交換レンズレビュー

フォクトレンダー NOKTON 50mm F1 Aspherical

意外? 実は解像力重視の超大口径標準レンズ

ソニー α7 IIIに装着

コシナからフォクトレンダー「NOKTON 50mm F1 Aspherical」のソニーEマウント版が3月に登場した。これまでVMマウント、ニコン Z マウント、キヤノンRFマウント用が発売済みだったが、今回ソニーユーザーにとって待望のリリースとなった。

1番の特徴はその明るさで、開放F1という超大口径を実現している。実勢価格は税込23万2,780円前後だ。

従来、フォクトレンダーのEマウントレンズで最も明るい50mmのレンズは「NOKTON 50mm F1.2 Aspherical」だったほか、純正では「FE 50mm F1.2 GM」が一番明るい。それらを上まわる明るさレンズとはどんな描写なのかをチェックしていきたい。

使いやすいサイズ感のF1.0レンズ

外形寸法は約79.3×69.3mmで重さは590g。それなりのボリューム感があるが、F1という明るさを考えるとMFとはいえまとまりは良い。α7 IIIのボディとも相性が良く、バッテリーグリップ無しでもバランスは良かった。フィルター径も67mmに収まっている。

開放F1.0の標準レンズとして考えると思ったより小さい
ソニー α7 IIIに装着

フォクトレンダーというとクラシックなデザインテイストで知られるブランドだが、本レンズはダイヤパターンのローレットを採用。ややモダンな印象を受けた。実際滑りにくく回しやすさは申し分ないといったところ。

フォーカスリングの表面はダイヤパターンで滑りにくい

ピントリングの回転角は180度強と大きく、精密なピント合わせが必要となる絞り開放付近でもしっかりと合わせられた。滑らかな感触もさすがはコシナのクオリティといったところだろう。

ボディからの絞り操作はできない。絞りリングでのみ調整でき、1/3段のクリックストップがあるが、動画撮影時などを想定して、クリックストップを無効できるようになっている。絞り羽根は12枚と一般的なレンズよりも多く、絞り込んでも比較的円形に近いところもポイントだ。

フィルター径は67mm。絞り込んでも開口部が円形に近い

電子接点を備えており、各種の補正やボディ内手ブレ補正も使用できる。画面拡大もピントリングに連動しているので、精密なピント合わせをしたい場合には活用したい。もちろんピーキング表示も可能だ。

マウントに電子接点を備える

F1.0ならではの独特の描写

まずは、少々離れたウエストアップほどの距離で絞り開放の描写を見た。大口径レンズらしい柔らかさで人物が浮き立つ写りだ。

ソニー α7 III/NOKTON 50mm F1 Aspherical/マニュアル露出(1/2,000秒、F1.0)/ISO 100

続いては少し絞り込んだF2で撮影。柔らかさは残しながらもピントの合った部分はグッと鮮明になる。まつげ1本1本をくっきりと描写していた。

ソニー α7 III/NOKTON 50mm F1 Aspherical/マニュアル露出(1/500秒、F2.0)/ISO 100

敢えて絞り開放で植物の前ボケを作って見た。もう少し絞っても良いシーンだが、ここまでボケを大きくできる懐の広さはある。前ボケの緑のグラデーションも滑らかで良い。

ソニー α7 III/NOKTON 50mm F1 Aspherical/マニュアル露出(1/500秒、F1.0)/ISO 100

最短撮影距離の0.45m付近まで近づいて撮影。球面収差がかなり抑えられており、こうした撮り方で発生するやや白っぽいモヤのようなものは見られなかった。

ソニー α7 III/NOKTON 50mm F1 Aspherical/マニュアル露出(1/640秒、F1.0)/ISO 100

こうした輝度差の大きなシーンでも色付きなどがほとんど無い。太陽がビルに反射して強い逆光のシーンでもあるが、コントラストもしかり保たれていて安心して使える。

ソニー α7 III/NOKTON 50mm F1 Aspherical/マニュアル露出(1/5,000秒、F1.0)/ISO 100

高感度画質が良くなったり手ブレ補正が進化した現代のカメラでは、昔ほどレンズの明るさが有利になることは少なくなったかもしれないが、それでもF1.4から1段も明るいのは暗いシーンでは心強い。

ソニー α7 III/NOKTON 50mm F1 Aspherical/絞り優先AE(1/60秒、F1.0、−0.7EV)/ISO 250

F8に絞り込んで全体的な解像力を見た。これだけ離れた場所から撮っても柵の装飾模様まで手に取るように見て取れるのは驚きだ。右側の樹木も流れるようなことは無く、しっかり写っていた。

ソニー α7 III/NOKTON 50mm F1 Aspherical/マニュアル露出(1/640秒、F8.0)/ISO 100

まとめ

フォクトレンダーブランドの超大口径レンズということで、全体的にソフトな描写を想像していたが、使ってわかったのはそれとは逆の解像力重視タイプだったということだ。ソニーEマウントセンサーに最適化された設計が奏功しているのだと思う。

同梱のフードを装着したところ。金属製でねじ込み式となっている

絞り込んだときの解像感も凄いが、絞りを開けても一昔前の大口径レンズのようなソフトさは無く、しっかりと芯のある描写なのが印象的だった。

絞って使っても良し、ここぞというときには絞りを開けてほかのレンズとは違った圧倒的ボケ量を演出することもできる。最新レンズにふさわしい描写力で表現のレンジが広まる1本だ。

モデル:進藤もも

1981年生まれ。2006年からインプレスのニュースサイト「デジカメ Watch」の編集者として、カメラ・写真業界の取材や機材レビューの執筆などを行う。2018年からフリー。