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【新製品レビュー】ペンタックス「Optio W60」

~28mmレンズ搭載の水中対応スリムモデル
Reported by 中村 文夫

 Optio W60は、高い防水性能を備えたOptio(オプティオ) Wシリーズの最新鋭機だ。ハウジングを使用することなくカメラ単体で水深4mでの使用が可能。見かけは普通のコンパクトデジタルカメラだが、質実剛健な実力を秘めている。


水深4mで連続2時間の使用に耐える防水性能

 Wシリーズの第1号機は、2005年発売のOptio WPだ。防水カメラというと、ヘビーデューティさを強調するあまり武骨なデザインになりがちだが、Optio WPは携帯電話のようなスリムで洗練されたデザインを採用。スタイリッシュ&防水という新ジャンルを開拓することに成功した。このカメラの防水性能は、JIS保護等級8で、水深1.5mで連続30分間の使用に耐えることができた。

 その後、Wシリーズは、画素数を500万から600万にアップしたOptio WPi、顔認識AF&AEを搭載したOptio W10、700万画素を実現するとともに手ブレ軽減モードを搭載したOptio W20、そして防水性能をさらに高め、水深3mで連続2時間の使用に耐えるOptio W30へと進化した。

 今回紹介するOptio W60は、防水性能をさらに強化。JIS保護等級は従来と同じだが、水深4mで連続2時間の使用ができるようになった。要するに、最初は磯遊びやプールサイドでの使用に耐える程度だった防水性能が、シュノーケリングに耐えるレベルにまで到達したというわけだ。もちろん、外観はスタイリッシュなデザインをキープ。普段使いからヘビーなアウトドアユースまで、あらゆるフィールドで気軽に使うことができるオールマイティな製品である。





 今回は、本格的な水中撮影はできなかったが、とりあえず皇居前にある噴水で防水性能を活かした撮影に挑戦してみた。さすがに噴水の中に入るわけには行かないので、水際から腕を伸ばしてカメラを水中に浸けながらの撮影になったが、このような場合、レンズを半分水面に出して、水中と水上の風景を一緒に写すと面白い写真になる。

 ※サムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。


レンズを半分水中に沈めて撮影。水中と水上の被写体が同時に写り、不思議な画が撮れる
2,736×3,648 / 1/60秒 / F3.5 / 0EV / ISO50 / WB:オート / 28mm(35mm判換算)
カメラを完全に水没させて撮影。あくまでも実験のための作例だが、主要な被写体が水中に存在し、水の透明度が高ければ、傑作が期待できるだろう
2,736×3,648 / 1/50秒 / F3.5 / 0EV / ISO50 / WB:オート / 28mm(35mm判換算)

 最初は恐る恐るカメラを水に浸けていたが、しばらく撮影して大丈夫なことが分かると、だんだん撮影スタイルが大胆になってゆく。ただしカメラ本体の比重が水より重く、手からカメラが放れると水底に沈んでしまう。したがって、この点には注意が必要だ。水中も含めて水際での撮影の際は、ネックストラップを付けておくと安心である。


バッテリー/カード/端子カバーを開けた状態。カバーの内側にはゴム製のパッキンを備えている。これで本当に水圧4mに耐えるのかと思えるほどシンプルな作りだが、水圧が加わるとパッキンが押し潰され密着度が高まるので大丈夫だ
 さらに本格的な水中撮影用として、「マーメードモード」を装備。このモードを選ぶと青みが強くなり、水中写真らしさが強調できる。さらに衝撃からカメラ本体を守るため、専用プロテクタージャケット「O-CC812」(1,890円)も用意されている。

 このほか防水機能のメリットとして、カメラを水洗いできることが挙げられる。特に海辺で使用した場合など、そのままにしておくとボディに付着した塩分がトラブルの原因になる。本格的な水中カメラの場合、しばらく真水に浸けて塩分を落とす「塩抜き」作業が大切だが、Optio W60は高い防水性能を備えているので、これが可能。さらに泥などが付いた場合も、水道の蛇口の下で汚れを洗い流せばOKだ。

 Optio W60はCALSモードも搭載している。これは、国土交通省の定める写真管理基準に準拠したモードで、建築土木の分野で設計図通りに工事が行われたかどうかを証明するために用いられる。あまり一般になじみのない機能だが、実はレジャーだけでなく、ビジネス分野における使用も想定されているのだ。


シリーズ初の広角28mmズームを搭載

 Optioシリーズとして初めて採用した機能に、28mmの画角に相当する広角ズームが挙げられる。従来の機種の広角側が38mm相当だったことを考えると、これは大きな進歩だ。引きのない場所で広い範囲が写せることはもちろん、屈折率の関係で画角が狭くなってしまう水中でも、広い画角を確保することできる。

