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【新製品レビュー】ニコン COOLPIX P5000

~こだわりの装備が魅力の高機能コンパクト
Reported by 中村 文夫

COOLPIX P5000。実勢価格は4万5,000円前後
 ニコンはコンパクトデジカメに「COOLPIX」(クールピクス)という共通の名前を与え、製品の特徴に合わせ、パフォーマンス、スタイル、ライフの3グループに分類している。今回紹介する「COOLPIX P5000」は、最もランクの高い「パフォーマンス」に属する製品で、充実した機能と高画質が特徴である。ちなみに現在のCOOLPIXのラインアップのうち、パフォーマンスモデルはP5000のみ。早い話がP5000は、ニコンのコンパクトデジカメの最上位機ということになる。

 P5000に採用されているCCDは1/1.8型で有効画素数は1,000万。現行COOLPIXの中で最も画素数が多い。レンズは35mm換算の画角で焦点距離36~126mmに相当する3.5倍ズームを搭載。ズーム比を低く抑えることで高画質化を図っている。さらに、いわゆるスタイリッシュモデルのようにボディが極薄ではないので設計に無理がなく、ディストーションも少な目だ。

 ただし上位クラスを狙うのであれば、広角側の画角がもう少し広くても良かったのではないだろうか。とりあえず専用のワイドコンバーターが用意されていて、これを装着すれば35mm換算で24mmの広角撮影が可能だが、アダプターリングを併用するなど、かなり物々しい装備になる。





レンズは、7.5mm~26.3mm、F2.7~F5.3の3.5倍ズーム。画角を35mm判に換算すると36~126mmに相当する。コンバージョンレンズを取り付ける際は、外周のリングを取り外す

多彩な撮影モードを装備

 このカメラの性格を最も強く表しているのが、多彩な撮影モードといえるだろう。モードダイヤルを見ればわかるとおり、ダイヤル操作ひとつで、絞り優先AE、シャッタースピード優先AE、マニュアル露出の選択が可能。任意にセットできるシャッタースピードは8秒~1/2,000秒。F値は広角側で2.7~7.6、望遠側で5.3~7.3だ。シャッタースピードの範囲は広いが、F値の変化する範囲は意外と狭く、特に望遠側は実質1段分しか調節できない。

 CCDの小さなコンパクトデジカメの場合、絞ると絞りの口径が極端に小さくなり、回折現象による画質の低下が顕著になるからだ。したがってF値を変えても、被写界深度はそれほど変化しない。このカメラで被写界深度を上手く操るには、被写体までの撮影距離と焦点距離の選択が重要になる。そんな意味で、このカメラの絞り優先AEは、上級者向けの撮影モードといえるだろう。

 「仕上がり設定」を利用すれば、好みの画像に調整ができる。設定内容は、標準、ソフト、鮮やか、より鮮やか、ポートレート、白黒の6種類。さらにカスタマイズを選べば、コントラスト、輪郭強調、彩度調整が、マニュアルで可能。RAWには非対応だが、この機能を使いこなせば、かなり高レベルで微調整ができる。

 ニコンは、フィルムカメラの時代に世界で初めて手ブレ補正機能(以下VRと略す)を実用化したことで知られているが、一眼レフも含めレンズシフト方式にこだわり続けている。公称値ではシャッタースピードで3段分以上の効果があるとされ、動画撮影時にもVRが利用できる。また三脚撮影時のためにセットアップメニューでVRをオフにすることも可能。さらにニコンのコンパクトデジカメは、フィールドスコープに取り付けると超望遠撮影ができるが、この場合にもVRはオフにすべきだ。

 モードダイヤルをブレ軽減モードに合わせると、VRに加え、高感度、BSSの3つの機能が同時にセットされる。BSSとは、ベストショットセレクターの略で、このモードをオンにすると、シャッターを押している間、最高10枚を連続で撮影。この中から最もシャープな像を1枚だけ記録するニコン独自の方式だ。シャッターチャンスを重視する撮影には向かないが、望遠撮影時に使用すれば、より高いブレ防止効果を得ることができる。


撮影モードはボディ中央のモードダイヤルで選択。絞りやシャッタースピードの変更は、右側のコマンドダイヤルを使用する。アクセサリーシューを備え、専用ストロボの取り付けが可能 ボディ背面の右手親指が当たる部分にはラバーが貼られ、ホールディング感を高めている。この部分のスペースは狭いが、前側にグリップがあるのでとても構えやすい

電源は充電式の専用リチウムイオンバッテリーを使用。記録メディアはSDカード。21MBの内蔵メモリも搭載している ボディ側面にあるUSB端子。下のカバーはACアダプター使用時、ケーブルを通すための窓

高度な使い方にも対応

 顔認識AFも、ニコンが初めて採用した機能だ。これは空港などで個人を特定するセキュリティチェック用ソフトの応用で、最大で3人まで認識が可能。シーンモードで顔認識AFを選択したときに利用でき、カメラを人物に向けると、自動的に顔を検出。黄色いフレームが顔のを囲み、シャッターを半押しするとフレームが緑色に変わりピントと露出をロック。一旦、顔を検出してしまえば、フレームは顔の動きに追従する。

 しかし、検出する前に慌ててシャッターボタンを半押しにするとAFフレームが中央に固定されてしまう。また追従できなくなると検出を最初からやりなおすので、じれったさを感じることがある。すべてのモードで顔認識AFが使えない理由は、この当たりにあるのかも知れない。


顔認識AFを選ぶとこのマークを表示。人物の顔を認識するとフレーム表示に変わる
PIE2007のニコンブースにて顔認識AFで撮影した例。かなり背景がゴチャゴチャしているが、人物の顔にピントが合った

