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【新製品レビュー】ビスタクエスト「VQ1015 Entry」

~4,200円のトイデジカメを使ってみた
Reported by 本誌:折本幸治

 デジタルカメラの高機能化・自動化が進む一方、シンプルで低価格な製品が一部の層から支持を受けている。そうした機種はネット通販を中心に流通しており、量販店やカメラ専門店ではあまり見られない、海外モデルが主流だ。

 VQ1015 Entryもそうした製品の1つ。レンズは固定焦点だし、背面液晶モニターもない。技術的には2001~2002年頃に国内市場をにぎわした、トイデジカメの復活と受け止めることも可能だろう。その背景として、近年におけるフィルムのトイカメラブームが下敷きになっているのは間違いない。

 VQ1015 Entryは米国ビスタクエスト社が製造、国内ではプロキッチンがWeb通販している。価格は4,200円。本体色はレッド、ブラック、ブルー、イエロー、グリーン、ピンクから選べる。


デジカメらしかぬ可愛くてチープな外観

 カメラというよりキーホルダーといった方が似合うコンパクトな外観に、130万画素センサーと単焦点レンズを搭載。記録画素数は130万画素の1,280×1,024ピクセルのほかに、1,600×1,200ピクセル(画素補間)、640×480ピクセルが選べる。320×240ピクセルの動画記録も可能だ。


カバーをスライドさせたところ 背面はシンプル。撮影画像は確認できない

側面にフォーカス切替スイッチを装備 SDHC/SDメモリーカードスロットも備える

 オートフォーカス機構はない。フォーカスは無限遠と近距離の2焦点切り替え式となっている。近距離のフォーカス距離は0.3m前後。撮像素子の面積が狭いため、無限遠でも被写体から3mほど離れれば、無限遠まで過焦点距離となる。いわゆるパンフォーカス撮影も容易だ。

 ただし、絞りを変えることは不可能。というより、撮影画像のExifデータでは常にF2.8となっており、絞り機構がない可能性がある(ビスタクエストの資料では開放F3)。それでもこれだけの被写界深度を有するのは、コンパクトデジタルカメラならではの特徴といえる。露出補正は不可能。感度はISO64で固定のようだ。

 ボディは大きく分けて、レンズ、撮像素子、カードスロット、電池室などを備えた本体部と、スライド式のカバーからなる。どちらも素材は樹脂製。チープな感触だが、この機種の場合は雑貨感覚でおしゃれな印象を与えるところが面白い。

 カバーを横にスライドするとレンズが露出し、ファインダーがポップアップする仕組み。ファインダーといっても簡素なもので、レンズの光軸からはずれていることもあり、パララックスも大きい。とはいえ、このカメラにそのあたりの厳密さ求めるのは野暮な行為かもしれない。

 電源は単4電池1本。eneloopでも動作した。アルカリ乾電池、ニッケル水素充電池とも、4、5枚連続で撮影しただけで電池残量警告がでることがあるが、撮影は続行可能。どうも電圧制御が安定していないようで、撮影枚数にばらつきがでる。それを差し引いても電池の持ちは良い方ではないので、マニュアルにもある通り、予備バッテリーを持参した方が安心だろう。

 カードスロットはSDメモリーカードに対応。SDHCメモリーカードも使えた。前面に横挿しするのはほかにない工夫で面白い。ラベルが少し見えるので、本体カバーと色の組み合わせを試行錯誤するのも楽しそうだ。8MBの内蔵メモリーも搭載しており、PCとはUSBマスストレージクラスで接続できる。


単4電池はカバーを外して取り替える SDメモリーカードと比べると、本体のコンパクトさがわかる

USB miniB端子も装備。PCと直結できる ポップアップ式のファインダー

 操作ボタンは2つとシンプル。1つはシャッターボタンで、撮影に関する各種設定は、液晶パネル横にあるもう1つのボタンで行なう。どちらも長押し気味の操作が必要だ。シャッタータイムラグも長め。シャッターボタンを押して記録を行うと、ビープ音が1回、記録が終了するとビープ音が再度鳴り、液晶パネルの撮影枚数表示が増加する。

 記録完了、つまり2度目のビープ音が聞こえるまでに1秒ほどかかるときがあり、慣れるまではリズムがつかみづらかった。またビープ音が小さいので、雑踏の中では聞こえにくい。そこでファインダーで構図を決めてから眼を離し、シャッターボタンを押した後は、液晶パネルの変化を凝視しておくことにした。これなら安心して記録の終了を確認できる。

 なお、記録が終了するまでの間にカメラを激しく動かすと、画像の一部、または全体が流れたような描写になる。CMOSセンサーの記録速度に起因するフォーカルプレーン歪みであり、例えばローライミニデジやDCCライカといった別のトイデジカメでも見られる現象だ。ただ、以前使ったDCCライカより歪みが生じにくく、カメラをより大きく動かさないと歪まない。進化したともいえるし、人によっては面白みが減ったと感じるかもしれない。


