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【新製品レビュー】パナソニック「LUMIX DMC-FZ28」

~初心者から上級者まで楽しめる高倍率モデル
Reported by 小山 安博

 秋の運動会シーズンを前に、定番の高倍率ズーム搭載コンパクトデジカメが登場している。今回レビューするパナソニックの「LUMIX DMC-FZ28」は、望遠だけでなく広角にも強い高倍率ズーム機だ。


広角撮影もカバーする高倍率ズーム

 高倍率ズーム機は、とにかく光学倍率が命。DMC-FZ28では、光学18倍ズームのライカDC Vario-Elmaritレンズを搭載する。焦点距離は35mm判換算で27~486mm。開放F値はF2.8~4.4となっている。

 400mmを超えるような焦点距離だと、一眼レフ用交換レンズなら数十万円の世界になってしまい、重さもキログラムオーダーとなってしまうことを考えれば、高倍率ズーム機の存在意義は大きい。

 DMC-FZ28なら、サイズは約117.6×88.9×75.3mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約370g(本体のみ)ですむ。一眼レフカメラは広角から標準域、遠くの被写体はFZ28に任せる、といったサブカメラ的な使い方もできるだろう。





 画像サイズを下げて擬似的に光学倍率を伸ばすEX光学ズームを使った場合、300万画素まで落とせば最大32.1倍のズームができる。ここまでくると800mmを超える超望遠が可能だ。しかもオプションのテレコンバージョンレンズ「DMW-LT55」を装着すると、フルサイズで撮影しても826mmまでの超望遠撮影にも対応する。

 さらに、望遠だけでなく広角端で27mmという画角を実現した点もポイント。広角レンズの利便性はいろいろあるが、とにかく超望遠撮影と広角撮影が1台でまかなえるというのが大きい。小刻みにズームレバーを操作すれば細かいズームができ、一気にレバーを倒せば高速にズームする仕様なので、ズーミングもしやすい。


ズームのワイド端(左)とテレ端。レンズは大きく迫力があるが、18倍ズーム時でもレンズの繰り出しはそれほどでもない


 高倍率ズーム機ということで、当然のように手ブレ補正を内蔵。もちろん、同社お得意の光学式手ブレ補正で、精度は高い。常時手ブレ補正を行なう「モード1」は、バッテリー駆動時間としては不利だが、手ブレが抑えられるので構図を決めやすい。「モード2」は、シャッターを押す瞬間に補正するため補正効果が高い。


新たに手ブレ補正の「オート」が追加された。普段はこの設定にしておくと良さそうだ

 さらにDMC-FZ28ではこの2つを組み合わせた「オート」も追加された。補正がなくてもフレーミングしやすい広角撮影時はモード2で、望遠時はモード1にする、というもの。確かに、広角撮影時は補正効果が高い方がうれしいが、常時補正する必要性はあまりない。逆に望遠撮影時は、補正効果も重要だが、ブレを補正してくれないとフレーミングがかなり辛いので、自動的に使い分けてくれるこのオートは非常に有効だ。

 ブレに関しては、従来通りインテリジェントISO感度機能を搭載。インテリジェントISO感度を設定することで、被写体が動いている時にはISO感度を上げ、動きがない場合は低ISO感度でシャッターが切れる。インテリジェントISO感度で上がるISO感度の上限はISO200~ISO1600まで設定することができる。


シーンもピントもおまかせ

追っかけフォーカスは、おまかせiAではAFマクロ/フォーカスボタン→AF/AE LOCKボタンと押す。P/S/A/Mの各モードではクイック設定から追尾AFを選び、AF/AE LOCKボタンを押すことで動作する。LOCKボタンを使わない場合は中央1点AFと同じ扱いになる
 新機能としては、新たに「追っかけフォーカス」機能(追尾AF)が追加された。あらかじめ被写体にAFポイントを合わせ、本体背面のAF/AEロックボタンを押すと、自動的にその被写体にピントと露出がロックされ、被写体が移動してもピントと露出を合わせ続ける、という機能だ。

 これはかなり秀逸で、「追っかけ」の精度はかなりいい。一度被写体をとらえたあとはしっかりと追尾してくれ、もちろん前後の動きも追っかけてくれる。ピントだけでなく露出も合わせるので、あとはここぞという時にシャッターボタンを押せばいい。