 ISO感度は最高3200まで対応。ただし3200時は、画像サイズが5MB(2,592×1,944ピクセル)に制限される。そのため画像が甘くなった印象を受けるが、逆にノイズは目立たなくなる。またブレ軽減モード時、自動的に感度がアップするのは1600まで。高感度モードの場合も同様である。いずれにしても、1600以上はかなり画像が荒れるので、その点は理解して使う必要がある。

 最近のコンパクトデジカメは、薄さを重視するあまり、ホールディングが犠牲にした製品が多い。しかし、P5000の場合、ボディの厚みが適度で、ホールディング感が高い。また液晶モニターが2.5型と大きいにもかかわらず、ボディに厚みがあるお陰でボタン類の操作もしやすい。

 さらに実像式の光学ファインダーも装備。VR機能に頼るのではなく、カメラの持ちやすさを重視することで、手ブレ防止効果を高めている。この点はとても重要で、デザインと機能を両立させた成功例といえるだろう。また高級機の名に恥じず、ボディ前カバーにマグネシウム合金を採用。さらに外部ストロボが装着できるなど、高度な使い方にも対応できる。通常のコンパクトタイプではもの足りないが一眼レフまでは持ちたくない、というユーザーにお勧めの1台である。


実像式光学ファインダーを装備。手ブレ防止だけでなくバッテリーの節約にも貢献する
電源スイッチをオフにした状態。ボディの厚みも適度でホールディング感が高い

作例

  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 作例下の撮影データは、記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/35mm判換算の焦点距離を表します。
  • 強調のため一部の項目を1行目に抜粋した場合もあります。


●画角


36mm相当
3,648×2,736 / 1/130秒 / F4.3 / 0EV / ISO64 / WB:オート
75mm相当
3,648×2,736 / 1/126秒 / F3.9 / 0EV / ISO64 / WB:オート
126mm相当
3,648×2,736 / 1/125秒 / F5.3 / 0EV / ISO126 / WB:オート

●絞りによる被写界深度の変化

 広角側の場合、絞り開放ですでにパンフォーカスになってしまい、絞りを絞ってもほとんど変化がない。望遠側も良く見るとわずかに違っているというレベルで、絞りを変えても、それほど被写界深度は変化しない。近距離で望遠側による撮影を行なうと、被写界深度の変化が顕著になる。

  • 広角端


F2.7
3,648×2,736 / 1/94秒 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 36mm
F4.3
3,648×2,736 / 1/35秒 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 36mm
F7.6
3,648×2,736 / 1/12秒 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 36mm

  • 望遠端


F5.8
3,648×2,736 / 1/78秒 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 126mm
F6.5
3,648×2,736 / 1/62秒 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 126mm
F7.3
3,648×2,736 / 1/56秒 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 126mm

  • 近距離


F3.1
3,648×2,736 / 1/370秒 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 48mm
F7.7
3,648×2,736 / 1/62秒 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 48mm

●ISO感度

 ISO1600を境に急激にノイズが増える。またISO3200のときは記録解像度が2,592×1,944に減っているので、全体に像が甘く見える。


ISO400
3,648×2,736 / 1/2秒 / F4.3 / 0EV / WB:オート / 89mm
ISO800
3,648×2,736 / 1/10秒 / F4.3 / 0EV / WB:オート / 89mm

ISO1600
3,648×2,736 / 1/7秒 / F4.3 / 0EV / WB:オート / 89mm
ISO2000
3,648×2,736 / 1/6秒 / F4.3 / 0EV / ISO2000 / WB:オート / 89mm

ISO3200
2,592×1,944 / 1/12秒 / F4.3 / 0EV / ISO3200 / WB:オート / 89mm

マクロ

 マクロAFを利用すると、広角側でレンズ面から4cmまでピントが合う。望遠端の最短撮影距離は40cm。望遠側で撮影する場合、被写体までの距離が近ければ、被写界深度を浅くすることができる。


3,648×2,736 / 1/57秒 / F2.7 / 0EV / ISO77 / WB:オート / 36mm
3,648×2,736 / 1/166秒 / F3.8 / 0.7EV / ISO64 / WB:オート / 36mm

3,648×2,736 / 1/151秒 / F5.1 / -0.3EV / ISO74 / WB:オート / 117mm

仕上がり設定

標準
3,648×2,736 / 1/309秒 / F5.4 / 0EV / ISO64 / WB:晴れ / 48mm
ソフトに
3,648×2,736 / 1/290秒 / F5.4 / 0EV / ISO64 / WB:晴れ / 48mm

鮮やかに
3,648×2,736 / 1/307秒 / F5.4 / 0EV / ISO64 / WB:晴れ / 48mm
より鮮やかに
3,648×2,736 / 1/291秒 / F5.4 / 0EV / ISO64 / WB:晴れ / 48mm

ポートレート
3,648×2,736 / 1/313秒 / F5.4 / 0EV / ISO64 / WB:晴れ / 48mm
モノクロ
3,648×2,736 / 1/274秒 / F5.4 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 36mm

付属ソフト「Picture Project」で撮影データを表示させると、仕上がり設定の変化は階調補正、彩度調整、輪郭強調の3項目の組み合わせによるものだとわかる


URL
  ニコン
  http://www.nikon.co.jp/
  製品情報
  http://www.nikon-image.com/jpn/products/camera/compact/coolpix/p5000/

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中村 文夫
(なかむら ふみお) 1959年生まれ。学習院大学法学部卒業。カメラメーカー勤務を経て1996年にフォトグラファーとして独立。カメラ専門誌のハウツーやメカニズム記事の執筆を中心に、写真教室など、幅広い分野で活躍中。クラシックカメラに関する造詣も深く、所有するカメラは300台を超える。1998年よりカメラグランプリ選考委員。

2007/04/04 00:01
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