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【新製品レビュー】パナソニック「LUMIX DMC-FX35」

~コンパクトなボディに25mmからの超広角ズームを搭載
Reported by 吉住 志穂

 「LUMIX DMC-FX35」は、去年の秋に発売された「LUMIX DMC-FX33」の後継機です。DMC-FX33では、顔検出と「おまかせiA」(インテリジェントオートが付きましたが、今回はズームレンズの広角端が28mmから25mmへとワイドになり、「暗部補正」(インテリジェントCC)が搭載されました。

 コンパクトデジタルカメラで25mmをカバーするズームレンズが搭載されているのは、現行機種だとリコーの「Caplio GX100」ぐらい。GX100はボディサイズが少し大柄なのですが、DMC-FX35は、DMC-FX33とほぼ同じ大きさのボディのまま、25mmからのズームレンズが搭載されています。ケースやポーチに悩むGX100と違い、ポケットにも入るので携帯性は抜群でしょう。もちろん手ブレ補正も入ってます。

 撮像素子も新型に変更されています。DMC-FX33の1/2.5型有効810万画素CCDから、1/2.33型有効1,010万画素CCDになりました。画像処理で徹底してノイズを抑えたとこのとで、画質にも期待がかかります。また、ハイビジョン動画(720p)も撮影できるようになりました。オプションのコンポーネントケーブルで、ハイビジョンテレビに映し出せます。

 カラーはプレシャスシルバー、グロスゴールド、カクテルピンク、シェルホワイト、エクストラブラックの5色。実勢価格は3万円台前半です。


本体サイズはそのままにレンズがワイド化

 今回試用したのは、カクテルピンクとグロスゴールド。あいかわらず表面仕上げに高級感があり、アクセサリー感覚でおしゃれな印象です。前回試用したDMC-FX33(ショコラブラウン)はマットな手触り感でしたが、今回はつやがありながら、滑りにくい仕上げ。見た目だけでなく、実用性も高いと思います。前回と違い「お嬢様カメラ」のキャッチコピーはついてないのですが、女性におすすめできるスタリングでしょう。

 操作ボタン類は、前モデルと少し違っています。まず、モードダイヤルから撮影/再生切換スイッチが分離したことで、再生だけを楽しみたいときに、モードダイヤルから再生モードを探すことがなくなりました。モードダイヤルは小さくて固いので、頻繁に撮影と再生を繰り返すようなとき便利になったと感じます。

 また、十字ボタン下にあるDISPLAYボタンとQ.MENU(クイックメニュー)ボタンの形が変わりました。前モデルでは半球状でしたが、先端が平らになったことで、押しやすくなったと感じます。ちなみに、以前はクイックメニューではなく、ファンクションメニュー(FUNCボタン)という名前でした。

 上面のスライド式電源スイッチも引き続き採用されています。長押しするタイプと違い、爪の長い女性でも楽に電源を入れられます。





 本体の大きさは、DMC-FX33とほとんど同じですが、幅が0.5mm短くなり、重量が132gから125g(ともに本体のみ)に軽量化されました。前モデルに続いて「おまかせスゴうす」がキャッチコピーになっていますが、この大きさに25mmからの広角ズームレンズが入っているなら納得です。

 液晶モニターは2.5型23万ドット。あいかわらずコントラストが強く、再生画面が美しい液晶モニターです。一時的に明るい画面にする「パワーLCD」や、高い位置から撮影するときに見やすい「ハイアングル」も使い勝手が良くて便利です。本当は何もせずに、いつでもきれいに見えればいいのですが。実は前モデルから、液晶モニターのドット数が20.7万から23万ドットに変わっています。

 充電器はコンセント差し込み口を折り畳んで収納できるタイプ。バッテリーの持ちは公表で約290枚です。


見た目は普通のレンズですが、実は25~100mm F2.8~5.6の超広角4倍ズーム

新しく撮影/再生切換スイッチを搭載


スライド式の電源スイッチは健在 SDHC/SDメモリーカードスロットとバッテリー室


コンポーネント出力端子を装備し、ハイビジョンテレビに映し出せる

充電器とバッテリー


「おまかせiA」と「暗部補正」

 今回の特徴のひとつが、新しく搭載された「暗部補正」でしょう。カタログや撮影メニューでの文字は「暗部補正」になっていますが、説明書では「インテリジェントCC」という名前です。パナソニックはほかにも「おまかせiAモード」と「インテリジェントオート」が同じ意味だったりと、機能の名前を説明するのがややこしいときがあります。

