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【Case-33】飛野有生莉の場合
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尊敬する人は誰? って聞かれたら、間違いなくお母さんを最初に挙げる。うちの母は地元で子さな会社を経営している女社長。その傍らでサッカーの審判もしていて、しかもかなりハイレベルな試合まで行なうらしい。あたしが小学生のときからずっとそういう生活をしてるから、もう10年くらい、休日も返上して頑張ってる。そのうえうちのパパは長い間東京に単身赴任してるので、家事をこなすのもお母さん。
あたしも弟も予備校やら部活やらで毎晩家に帰るのも遅かったけど、お母さんも毎晩遅くまで仕事してたから、家族が家に揃うのはいつも夜の10時過ぎとかで。うちは家族みんなが仲良しで、みんな揃ったらリビングでグータラしながらくだらない話もいっぱいしたっけ。忙しくてあんまり家にいれなくても家族がなんだかんだまとまっていたのは、お母さんの力なんだろうなって思う。
小さいときからそんなお母さんを見てたから、やっぱ働く女ってかっこいいなって。どんなに忙しくても美を怠らずにいつまでも若々しいあたしの母は素敵だと思う。お酒が大好きな彼女は、家の倉庫の半分を焼酎やら梅酒やらで占領して、酒蔵と化している。疲れた夜にひとりで晩酌するのが、ストレス解消の秘訣なんだって。
大学生になってからは晩酌にお付き合いできるようになったから、お母さんが酔いながら人生の話とか、あたしや弟の話とか、未来の話とかしてくれて楽しい。普段は女友達みたいで、まじめな話なんかしないからすごく新鮮で。だけど「あんたが頑張ってるのはわかってるから、辛い事とがあったらいつでも帰ってくるんだよ」って言われたとき、2人で一緒に泣いちゃった。お母さんの子でよかったよ、ありがとう。いつまでも輝いてる女性でいてください、目標にしてるからね。
あたしに足りないものって、「女度」だと思う。女らしくいること、女らしく生きてゆこうとすること、そんな考え方が嫌い。「女は家庭にいればいい、男が養えばいい」なんて、かっこ悪いじゃん。将来、結婚もしたいし子供もほしいし幸せな家庭にしたいけど、お母さんが家事をすべてこなしてずっと家にいれば幸せってわけじゃないと思うの。それよりもあたしは、自分も夫も外で働いていても、自立した子どもが育つような家庭にしたい。それでも幸せな家はいっぱいあるしね、実際あたしのお母さんを見てればわかる。
ともかく、あたしの中にフェミニンって概念がなくって、服だってコンサバ系とかお姉系とか着れば男の子にももてるだろうし、髪だって長くてふわふわしてればもっとかわいらしくなるんだろうけど、目指している女ってのはそれじゃないんだよな。守ってあげたくなるような女の子じゃなくて、憧れられるような女性になりたいの。世の中の男性たちにはウケはよくないだろうけど、それでもあたしはあたしらしくかっこよく生きてゆけたらいいな、って。
いつからこうなっちゃったんだろうって考えたら、それはもう幼いときからの環境のおかげかな。実家には裏山があって、小さいときは猿みたいに山で遊んだり。近所には男の子しかいないし、兄弟も弟だったから、気付いた時には男の子みたいになってた。しかも周りで自分が1番強かったと思う(笑)。小学校は私服登校の学校だったんだけど、スカートが大嫌いで6年間1度も履かなかった。卒業式もパンツスーツで出て、周りの子たちにも「アイリって男の子みたいだね」って言われてて。
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でも本当はクラスに好きな男の子もいたし、髪も伸ばし始めたりして少しだけ女の子を意識してたんだよね。でも長年付いたイメージってなかなか一新できないし、いきなり変わった自分を見せるのが恥ずかしかったのかもしれない。中学生になって、制服を着て、あたしがお洒落したいと思い始めたのはこの頃で。スカートも履くし、髪も染めて、初めてメイクして。ちょっとでもかわいく見られたいとか思ってた。でもそれでもピンクでふりふりな女の子を見せたいわけじゃなかった。
高校生になり、大学生になり、おしゃれするのは大好きだけど人と同じことはしたくない。今だってピンク色の服とかには抵抗があるし、ヒールの高い靴だってほとんど持っていない。だけど決して女を捨てているわけじゃなく、あたしが勝負したいのは外面的な女らしさだけじゃなくて、自分自身をしっかり持っていておしゃれをしても素敵だなって思われるような女性。かわいいものや綺麗なもの、甘いものや恋の話しも大好きだけど、ただの馬鹿女って思われたくない。本当の意味での素敵な女性になりたいな。
