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【新製品レビュー】エックスライト「ColorMunki Photo」

~低価格ながら「分光測色計」を採用したキャリブレーションツール
Reported by 森脇章彦

 6月25日にエックスライトから正式に国内販売が開始されたオールインワンタイプのカラーコントロールソリューション「ColorMunki Photo」(カラーモンキーフォト)は、液晶ディスプレイのキャリブレーションやプリンタープロファイルの作成など、デジタル画像を取り巻く「色」をコントロールする製品。手頃な価格ながら、同社プロ向けのアイワンフォトなどと同じ、本格的なスペクトラ分析のできる分光測色計(分光光度計とも呼ばれる)を採用する。一般的な簡易なフィルター形式の測色器と違って色そのものを読み取ることができるため、プリンターのプロファイル作成も可能な点が一番大きな魅力だ。

 また、白色LEDをバックライトに使用した液晶ディスプレイや、液晶表面がグロス仕上げのノートPCなど、あらゆる液晶に幅広く対応できる能力を持っているのも見逃せない。

 価格は大手量販店の店頭で7万1,400円。アイワンフォトのセット価格が25万6,800円であることを考えると、1/3以下の価格でこの内容のキャリブレーションツールが手に入ることになる。筆者と同じ様に、「安い」と考える人の方が多いだろう。

 さて、ここからは実物の写真を見ながら各部の説明をして行こう。


セット内容は、本体、モニター取り付け専用ホルダー、USB 2.0ケーブル、ソフトインストールCD、クイックスタートガイド、保証書および注意書きの7点だ システム要件は写真の通りで、注意点はインターネット接続されたパソコンが必要なことだ。これは付属のソフトCDが専用サーバーにアクセスしてソフトウエアをインストールする方式を採用しているからで、CD自体にはソフトは入っていない

左が同梱のインストーラーCD。インターネット回線が遅い地域やインターネットに接続していないパソコンにインストールする場合は、製品登録をした上で連絡すれば、右のCDを送ってくれる。インストール可能台数は3台まで カラーモンキー本体。巻き取り式メジャーのようなユニークな形が目をひくが、縦に帯状に設けられたアクリルガラスの窓から部屋の環境光を測定したり、フロントプロジェクターのキャリブレーションにも対応する

本体右側には大きなダイヤルが見えるが、そのダイヤルを回して使用目的の位置にセットして測色を行なう仕組みだ 本体左側のダイヤル内には半円状のクリックボタンが設置されていて、プリンタープロファイル作成時にクリックしながら測色をする。

本体背面側にはUSB 2.0 mini Bタイプのコネクターを装備。パソコン側はUSB 2.0 Aタイプになっている ちょうど本体の真上に設置された乳白色のマル型の窓が、環境光の測定をする部分になる

実際の色を測色して、PhotoshopやIllustratorなどにカラーパッチとして取り込む機能がこの部分だ。半円の個所に取り込みたい色ものや、洋服などを置いてクリックして使用する 液晶ディスプレイに本体をセットするための専用ケース。ネオプレーン素材の柔らかな作りで、液晶表面をキズつけにくい。後ろに伸びたストラップには粒状の鉛の重りが入っていて、バランス良く本体を保ってくれる役割をはたす

専用ケースの底には測色用のスライド式窓が付いている。この窓を開け忘れると測色に失敗するので注意して欲しい。測色が終了したらセンサー部へのホコリやゴミなどの付着を防ぐため閉めておきたい 実際の取り付け方はセンサー位置が液晶画面に向くようにして付けるというより、ぶら下げる感じで使用する。コツとしては液晶面を実際の使用角度よりやや上向きに傾けるのがポイントだ

ノートPCなどではストラップをマジックテープ部分に留めて、短くして使用することで安定を保てる

液晶ディスプレイのキャリブレーション

 それでは実際に液晶ディスプレイをキャリブレーションしてみる。ソフトをインストールしたら必ず再起動して、カラーモンキーをパソコンに接続してからソフトを起動する。ノートPCの場合など、USBハブ経由で接続すると電圧が足りずにカラーモンキー本体を認識できない場合があるが、そんな場合はパソコン上のいくつかあるUSBの接続場所を変えながら試すことで解決する。