 暗部補正は、撮影シーンの影を明るくする機能です。最近は、デジタル一眼レフカメラにも似たような機能が流行っているのでおなじみでしょう。DMC-FX35で暗部補正が働くのは、主に2通りのケースです。ひとつは、インテリジェントオートやシーンモードのとき。インテリジェントオートでは、必ずONになります。シーンモードはモードによってONになるものがあります。もうひとつは、通常撮影モード(カメラマークのアイコン、プログラムAE)の撮影メニューで、暗部補正をONにしたときです。暗部補正をON・OFFできるのは、通常撮影モードのときだけになります。どちらにしても、補正の強さを指定することはできません。

 通常撮影モードで暗部補正のONとOFFを撮り比べてみると、確かに影が明るくなり、ディテールが見えやすくなりました。画像処理でコントラストなどを変えているほか、シャッター速度やISO感度も自動的に調整されます。窓の外の景色は白トビさせたくないし、屋内の被写体もある程度はっきり見せたい、といったときに使うと便利ですしょう。ただし効果は微妙で、並べてやっとわかる程度のときもあります。あくまでもカメラが判断した効果が付くので、意図した効果を付けるのは難しいようです。また、再生時に効果を付けられればもっと良かったと思います。


最大記録画素数が1,010万になった おまかせiAことインテリジェントオートが便利


新機能の暗部補正(インテリジェントCC)

クイックメニューからも設定できる


従来通り、十字ボタン上で逆光補正も可能

インテリジェントISOも従来通り機能する


 暗部補正を除くと、インテリジェントオートは基本的に変わっていません。ホームページによると「顔認識」、「風景認識」、「接写認識」、「動き認識」、「顔&夜景認識」の5種類です。顔、動き、明るさ、距離など被写体の情報から、5種類をカメラが選択してくれます。ちなみに説明書では、「i人物」、「i風景」、「iマクロ」、「i夜景&人物」、「i夜景」が選ばれると書かれています。

 この中で驚かされるのが「i夜景&人物」と「i夜景」でしょう。カメラが夜景だと判断したとき、ストロボ発光がオートで、さらに顔を検出すると「i夜景&人物」になります。いわゆるスローシンクロです。一方、ストロボ発光が強制オフだと「i夜景」モードになります。このとき、手持ちだとISO感度が上がり、三脚だと低感度になります。手ブレ補正機構のセンサーを利用しているそうですが、単純に夜景モード=スローシャッターでないところが、手ブレ補正機構と高感度が発達した現在の事情を反映しているのかなと思います。


優秀な25mmの描写

 インテリジェントオートと暗部補正以外の撮影機能は、DMC-FX33とだいたい同じです。連写速度が少し遅くなっていますが、オートブラケットなどの便利な機能も引き続き利用できます。顔認識もあいかわらず検出までの速度が速く、精度も高くて問題なく使える印象です。

 レンズは25~100mm相当の光学4倍ズームレンズ。DMC-FX33では28~100mm相当の光学3.6倍でした。広角端がワイドになった分、しっかり高倍率になっています。開放F値は同じでF2.8~5.6。被写体まで最短5cmのマクロモードも変わりありません。広角で被写体に近づけないと物足りなくなりますが、5cmなら問題ないでしょう。

 歪曲収差は思ったほどありません。画像の四隅がぼやけたようになりますが、最近の一眼レフカメラの超広角レンズと遜色ないレベルです。望遠端の糸巻き型の収差は、被写体によっては少し気になりました。

 今回は、画像処理エンジンでカラーノイズを減らしたとのことですが、確かにISO100からISO400まであまり差が見えません。その代わり、ISO100でも粉っぽい描写になることがあり、輪郭の切れがいまひとつに感じられましたが、よほど大きくプリントしたり拡大して鑑賞しない限り、実用上、気になることはないでしょう。


露出補正画面 オートブラケット


オートーフォーカスモード。顔認識ももちろん搭載

カラーモード

まとめ

 もともと完成度の高いシリーズでしたが、コンパクトなボディに25mmからのズームレンズを搭載したことで、独特の魅力を持つ製品になりました。超広角派には、レンズの歪みが少ないのもうれしいところでしょう。

 色々な機能がありますが、とりあえずインテリジェントオートにしておけば上手に撮れるのもポイント。画角といい、オート機能の賢さといい、コンパクトデジタルカメラの最先端を見た気がします。25mmの超広角を持ち歩くのは楽しいですよ。


シーンモードメニュー1

シーンモードメニュー2


メモモードも引き続き搭載

内蔵メモリに撮った地図などを記録しておける


サムネイル表示が最大70枚になった


 

●作例

  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 作例下の撮影データは、記録解像度(ピクセル)/露出モード/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/35mm判換算での焦点距離を表します。
  • 強調のため一部の項目を1行目に抜粋した場合もあります。


画角

広角端
3,648×2,736 / 通常撮影 / 1/250秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:日陰 / 25mm
望遠端
3,648×2,736 / 通常撮影 / 1/60秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / WB:日陰 / 100mm

