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【新製品レビュー】アップル Apple TV

~iPhotoと連携できるHD出力対応のメディアプレーヤー
Reported by 本誌:折本 幸治

3月23日発売の「Apple TV」。Apple Storeでの価格は3万6,800円
 アップルが23日に国内向けに発売した「Apple TV」。すでにAV WatchやBroadband Watchで詳細をお伝えしているが、ここでは写真再生機能に的を絞り、主な機能と使用感などを報告する。

 Apple TVの基本機能を一言で説明すると、「iTunesとの同期機能を備えたネットワークメディアプレーヤー」になる。Macintosh、Windows問わず、すでに音楽やPodcastなどで、iTunesを愛用している人も多いだろう。基本装備としては、40GBのHDD、Ethernet端子、IEEE 802.11nドラフト1.0準拠の無線LAN機能などを搭載。テレビへの出力端子は、HDMIおよびコンポーネント端子のみという割り切りも面白い。操作は付属のリモコンで行なう。iTunesとの同期は、Wiondows、Macitoshを問わず可能だ。

 Apple TVで扱えるコンテンツは、大きく別けて動画ファイル、音声ファイル、静止画ファイルの3タイプ。このうち動画ファイルと音声ファイルの再生は、PC/Macの任意ファイルとApple TVを同期させる方法と、PC/Macからのストリーミング再生(最大5台まで)のどちらかを選べる。一方静止画は、必ず同期作業を行ない、Apple TVのHDDに取り込む必要がある。一度同期させれば、Apple TV単体での再生が可能になる。


シンプルな天面。ロゴは光らない
背面にもアップルマークが

接続端子。HDMI、コンポーネント、アナログ音声のみ
同梱品。リモコンの「Apple Remote」は、Mac付属のものと同じようだ

 同期はiTunesを介して行なう。iTunesのメインメニューの「ソース」→「同期」→「同期をオン」を選ぶと、Apple TVを接続したテレビに5桁のパスコードが表示される。その後、PC/MacのiTunesを起動し、[デバイス]として表示されるApple TVを選択すると、iTunes上にパスコード入力画面が出現。この画面にApple TVが表示しているパスコードを入力すると認証が完了し、同期が始まる。

 Mac OS Xの場合は、任意のフォルダや画像を指定して同期できるほか、iTunes上でAperture、またはiPhotoのアルバムと同期できる。これらのソフトで画像を管理しているユーザーには大変便利だ。すべてのアルバムを一気に同期させてもいいし、任意のアルバムだけを同期させることも可能。一度アルバム→Apple TVの同期作業を行なっておけば、Mac上でアルバムの内容を変更したとしても、次回のiTunes接続時に自動的に同期が始まり、Apple TVでもその内容が反映される。


iTunesで同期元を選択。Aperute、またはiPhotoのアルバム、あるいは任意のフォルダを選択可能
 再生機能はスライドショーのみ。再生中にリモコン中央の再生/一時停止ボタンを押すと、スライドショーを一時停止できる。さらに、→ボタンで次の画像、左ボタンで1枚前の写真に戻ることも可能。シャッフル、リピート、BGM付きでの再生に対応し、iPhotoでおなじみのKen Burnsエフェクト(ズームやパニングを伴った再生)もON/OFFできる。トランジションも豊富で、スライドショー機能については、iPhotoとほぼ変わらない感覚で利用できるだろう。

 ApertureやiPhotoで縦位置にした写真は、Apple TVでもそのまま縦位置で表示可能。Exif、レーティング、キーワードといった付加情報は表示できないし、拡大表示も不可能。あくまでもスライドショーを大画面で楽しむ機能に徹しているようだ。

