3月に発売された「LUMIX DMC-FX01」の後継となるモデル。CCDは1/2.5型で同じだが、有効画素数は600万画素から720万画素に増加。ヴィーナスエンジンIIIに変更され、起動やAFの高速化を果たしたほか、細かな改良が加えられている。
実勢価格は48,000円程度で、同時発売の「LUMIX DMC-FX50」(こちらは3型液晶モニター搭載)とは約2,000円の違い。カラーバリエーションは写真のエクストラブラックのほか、シルキーシルバー、グロスゴールド、コンフォートレッドが選べる。
■ 画素数アップでEX光学ズームが強化
見た目はFX01とほぼ同じで、前面右手側の突起のデザインが違っているぐらいの差しかない。大きさも重さもまったく同じ。見た目はマイナーチェンジもいいところである。
レンズも28~102mm相当、F2.8~5.6のLeica DC Vario-Elmarit。発表会会場で聞いたところによると、基本設計は同じだが、画素数アップに見合うリファインはやっているとのこと。当然、望遠端の暗さもそのまま。ただし、ウェブサイトの表記は「F2.8(ワイド端)の明るいレンズ」になっていた(FX01のも変わってたね)。
ただ、トリミングズームの一種「EX光学ズーム」の範囲は拡大した。画素数が増えた分、同じ記録画素数のときにトリミングできる範囲が広くなるため、より望遠側が伸ばせることになるわけだ。FX01では記録画素数が3メガ(約315万画素)のときに最大5倍(140mm相当)だったのが、FX07では5メガ(約492万画素)のときに4.4倍(123.2mm相当)まで、3メガ(約315万画素)以下では5.5倍(154mm相当)までの望遠撮影が可能となる。たいした違いとはいえないし、700万画素のカメラを300万画素で使うのももったいない気がしてしまうが、300万画素で用が足りるケースも少なくないし、そういうときにだけでもズームレンジが広がるのは便利だと思う。
画像処理は、FX01のヴィーナスエンジンプラスから、最新のヴィーナスエンジンIIIにスペックアップ。起動時間が1.6秒から1.3秒に、1点AF時のピント合わせに要する時間を約2/3に短縮するなど、高速化を果たしている。
電源は容量1,150mAhのリチウムイオン充電池。CIPA準拠の撮影可能コマ数が約320コマというのはFX01と同じ。もっとも、画素数アップにスピードアップ、新機能の追加となれば、消費電力は増えて当然。それをFX01と同じレベルに保っているのだから、よく頑張ったといっていい。
記録メディアはSDメモリーカード。大容量のSDHCカードやMMC(こちらは静止画のみ)にも対応している。同時発表の「DMC-LX2」と違って内蔵メモリは持っておらず、16MBのSDメモリーカードが付属している。
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FX01(左)と並べると、違いは指がかりをよくするための突起のデザイン程度。背面はまるっきり同じ
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レンズは28~102mm相当。基本設計はFX01のものと同じで、画素数アップに合わせて手直しをしているという。F2.8-5.6と望遠端が暗いのも同じ
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最大記録画素数が7メガになったので、EX光学ズームが5メガ記録から使えるようになっている
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3メガ記録時のEX光学ズームの最大倍率は5.5倍。望遠端が154mm相当となる。ちなみにFX01は5倍(140mm相当)までだった。一部のアイコンがこっそりと3Dっぽいのに変わってたりする
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記録メディアはSDメモリーカード(本当は裏向きに挿入)、SDHCにも対応している。電源はFX01と共通で、CIPA準拠の撮影可能コマ数は320コマとこれも同じ
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SDHC対応を表すロゴマークが付いた
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■ 被写体に合わせて感度を決める「インテリジェントISO感度コントロール」
気になっていたのは「ISO感度」メニューの「I ISO」のポジション。「インテリジェントISO感度コントロール」という機能である。被写体が動いているか止まっているかをカメラが自動的に判別して、それに合わせて感度を上げたり下げたりする。ビデオカメラではそれほどめずらしくはないらしいが、スチルカメラの世界ではけっこう画期的な機能なのではないかと思う。
機能としては、カメラに慣れている人が手動でやっているのと同じ。動く被写体を撮るときには、画質は我慢して被写体ブレを抑えるために感度を上げる。止まっている被写体が相手なら、画質を優先して低感度で撮る(手ブレ補正があるからシャッター速度が多少遅くなっても何とかなるしね)、といった具合。手動の場合は、被写体の動きやシャッター速度をにらみながら感度と画質と被写体ブレの兼ね合いを考えなくてはならないが、それをカメラが自動でやってくれるのだからラクチンだ。
問題の効果のほどは、これがもうひとつの印象。きちんとしたテストをやったわけではないので厳密なことはいえないが、被写体が急な動きをした場合に感度アップが追いつけていないように感じられるのである。
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「ISO感度」メニューに新しく追加された「I ISO」のポジションが「インテリジェントISO感度コントロール」。被写体の動きを読み取って、最高ISO800相当まで感度を自動で上げ下げしてくれる
