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【新製品レビュー】ペンタックス K100D

~ボディ内手ブレ補正など充実装備のお買い得モデル
Reported by 中村 文夫

 ペンタックス「K100D」は、初代の*ist Dから数えると6機種目の製品である。6機種の中にはマイナーチェンジ機も含まれるが、世代的には第3世代ということになる。また、これまでは製品名に*istを冠していたが、今回からKシリーズに変更。このネーミングには従来のイメージを一新し、デジタルカメラ市場に本格的に乗り出すという気概が込められている。


レンズセット付属のDA 18-55mm F3.5-5.6 ALを装着したK100D こちらはDA 21mm F3.2 AL Limitedとの組み合わせ例




磁力で駆動するCCDシフト方式の手ブレ補正

 K100Dの最大の特徴は、手ブレ補正機能を内蔵したことだ。ペンタックスは、この機能に「Shake Reduction」という名前を与え、略して「SR」と呼んでいる。

 現在のデジタル一眼レフカメラは、手ブレ補正機構をレンズ側に組み込んだタイプと、ボディ側に組み込んだタイプに別れている。ペンタックスは後者に属し、露光時にCCDを動かし、ブレを打ち消す方式を採用。原理的にはソニーの「α100」と同じだが、ソニーがアクチュエーターによってCCD動かしているのに対し、ペンタックスは磁力でCCDを移動させている。

 この方式のメリットは、CCDをダイレクトに斜め方向に移動させられること。さらにCCDを動かす際、動き始めから速いスピードが得やすいことだ。これに対しモーター式は、タテヨコ2軸でCCD移動させるるため2個のモーターが必要。さらに動き始めに大きなパワーが必要になる。原理的にはペンタックス方式の方が良さそうだが、実際の製品を使ってみた限り、顕著な差はないようだ。


CCDを4つの電磁石によって駆動する方式 CCDを載せたベースは、3個のボールベアリングで支持される

どんなレンズにも対応する手ブレ補正

 ペンタックスにあってソニーαの手ブレ補正機構にない特徴として、専用レンズ以外への対応が上げられる。ソニーの場合、ソニーαあるいは(コニカ)ミノルタα用レンズでないと手ブレ補正が利用できない。手ブレ補正には焦点距離情報が必要で、専用レンズでないと、この情報がボディ側に伝わらないためだ。

 これに対しペンタックスは、旧製品のMFレンズだろうとマウントアダプターを介して違うマウントのレンズを取り付けようと、レンズがボディに固定できれば、手ブレ補正が利用できる。その秘密はレンズの焦点距離が手動でインプットできることにある。入力できる焦点距離は8mmから800mmまで。30mmや120mmなど、かつてペンタックスが発売したことのある「変な焦点距離シリーズ」も、ぬかりなく盛り込んである。ただ、67用の165mmが抜けていたりと完璧ではない。

 また現行品であるリミテッドシリーズの43mmや77mmなどが入っているが、このレンズはCPU内蔵なので手動で焦点距離をセットする必要がないはず。このあたりについては、再考の余地がありそうだ。いずれファームウェアのバージョンアップで解決されることを期待したい。

 ペンタックスは、初代の*istDから、絞り込み測光ながらAE利用できるなど旧くからのユーザーを大切にする姿勢を貫いている。今回の手ブレ補正機構は、この延長と言えるだろう。


ボディ背面にある手ブレ補正スイッチ。三脚を使用した場合はオフにする 手動で焦点距離を入力する際のメニュー画面。8~800mmまで設定が可能。30mmや120mmなど、ペンタックスらしい焦点距離にも対応している

絞りリングにA位置のないレンズの場合、マニュアル露出にしてAEロックボタンを押すと絞りが瞬間的に絞り込まれ、適正となるシャッタースピードが設定される。この機能を利用するためには、カスタムファンクションで、「絞りリングの使用」を「許可」に設定する必要がある マウントアダプターを介してねじ込み式レンズを使用する際、「Sレンズ使用時のFI」を「利用可能」しておくと、ピントが合ったことを知らせるフォーカスインジケーションが利用できる

レンズの絞りリングにA位置のないレンズを使うときはマニュアル露出にセット。AEロックボタンを押すと露出が測れる MFレンズでも絞りリングにA位置があればすべての撮影モードが利用可能。A位置がない場合は、瞬間絞り込み測光で適正露出が得られる