ファームウェアの書き換えで白黒に

Webからダウンロードしたファームウェア。VQ1015 Entryの内蔵メモリーにコピーして書き換える。元に戻すことも可能
 初期状態ではカラーでの記録になるが、ファームウェアを書き換えることで、白黒での記録が可能になる。USBで接続したVQ1015 Entryに、ビスタクエストのWebサイトからダウンロードした白黒用ファームウェアをOS上でコピー。USB接続を解除すると、ファームウェアが書き換えられる仕組み。対応OSはWindows 2000/XP/Vistaとなっているが、Mac OS X 10.5.6のFinderから試しても可能だった。あくまでも自己責任で試してほしい。

 ファームウェア更新時には電池を装着しておく必要がある。また、もとのカラーモードに戻したい場合は、同じくビスタクエストからカラー用のファームウェアをダウンロードし、本体内のファームウェアを書き換えれば良い。

 現在、カラーと白黒に加えて、青強調モードを準備中とのアナウンスがある。本体内で切り替えられないのは不便だが、企画としては面白い。今後、どんなファームウェアが出るのか楽しみだ。また、どうしてもカラーと白黒を併用したければ、価格が安いだけに、2台買って同時に持ち歩くという荒技も考えられる。


トイデジカメ入門として

 絵づくりはものすごく個性的。色が濃くて鮮やかで、ダイナミックレンジが極端に狭い。ノスタルジックともポップともとれる趣のある絵だ。硬調な古い写真を現代の染料で着色し、にじませたような世界でもある。さらに周辺光量落ちが顕著。本来の光学的な周辺光量落ちにしては境目がはっきりしている上、写真によって光量落ちの場所が違うケースが見られることから、レンズの前に何らかの遮光パーツを設けているのだと思われる。レンズの解像度は低いが、これも味のうちと判断したい。

 こうした絵づくりは欠点というより、この手の製品に見られる個性のひとつと考えたい。液晶モニターでの構図確認ができないことも合わせて、フィルムのトイカメラに近い感覚が味わえる。

 ただし、フィルムのトイカメラの代わりになり得るかというと、そうも言い切れない部分もある。それはレンズや光線漏れなどの起因するトイカメラ的なローファイというよりは、ビデオ的なローファイ(フリンジ、低ダイナミックレンジ、カラーノイズなど)が目につくためだ。フィルムの絵とは別物であり、フィルムのトイカメラの絵に愛着を感じる人には少し違和感を感じるかもしれない。もちろん、そうした部分を含めて遊んでしまうのが、本機との正しいつきあい方だろう。

 実際、本機を手にして歩くのは楽しい。目測でのピント合わせや、強いパララックスへの対応を強いられるというテクニカルな面白さはもちろん、撮影画像を確かめられないという緊張感がたまらない。ズボンのポケットに入れていることを忘れてしまうようなコンパクトさも魅力。カメラに自分を合わせていく使い方になるが、付き合いが長くなると、高性能・起動の遅さやシャッタータイムラグの長さすら、個性として愛せてしまうのが不思議だ。価格も抜群に安いので、トイデジカメ入門としても面白い選択肢といえる。


 

●作例
  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。


約202K / 1,600×1,200 / 1/2,906秒 / F2.8 / 0EV / ISO60 約234K / 1,280×1,024 / 1/1,091秒 / F2.8 / 0EV / ISO60

約177K / 1,280×1,024 / 1/1,256秒 / F2.8 / 0EV / ISO60
約179K / 1,280×1,024 / 1/206秒 / F2.8 / 0EV / ISO60

約259K / 1,280×1,024 / 1/120秒 / F2.8 / 0EV / ISO60
約217K / 1,280×1,024 / 1/120秒 / F2.8 / 0EV / ISO60

約217K / 1024x1280 / 1/475秒 / F2.8 / 0EV / ISO60
約180K / 1,280×1,024 / 1/156秒 / F2.8 / 0EV / ISO60

約305K / 1,280×1,024 / 1/413秒 / F2.8 / 0EV / ISO60
約78K / 640×480 / 1/5秒 / F2.8 / 0EV / ISO60

約336K / 1,024×1,280 / 1/272秒 / F2.8 / 0EV / ISO60
約262K / 1,024×1,280 / 1/413秒 / F2.8 / 0EV / ISO60

約255K / 1,280×1,024 / 1/237秒 / F2.8 / 0EV / ISO60
約172K / 1,280×1,024 / 1/827秒 / F2.8 / 0EV / ISO60


URL
  プロキッチン
  http://shop.prokitchen.co.jp/

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本誌:折本幸治

2009/02/27 17:22
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