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被写体の動きを読み取って感度を決めるのだから、シャッターを切る直前に被写体が動いていなければ感度は上がらない。当然、急に動く被写体にはワンテンポ対応が遅れてしまう。なのでブレてしまうケースも出てきてしまう。
もちろん、被写体が連続的に動いている状況であれば、ちゃんと感度は上がってくれる。その分シャッター速度も速くなるから被写体ブレを抑えた撮影ができる。が、急に動き出す被写体(子どもとかペットとかってそういうもんでしょ? )に対応できないのは物足りない。理屈から考えれば仕方ない部分だと思うが、予想外の落とし穴である。まあ、そのあたりをきちんとわかったうえで使う分には便利な機能だ。
もうひとつ気になったのは、被写体の動きによって感度が変わるため、シャッター速度がいくつになるかが事前にはわからないこと(シャッターを切った瞬間にチラッとだけ出る)。なにしろ、シャッター速度を表示するには感度が決まっていないといけないのに、感度はシャッターを切る直前にしか決まらない。なので、シャッター速度を表示できるはずがないのである。
といっても、まったくわからないままというのも不便なもので、アバウトな数字でいいから教えてくれないかなぁ、と思ってしまう。感度の設定範囲はISO100からISO800相当だから、設定されるシャッター速度の範囲ならわかるはずだ。例えば「1/8秒から1/60秒のあいだ」とか「1/20秒前後」など、幅を持たせた表示ならできなくはない。こちらとしては、シャッター速度がまるっきりわからないのも落ち着かないから、どれぐらい暗いかの目安が欲しい。シャッター速度がアバウトにでもわかれば、ブレそうかどうかは見当がつくからだ。というわけで、もうひと工夫していただければと思う。
■ 最高感度はISO1250まで
マニュアル設定での感度の範囲はISO100からISO1250。シーンモードの「高感度」では最高ISO3200相当までとなる。FX01がISO80相当からISO400、「高感度」でISO1600相当までだったのと比べると、かなりの向上である。
ただし、ISO100でも、ピクセル等倍で見ると少しザラツキが出ていて気になった(プリントで見るならまったく問題はないけど)。1/2.5型のCCDで700万画素はきびしいものがあるのかもしれない。が、感度を上げたときはやはり新型。ISO400でもまずまず実用に耐えそうな感じの画質だ。
さすがにISO800相当になるとかなりつらくなってくる。強力なノイズ処理のおかげでザラツキ感はない反面、被写体の輪郭は崩れてくるし、コントラストや発色も悪くなる。ISO1250では全体に薄い膜でも張ったような、雨でも降っているかのような画面になる。正直、積極的に使おうという気にはなれない写りだが、小サイズのプリントならいけるかもしれない。
■ そのほかの変更点
ヴィーナスエンジンIIIのおかげでAFが速くなったのもありがたい点。FX01は5点測距だったのがFX07では9点測距に強化されたほか、シャッターボタン半押しからピントが合うまでの時間も短縮化されている。
それから、ガイドライン(格子線)を表示している状態でも撮影情報やヒストグラムの表示が可能になったのも改良点。メニューの「ガイドライン表示」で「撮影情報」と「ヒストグラム」のオンオフが個別で選べるようになり、ガイドラインも2パターンから選べるようになった。
また、内蔵ストロボの発光モードやセルフタイマー、単写と連写の切り替え操作が、ボタンを押すとメニューがあらわれるタイプに変更された。FX01ではボタンを押すごとにモードが順に切り替わっていたので、間違ってボタンを押してしまうと、何度かボタンを押してもとに戻さなくてはならなかったが、FX07ではボタンを押したうえで上下キーで切り替え操作をしないとモードが切り替わらないので、誤操作にいらつくことが少なくなった(誤操作した自分がいちばん悪いってのはわかってるんだけどね)。こういうのもうれしい改良である。
残念なのは、レビューや再生に切り替えたときに出てくる「しばらくお待ちください」が、今回も残っているところ。LUMIXはオートレビュー(撮影直後の画像表示)が最長3秒までしかなく、ピントやブレのチェックをとなると、レビューか再生に切り替えるしかない。結果として、頻繁にこの画面にお目にかかるわけ。もう少し、スパッと再生できるようにしていただきたい。
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個人的にうれしかったのがAFの高速化。1点高速時に画面がフリーズしなくなって快適。初心者向けには5点AFが9点AFになったのも注目ポイントだ
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ガイドライン表示メニュー。撮影情報表示とヒストグラム表示のオンオフ、ガイドライン(格子線)の種類が選べるようになった
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こちらはオーソドックスな3×3タイプ
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新しく4×4+対角線タイプも追加された。ラインが多くてうっとうしく思えたからなのか、点線も使ってたりする
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十字キーまわりの操作部もFX01とまるで同じ
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十字キーの右キーを押すと、FX01では内蔵ストロボの発光モードが順に切り替わっていたが、FX07ではこんなメニューが表示される。間違って押してしまったときに、もとに戻す手間がいらないのが便利
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レビューや再生しようとすると、必ず出てくるのがこの画面。ピントやブレのチェックをしたいときなどに毎回出てくるので正直うんざりする。速いカードを使ってもやっぱり待たされるのがタマニキズだ
