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【特別企画】ニコン「Capture NX」でRAWを印象的に仕上げる(後編)

~D-ライティングや選択ツールを使った機能を紹介
Reported by 小山 伸也

対応OSはWindows 2000/XP/Vista、Mac OS X 10.3.9以降。 価格はオープンプライス
 前回、Capture NXの特徴の1つである「U Pointテクノロジー」(コントロールポイント)について紹介した。Capture NXから加わったU Pointテクノロジーは、基本的に範囲選択を行なうことなく、画像の一部を調節できる画期的な機能だ。Photoshopでいえば「色域選択」に近いが、さらに汎用性が高くてインテリジェント。これだけで、色を好みに変化させることができるとあって、Captuer NXの中でも最も評価されて良い機能だろう。

 もちろんCapture NXには、旧来のNikon Captureから引き続き搭載する機能も利用できる。今回は話題をがらりと変えて、U Pointテクノロジー以外の全般的な機能についてとりあげたい。

 例えば調整メニューからは、「明るさ」、「カラー」、「フォーカス」、「補正」といった機能が呼び出せる。僕の場合、画像を開いてからこれらで全体的な調整を行ない、その後にカラーコントロールポイントなどで部分的な調整をする。Capture NXならではの機能もあるので、まずは調整メニューでの機能をいくつか紹介する。

  • リンク先の調整前および調整後の画像は、RAWによる撮影画像、または現像後のJPEGファイルをCapture NXで調整後、800×535ドットにリサイズしたものです。


屋内などで撮影した暗めの画像を明るくする

 メニューバーの「調整」のうち、「明るさ」には、「レベルとトンカーブ」、「コントラストと明るさ」、それらを自動的に調整する「自動レベル」調整がある。加えて特徴的なのが、D80などに搭載されている「D-ライティング」だろう。Nikon Captureから引き続き搭載された機能で、ハイライトはそのままに、シャドウを持ち上げる機能だ。屋内など暗い場所で撮った画像で威力を発揮する。

 D-ライティングには「高速」と「高画質」があり、高画質の方がキメ細かい調整が可能だ。D-ライティングを調整メニューから選ぶと、D-ライティングパネルが現れる。高速では「調整」と「カラーブースター」だけだが、高画質だとこれらに加えて「ハイライト」の調整が行なえる。ハイライト調整はストロボを使った際に有効。今回の作例ではストロボを使っていないので、ハイライト調整は不要だが、発光させた場合には調整を行なった方がうまくいくことが多い。


調整前 調整後

D-ライティングで「高速」を選んだところ。高画質を選ぶとハイライトの調整も可能になる

暖かみのある光にしたいときは

 RAWでの撮影のメリットはいろいろあるが、その1つは色温度を撮影後に調整できることだろう。しかし、画像全体の色相の調子が変わってしまい、思い通りにならないこともある。そんな時に使いたいのが、「カラー」の中にある「彩度/暖色」。暖色系スライダーを右方向へ動かすと赤くなり、左方向に動かすと青くなるので、自分のイメージを強調しやすい。

 下の作例では、夕日が銀色の車体に当たったほのぼのとした雰囲気をイメージしていたが、あいにくJPEGモードのWB:オート(オートホワイトバランス)で撮影したので、Capture NXでの調整に期待するしかなかった。暖色系を+側へ調整するだけでなく、彩度も少し+側へ調整した。


調整前 調整後

ホワイトバランスで調整するよりも、「暖色系調整」の方が上手く行く場合も多い

 ストロボを使ってのモデル撮影では、青みを帯びることでやや冷たい感じになってしまうことがある。この画像は、RAWデータ形式なのでホワイトバランスでも調整できるが、彩度/暖色の方が扱いやすいようだ。


