特別企画
ラップフィルムで宙玉(そらたま)を作ろう!
玉の中に浮かぶ不思議な世界を楽しむ
2018年8月7日 20:04
お菓子の空き箱を使った宙玉工作を初めて紹介したのは、このデジカメ Watchだった。おかげさまで今でも宙玉工作を楽しんでくれている人たちがたくさんいるが、今回は夏休み向けの企画として、さらに簡単にできる宙玉の工作方法を思いついたので紹介してみたい。
宙玉とは?
宙玉は私が2009年に考案した撮影方法だ。フィルターに穴を空けてそこに透明球を接着する。透明球に映る光景を接写することにより、透明な玉が空中に浮かんでいるような写真を撮影することができる。接写なので玉にピントを合わせるとバックがきれいにボケてくれるというのがポイントだ。
現在は製品化され、ガラスのフィルターに光学ボールレンズが取りつけられているが、工作する場合にはアクリル板にアクリル球を接着する方法を紹介してきた。ただしアクリル板に丸く穴を空けるというのもそれなりに技術を必要とするので、今回はラップフィルムを使う方法を紹介したい。
ラップフィルムというのは食材や料理を包んだりする時に使う透明フィルムのこと。これを2枚使って透明球を挟み込むというのが今回紹介する方法だ。普通に玉を挟むと放射状にシワが入ってしまうので、シワが入りにくい方法を今回考えてみた。
まずは材料を揃えよう
工作に使うのはチップスターの空き箱だ。これを使うのには理由がある。底の部分に67mm径のステップアップリングがぴったりとハマるのだ。だからたとえばレンズのフィルター径が52mmだったら、52mm→67mmのステップアップリングを使えば、簡単にレンズに取りつけることができる。他の製品ではなくチップスター指名買いでお願いしたい(笑)。
透明球は20mm程度のアクリル球がおすすめ。2枚のラップフィルムで挟んでいるだけなので、あまり大きいもの、重いものはズレてきてしまうのでおすすめできない。
画面上で透明球を大きく撮影したいので、マクロレンズ、クローズアップレンズ、接写リングなどを使い接写ができるようにしたい。製品版の宙玉では焦点距離24〜50mm(35mm判換算)のレンズを推奨しているが、これは望遠系のレンズの場合筒を長くする必要があり、金属製の筒を延長することによるレンズへの負担を減らしたいのとコストダウンを考えてのことだ。
ただし今回の工作では紙の筒を使うので重さもコストもあまり気にする必要はない。たとえば焦点距離60mmのマクロレンズなんかは非常に使いやすい。ただし90mmぐらいになってくると被写界深度が浅くて玉のエッジがはっきりしないとか、背景の画角が狭くなってしまうという問題も出てくる。といっても、決まりごとはないので手持ちのレンズで試行錯誤をしてみて欲しい。
実際の工作
菓子箱で使うのは取り出し口側と底側で、間の部分はカットして使わない。この筒の長さは「透明球がちょうどいいサイズ」になるように自分の感覚で調整すればいいのだが、調整の方法やレンズによる事例紹介は宙玉サイトにあるのでどうぞご参考に。
カットした筒の取り出し口側と穴を空けたフタにラップフィルムを張る。そしてこの2枚で透明球を挟み込むのだ。以前考えた方法ではフタを使わずに取り出し口に2枚のラップを張ったのでシワが寄ってしまったのだが、2枚を分けて張ることによりシワが出にくくなった。
そして筒の底を抜き、ステップアップリングを取りつける。筒の底側と取り出し口側をテープで連結すれば完成。もしも長さの調整が必要な場合はカットしたり、余った筒を継ぎ足して調整してみてください。単焦点レンズの場合は微妙な調整が必要になるが、ズームレンズの場合はズーミングで調整することが可能。
また接写ができない場合はピントが合う所まで筒を延ばし、あとでトリミングするという方法もある。まずは手持ちの機材でチャレンジしてみよう!