 どちらかというと遠くの被写体(画面に占める被写体の割合が小さい場合)よりも近めの被写体を狙う方が追っかけしやすいようで、近くで動き回る子どもや動物を狙ったり、AFロックの要領で構図を工夫する際に便利な機能だ。

 人の顔を検出してピントを合わせる顔検出とはまた違う機能なので、人だけでなく動物や建物、乗り物、食べ物など、何でも追っかけることができる。

 ただ、ピントが追い続けるといっても、最終的にピントと露出を確定するのはシャッターボタンを半押しした時で、その際にラグが発生してしまい、ピントがずれる場合もある。

 追っかけフォーカスでピントと露出は追い続けられているので、半押しはせずにシャッターボタン一気押しで撮影するといいだろう。最後の瞬間にピント合わせが行なわれるので大きく外れるという感じはなかったが、それでも実際にシャッターが切れるスピードが一眼レフ並みとは言えないので、多少のピントズレはある程度割り切るしかない。機能としては面白くて実用的なので、さらなる進歩を望みたい。


本体のボタンはデジタル一眼レフライクな配置。慣れれば見なくても操作でき、使いやすい。電源、撮影・再生切り替えはスイッチ式で分かりやすい ストロボはポップアップ式。手動でポップアップする必要がある。先幕、後幕の切り替えも可能

電源はリチウムイオンバッテリーで、CIPA規格での撮影可能枚数は約460コマ。本体の大きさに合わせてバッテリーサイズは大きく、余裕のある枚数だ

 従来通り、「おまかせiA」も搭載されている。認識できるシーンは変更がなく、「顔認識」、「顔&夜景認識」、「夜景認識」、「風景認識」、「接写認識」、「動き認識」の6種類で、カメラを向けるだけで撮影シーンを自動認識してカメラの設定を最適なものに設定してくれる。相変わらず認識精度はよく、ほとんど違和感を感じることはなく、快適な撮影が可能だ。

 おまかせiAでは画像サイズくらいしか変更できず、撮影設定はほとんどいじれないため、上記の追っかけフォーカスを使う場合は本体上部のAFマクロ/フォーカスボタンを押してからAF/AE LOCKボタンを押す必要がある。

 初心者にとってはいちいちAF/FOCUSボタンを押してAF/AEロックボタンを押すという動作が手間に感じるかもしれないが、ボタン配置もいいので使いやすく、積極的に使って欲しい。

 おまかせiAと追っかけフォーカスの組み合わせは、特に初心者には撮影補助として有効に使える。おまかせiAでシーンモードの使い分けを考える必要がなく、撮影が難しい動き回る被写体も追っかけフォーカスできっちり抑えられる。顔検出が効かない動物や乗り物の撮影などでは特にピント合わせが難しかったりするので、そんな場面でも活躍しそうだ。

 定番の顔検出機能も強化された。検出精度はもともと良好だが、さらに横顔でも検出してくれる。ほぼ真横を向いている状態でも、やや精度は劣る印象だが顔検出できる。正面で検出したあとは、横を向いても認識し続けてくれるのも便利。この辺りの精度は安心感がある。

 また、おまかせiAでも、手動で設定が必要だった逆光補正機能が自動化され、カメラが逆光だと判断すると自動でストロボを発光できるようになった。とはいえ、FZ28の場合は手動でストロボをポップアップさせておく必要がある。


上級者も満足の豊富な撮影機能

 そのほかの撮影機能も充実。まず、モードダイヤルにはシーンモードのうち人物、風景、スポーツといった5つが割り当てられているが、この5つはさらにシチュエーションに応じた設定が割り当てられており、シーンモードでも細かい設定が行なえるようになっている。

 例えば「人物」モードでは、通常のモードに加えて人肌を美しく写す「美肌」、逆光補正が動作して人物の顔を明るく撮る「屋外人物」、動き認識を設定して被写体ブレを防ぐ「屋内人物」に、さらに「クリエイティブ」として、手動で絞り値が設定できるようになっている。通常の絞り優先モードと異なるのは、ジョイスティックの上下で絞り値を変更する際に画像の変化を表すイメージが同時に表示される点。初心者でもどういった写真が撮れるか分かりやすくなっている。

 同じく「クローズアップモード」では標準の「花」以外に「料理」、「コレクション」という設定が用意され、新たに「クリエイティブ」として絞り値を変更することができるようになっている。


