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ニコンD3の新機能「ヴィネットコントロール」を試す

Reported by 本誌:折本 幸治

D3
 ニコンが4月25日に公開したD3用の最新ファームウェアには、「ヴィネットコントロール」という新機能が含まれている。該当するファームウェアのバージョン番号は、ファームウェアAが1.10、ファームウェアBが1.11。編集部でもさっそく試してみた。

 なお今回とり上げるファームウェアは、4月18日にニコンが公開したファームウェアA:1.10、ファームウェアB:1.10を改修したもの。D3に適用すると撮影画像に異常が出るため、いったん公開を中止していた。4月18日公開版で生じる問題は、次の条件で撮影した際、まれに撮影画像に異常が発生するというもの。

  • レリーズモード「高速連続撮影」(CH)または「低速連続撮影」(CL)の「9コマ/秒」
  • 撮像範囲設定「FXフォーマット」(36×24)、または「5:4」(30×24)
  • 画質モード「RAW」または「RAW+JPEG」
  • RAW記録ビットモード「14bit記録」


 ニコンによると、上記の問題は4月25日公開版では発生しないという。4月18日公開版のまま使用しているユーザーは、すみやかに4月25日公開版を適用した方が良いだろう。

 ヴィネットコントロールは、装着レンズに合わせて周辺光量落ち(周辺減光)を低減できるというもので、従来からRAW現像ソフトの「Capture NX」や「Nikon Capture」にも、単体の機能として備わっていた。このところカメラ内での編集機能や自動補正関連に力を入れるニコンだが、ヴィネットコントロールも晴れてカメラ内での自動補正が可能になったわけだ。

 詳しい解説は避けるが、ヴィネット(口径食)とは、ほとんどのレンズが持つレンズの中心と周辺の明るさの差のこと。大口径レンズの絞りを大きく開けたときや、広角レンズや一部の大口径望遠レンズで大きな差が見られる。

 加えてデジタルカメラでは、センサー構造を理由とした周辺部における集光効率の低下が絡むため、特に撮像面積が大きいフルサイズセンサーを搭載する機種で、周辺光量落ちが顕著になる。D3はニコン初のフルサイズセンサー搭載機であり、ヴィネットコントロールはフルサイズ機が抱える問題に対する、ニコンのひとつの答えとも受け取れる。


3段階+オフを選択可能

 ヴィネットコントロールは、撮影メニュー内から選ぶ。場所は「アクティブDライティング」の下、「長秒時ノイズ低減」の上だ。

 設定項目は「弱め」、「標準」、「強め」の3段階のほか、補正がかからない「しない」を選べる。「強め」にするほど周辺光量落ちが低減する。プリント時に画面を引き締めるためあえて周辺を焼き込むことからも、表現内容によっては、何が何でも周辺光量落ちを排除する必要はない。ニコンが「弱め」や「しない」を用意した意図は、よく理解できるものだ。なおCapture NXのような、わざと周辺光量落ちを強める機能はない。


ヴィネットコントロールは撮影メニューの中にある 効果を設定可能。デフォルトは「標準」

 撮影メニューからたどらなければならないので、効果を頻繁に変える場合は面倒だ。ファンクションボタン、プレビューボタン、AE/AFロックボタンへの割当はできない。マイメニューへは登録できる。

 特徴的なのは、レンズに合わせて補正を行なうことだろう。対応するレンズは、GタイプとDタイプのニッコールレンズ。D以前のオールドレンズでこそ使いたい機能に思えるが、レンズ情報が必要ならば仕方がない。

 なお、GタイプやDタイプでも、デジタル専用のDXレンズやシフト対応のPCレンズはヴィネットコントロールに対応していない。また、「AF ED 14mm F2.8D」、「AF Fisheye 15mm F2.8 D」、「AF 20-35mm F2.8 D」、「AF 24-85mm F2.8-4D」でも使用不可能となる。

 さらに制限としては、ヴィネットコントロールを効かせた状態でJPEGやTIFFで撮影すると、過剰補正や補正不足などムラが発生すること。基本的にはRAW(NEF)で使用する機能なのだろう。