 ズーム比は5倍。Wシリーズ中最も倍率が高く、望遠側は35mm判換算で焦点距離140mmの画角に相当。広角だけでなく望遠側も充実している。その上デジタルズームを使用すれば、最大28.5倍の超望遠撮影もできるほか、被写体に最短で1cmまで近づけるマクロモードも搭載。光路をカメラ内部で90度折り曲げる屈曲光学系の採用で、ズーミング時にレンズが伸び縮みせず、衝撃にも強い。

 ただしレンズカバーは非内蔵。前面に保護ガラスを取り付けた構造のため、指紋などの汚れが付きやすい(SPコーティングが施されているので拭き取りは容易)。また水中から取り出したとき、外気温が高いと温度差によって保護ガラス内部が曇ることがある。しばらく外気に曝しておけば曇りは取れるが、気を付けないと画質低下を招くことがある。


グリーンボタンなどシリーズ共通の操作系を継承

 有効画素数は1,000万。これもWシリーズ初のスペックだ。さらに1,280×720ピクセルで縦横比16:9のハイビジョン動画撮影もできるほか、7.5メガの記録サイズを選べば、16:9の静止画も撮影可能。特に広角28mmと組み合わせると、ワイド感を強調した表現もできる。このほか縦位置で撮影した画像を2カット繋ぎ合わせて、さらに広い画角を得る「デジタルワイドモード」も搭載している。

 撮影モードは、撮影条件によってカメラが自動的に撮影モードを選ぶ「オートピクチャー」のほか、「夜景」、「風景」、「花」、など全部で27にも及ぶ多彩なモードを搭載。種類が多すぎて撮影の度にモードを変えていると、かえって操作が複雑になってしまう。はっきりした目的がない限り、通常はオートピクチャー、あるいはプログラムを選ぶと良いだろう。

 またグリーンボタンによく使う撮影モードを登録しておけば、ボタンを押すだけで呼び出すこともできる。さらにグリーンボタンはファンクションボタンとしても利用可能。ISO感度、露出補正、シャープネス、彩度、コントラストなど全部で11ある項目の中から、任意の4項目を選んで登録ができる。上級者にとって非常に利用価値の高い機能と言えるだろう。


背面の液晶モニターは2.5型で画素数は約23万ドット。操作部は右手操作を基本としたオーソドックスなレイアウトだ。グリーンボタンには、任意の撮影モードのほか、使用頻度の高い機能を4種類まで登録できる

AFモード、ホワイトバランス、ISO感度設定、露出補正をグリーンボタンに設定した状態 AFモード、ホワイトバランス、ISO感度設定、露出補正をグリーンボタンに設定した状態

 AFは9点マルチスポットのほか、中央1点だけでピントを合わせるスポットAFや、自動追尾AFを選ぶこともできる。さらに最大32人まで対応する顔認識AF、撮影時に人物が眼を閉じていたことを知らせる「まばたき検出機能」まで備えている。とにかく撮影機能に関しては、あまりに多彩すぎて選ぶのに困るほどだ。

 いずれにしても、このカメラの最大の特徴は、高い防水性能と広角28mmからのズームの2点に絞れるのではないだろうか。最初に説明した通り、このカメラはスタイリッシュな外観から想像でなきいタフさを隠し持っている。これからの季節、あらゆるシチュエーションで大活躍すること間違いなしのコンパクトデジカメと言えるだろう。


 

●作例
 ※サムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。

光学ズームによる画角の変化


28mm相当(広角端)
3,648×2,736 / 1/200秒 / F4.2 / 0EV / ISO50 / WB:オート / 28mm(35mm判換算)
約77mm相当
3,648×2,736 / 1/160秒 / F4.6 / 0EV / ISO50 / WB:オート / 62mm(35mm判換算)

140mm相当(望遠端)
3,648×2,736 / 1/250秒 / F5.5 / 0EV / ISO125 / WB:オート / 140mm(35mm判換算)

デジタルズームによる画角の変化

 倍率を高くするとザラツキが目立つが解像度は想像以上に高く、レンガの1つ1つがきちんと識別できる。


約11倍
3,648×2,736 / 1/250秒 / F5.5 / 0EV / ISO125 / WB:オート
28.5倍(最大倍率)
3,648×2,736 / 1/250秒 / F5.5 / 0EV / ISO100 / WB:オート

