デジカメ Watch

【1st Shot】
ペンタックス K100D実写画像

Reported by 山田 久美夫

 山田久美夫氏の撮影による「K100D」の実写画像とファーストインプレッションをお届けする。


超ファーストインプレッション

K100D(レンズはDA 21mm F3.2 AL Limited)
 発売が2週間も前倒しされ、ペンタックスの新世代デジタル一眼レフカメラ、「K100D」の製品版がようやく手元に届いた。

 このモデルは、*istDに始まる*istシリーズから、心機一転。ネーミングを昔懐かしい「K」シリーズに変更。さらに、同社のデジタル一眼レフで初めて、CCDシフト式の手ブレ補正機能を搭載したモデルとしても注目される。

 撮像素子は、いまや少数派となりつつある、600万画素級のAPS-CサイズCCDを搭載。スペック的にはあまりパッとしない感じもあるが、1画素あたりの受光面積という点では、より高画素なものよりも余裕があるわけで、解像度よりも階調重視という側面から見ると、むしろ歓迎すべきなのかもしれない。

 ボディーサイズは、同社従来機よりも若干だが大きめ。CCDシフト式手ぶれ補正機能が搭載されたこともあって、*ist DS系に比べて、やや厚みが増している。とはいえ、相変わらずボディーはコンパクトで、携帯性もいい。また、グリップ部はやや厚手で、手の小さな私にはちょっと大きい感じもするが、持ちにくさを感じることはない。

 デザイン的には従来機よりやや男性的でやや無骨になった印象があり、PMAで公開された10メガ中堅機に近い雰囲気がある。ボディーの質感は、やはりエントリークラスであることを意識させるレベル。このあたりは、ある程度の割り切りが必要だ。

 シャッターの感触はまずまずといったところ。実用レベルではあるが、切れ味に鋭さがなく、作動音が妙に甲高い点も気になる。ただ、ミラーの復帰は比較的速いため、秒2.8コマの連写中でもマニュアルフォーカスでピントが合わせられる点は評価できる。とはいえ、やはりエントリー機であることを意識させるレベルといえる。

 ファインダーは、*istDL系と同じペンタミラータイプを採用。視野率96%、ファインダー倍率0.85倍と実用十分。もちろん、欲をいえば、*istDS系のような、もう少し大きくて明るいファインダーが欲しいところだが、本機はエントリー機であり、コスト面で厳しいところもあるのだろう。とはいえ、別段、暗く感じることはなく、ピントの山がそれほど掴みにくいわけでもないので、さほど困ることはない。


 連写速度は2.8コマ、JPEGファイン(L ★★★)では5コマまでしか連続撮影できないなど、スペック上は少々寂しい感じもある。ただ、高速なSDカードを使えば、バッファの解放も速く、ストレスを感じることはほとんどない。もちろん、中堅機のような軽快感はないものの、通常の撮影では必要十分という感じだ。

 さすがにRAWデータでは連続3コマしか撮れない。だが、3枚撮影後、高速なSDカードであれば、約3秒で次の撮影(1枚)ができ、約9秒前後でバッファーが完全に解放される。軽快とはいえないが、猛烈にストレスが溜まる位というほどではない。カメラのクラスを考えれば、致し方ないところだろう。ちなみにRAWデータの記録サイズは1枚10MB前後と600画素機としては大きな点が気になった。

 本機の一つの特徴である「デジタルプレビュー」機能は意外に便利。操作は、シャッターボタン周辺にあるメインスイッチのワンポジションになっており、レバーをそのポジションにすると、動作する。レバーをそのポジションに移動させると、AF測距せず、その瞬間にシャッターが切れて、撮影されるが、メモリーカードに記録せず、背面液晶で撮影結果が表示されるもの。デジタルプレビューとはうまいネーミングをしたものだと感心するが、使い方によっては結構効果的。通常はJPEGなどで撮影して、再生すれば同じ結果が得られるので、それでもいいが、簡単に絞りや露出、ホワイトバランスの効果を見たいときに便利。また、ストロボ発光時のライティングや被写体のテカリ(反射)なども容易に確認できる。とくに、RAWデータでの撮影では、効果を見るために、いちいち撮影していたのではカード容量と時間のロスが大きく、このデジタルプレビュー機能が威力を発揮してくれる。