 ソニーの40型フルHD液晶テレビ「KDL-40X2500」にHDMIで接続して鑑賞したところ、HDらしい精緻な写真表示が楽しめた。階調再現もテレビとしては問題ない。解像度や圧縮率によっては階調トビが見られたが、1,920×1,080ピクセルにリサイズした画像を同期させるよりは、フル解像度のまま同期した方が結果は良いようだ。なお、具体的な対応形式は不明だが、RAWデータの同期と再生も可能だった。D200のRAWデータ55枚をIEEE 802.11g経由で同期させたところ、約9分で同期が完了した。

 気をつけるべきは、同期元がAperture、iPhoto、フォルダのいずれかに限られること。たとえば、Apertureのアルバムと同期させた後、iPhotoのアルバムを同期させると、Apple TV内でApertureと同期したアルバムは消滅する。また、Apertureはプロジェクト単位ではなく、アルバム単位での同期となる。スマートアルバム(指定条件にあった写真を自動的に集めるフォルダ)を同期元にすることが可能だ。


Apple TVのメインメニュー。「テレビ番組」はiTunes Storeで購入するコンテンツ(国内販売は未定)の名称。チューナーを搭載している訳ではない 写真メニューでは同期させたアルバムが並ぶ。並び順をiTunesで変えることも可能

スライドショーの設定。iPhotoとほぼ同様の機能を搭載している
トランジションも豊富。オフにすることも可能

スライドショーを再生中。情報表示は一切なし。拡大も不可能
同期前にアルバムで縦位置にしておくと、縦位置での表示も可能

スクリーンセーバーでも写真を表示することが可能。下から上に流れる
途中で複数の画像がダイナミックに回転することがある。任意に回転させることはできない

 以上、駆け足でApple TVの写真機能を体験してみたが、Macintoshユーザーとしては、普段ディスプレイ上で見ているApertureやiPhotoの写真が、簡単にHDテレビで再生できる点がうれしい。レーティングやキーワードを駆使して、Apple TVでの表示を意識したスマートアルバムを用意しておくなど、ユーザーによって色々な使い方が考えられる。アップルのアプリケーションでしかできない点を考えると、Apple TVはやはりアップルの製品という印象。もちろん、Windowsとも同期は取れるし、音楽ファイルではiTunesのライブラリがそのまま同期できるが、もう一歩、写真でもWindowsでのスムーズな連携をお願いしたい。

 気になる点は、基本的にスライドショーしか行なえないところ。任意の写真を選んで再生することはできない。せっかくなので、サムネイルでの一覧表示、拡大表示、Exifデータの表示といった、ビューアとして基本的な機能も欲しいところだ。多くの写真対応デジタルレコーダーが可能なので、少々見劣りする。

 ただ、「そういった鑑賞方法はPC/Macで行なえばいい」というのがアップルの考えなのだろう。共感できる部分もあるが、個人的には「せっかくの高精細かつ大画面の表示デバイスなのに」と残念な気持ちの方が強い。もちろんテレビでの本格的な写真鑑賞には、カラーマネジメントなど、解決すべき問題もまだ多いのはわかるが……。加えてiTunesを使わないユーザーのためにも、AperuteやiPhotoから直接同期作業ができるとうれしい。

 ネットワークメディアプレーヤー自体はこれまでもいくつか存在したが、Apple TVの価値はやはりMac/WinのiTunesや、Mac OS X用アプリケーションとの連携にある。また、アップル製品らしい高級感ある外観もポイントだ。今回割愛した動画ファイルや音声ファイル関連の機能も含め、アップルらしいユニークなコンセプトの製品といえるだろう。



URL
  アップル
  http://www.apple.com/jp/
  製品情報
  http://www.apple.com/jp/appletv/
  iTunesのビデオ/音楽をテレビで-“リビングのiPod”となるか? アップル「Apple TV」(AV)
  http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20070323/np004.htm
  リビングでも主役を狙うアップル iTunesと連携したネットワークプレーヤー「Apple TV」(BB)
  http://bb.watch.impress.co.jp/cda/shimizu/17584.html



本誌:折本 幸治

2007/03/27 18:47
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