調整前。ストロボを使ったので、少し冷たい印象になった 調整後。これも暖色系調整でカバーできる

レンズの歪みを低減する

 AF一眼レフカメラの台頭と合わせて、ズームレンズが多く発売されるようになり、昨今では高倍率ズームが基本レンズとして使われるようになってきた。画質も十分に満足できるものとなってきたが、単焦点レンズと比べると、広角側において歪みが目立つ。これを補正できるのが、調整メニュー「補正」内の「ゆがみ補正」だ。

 操作はいたって簡単。「ゆがみ補正」のダイアログを開くと、最初にある程度の補正がかかる。さらに画像を見ながら、ゆがみ補正パレットのスライダーを動かして好みの補正を行なう。

 タル形でも糸巻き形でも、ある程度の補正が可能だ。画像を見ながらスライダーを動かして、ゆがみが無くなったあるいは最も減ったところでスライダーを止める。


調整前 調整後

読み込んだ時点で自動的に補正がかかる。さらに細かい調整がパレット内で可能

背景をもっとボカしたい

 コントロールポイントでは、ポイントを決めて効果の及ぶサイズ(円形)をスライダーで調整する。またD-ライティングでは、調整対象となる暗い部分が自動的に選択される。どちらも効果のおよぶ範囲は、自動あるいは半自動だ。しかし、Capture NXでは自分で範囲を選択する手段がほかにもある。

 花などを撮影すると、花芯以外にピントが合ったり、レンズによっては被写体に近寄れず、ボケが思いのほか小さかったりして、撮影意図と異なる結果になることが多い。そのような場合に使うのが、調整メニュー内の「フォーカス」だ。この調整では、併せて選択ブラシを使う。選択ブラシは、調整箇所を選ぶことや、調整箇所内の効果の量を調整することが可能だ。

 今まで説明した調整とは少し異なり、「フォーカス」のダイアログを開いてボカす半径や不透明度(効果の効き方)を決め、「選択ブラシ」でボカしたいところをなぞっていく。具体的には、「ぼかし(ガウス)」を選んでパレットを開き、ボカシの半径や不透明度を操作すると、画像全体がボケる。その後、ツールバーから選択ブラシで「+」を選んで、ボカしたいところをなぞるとその部分がボケる。

 もし、わかりにくければ、選択ブラシを先に選択してボカす部分を塗りつぶしてからフォーカスのダイアログを開いても調整可能だ。


調整前 調整後

「フォーカス」から「ぼかし(ガウス)」を選び、ボカしたい部分を選択ブラシで範囲をなぞる

先に選択範囲をブラシでなぞっておき、その後に「ぼかし(ガウス)」を適用しても良い

撮影画像に写ったゴミをとる

 デジタル一眼レフカメラでメジャーなトラブルといえば、撮像素子についたゴミやホコリが画像に写り込むことがだろう。Capture NXに「ゴミ取り」というそのものずばりの機能はないが、対処方法はある。「フィルター」の「粒状/ノイズを加える」と選択ブラシを組み合わせて使う方法だ。

 まず、ゴミやホコリが付着した部分を拡大する。その後、ツールバーの選択ブラシの+をクリックして、ゴミやホコリの部分に持っていく。もし、選択ブラシの大きさがゴミの大きさと合っていない場合は、右クリックで現れる「選択ブラシオプション」でブラシのサイズを調整。調整したら、選択ブラシでゴミ部分を塗りつぶす。

 選択ブラシを使うと、「カラー化する」パレットが現れるので、パレット内のスポイトアイコンをクリック。マウスカーソルがスポイトのかたちになるので、ゴミやホコリの近辺で左クリックする。するとゴミがあった場所の色が、周辺の色と同じようになる。上手く周辺の色に馴染まない場合は、スポイトの隣にある「カラー」をクリックする。すると、カラピッカーが現れるので、選択範囲内の色をカラーピッカーで微調整できる。