ねじ込み式のM42マウントレンズもマウントアダプターKを使用すればOK。手ブレ補正も効くし、絞り込み測光で絞り優先AEが利用できる マウントアダプターを使用すれば、645や67など中判カメラ用レンズも利用可能。測光方式はM42マウントレンズと同じになる。もちろん手動で焦点距離を入力すれば手ブレ補正も作動

視野角140度を誇る大型液晶モニター

 最近、液晶モニターの大型化が進んでいるが、K100Dのモニターサイズは2.5型。画素数も約21万画素と高精細だ。特筆すべきは斜めから見たときの視認性が優れていること。視野角は140度と広く、かなり角度を付けて覗き込んでも良く見える。

【お詫びと訂正】記事初出時、液晶モニターの画素数を誤って表記しておりました。正しくは約21万画素です。お詫びして訂正させていただきます。

 非公式情報ではニコンD200と同じパネルを使っているらしいが、普及クラスとは思えない贅沢さだ。また画像を表示させる際にすべての情報を消すことも可能。これはカメラ本体をスライドビューワーとして利用することを考慮したものであるという。またAV出力を使ってテレビに写す際もデータを消すことができる。


*ist D(右)の液晶モニターは1.8型であるのに対し、K100Dは2.5型と大きい 斜めから見たときの*istDL2との比較。同じ画像でも見え方がこんなに違う

被写界深度以外も確認できるデジタルプレビュー

 K100Dで初めて採用されたわけではないが、デジタルプレビューはなかなか便利な機能だ。シャッターボタンの外周部に設けられたメインスッイチのレバーを絞りマークの位置に切り替えるとシャッターが切れ、実際に撮影される画像を液晶モニターに表示。要するに画像の記録を伴わない露光である。

 通常のプレビューのように画像が暗くならない上、露出補正やホワイトバランスの結果も反映されるうえ、再生メニューのビュー表示の設定を変えれば、白トビ警告またはヒストグラムも表示可能。さらにストロボ撮影時にライティングのモニターとしても利用できる。もちろんカスタムファンクションで光学式プレビューに切り替えることもできる。

 ファインダーはペンタミラー式で視野率は96パーセント。像倍率は0.85倍で、このクラスとしては贅沢なスペックを実現している。ペンタミラー式と聞くと、見えが劣るイメージがすぐに思い浮かぶが、ファインダーは想像以上にクリア。ガラスプリズムを使った*ist Dより像倍率は低いが、違和感はまったくない。そして測距点を示すスーパーインポーズも装備。あとはフォーカシングスクリーンが交換できれば完璧なのだが……。


絞りマークの位置にレバーを動かすとプレビューが作動。電子プレビューと光学プレビューの使い分けができる ファインダー視野率は96%で像倍率は0.85倍。視度補正も内蔵している。アイカップの形状が変更され脱落しにくくなった

細かな改良の積み重ねで操作性が向上

 第1号機である*ist Dには、改良すべき点がいろいろあったが、さすがにK100Dは6機種めということで、完成度が高まっている。

 まず目に付くのが十字ボタンだ。K100D以前の十字ボタンは、シーソー式スイッチを採用していたが、K100Dでは各方向を独立させたタイプに変更、操作性が格段に良くなった。

 すでに*istDSから採用されている機能だが、ホワイトバランス、ドライブモード、ストロボ、ISO感度の切り替えが即座にできるFn(ファンクション)ボタンも使いやすい。ただし、このボタンに割り当てられた機能の変更は不可。コンパクトデジカメでは変更できるのに一眼レフでできないとは、どうも納得できない。

 たとえば手ブレ補正のためにレンズの焦点距離を入力するメニューが割り当てられれば、MFレンズ使用時の操作性がもっと上がるはず。この点についてもファームウェアのバージョンアップで、ぜひ対応して欲しい。このほか*ist Dではボディ上面にあったドライブボタンやストロボボタンなどのボタン類が整理され、誤操作からも解放された。

 電子ダイヤルは、ボディ背面に1個あるだけなので、マニュアル露出時に絞りを変えるには、Avボタンを押しながらダイヤルを回さなければならない。だが、シャッタースピード優先や絞り優先AEを選んでも、同じダイヤルで操作できるので、かえって使いやすい。