モードダイヤルに割り当てられたシーンモードにはさらに設定項目がある。「人物」モードの場合、クリエイティブを選択すると絞り値を操作できる。絞りを絞ると人物と背景がくっきり写り、開くと背景がぼける、というのがアイコンによって明示的に分かる


クローズアップモードでは花や料理、小物の撮影で区別されている

 5つのモード以外は、通常のシーンモード。17個のシーンが用意され、中には「ピンホール」や「サンドブラスト」といった珍しいものもある。

 さらにプログラムAE、絞り優先AE、シャッター速度優先AE、マニュアル露出も用意され、より凝った撮影ができるようになっている。マニュアル露出ではジョイスティックの上下でシャッタースピードを変更し、一度ジョイスティックを左に倒すと上下で絞りの変更ができる仕組み。

 撮影設定は、ジョイスティックの操作が中心だ。右手親指で操作しやすい位置に配置されたジョイスティックを1秒程度長押しすると画面上部によく使う撮影設定を並べたクイック設定が並び、ジョイスティックを上下左右に倒すことで設定が変更できる。

 短押しではなく長押しが必要な理由は誤操作を防ぐためかもしれないが、ちょっと即時性に欠ける。とはいえ、全般的な操作性はよく、素早く設定を変更できるUIだ。

 クイック設定では手ブレ補正、測光、AF、ホワイトバランス、ISO感度、暗部補正、画像サイズ、LCDモードが選択可能。プログラムAEではインテリジェントISO感度を設定するか否かを設定できる。

 露出補正は十字ボタンの上に割り当てられている。十字ボタン右にはストロボ、下にファンクション(Fn)、左にセルフタイマーが配置され、その左下に連写ボタンが用意されている。


マニュアル露出ではジョイスティックを使ってシャッタースピードと絞り値を変更する。デジタル一眼レフほどではないが操作性は悪くない 露出補正はいつも通り十字ボタンの上を押してから左右ボタンで変更


 そのほか、ジョイスティック上部にはAF/AE LOCKボタン、本体上部にはAFマクロ/フォーカスボタン、AF/MFボタンがそれぞれ配置されている。

 ボタン数は多く、機能も豊富だ。フォーカス関連も、MF時にAFマクロ/フォーカスボタンでAFを動作させることができたり、1点AF/高速1点AF/スポットAF時にピント位置を自由に移動させられたり、11点AF時にピント位置を6パターンから選択できたりと、さまざまな方法が用意されている。


そのほかの設定では、「プリAF」機能が便利。ビデオカメラのAFのように、被写体がAFポイント内に入ると自動的にAFが動作するので、半押しAF時のAF時間を短縮してくれる AF/AE LOCKボタンでAFとAEを動作させるか、AFまたはAEのみの動作にするかも決められる

 ほかにも、アンバー/ブルー、マゼンタ/グリーンの各方向で調整できるホワイトバランス微調整機能、RAW撮影機能も搭載。RAW撮影は、JPEG撮影時と比べるとわずかに記録時間が延びるが、それほど大きな差はないので実用的だ。

 本体右上のスライドスイッチを下にずらすと再生になる。再生モードではシーンモードで撮影したカテゴリーごとに再生するカテゴリー再生や、BGMとともにスライドショーを行なう機能があるほか、斜めに傾いた写真をまっすぐに補正する機能も追加されている。

 DMC-FZ28は、広角から望遠までをカバーする万能レンズに加えて、初心者にも使いやすいおまかせ機能、上級者も楽しめるマニュアル撮影機能を搭載し、誰にでも使いやすいカメラだ。


 

●作例

  • サムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。


感度

 シーンモードで「高感度」を設定すると、画像サイズがアスペクト比4:3で300万画素、16:9で200万画素に限定されるが、最大でISO6400まで増感する。テスト環境ではISO2000までしか上がらなかった


ISO100
3,648×2,736 / 1/13秒 / F3.2 / 0EV / WB:オート / 61mm(35mm判換算)
ISO200
3,648×2,736 / 1/25秒 / F3.2 / 0EV / WB:オート / 61mm(35mm判換算)

ISO400
3,648×2,736 / 1/50秒 / F3.2 / 0EV / WB:オート / 61mm(35mm判換算)
ISO800
3,648×2,736 / 1/100秒 / F3.2 / 0EV / WB:オート / 61mm(35mm判換算)