ソフトが起動するとキャリブレーションを行なう項目を選択する。ここでは真ん中の「ディスプレイのプロファイル」を選択して始める。慣れてくれば一番上の項目を選択することで、液晶からプリンターへと続けてキャリブレーションが行なえる 液晶ディスプレイの種類を選択する。次に「簡易モード」か「詳細モード」かを選ぶ。これは明るさやRGBが個々に調整できるタイプの液晶ディスプレイかによって選べばよい。そしてターゲットとなる色温度。一般には「D65K」(6,500ケルビン)を、印刷目的なら「D50」(5,000ケルビン)を選択する

ここからカラーモンキー測色器本体の「初期化」を行なう操作に入る。画面の指示に従い大きなダイヤルを回転させて角の位置に設置された専用の白色タイルの場所まで回転させる 次に画面上のキャリブレーションボタンをマウスを使ってクリック。白色タイルのホワイトを計ることで、本体のキャリブレーション(初期化)が行なわれる

本体のキャリブレーションが終了するとグリーンのチェックで分かる仕組みだ。確認して大きなダイヤルを所定の位置に戻す 画面右側の項目が全てグリーンに変れば次の項目に移動する


液晶ディスプレイ中央の黄色で指定された場所にカラーモンキーを専用ケースに入れた状態で設置する。この時、ケース底面のスライド窓を開けることを忘れないようにする 実際にカラーモンキーをセットした場面はこんな感じになる。安定が悪い場合は、液晶ディスプレイを少し上向きに倒すことで安定する

次からはカラーモンキーが自動でキャリブレーションを行なうので、全てが数分で終わる。次の項目に移る前に、液晶ディスプレイの再度調整時期を設定する項目のチェックを外しておくことをおすすめする。忘れるとソフトが自動的にアラートを表示するので、チョット煩わしい時がある 最後に、液晶ディスプレイをキャリブレーションする前後の色を比べられる。これで全てが終了して完了する

 カラーモンキーのように、ソフトと測色器を使用して液晶ディスプレイを調整する方法を「ソフトウェアキャリブレーション」と呼ぶが、使用するパソコン内のグラフィックカード(チップセットなどに統合されている場合もある)を調整して、適性な色表示をさせる仕組みだ。
 
 当然だがパソコン自体のグラフィックカードの性能が低いと、それなりの調整になる。またグラフィックカードと液晶ディスプレイの接続ケーブルの種類によっても結果が違ってくる。デジタル接続の「DVI-D」や「DVI-I」ケーブルで接続する方が、アナログ接続の「D-sub 15ピン」接続よりよい結果になる。
 
 液晶ディスプレイ自体の品質にも同じことが言える。カラーモンキーを購入したので安い液晶ディスプレイでキャリブレーションして使用すれば安上がりと考えていると、思ったような結果が得られずがっかりするはずだ。超高価な液晶ディスプレイは必ずしも必要では無いが、カラーモンキーの価格と同等以上の液晶ディスプレイで使用することをおすすめする。
 
 今回使用した液晶ディスプレイは、バランスの良さで定評のあるナナオのColorEdge CG241W-BKで、液晶ディスプレイ内部に専用のキャリブレーション回路を持った「ハードウエアキャリブレーション」対応のディスプレイだ。ソフトウエアキャリブレーションとの違いは、測色器からの指示に従い液晶ディスプレイ自体がキャリブレーションを行なうため、そのモニターの機能やスペックの一番良い状態でキャリブレーションが行なわれる点と、パソコン内のグラフィックカードに負荷が掛からないために、表示がスムーズなことが上げられる。
 
 なお、カラーモンキーはColorEdgeシリーズのキャリブレーションソフト「ColorNavigator」のVer.5.1.2から、ハードウェアキャリブレーションに対応した測色器として使えるようになった。ナナオのサイトから無償でダウンロードできる。


プリンタープロファイルの作成

今回プロファイルを作成したエプソン「PX-G5300」
 さて次は、お待ちかねのプリンタープロファイルの作成を行なう。多くの人がカラーモンキーの機能の中で一番気になっている部分のはずだ。プリンタープロファイルの作成が可能なツールは欲しいけれど、今までアマチュア層には高価で手が出しづらかったのが現実だろう。自分の所有するプリンター専用のプロファイルを使用し、液晶ディスプレイに表示された色のままプリントすることにあこがれている人もいるはずだ。
 