十字ボタンが各方向に独立したタイプに変更された。Fn(ファンクション)ボタンを使うと、ホワイトバランス、ドライブモード、ストロボ、ISO感度の設定画面が即座に呼び出せる 電子ダイヤルは1個だけだが、かえって操作系がシンプルになり使いやすくなった

メディアはSDメモリーカード。8日公開の新ファームウェアでSDHCにも対応 電源は単3電池4本、またはCR-V3リチウム電池2本を使用。専用電池を使わないデジタル一眼レフは珍しい

*ist Dに比べるとストロボ発光部の位置が高く、赤目が出にくい構造になっている ボディサイドにあるコネクター部

好感が持てる画作り

 画作りについてもずいぶん慣れてきたようで、初代の*istDなどに比べると画像のにごりがなくなり、ホワイトバランスの調整も自然な感じになってきた。また最初に「鮮やか」と「ナチュラル」を採用した*istDSでは、「鮮やか」を選ぶと、色が不自然に強調される傾向が見られたが、K100では自然な発色になった。このほか高感度撮影時のノイズも減り、ISO800までなら十分実用に耐える。

 付属する画像表示ソフト「PHOTO Browser」とRAW現像ソフト「PHOTO Laboratory」もそれぞれバージョンアップ。K100Dからは、「PHOTO Browser 3」と「PHOTO Laboratory 3」が付属する。市川ソフトラボラトリーの協力を得て、表示スピードがアップするとともに、RAW現像ソフトも一新。RAW現像ソフトとして定評のある「SILKYPIX Developer Studio 2.0」をベースにした結果、現像時の細かな設定が可能になった。

 またこのソフトは、*ist Dなど旧製品のRAWデータにも対応している。K100Dの発売当初、旧ソフトのユーザーはバージョンアップが有料になるという話もあったが最終的に無償に決定。ペンタックスのWebサイトからダウンロードできる。

 またK100Dは撮影時にRAWデータとJPEGの同時記録ができないが、ペンタックスの場合、RAWデータの中にJPEGデータが含まれている。そのため新しい現像ソフトを使えば、RAWデータから一括してJPEGデータを抽出することができる。


PHOTO Browser 3 PHOTO Laboratory 3の各設定ダイアログ

PHOTO Laboratory 3の詳細設定画面

まとめ

 大手量販店での販売価格は、ボディのみで7万4800円。実際には10%を超えるポイントが還元され、おまけに10月15日までは1万円のキャッシュバックが付く。要するに6万円でお釣りが来るわけで、とにかくコストパフォーマンスの高さはナンバーワンだ。ペンタックスはこの秋に1,000万画素超の上級機の発表を控えているが、そこまで高画質を必要としない一般ユーザーに最適な機種といえるだろう。


作例

※作例のリンク先ファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
※写真下の作例データは、記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。
※一部の作例については、作例データの一部項目を別の行で強調表示しています。


◆DA 18-55mm F3.5-5.6 AL

 ISO感度を200、400、800、1600、3200のそれぞれで撮影。800まではそれほどではないが、1600からノイズが目立ち始める。


ISO200
3,008×2,000 / 1/6秒 / F3.5 / 0EV / WB:オート / 18mm
ISO400
3,008×2,000 / 1/10秒 / F3.5 / 0EV / WB:オート / 18mm

ISO800
3,008×2,000 / 1/20秒 / F3.5 / 0EV / WB:オート / 18mm
ISO1600
3,008×2,000 / 1/45秒 / F3.5 / 0EV / WB:オート / 18mm

ISO3200
3,008×2,000 / 1/90秒 / F3.5 / 0EV / WB:オート / 18mm

試しに手ブレ補正をオンにしたまま流し撮りをしてみた。画面中央だけがシャープに写るという不思議な結果になった
3,008×2,000 / 1/8秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 55mm
シャッタースピードは1/8秒と遅いが手ブレ補正の効果は高くブレずに済んだ
3,008×2,000 / 1/8秒 / F3.5 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 18mm

◆DA 21mm F3.2 AL Limited


6月下旬発売の新レンズ。35mm判換算の焦点距離は32mm相当。使いやすい画角の広角レンズだ 付属のバヨネット式専用フードと金属性キャップ。フードの裏側には43mm径のフィルターが取り付けられる