効果的なCCDシフト式手ぶれ補正機能

 注目のCCDシフト式手ブレ補正機能はなかなか効果的。今回使用したDA 21mm F3.2 AL Limitedレンズとの組み合わせでは、1/8秒までは安全圏といった印象。1/30秒程度なら、手ブレの心配をする必要はほとんどなさそう。感覚的には、シャッター速度換算で2段以上の補正効果がある感じだ。

 もちろん、被写体ブレの影響はあるわけだが、本機の場合、ISO設定をAUTOにあわせておくと、露出と焦点距離に応じ、ISO200から最高でISO3200までの範囲で、自動的に最適な感度設定をしてくれる。そのため、手ブレが起きそうな明るさになると、自動的に感度アップするため、手ぶれ補正機能との効果も相まって、実質的にかなりブレを軽減することができる。

 CCDシフト式のメリットは、やはりどのレンズでも、手ブレ補正機能が働く点。今回は21mmとの組み合わせだったが、F1.4クラスの大口径レンズや携帯に便利なコンパクトな望遠ズームでも、手ブレ補正が使える点はきわめて便利。とくに伝統のあるKマウントレンズには往年の名レンズも多く、それらを現代の技術である手ぶれ補正技術と組み合わせて撮影できる点はとても魅力的だ。

 ただ、本機にはソニーの「α100」のように、CCDシフト機能を使ったゴミ軽減機能は搭載されていない。もちろん、特許などの関係もあるとは思うが、できることならぜひとも搭載して欲しいところだ。


必要十分な600万画素機

 いまや、一眼エントリー機でさえ、α100のように1,000万画素機に移行しようしている時期。しかも、上級コンパクト機の世界では(1/1.8型とはいえ)1000万画素の大台に突入しようという世界。それだけに、今回のK100Dは、「もしかすると、最後の600万画素機では?」と思われるフシもあるほど、数値的なインパクトはない。

 では、本機は画質的に見るべき点はないのかというと、決してそんなことはない。むしろ「実質、これで十分では?」と思われるほどの実力といえる。

 もちろん解像度という点では、やはり600万画素モデルなので自ずと限界はあるが、それでもA3プリント程度ならばほとんど不満のないレベル。

 画像から判断する限り、ローパスフィルターの設定がやや弱めになっており、解像感を重視した絵作りに感じられる。もちろん、ローパスフィルターを弱めにすることで、細部に偽色が発生しており、やや意地悪な目で見ると結構気になるケースもある。ただ、600万画素CCDでもできる限り解像感の高い描写を実現するための、一つの手法(割り切り)としては成功している感じだ。色調も以前のデフォルト設定に比べると、やや落ち着いた印象があり好感が持てる。

 また、高感度時のノイズレベルも適度に抑えられており、ISO200~400までは問題なく、ISO800でややノイズが乗ってくる感じ。本機の場合、感度AUTO設定でISO200から3200までの間で自動設定されるわけだが、安全圏という意味では、ISO400~800あたりが通常撮影でのノイズ許容範囲。もちろん、ISO800でノイズレスとはいわないが、個人的にはISO800でこのレベルなら、ギリギリ常用範囲かなといった印象だ。さすがに、ISO1600以上になると、それなりにノイズっぽくなり、とくに色ノイズの発生が顕著になってくる。

 ペンタックスでは、最高感度がISO3200であることを謳っており、それなりの画質レベルは維持できている。イメージ的には1/2.5型CCD搭載コンパクト機のISO800くらいの画質だ。もちろん、手放しで勧められるほどではないが、目的によっては十分実用になるレベル。たとえば、超高感度と手ぶれ補正のダブル効果で夜間手持ちスナップを楽しんだり、最終プリントサイズがポストカードサイズ程度であったり、三脚を持ってこなかったけど夜景撮影がしたいといった目的には十分に応えてくれるレベルといえる。