「アイリって、かわいい名前だね。」って昔から何度も言われてきた。確かに変わった名前ではあると思う。「北斗の拳」って漫画があって、あたしが生まれる前くらいかな、流行した漫画で、コテコテの男物。パパとお母さんが大好きで、子どもの名前はその主人公(もちろん男)から名づけようとしか考えていなかったらしい。全くふざけた親だなといつも思ったり。で、生まれてきちゃったのが女の子。かなり焦った末、それでも「北斗の拳」の中から名づけたかったから、「アイリ」が選ばれた。
「アイリ」って、主人公の友達の妹というなんとも微妙な役柄のキャラクターで、盲目の美女なんだよね。もっと他に目立つキャラクターはいっぱいいて、どうしてヒロインの名前じゃないのかって聞いたことがあったの。お母さんの答えは「ヒロインは不幸すぎるの。アイリは最後に目が見えるようになって幸せになれるんだよ。だからあんたはアイリ。」って。あたしはすごく素敵な名前を頂いたんだね。ふざけた名前だよなって思ってたけど、それを聞いてからは嬉しくなっちゃって、今では自分の名前が大好き。だからこそ名前負けしないような素敵な女性になりたいの。ちなみに2年後に生まれた弟の名前はもちろんケンシロウです(笑)。
大学1年生の有生莉ちゃんはメチャメチャ元気な女の子。打合せで会った日に早速、その場で撮影を始めたが、その持ち前のど根性でサクサクと動いてくれた。おかげでメインカットの撮影日もとてもスムーズに撮影が進行していった。一度説明をしたら、ちゃんと理解してくれるので余計な心配をしなくてもいい。短期間で多くのカット数をこなさなければならないこのシリーズでは、とても助かった。1年後くらい経って、有生莉ちゃんの「女度」がアップした頃にまた続編を撮影してみたい。
前回は普段使っている70~200mm ISのF2.8Lと、買ったばかりのF4Lの両方を使ってみたが、今回はF4Lのみを使用。持ち運び時もそうだけど、三脚を使用しないボクにとってはやはり何といっても撮影時に振り回すのに軽いというのが助かる。これまでのF2.8Lに比べて重量が約半分しかない。開放値が1段落ちるが、昼間の撮影では殆ど不便はない。先週号のラストカットは室内で開放のF4、シャッター速度は1/8秒、焦点距離200mmだが、まったくブレていない。もちろん三脚ナシの手持ち撮影だ。
手ブレ防止機能を使っていろんな条件で、どのくらいまでが自分のブレない限界なのか挑戦してみると面白いかもしれない。発売日の翌日が誕生日だったので、自分へのプレゼントのつもりで買ったみたのだが、思わぬ拾いモノをした気分だ。今後もさらに使ってみたいと思う。
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使用機材
Canon EOS 5D
EF 24mm F1.4L USM
EF 35mm F1.4L USM
EF 50mm F1.4 USM
EF 85mm F1.8 USM
EF 135mm F2L USM
EF 70~200mm F4L IS USM
RICOH GR DIGITAL
Sandisk Extreme III
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■ URL
バックナンバー
http://dc.watch.impress.co.jp/cda/haruki_backnumber/
HARUKI (はるき)1959年広島市生まれ。九州産業大学芸術学部写真学科卒業。広告、雑誌、音楽の媒体でポートレートを中心に活動。
1976年 個展「FIRST」を皮切りに、多数の個展、グループ展を開催。1987年朝日広告賞グループ入選、表現技術賞受賞。1991年パルコ期待される若手写真家展選出。コラボ作品がニューヨーク近代美術館に、「普通の人びと」シリーズ作品が神戸ファッション美術館に永久保存。
2005年に個展「Tokyo Girls♀彼女たちの居場所。」を東京 渋谷、2006年に京都で開催。
http://www.harukiphoto.com/ |
2006/12/11 00:00
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