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■ まとめ
FX01に比べると、少しも代わり映えはしないし、ISO100で若干ノイジーな画面になるのはいただけない。が、ISO400でそれなりに使える画質になったのはいいところ。インテリジェントISO感度コントロールも面白い。細かい改良もいろいろあって、使い勝手もよくなっている。
ここまではいいが、同時発売のFX50を見てしまうとちょっと悩む。FX07のほうがスリムでカタチ的にも好みだけれど、3型液晶モニターの魅力は大きい。レンズや中身は基本的に同じだし、ジョイスティックの操作性も悪くない(液晶モニターが大きくなって操作性が落ちる機種もあるからね)。お値段だって2,000円しか違わない。だったら、液晶がでかいほうが……と思うのは筆者だけではないだろう。
FX01にしてもよくできたカメラなので、それの改良型なら悪いはずはない。ただ、FX50と比べてどちらが魅力的かと考えはじめると難しいところである。
■ 作例
※作例のリンク先ファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
※写真下の作例データは、記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/35mm判での画角に相当する焦点距離を表します。
※一部の作例については、作例データの一部項目を別の行で強調表示しています。
◆ISO感度
ISO100でも少しノイジー。ISO200でわずかにディテールの劣化が見られる。ISO400になると細部の表現がけっこうあやしくなるが、まあ実用には耐えそうな感じ。ISO800相当以上はオマケと考えたほうがいいレベル。まあ、FX01の「高感度」よりはずっといいし、非常用と割り切れば使えなくはない。
三脚が使えない場所だったので、多少フレーミングがズレている。また、ガラス(アクリルか?)越しのせいか、周辺部はブレたみたいに写っている。ご容赦いただきたい。
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ISO100
3,072×2,304 / 1/50秒 / F2.8 / 0EV / WB:マニュアル / 28mm
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ISO200
3,072×2,304 / 1/100秒 / F2.8 / 0EV / WB:マニュアル / 28mm
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ISO400
3,072×2,304 / 1/200秒 / F2.8 / 0EV / WB:マニュアル / 28mm
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ISO800相当
3,072×2,304 / 1/400秒 / F2.8 / 0EV / WB:マニュアル / 28mm
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ISO1250
3,072×2,304 / 1/640秒 / F2.8 / 0EV / WB:マニュアル / 28mm
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◆インテリジェントISO感度コントロール
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こちらは感度ISO200
3,072×2,304 / F4.3 / 1/30秒 / 0.3EV / ISO200 / WB:マニュアル / 68mm
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インテリジェントISO感度コントロール。こっちは動いているのにISO100。当然ブレ。どうも急な動きには感度の上げ下げが対応しきれないらしい
3,072×2,304 / F4.3 / 1/15秒 / 0.3EV / ISO100 / WB:マニュアル / 68mm
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ずっと動きつづけている被写体が相手だと、ちゃんと感度を上げて対応してくれる。こういう明るい被写体だとISO400でもかなりきれい
3,072×2,304 / F2.8 / 1/20秒 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 28mm
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◆高感度
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マニュアル設定でISO400。条件さえよければISO400でも十分実用範囲。明るい部分だけ見ている分にはISO400とは思えない。
3,072×2,304 / F2.8 / 1/15秒 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 28mm
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こちらもマニュアル設定でISO400。口をぱくぱくやっているので開ききった瞬間を狙った。
3,072×2,304 / F2.8 / 1/10秒 / 0.3EV / ISO400 / WB:オート / 28mm
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近所のお祭りで撮ったカット。ISO1250だと、人の顔なんかはツブレてしまうし、雨が降っているみたいなノイズもあちこちに見られる。まあ、L判画質といったところ。
3,072×2,304 / F2.8 / 1/40秒 / 0EV / ISO1250 / WB:オート / 28mm