ISO1600
3,648×2,736 / 1/125秒 / F4 / 0EV / WB:オート / 61mm(35mm判換算)
ISO2000
2,048×1,536 / 1/30秒 / F3.2 / 0EV / WB:オート / 61mm(35mm判換算)

追っかけフォーカス(追尾AF)

着陸してきた飛行機。追っかけフォーカスで狙いたかったが、被写体をとらえられなかったため通常のAFで撮影した。被写体のスピードと画面内の大きさによってはうまく追っかけフォーカスがきちんと動作しないこともある
3,648×2,736 / 1/500秒 / F7.1 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 260mm(35mm判換算)
この状態なら追っかけフォーカスは問題なし
3,648×2,736 / 1/400秒 / F7.1 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 433mm(35mm判換算)

追っかけフォーカスで1枚目。ピントはきちんと合っている
3,648×2,736 / 1/500秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:晴天 / 486mm(35mm判換算)
さらに連写。こちらも問題なく追えている
3,648×2,736 / 1/500秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:晴天 / 486mm(35mm判換算)

おまかせiA(インテリジェントオート)

こちらは普通に撮影した画像
2,736×3,648 / 1/400秒 / F6.3 / 0EV / ISO160 / WB:オート / 27mm(35mm判換算)
おまかせiAで撮影してみると、暗部補正が働いたせいか、青空に色が戻ってきている。マニュアル撮影では暗部補正は3段階から設定が選べる
2,736×3,648 / 1/400秒 / F7.1 / 0EV / ISO160 / WB:オート / 27mm(35mm判換算)

自由作例

ワイド端で27mmという広角レンズなので建物内での撮影も迫力がでて楽しい
2,736×3,648 / 1/50秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 27mm(35mm判換算)
広角レンズ特有の歪みは残っているが、日常的な用途では大きな問題にはならないだろう
3,648×2,736 / 1/400秒 / F7.1 / 0EV / ISO100 / WB:晴天 / 27mm(35mm判換算)

羽田空港の展望デッキから東京湾を望んで。かなり強い日差しが斜めに入ってきており、フレアが発生してしまっている。ただ、レンズの耐光性はそれほど悪くはない
3,648×2,736 / 1/800秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 27mm(35mm判換算)
同じ場所から18倍までズームすると、滑走路に向かう飛行機をここまで拡大して撮影できる
3,648×2,736 / 1/800秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 457mm(35mm判換算)

18倍ズームを使って遠くの被写体を大きく写真に収められるとうれしくなる。運動会のような被写体に近づけない場面でも大きく役立つはずだ
3,648×2,736 / 1/500秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:晴天 / 486mm(35mm判換算)


ワイド端で撮影
2,736×3,648 / 1/400秒 / F7.1 / 0EV / ISO160 / WB:オート / 27mm(35mm判換算)
テレ端。強い日差しと海の反射のある酷な状況で写りは低下しているが、これだけ離れた距離のボートをとらえられるのは18倍ズームならでは
2,736×3,648 / 1/640秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:晴天 / 486mm(35mm判換算)


これでもまだズームの中間位置くらい。単純に楽しいレンズだ
2,736×3,648 / 1/640秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 486mm(35mm判換算)
視力1.5でも肉眼では読めなかった文字が読める
2,736×3,648 / 1/500秒 / F7.1 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 232mm(35mm判換算)

ちょっと木々の描写に疑問を感じる部分もあるが、全体としては自然な写り
2,736×3,648 / 1/500秒 / F6.3 / 0EV / ISO160 / WB:オート / 27mm(35mm判換算)
ISO200で1/6秒。手ブレ補正がなければとても手持ちでは撮影できないところ。この辺りの効果はさすが
3,648×2,736 / 1/6秒 / F2.8 / -1.3EV / ISO200 / WB:オート / 27mm(35mm判換算)


URL
  パナソニック
  http://panasonic.co.jp/
  製品情報
  http://panasonic.jp/dc/fz28/

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パナソニック、27mmからの18倍ズーム機「LUMIX DMC-FZ28」(2008/07/22)



小山 安博
某インターネット媒体の編集者からライターに転身。無節操な興味に従ってデジカメ、ケータイ、音楽プレーヤー、コンピュータセキュリティなどといったジャンルをつまみ食い。軽くて小さいものにむやみに愛情を感じるタイプ。デジカメ、音楽プレーヤー、PC……たいてい何か新しいものを欲しがっている。

2008/08/22 00:07
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