Capture NXで開くと、元から機能としてある「ヴィネットコントロール」の適用量が変化していた
 今回は、周辺光量落ちが出やすそうな大口径広角ズームレンズの「Ai AF-S Zoom Nikkor ED 17-35mm F2.8 D (IF)」を用意し、ヴィネットコントロールの各設定を絞り開放のF2.8で撮影。Capture NXの最新版、Ver.1.3.3に読み込ませてみた。Capture NXは1.3.3、ViewNXは1.0.4で、ヴィネットコントロールを適用して撮影したRAWに対応する。

 ヴィネットコントロール適用済みのNEFファイルをCapture NXで開くと、ウィンドウの上枠に「画像更新中」の表示があるうちは、画像の周辺が暗いままになっている。しかし、画像更新中の表示が消えると同時に、周辺が中央部の明るさと同等になる。また撮影情報を見ると、ヴィネットコントロールの項目が追加され、撮影時の設定が確認できる。

 この状態で、従来からCapture NXで使えた「ヴィネットコントロール」機能をエディットリストから呼び出してみると、カメラ側でヴィネットコントロールを適用した画像については、「適用量」のスライダーが自動的に変化していることがわかった。具体的には、しない=0%、弱め=30%、標準=50%、強め=70%。同じレンズで撮影したほかのシーンでも、同じ適用料が表示された。

  • 画像をクリックすると、4,256×2,832ピクセルのJPEGファイルを表示します。
  • 共通設定:D3 / Ai AF-S Zoom Nikkor ED 17-35mm F2.8 D (IF) / 1/6,400秒 / F2.8 / ISO200 / WB:晴天 / 17mm


ロスレス圧縮12bit RAWで撮影→Capture NXで現像

ヴィネットコントロール:しない ヴィネットコントロール:弱め

ヴィネットコントロール:標準 ヴィネットコントロール:強め

RAW+JPEGで撮影→JPEGのまま

ヴィネットコントロール:しない ヴィネットコントロール:弱め

ヴィネットコントロール:標準 ヴィネットコントロール:強め

ロスレス圧縮12bit RAWで撮影→Aperture 2.1で現像

ヴィネットコントロール:強め

まとめ

Aperture 2.1でRAWを開いたところ。上段左から「しない」、「弱め」。下段左から「標準」、「強め」。効果が判別できない
 面白いのは、JPEGとRAWで効果が違うこと。ニコン自らが「JPEG、TIFFでは効果にムラがある」と断っている通り、今回はRAWとかなり違う結果になった。最新の純正レンズでは、あるいはサードパーティ製のレンズではどうなるのかなど、興味は尽きない。

 さらにほかの汎用現像ソフトにRAWを読み込ませると、ヴィネットコントロールの設定いかんに関わらず、同じ周辺光量で表示された。現像しても同じく補正が行なわれない。ちなみにD3本体の液晶モニターで再生すると、効果がしっかり確認できる。

 以上からヴィネットコントロールは、あくまでCapture NXとViewNXにおけるRAW調整機能の一部であり、これらの2本を使わないユーザーの場合、いまのところはほとんど利用する意味がないといってよいだろう。

 とはいえ、RAWからの補正の効果は高く、暗部を無理矢理持ち上げた時に出るようなノイズも現れない。大変高品質で、特に「強め」の効果は驚くほどだ。しかも不自然な印象を受けないのは、さすが純正のソフトだけある。今回、カメラ側で設定しておけば、レンズにあわせて自動的に補正が行なわれるようになったことで、よりCapture NXでのヴィネットコントロールが脚光を浴びると思う。



URL
  ニコン
  http://www.nikon.co.jp/
  ダウンロードページ(デジタルカメラファームウェア)
  http://www.nikon-image.com/jpn/support/downloads/digitalcamera/firmware/index.htm#heading01
  ダウンロードページ(Capture NX)
  http://www.nikon-image.com/jpn/support/downloads/digitalcamera/software/nx.htm
  ダウンロードページ(ViewNX)
  http://www.nikon-image.com/jpn/support/downloads/digitalcamera/software/viewnx.htm
  ニコンD3関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2007/08/24/6896.html



本誌:折本 幸治

2008/05/02 00:51
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