魅力的な薄型常用レンズ

DA 21mm F3.2 AL Limited
 今回は、本機と同時発表され一足先に発売された、期待の超薄型常用単焦点レンズ「DA 21mm F3.2 AL Limited」とペアで試用した。

 もともと筆者は薄型レンズが好きで、このレンズにも興味津々。もちろん、2005年に発売された「DA 40mm F2.8 Limited」も魅力的であり、薄型レンズとしてはこの焦点域は昔からの定番ではある。だが40mmという焦点距離は、やはり35mmフルサイズで使って初めて携帯性抜群の常用レンズとなるもので、APS-Cサイズでは35mm判換算で60mm前後になってしまい、その魅力は半減する。

 その点、今回の21mmは35mm判換算で32mm相当と、なかなか使いやすい画角を実現している。さらに、最短撮影距離が20cmと、かなり近寄れるため、ちょっとした接写まで楽しめる点は心強い。

 また、当初開放F値がF3.2と若干暗めでは? という感じがあったのだが、本機の場合、最低感度がISO200であり、感覚的にはISO100がベースのモデルに比べ、シャッター速度が一段分稼げる。そのため、F2.8に比べ、約1/3段ほど暗くても、それ自体が気になることはなかった。もちろん、普段F4前後のズームレンズを愛用している人から見れば、F3.2でも十分に明るいレンズといえる。

 もちろん、同レンズは企画当初F2.8という話もあったそうだが、どうしてもこの薄さが実現できず、明るさよりも薄さを重視したというが、その判断は正しかったと思った。

 使用感はきわめて軽快。“写真が撮れるボディーキャップ”というほど薄いわけではないが、気分的にはまさにボディー+αという感覚で持ち歩けるレベル。レンズの質感も高く、マニュアルフォーカスの動きもスムーズで気持ちいい。

 とくにこのレンズは、AF測距後、切り替えなしにマニュアルフォーカスができるQuick-Shift Focus System対応のため、フォーカスリングのスムーズさを体感できるケースが多く、MF操作をしながら「やっぱり、この感覚だよなあ~」と感動してしまった。


 描写性能は想像以上だ。APS-Cサイズセンサーでは、32mm相当とはいえ、Kマウント用なのでフランジバックが長いため、レンズ構成としては当然、レトロフォーカス系となる。しかも薄型レンズのため、描写性能についてはあまり期待していなかったが、その予想はいい意味で裏切られた。

 実際、絞り開放から十分な切れ味を実現。とはいえ、いわゆるカリカリ系の描写ではなく、適度な柔らかさを備えながらもきっちりとした描写をする。

 ボケ味も総じて自然なもの。32mm相当の広角系で、F値も3.2とさほど明るいわけではないが、それでも近距離撮影ではボケを生かした作画を楽しむことができる。そのときにも、後ボケに変なクセがなく立体感のある描写を楽しめる。

 もちろん、画面周辺までキリッとした描写欲しい場合には、F5.6くらいまで絞った方が安心だが、個人的には単焦点レンズらしい素直な描写を楽しむために、あまり絞り込まないで撮影した方が楽しめるレンズに感じられた。

 ただ、標準付属のレンズフードは外れやすいのが玉に瑕。持ち歩いて早々、何度も落としてしまった。金属製なので、そのたびにカランコロンと盛大な音がするので気が付くが、これでは直ぐになくしてしまいそう。私の場合、フードを取り外しをする頻度がほぼないので、周囲にセロハンテープを貼って、固定してしまった。


完成度の高いエントリーモデル

 本機を初めて見たとき、CCDシフト式手ぶれ補正に魅力を感じたと同時に、なぜ慣れ親しんだ*istをやめて、K100Dというネーミングにしたのか、ちょっと不思議だった。

