにつながったりするのだ。


【告知】

 香川県琴平町で開催されるアートイベントに、糸崎氏が「フォトモ」などの作品を出品します。

  琴平プロジェクト「こんぴらアート2008・虎丸社中」
  開催日:2008年12月12日(金)、13日(土)、14日(日)

  糸崎公朗によるアーティストトーク「非人称芸術とブリコラージュ」
  開催日時:12月13日(土) 午後2時より




URL
  バックナンバー
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/labo_backnumber/
  こんぴらアート2008・虎丸社中
  http://www5a.biglobe.ne.jp/~Arte2000/exhibition/08kokaido_-event.htm



糸崎公朗
1965年生まれ。東京造形大学卒業。美術家・写真家。「非人称芸術」というコンセプトのもと、独自の写真技法により作品制作する。主な受賞にキリンアートア ワード1999優秀賞、2000年度コニカ ミノルタフォト・プレミオ大賞、第19回東川賞新人作家賞など。主な著作に「フォトモの街角」「東京昆虫デジワイド」 (共にアートン)など。 ホームページはhttp://www.itozaki.com/

2008/11/13 00:02
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