●手ブレ補正はレフレックスレンズにも好適
ペンタックス「K10Dグランプリパッケージ」 / 中村文夫
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K10Dグランプリパッケージ
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ペンタックス「K10D」は、発売と同時に入手。メインのデジタル一眼レフとして、ずっと愛用してきた。最大の魅力は、他社製を含めM42とKマウントレンズが使えること。他メーカーも旧レンズが使えるカメラを発売しているが、どんなレンズを組み合わせても手ブレ補正が利用できるのはペンタックスだけ。最近レフレックスレンズに凝っている私にとって、K10Dは最高のカメラなのだ。
K10Dグランプリパッケージは、カメラグランプリ2007受賞を記念して7月に発売された限定モデル。製造台数は全世界で5,000台。限定モデルとして、この数字が多いか少ないかは判断に悩むところだ。中には発売と同時に完売した店もあったようだが、営業的に余裕を見過ぎたらしく、夏を過ぎても店頭にはまだ在庫があった。在庫が過剰になれば値段が下がるのは当たり前。結局、私は秋になって、昨年買ったボディを下取りに出し、この記念モデルを手に入れた次第である。
■ 派手なようで派手じゃない
最初にこのカメラを写真で見たとき、かなり派手な印象を受けた。貼ってあるゴムの茶色が薄く、金色の文字ももっとピカピカ輝いていて、「ふだん使うには、ちょっと目立ちすぎるなあ」といった感じ。だからそれほど欲しいとは思わなかった。だが、しばらくして新宿のペンタックススクエアに飾られていた実物を見ると、想像していたよりかなり地味。これなら、ふだん使っても恥ずかしくないと思ったのだ。
ただし問題は値段である。限定モデルの場合、人気が高いと値段が下がらないまま売り切れてしまうが、売れ残るとじわじわと値段が下がる。このときはまだ発売前だったので予想が付かなかったが、予約をしてまで手に入れようとは思わなかった。それからしばらくして、夏のボーナスシーズンが峠を越すと値段が下がり始めた。そして9月になると、キャッシュバックセールがスタート。お陰で私は、実質的にさらに1万円も安く手に入れることができた。
グランプリパッケージと通常品との違いは外観のみ。ボディに貼られているラバーを黒からブラウンに変更するとともに、ペンタプリズム部とボディ前面の商品ロゴ、それからモードダイヤルの文字が金色になった。そのほか、背面の液晶モニターに下に「CAMERA GRAND PRIX 2007」の表示がある。それからバッテリーグリップのラバーはボディ同じブラウン。付属品として本革製ストラップが同梱されている。
残念なのはカメラ本体の中身が何ら変わっていないこと。たとえば、カスタムファンクションを増やすとか、リコー「GR DIGITAL」の記念モデルのように起動画面を特別なものにするなどの工夫があれば、もっと魅力的な商品になったはずだ。使うことを前提に考えると、奇抜な外観はかえってマイナス要因になる。やはり限定モデルは、さりげなく目立つことと、所有者に自己満足を与えるとが大切である。要するにこのグランプリパッケージの場合、最初の条件は上手くクリアしたが、2番目の条件で躓いてしまったという感じ。発売と同時に完売できなかった原因は、この当たりのあるのではないだろうか。
K10Dを最初に買ったとき、バッテリーグリップは買わなかった。その理由は、「*ist D」のバッテリーグリップで懲りていたからだ。とにかく*ist Dのバッテリーグリップに付いてる縦位置操作用のダイヤルやシャッターボタンはレイアウトが悪くて、とても使いにくかった。さらに電源部としての機能も不十分で、結局使わず終いだった。
K10Dのグリップでは、操作部レイアウトの問題が解決。縦位置グリップとしての完成度がアップし、とても使いやすくなった。だが私がボディと一緒に買わなかったのは、使用できる電源に不満があったからだ。K10Dは専用バッテリーを使用するが、バッテリーグリップに使えるのは、専用バッテリーだけで、その他の電池は使用不可能。おまけにグリップに収納できるバッテリーは1個だけで電池交換の手間が1回省けること以外にメリットが見つけられなかった。
■ 「800mm F11」でバッテリーグリップが活きた
以上のような理由で、グランプリパッケージに付いてきたバッテリーグリップも、しばらく使わない状態が続いていた。だが最近になって日の目を見る機会がやってきた。それは、ビビター製の「800mm F11」という、ちょっと変わったレンズを手に入れたからだ。
このレンズは、ソリッドキャットと名付けられたレフレックスレンズで、何と鏡筒の中がガラスブロックで埋まっている。もともとアメリカのパーキンエルマーという光学メーカーが、人工衛星に積むために、温度変化と衝撃に強いレンズとして開発したものだが、ガラスブロックのお陰で、信じられないほど鏡筒が短くなっている。ただし、これまた信じられないほど重量があり何と1.3kgもある。要するにカメラに取り付けたときのバランスの悪さは天下一品である。
だが、このセットで手持ち撮影をするとき、バッテリーグリップを付けるとバランスが俄然良くなる。また奇しくもK10Dの手ブレ補正の限界は800mm。お蔵入り寸前だったバッテリーグリップも、超望遠手持ち撮影システムの1員として見事に復活を果たすことになった。
あと、グランプリパッケージの同梱品で使っていなのは、本革製ストラップだけ。もともとストラップは短めが好みだが、このストラップを私の好きな長さに調節すると、ナイロンベルトの部分に余裕がなくなり、カメラをグリップするとき邪魔になる。それにストラップは昔から細めが好き。カメラグランプリのロゴを目立たせるためには、ストラップの幅を広くするのが、いちばんの早道であることは重々承知しているが、これだけは好みの問題なので、どうしようもない。たぶん、このストラップは、中古カメラ店の委託コーナーに並ぶことになるだろう。
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中村文夫 (なかむら ふみお)
1959年生まれ。学習院大学法学部卒業。カメラメーカー勤務を経て1996年にフォトグラファーとして独立。カメラ専門誌のハウツーやメカニズム記事の執筆を中心に、写真教室など、幅広い分野で活躍中。クラシックカメラに関する造詣も深く、所有するカメラは300台を超える。1998年よりカメラグランプリ選考委員。 |
2007/12/25 12:21
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