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●一般
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マクロ機能を使っての望遠端。望遠端ではまったく寄れない機種も多いが、FX07は30cmまで寄れるのが便利。背景の点光源ボケが二重になって見えるのは非球面レンズの特性か
3,072×2,304 / F5.6 / 1/40秒 / -0.7EV / ISO100 / WB:オート / 102mm
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ビルの壁面のオブジェ。元の色が割と渋めなこともあるが、派手にならずに落ち着いた再現になった。でも、もう少しカチッと仕上げてもよさそうな気がする
3,072×2,304 / F5.6 / 1/250秒 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 102mm
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明治神宮でたまたま見かけたのだが、気が付くとまわりの観光客もみんなカメラを向けていたりした。なんだか撮影会っぽい
3,072×2,304 / F9 / 1/200秒 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 32mm
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こういう色調の壁はオートホワイトバランスが勘違いしやすいので、プリセットの晴天に。1/25秒でも気楽に撮れるのは、手ブレ補正内蔵のLUMIXならでは
3,072×2,304 / F2.8 / 1/25秒 / 0EV / ISO100 / WB:晴天 / 28mm
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画素数は上がったとはいえ、芝生の描写などを見ると、うーん、って感じ。プリントで見る分には十分だと思うけど
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画面下の石段を見ると、タル型の歪曲収差がよくわかる。普通の3倍ズームでもっと曲がるのもあるから文句は言わないが、もう少し改善してもらえるとうれしい
3,072×2,304 / F2.8 / 1/640秒 / 0.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 28mm
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レストランの入口。ここだけ日本じゃないみたい。すぐ隣でビル工事やってたりするけど
3,072×2,304 / F2.8 / 1/60秒 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 28mm
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FX01のときよりも広角端の歪曲収差が少ない気がする。勘違いかもしれないけど、このぐらいの曲がり具合なら十分許容範囲
3,072×2,304 / F2.8 / 1/200秒 / 0EV / ISO100 / WB:晴天 / 28mm
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サンシャインの水族館の中。スポットライトを活かしたかったので多めにマイナス補正している。
3,072×2,304 / F2.8 / 1/800秒 / -1.3EV / ISO100 / WB:オート / 28mm
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頭上に手を伸ばしてアクリルフェンス越しに撮ったペリカン。もちろん、液晶モニターはハイアングルモード
3,072×2,304 / F4.8 / 1/125秒 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 13.2mm
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日陰なのにホワイトバランスを晴天のまま撮ったから少し青っぽい。絵ハガキみたいになってしまった。
3,072×2,304 / F5 / 1/200秒 / 0EV / ISO100 / WB:晴天 / 14.2mm
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自宅の屋上(集合住宅です。念のため)からの夕焼け。近所の学校の木のおかげで都内感が全然ないが、よく見るとテレビのアンテナが写ってたりする
3,072×2,304 / F5.6 / 1/10秒 / -0.7EV / ISO100 / WB:晴天 / 102mm
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■ URL
パナソニック
http://panasonic.jp/
製品情報
http://panasonic.jp/dc/fx07/
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・ パナソニック、3型液晶を搭載した「LUMIX DMC-FX50」(2006/07/25)
北村 智史 (きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。最初に買ったデジタルカメラはキヤノンPowerShot S10。
ブログ:http://ketamura08.blog18.fc2.com/ |
2006/08/30 00:00
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