広角撮影

 広角側の画角が広いので、本格的な広角撮影が楽しめる。


3,648×2,736 / 1/200秒 / F3.5 / 0EV / ISO50 / WB:オート / 28mm(35mm判換算) 3,648×2,736 / 1/200秒 / F4.2 / 0EV / ISO50 / WB:オート / 28mm(35mm判換算)

2,736×3,648 / 1/200秒 / F3.5 / 0EV / ISO50 / WB:オート / 28mm(35mm判換算) 2,736×3,648 / 1/125秒 / F5 / 0EV / ISO640 / WB:オート / 94mm(35mm判換算)

1cmマクロ

 1cmマクロを選択すると、レンズ面から1cmの距離までピントが合う。


2,736×3,648 / 1/20秒 / F4.4 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 51mm(35mm判換算

デジタルワイドモード

 縦位置で撮影した2枚のカットをカメラ内で合成。28mmより広い画角を得ることができる。この場合、被写体に対してカメラを水平に構えないと、繋ぎ目が不自然になってしまう。


デジタルワイドモード(縦位置撮影時のカメラの向きの関係で、リンク先の撮影画像は天地が逆になっています)
2,592×1,944 / 1/400秒 / F4.2 / 0EV / ISO400 / WB:オート / ―
28mmで撮影
3,648×2,736 / 1/250秒 / F4.2 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 28mm(35mm判換算)

16:9

 記録サイズで7.5メガを選ぶと、アスペクト比16:9で撮影ができる。このときの画素数は3,648×2,056ピクセル。


3,648×2,056 / 1/500秒 / F4.2 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 28mm(35mm判換算)

3,648×2,056 / 1/80秒 / F4.2 / 0EV / ISO50 / WB:オート / 42mm(35mm判換算)

撮影後のカメラ内手ブレ補正

 手ブレした画像をカメラ内でシャープに加工することが可能。ただし極端に手ブレした画像は、エラーメッセージが表示され補正できない。


撮影した画像をモニターに表示させた状態で十字キーで編集メニューを選ぶと画像の加工ができる Digital SRを選びOKボタンを押すと、手ブレ補正ができる

手ブレの度合いが激しく補正しきれない場合は、エラー表示が出る

3,648×2,056 / 1/13秒 / F4.2 / -2.0EV / ISO100 / WB:オート / 42mm(35mm判換算)

補正後(3,648×2,056ピクセル)

感度

 ISO3200とISO6400を選んだときは記録サイズが5メガに固定。特にISO6400では画質の低下が顕著になる。ISO800を越えるとノイズが目立ち始める。


ISO50
3,648×2,736 / 1/4秒 / F3.5 / 0EV / WB:オート / 28mm(35mm判換算)
ISO100
3,648×2,736 / 1/4秒 / F3.5 / 0EV / WB:オート / 28mm(35mm判換算)

ISO200
3,648×2,736 / 1/4秒 / F3.5 / 0EV / WB:オート / 28mm(35mm判換算)
ISO400
3,648×2,736 / 1/8秒 / F3.5 / 0EV / WB:オート / 28mm(35mm判換算)

ISO800
3,648×2,736 / 1/13秒 / F3.5 / 0EV / WB:オート / 28mm(35mm判換算)
ISO1600
3,648×2,736 / 1/25秒 / F3.5 / 0EV / WB:オート / 28mm(35mm判換算)

ISO3200
2,592×1,944 / 1/50秒 / F3.5 / 0EV / WB:オート / 28mm(35mm判換算)
ISO6400
2,592×1,944 / 1/100秒 / F3.5 / 0EV / WB:オート / 28mm(35mm判換算)

オートブラケット

 オートブラケットの補正量は1EV刻みのみで変更不可。微妙な露出補正が必要なときは、0.5EV刻みで補正ができる露出補正を使うしかない。


0EV
3,648×2,056 / 1/400秒 / F5 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 42mm(35mm判換算)

-1EV
3,648×2,056 / 1/800秒 / F5 / -1EV / ISO400 / WB:オート / 42mm(35mm判換算)

+1EV
3,648×2,056 / 1/200秒 / F5 / +1EV / ISO400 / WB:オート / 42mm(35mm判換算)


URL
  ペンタックス
  http://www.pentax.co.jp/
  製品情報
  http://www.pentax.jp/japan/imaging/digital/compact/optio-w60

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中村 文夫
(なかむら ふみお) 1959年生まれ。学習院大学法学部卒業。カメラメーカー勤務を経て1996年にフォトグラファーとして独立。カメラ専門誌のハウツーやメカニズム記事の執筆を中心に、写真教室など、幅広い分野で活躍中。クラシックカメラに関する造詣も深く、所有するカメラは300台を超える。1998年よりカメラグランプリ選考委員。

2008/07/31 11:55
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