 簡単にプリンタープロファイルについて説明しておく。プリンタードライバにはプリンターと、使用するプリント用紙の組み合わせ別で適性な色が表示できるように、プリンタープロファイルが含まれている。しかしプリンターを使用するパソコン環境が皆同じでない以上、暫定的なプロファイルしか用意できないのが現状である。また、精密機器であるプリンターにも、個体差が生じるのは仕方がない。こうした要素が重なり、液晶ディスプレイで表示された画像と違った色でプリントされることが多いわけだ。

 そこで自分の使用している環境下でプリンターにテストチャートを印刷させ、その色の誤差分を修正したプロファイルを作成することで、正確なプリントが可能になる。これがプリンタープロファイルをユーザーレベルで作成する意義である。

 カラーモンキーフォトでは50パッチ(50色のテストチャートのことをパッチと呼ぶ)を2タイプ、合計100色パッチのチャートを使用して、プリンタープロファイルの作成を行なう。プロファイル作成用としては少ない部類になるが、プリンタープロファイルの良し悪しが色パッチの多さで決まる訳では無いことを付け加えておきたい。プリンターの使用するインクの種類が少ないなら、あまり多くの色パッチを使用してもよい結果が得られないからだ。

 今回のテストで使用したプリンターはエプソンの顔料インク採用のA3ノビ対応モデル「PX-G5300」で、ハイアマチュアからプロ写真家まで多く愛用されている機種だ。それでは早速手順に移ろう。


ソフトを起動する前に、プリンターが接続されていることが前提。「プリンターのプロファイル」を選択して次の項目へ進む 「新規プロファイルの作成」で使用するプリンターを選び、ペーパーの名前を入力して次に進む

最初の第1テストチャート(50パッチ)の印刷を開始する。印刷サイズはA4サイズなので、プロファイルを作りたいペーパーのA4サイズを用意しておく ここでは、プリンタードライバーの設定を正確にセットするようアラート画面が出るので、内容を確認して次の項目に進む

プリンター名とペーパーのタイプを選ぶ。重要なのは、詳細設定で画質優先モード、ユーザー設定では色0EVを選択することだ。この設定に名前を付けて保存すれば、第2のチャートも同じ設定で印刷することができる テストチャートの印刷と共に、ソフト内のタイマーが動きだしプリントペーパーの乾燥の時間を10分から15分取ってくれる。ポイントは、顔料インクなら30分以上、染料インクなら24時間以上乾燥させること。より正確なプロファイルが作成できる。乾燥時間がかかる場合は一度ソフトを終了して、また起動してこの場所までスキップできる

乾燥が終了すれば、テストチャートの測色を開始するためにカラーモンキーの初期化作業が必要になる。この辺はモニターと同じ要領で行なう カラーモンキーのキャリブレーション(初期化)のために白色タイルのホワイトを測定する作業だ。ダイヤルを回しマウスを使用してキャリブレーションボタンをクリックする

カラーモンキーのキャリブレーションが終了するとダイヤルを回して所定の位置にもどす作業だ 全ての項目がグリーンマークに変ったことを確認した上で次の項目に進む

第1テストチャートを測色する。1番から5番まで各10色のチャート計50色をスライドさせながら測色していく正しく測色ができた場合は次の番号に黄色い枠線が移動する カラーモンキー左横の半月型の大きなボタンをクリックした状態で滑らせる様に測色を行なう。テストチャートをプリントしたA4サイズの用紙と同じ種類で、B4やA3などの大きめの用紙をチャートの下に2枚くらいひくと、正確な測色が可能になる

テストチャートの測色方法がよく分からない人のために、画面センター下に説明ビデオが用意されている 第1テストチャートの測色が終了すると、その結果を踏まえて第2テストチャートが生成される仕組みになっている。大変面白い機能だ

第2テストチャートの印刷。第1テストチャートと同じ設定で印刷しなくては、正確なプロファイルはでき上がらないので注意が必要 ここでも第2テストチャートの乾燥が必要で、顔料インクの場合30分以上の乾燥が必要。染料インクの場合はここでも24時間以上必要だ。この辺の手を抜いてソフトの指示通りでは、正確なプロファイル作成が望めない

第2テストチャートの測色を開始する。第1と同じ要領でカラーモンキーをスライドさせながら測色を進める 第2テストチャートの測色終了と共に、数分間でプリンタープロファイルができ上がる。プロファイルに分かりやすい名前を付けて保存をクリックすれば終了だが、拡張子「.icm」を変更しないように注意する

プリンタープロファイルの保存にも数分間の時間が必要だ。パソコンの使用OSの必要な場所にインストール保存する時間だけ待つわけだ。 保存完了のグリーンマークを確認して次の項目へ進む