歪曲収差

広角端
3,648×2,736 / 通常撮影 / 1/250秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:日陰 / 25mm
望遠端
3,648×2,736 / 通常撮影 / 1/60秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / WB:日陰 / 100mm

暗部補正(インテリジェントCC)

 暗部補正をONにすると、部屋の中が少し明るくなるのがわかります。この条件では、前モデルにもあった逆光補正の方が明るくなりますが、白トビもしやすくなるようです。


暗部補正OFF
3,648×2,736 / 通常撮影 / 1/250秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 25mm
暗部補正ON
2,736×3,648 / 通常撮影 / 1/320秒 / F2.8 / 0EV / ISO160 / WB:オート / 25mm

インテリジェントオート(i夜景+人物、i夜景)

 通常撮影モードでは背景が暗くなりましたが、インテリジェントオートにするとi夜景+人物が働き、背景が明るくなりました。また、ストロボ強制オフにすると、三脚撮影ではISO100、手持ち撮影ではISO800へと感度が自動的に変わりました。


通常撮影モード
3,648×2,736 / 通常撮影 / 1/30秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 25mm
インテリジェントオート(i夜景+人物)
3,648×2,736 / 通常撮影 / 1秒 / F4 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 25mm

通常撮影モード
3,648×2,736 / 1/30秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 25mm
インテリジェントオート(i夜景&人物)
3,648×2,736 / 1秒 / F4 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 25mm

ISO感度

 夕方に撮った遠景の桜。コンパクトデジタルカメラにとって、非常にきびしい被写体です。感度を上げてもISO400まで輪郭があまり変化しませんが、色が少しずつ抜けていくのがわかります。


ISO100
3,648×2,736 / 通常撮影 / 1/30秒 / F5.6 / 0EV / WB:日陰 / 100mm
ISO200
3,648×2,736 / 通常撮影 / 1/60秒 / F5.6 / 0EV / WB:日陰 / 100mm

ISO400
3,648×2,736 / 通常撮影 / 1/125秒 / F5.6 / 0EV / WB:日陰 / 100mm
ISO800
3,648×2,736 / 通常撮影 / 1/250秒 / F5.6 / 0EV / WB:日陰 / 100mm

ISO1600
3,648×2,736 / 通常撮影 / 1/500秒 / F5.6 / 0EV / WB:日陰 / 100mm

カラーモード

標準
3,648×2,736 / 通常撮影 / 1/400秒 / F4.3 / 0EV / ISO100 / WB:晴天 / 50mm
ナチュラル
3,648×2,736 / 通常撮影 / 1/400秒 / F4.3 / 0EV / ISO100 / WB:晴天 / 50mm

標準
3,648×2,736 / 通常撮影 / 1/400秒 / F4.3 / 0EV / ISO100 / WB:晴天 / 50mm
白黒
3,648×2,736 / 通常撮影 / 1/400秒 / F4.3 / 0EV / ISO100 / WB:晴天 / 50mm

セピア
3,648×2,736 / 通常撮影 / 1/400秒 / F4.3 / 0EV / ISO100 / WB:晴天 / 50mm
クール
3,648×2,736 / 通常撮影 / 1/400秒 / F4.3 / 0EV / ISO100 / WB:晴天 / 50mm

ウォーム
3,648×2,736 / 通常撮影 / 1/400秒 / F4.3 / 0EV / ISO100 / WB:晴天 / 50mm

作品

3,648×2,736 / 通常撮影 / 1/400秒 / F3.8 / +0.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 36mm

3,648×2,736 / インテリジェントオート(iマクロ) / 1/320秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 25mm


3,648×2,736 / インテリジェントオート / 1/160秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 25mm

3,648×2,736 / 通常撮影 / 1/60秒 / F5.6 / +1EV / ISO400 / WB:オート / 100mm


3,648×2,736 / 通常撮影 / 1/40秒 / F2.8 / -0.3EV / ISO100 / WB:白熱灯 / 25mm

3,648×2,736 / 通常撮影 / 1/10秒 / F5.6 / +0.3EV / ISO400 / WB:オート / 100mm


2,736×3,648 / 通常撮影 / 1/50秒 / F2.8 / +0.3EV / ISO100 / WB:オート / 25mm
3,648×2,736 / インテリジェントオート(iマクロ) / 1/100秒 / F4.3 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 47mm


3,648×2,736 / 通常撮影 / 1/100秒 / F4.7 / +0.7EV / ISO100 / WB:オート / 59mm

3,648×2,736 / 通常撮影 / 1/125秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 25mm


3,648×2,736 / 通常撮影 / 1/400秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 25mm

3,648×2,736 / 風景 / 1/320秒 / F4.7 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 59mm



  パナソニック
  http://panasonic.co.jp/
  製品情報
  http://panasonic.jp/dc/fx35/
パナソニック、25mmからの4倍ズーム搭載「LUMIX DMC-FX35」(2008/01/30)




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