 この状態では選択範囲はベタ塗りの状態なので、その後、「フィルター」メニューの「粒状/ノイズを加える」を呼び出す。画像全体の粒状性が変化するので、ゴミのあった部分がその周辺と馴染むように、ダイアログ内の「粒子の密度」を調整する。うまくいったら「OK」クリックする。このままではざらつきが残ったままなので、再度、選択ブラシの+をクリックして、ゴミが付いて修正している部分だけになるようにする。文章にするとおおごとに思えるが、操作そのものは5分もかからないだろう。

 そのほかにもカメラで基準となる画像を撮影し、それを基に自動的にゴミをとる「イメージダストオフ」機能もある。Nikon Captureから知られている機能で、現行のニコンデジタル一眼レフカメラでももちろん使用可能。選択ブラシによる手動でのゴミとりと併せて使えば強力だ。


調整前。花の左にゴミが見える
調整後

まずはゴミを拡大して表示する
選択ブラシでゴミを選択

カラーピッカーで選択部分の色を整える
粒状/ノイズを加えるで馴染ませる

使いやすいエディットリスト

 Capture NXの特徴のひとつは、ファイル形式であるNEFといえる。Capture NXで画像を展開した場合、NEF以外のJPEG形式でもTIFFでも、PC上でNEFとほぼ同じように扱える。NEFと同じように、元画像は非破壊で編集するため、調整を重ねても劣化は少ない。また、不要となった調整項目を削除できるなど、自由度の高い編集が行なえる。ここで重要になるのが、アプリケーションウィンドウの右端にある「エディットリスト」の概念だ。

 RAWデータ形式で撮影した画像は、まず、エディットリストの「1.基本画像調整」で、大まかな調整を行なってから、コントロールポイントなど細かい調整に移る。行なった調整はエディットリストに表示され、チェック印がついている項目が有効となっている。効果の有無やイメージに善し悪しによってチェックを外して確認するができる。その結果、不要と判断した調整は、エディットリストから削除すればいい。

 エディットリストに従うと操作の手順がわかりやすく、やり直しなどの自由度も高い。基本画像調整には、ホワイトバランスや露出補正などの基本項目に加え、前述したD-ライティングや、倍率色収差、ヴィネットコントロールといったレンズ周りの調整項目も含んでいる。解像度の低いディスプレイでは場所をとるのが難点だが、画面端に折り畳むことも可能だ。


右端のエディットリストがCapture NXの理解をする早道。基本的な調整項目はここから選べる
基本画像調整以外の調整もエディットリストに追加される。後から効果を一時的に消したり、完全に削除するなどの応用が可能だ

終わりに

 筆者が、いわゆるレタッチソフトを扱うようになって10年近くになる。当初、写真に関する機能といえば、明るさ、コントラスト、ヒストグラム、トーンカーブぐらいだったが、いまやここまで豊富な機能を搭載したものになった。

 特に、前編で解説したU Pointテクノロジーは、レタッチソフトの概念を変えてしまうほど強力。使い方を覚えてしまえば、こんなに直感的で思い通りの調整が行なえるソフトはないだろう。Capture NXは発売されてようやく1年を迎える新しいレタッチソフトだ。ニコンユーザーはもちろんのこと、U PointテクノジーはJPEGでも使えるので、他メーカーのユーザーでも、気になる人は体験版を使ってみて欲しい。



URL
  ニコン
  http://www.nikon.co.jp/
  トライアル版ダウンロードページ
  http://www.nikon-image.com/jpn/products/software/capturenx/download.htm
  製品情報
  http://www.nikon-image.com/jpn/products/software/Capture NX/

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小山 伸也
中央大学理工学部卒業後、オーディオメーカー、カメラメーカーを経て2002年春にフリーになる。カメラ雑誌で写真やカメラの解説、鉄道や航空雑誌で車両や航空機の解説など幅広く活躍している。カメラメーカー勤務時には日本カメラショーなどの講師を務めていた。1955年生まれ東京都出身。

2007/06/26 00:16
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