カッターを使って筒を三分割する。取り出し口側と底側を使用。中間部分は使わないが、あとで長くしたい時などに利用できる。
お菓子の空き箱を切った状態。フタと底は抜いておき、筒状にして使う。
筒よりも大きめにカットしたラップフィルムをテープで止める。対角線上に張っていき、シワが寄らないように注意する。
フタにも同様にラップを張り、筒側のラップの中央に透明球をのせる。
フタに張ったラップフィルムを上からかぶせて透明球を挟み込み、テープを使って固定する。
筒の底側にステップアップリングを取りつける。かなりきついので、若干筒の底を内側に曲げて押し込むといい。
部品の並び順。ラップフィルムで透明球を挟んだを筒に取りつけ、ステップアップリングでレンズに取りつける。
筒同士をテープで留めて完成。仮止めの状態でピントが合うかどうかを確認し、オーケーであればしっかりと固定する。
どんな写真が撮れるのか?
実際にどんな写真が撮れるのか? 以下はこのラップフィルム宙玉を使って撮影した作例だ。
カメラはソニー「α6500」でレンズは「E 30mm F3.5 Macro」。レンズのフィルター径が49mmなので、49→67mmのステップアップリングを使用した。マクロレンズがない場合は、普通のレンズに接写リングを取りつけることでピントを合わせられるようになる。
宙玉写真では絞り値が重要。絞ると玉のエッジがはっきりするが、バックがあまりボケなくなってしまう。これは絞りF16。
風車をいい感じでブラしたかったので、少しシャッタースピードを遅くした。シャッタースピード1/40秒、絞りF11。
宙玉はバックに光るものがあるときれい。玉の内側だけでなく背景の感じを意識しながら撮るといい。絞りF11。
広がる宙玉の世界
宙玉が誕生してもうすぐ10年。いろんな工夫をして撮ってくれている人たちがいる。自分が思いつかなかった方法で展開してくれていると嬉しくなる。
PHOTO如庵さん
玉をたくさん使って撮影している。最初は仕組みがわからなかったが、製品版の宙玉を使い、そこに大小の玉がプラスされている。宙玉と、もう一枚透明のフィルターの間に、玉を入れて自由に動く状態にしてある。この方法であれば玉の配置を変えることもできるし、自然な感じで撮影することができる。すごくおもしろいアイディアだ。
複数の玉を使ってのクラゲの撮影。アトランダムに配された玉のイメージがおもしろい。
玉は動かすことができる。また玉ごとにイメージのトリミングやピントが変わるというのがポイント。
岡空圭輔さん
以前から水中で宙玉写真を撮ってくれているダイバー。その写真は改良を重ねて、どんどんクオリティーが上がってきている。鮮やかな海の中の被写体は実に宙玉映えする。カメラは水中ハウジングの中に宙玉一式を収める方式だ。
キンギョハナダイ。岡空さんの作品は宙玉サイトにもまとまっている。
ムラサキハナギンチャク。バックの触手のボケ具合がいい。
LEONさん
宙玉は天地が逆さまに見えるため、花火は上から下に落ちてくる。なかなか撮影が難しい被写体だが、美しく撮れている。こんな写真を撮ってみたい人は花火シーズンが終わる前にぜひチャレンジしてみてほしい。
長時間露光をすることにより、たくさんの花火を画面に収められる。
光のボケが美しい。
これは製品版の宙玉を装着した状態。カメラはソニー「α7R II」。レンズは「FE 50mm F2.8 Macro」。ラップフィルムじゃ嫌! という場合はこちらをどうぞ。
上原ゼンジ写真展「宙玉と鏡の中の世界」
日時
2018年7月27日(金)〜2018年8月12日(日)
12時00分〜19時00分(最終日は17時00分まで)
会場
ギャルリ・サンク
奈良県奈良市西寺林町28-6
休廊
水・木曜日