3,008×2,000 / 1/50秒 / F3.5 / -0.7EV / ISO200 / WB:オート / 21mm 3,008×2,000 / 1/30秒 / F5 / -0.7EV / ISO200 / WB:オート / 21mm

 シャッタースピードがすべて1/6秒になるように設定して撮影。低輝度時も1600からノイズが顕著になる。


ISO200
3,008×2,000 / 1/6秒 / F4 / -1EV / WB:太陽光 / 21mm
ISO400
3,008×2,000 / 1/6秒 / F5.6 / -1EV / WB:太陽光 / 21mm

ISO800
3,008×2,000 / 1/6秒 / F8 / -1EV / WB:太陽光 / 21mm
ISO1600
3,008×2,000 / 1/6秒 / F11 / -1EV / WB:太陽光 / 21mm

ISO3200
3,008×2,000 / 1/6秒 / F13 / -1EV / WB:太陽光 / 21mm

◆SMC Pentax 30mm F2.8


ペンタックスの「変な焦点距離シリーズ」を代表する広角レンズ。このレンズでも手ブレ補正が利用できる 3,008×2,000 / 1/125秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 30mm

3,008×2,000 / 1/40秒 / F4 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 30mm 3,008×2,000 / 1/15秒 / F4 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 30mm

◆Super-Takumar 55mm F1.8


アサヒペンタックスSP時代の標準レンズ。デジタル一眼レフに組み合わせると大口径中望遠レンズになる 3,008×2,000 / 1/750秒 / F1.8 / 2EV / ISO200 / WB:日陰 / 55mm

◆SMC Pentax-A☆ 85mm F1.4


美しいボケ味で定評のある大口径中望遠レンズ 非常に被写界深度が浅く、ピント合わせが難しい。トーンが豊かで味わい深い描写をするレンズだ
3,008×2,000 / 1/1,250秒 / F1.4 / 0.3EV / ISO200 / WB:オート / 85mm

3,008×2,000 / 1/100秒 / F1.4 / 0.3EV / ISO200 / WB:オート / 85mm

◆SMC Pentax-A☆ 135mm F1.8


歴代のペンタックス135mmレンズの中で、F2を切る製品はこれだけ。シャープな描写と自然なボケ味が特徴である 開放から高性能を発揮することで有名なレンズだが、ほんの少し色収差が発生している。3,008×2,000 / 1/350秒 / F4 / -2EV / ISO200 / WB:オート / 300mm

◆SMC Pentax 645 Macro 120mm F4


中判カメラの645用マクロレンズをマウントアダプターを介して装着。このレンズでも手ブレ補正が利用できる 絞り開放で撮影したので、被写体が非常に浅くなったがボケ味は美しい
3,008×2,000 / 1/30秒 / F4 / 1EV / ISO200 / WB:オート / 120mm

◆SMC Pentax 50mm F1.2


MFレンズでAFを可能にするAFアダプター(左)を組み合わせて撮影。1.7倍のテレコンバーターを兼ねているので、合成焦点距離は85mmになる K100Dに装着したところ

絞り開放だとソフトフォーカスのような描写になる
3,008×2,000 / 1/500秒 / F1.2 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 85mm

【8月10日】初掲載時に抜けていた645 Macro 120mm F4の作例と外観写真を追加しました。



URL
  ペンタックス
  http://www.pentax.co.jp/
  製品情報(K100D)
  http://www.digital.pentax.co.jp/ja/35mm/k100d/
  製品情報(DA 21mm F3.2 AL Limited)
  http://www.digital.pentax.co.jp/ja/lens/index35_wide.html#09
  製品情報(DA 18-55mm F3.5-5.6 AL)
  http://www.digital.pentax.co.jp/ja/lens/index35_normalzoom.html#10
  レンズ交換式デジタルカメラ機種別記事リンク集(K100D)
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/link/dslr.htm#k100d



中村 文夫
(なかむら ふみお) 1959年生まれ。学習院大学法学部卒業。カメラメーカー勤務を経て1996年にフォトグラファーとして独立。カメラ専門誌のハウツーやメカニズム記事の執筆を中心に、写真教室など、幅広い分野で活躍中。クラシックカメラに関する造詣も深く、所有するカメラは300台を超える。1998年よりカメラグランプリ選考委員。

2006/08/10 00:10
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