最後に今作成したプリンタープロファイルをPhotoshopなど画像調整ソフトに自動でセットしてくれる機能を持ったソフト「AppSet」の有無を聞いてくるので、チェックを入れるとセットが完了する。色んなプロファイルを試したい人はチェックを外しておこう

写真は今回使用したテストチャートのカラーパッチ2枚の写真だ。各回50色のカラーパッチ2部構成で合計100パッチのテストカラーを測色するわけだ プリントの複写なので正しい色が見づらいかもしれないが、「上」のプリントがエプソン純正のプリントプロファイルを使用したもので「下」のプリントがカラーモンキーのプリントプロファイルを使ってプリントしたものだ

サンプルに使用した画像がこの写真。RAWデータから現像したものだ。元画像とプリントを比べれば違いは明らかで、より正確な色でプリントしたい場合はプリンター個々に専用のプロファイルを作成する方が有利と言える

カラーモンキーを使用して作成したプリンタープロファイルでも、一部の色が合わない場合が生じることもある。そんな場合は元画像から合っていない部分をトリミングして別名保存して、その画像を使用して作成したプロファイルの微調整を行なうことが可能 カラーモンキーをもう一度起動し、プリンタープロファイルを選択して次に進むとこの画面の項目が表示されるので「既存プロファイルの最適化」を選び、右横の欄に作成したプロファイルを選ぼう。そして「画像をロード」ボタンを押して先程別名保存した画像を表示させて次の項目へ進む

画像内の色を分析し新たなテストチャートが構成されるので、そのテストチャートを印刷する 新たに印刷されたテストチャートがこれで今までのものより色数が少ないのがわかる。ここでもプリントの乾燥が大きな決め手になるのでしっかり乾燥させよう

テストチャートを測色する作業は今までと同じ要領で行なう。測色が終了すると再計算してプリンタープロファイルの最適化が終了する 最適化が行なわれたプリントプロファイルは名前の後に数字で「2」が付け加えられるので間違うことはない。もう1回調整すれば数字の「3」が加えられ何回最適化が行なわれたか分かる仕組みだ

最後に最適化したプリンタープロファイルを保存して、全ての工程が終了する

まとめ

 カラーモンキーを使用してプリンタープロファイルを作成したが、一般ユーザーなら文句のないレベルのプリンタープロファイルを作成することができる。今まで測色器自体が高価で手が出せなかった人も、この価格なら一度はチャレンジしてみたいと考えるはずだ。

 コストダウンの箇所を考えながらアイワンフォトと比べてみた結果、プリンタープロファイル作成時にテストチャートを測色する光源に違いがあるのがわかった。アイワンフォトの場合、センサーの周りからマクロリングライトのように周囲から光を放つのに対して、カラーモンキーでは片方から1灯で白色LEDで照射している。

 そのため、1灯の白色LEDの光が強力でテストチャートを印刷したペーパーを越えて、その下にある色まで計ってしまう傾向にある。だからプリントペーパーを重ねた上に、テストチャートを載せて測色する必要が出てくるのだ。無論、筆者のようなプロ写真家でも、印刷媒体の使用紙のプロファイルを作成する時などは、アイワンフォトでも印刷する紙を4~5枚程度重ねてテストチャートの測色を行なうので、これは経験からくるスキルであって、カラーモンキーの欠陥ではないことを付け加えておく。

 色々と言ってはみたものの、これだけの性能を持ったキャリブレーションツールが誰もが購入できる価格で登場したことの意義は大きい。後は使いこなしが肝心だ。いくらプリンタープロファイルを作成しても、プリントの色を見る環境光がいい加減ではディスプレイと同じ色には見えない。最低でも色評価用の「AAA管」(スリーエー管)の蛍光灯は準備したい。

【2008年10月24日】モナコユーザー向けの優待販売が終了したため、当該部分とリンクを削除しました。



URL
  KGソリューションズ
  http://www.koyoshagraphics.com/
  製品情報
  http://www.koyoshagraphics.com/colormunki/

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森脇章彦
(もりわきあきひこ)1956年生まれ 岡山県出身 コマーシャルフォトを中心に活躍する写真家。デジタルカメラは創世記から積極的に仕事に取り入れ、カメラ周りだけでなくカラーマネージメント機器やモニター、記録メディアなどに詳しい。

2008/10/23 00:49
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