 だが、実際に使ってみると、*ist系の流れを汲むモデルではあるが、従来機よりも半歩くらい前進した感じがあり、新Kシリーズへの序曲であることを感じることができた。

 とくに魅力的だったのは、あまりに月並みだが、CCDシフト式手ブレ補正機能。どのレンズでも補正効果が得られるのはもちろんのこと、従来から手持ちのレンズをフルに生かせる点が心強い。今回試用した21mm F3.2のようなパンケーキレンズで、光学手ブレ補正を実現するのは物理的に不可能であり、手ぶれ補正と携帯性を両立することができる点は実に魅力的。

 さらに、画素数が600万画素と少なめで、光量に余裕がある点を利用して、高感度化というアプローチを前面に出してきたことで、よりブレに強いモデルに仕上がっている。しかも、実売価格はボディー単体で75,000円前後、レンズキットで9万円弱と、とてもリーズナブルな点もいい。

 正直なところ、「いまさら600万画素?」という感じがする点は否めないし、あと半年早く出してくれたら・・・・・・という感もある。しかも、今秋には中堅クラスとはいえ1,000万画素機が控えていることを考えると、なかなか買いにくい部分もある。だが、「600万画素でいい!」と割り切ってしまえば、かなり魅力的でお買い得な実力派モデルといえるだろう。



※作例のリンク先は特に記載がない限り、撮影した画像です。クリックすると撮影した画像が別ウィンドウで表示されます。

※画像下の撮影データは、画像サイズ(ピクセル)/露出プログラム/シャッター速度/絞り/ISO感度/露光補正値/ホワイトバランスモードです。

※手ブレ補正機能は全ての作例でONにしています。


ISO感度別 定点観測撮影

3,008×2,000ピクセル / 絞り優先AE / 1/250秒 / F11 / ISO200 / 0EV / WB:オート
3,008×2,000ピクセル / 絞り優先AE / 1/500秒 / F11 / ISO400 / 0EV / WB:オート

3,008×2,000ピクセル / 絞り優先AE / 1/1,000秒 / F11 / ISO800 / 0EV / WB:オート
3,008×2,000ピクセル / 絞り優先AE / 1/2,000秒 / F11 / ISO1600 / 0EV / WB:オート

3,008×2,000ピクセル / 絞り優先AE / 1/4,000秒 / F11 / ISO3200 / 0EV / WB:オート

一般作例

3,008×2,000ピクセル / 絞り優先AE / 1/180秒 / F3.2 / ISO200 / 0EV / WB:オート
3,008×2,000ピクセル / 絞り優先AE / 1/60秒 / F3.2 / ISO800 / 0EV / WB:オート

3,008×2,000ピクセル / 絞り優先AE / 1/60秒 / F3.2 / ISO800 / 0EV / WB:電灯光
3,008×2,000ピクセル / 絞り優先AE / 1/30秒 / F3.2 / ISO400 / 0EV / WB:オート

3,008×2,000ピクセル / 絞り優先AE / 1/30秒 / F3.2 / ISO400 / 0EV / WB:オート 3,008×2,000ピクセル / プログラムAE / 1/45秒 / F3.5 / ISO400 / 0EV / WB:オート

3,008×2,000ピクセル / プログラムAE / 1/45秒 / F3.2 / ISO800 / 0EV / WB:オート 3,008×2,000ピクセル / シャッター優先AE / 1/8秒 / F6.7 / ISO200 / 0EV / WB:オート

3,008×2,000ピクセル / 絞り優先AE / 1/90秒 / F3.2 / ISO200 / 0EV / WB:オート
3,008×2,000ピクセル / 絞り優先AE / 1/250秒 / F3.2 / ISO200 / 0EV / WB:オート

3,008×2,000ピクセル / 絞り優先AE / 1/30秒 / F3.2 / ISO200 / 0EV / WB:オート 3,008×2,000ピクセル / プログラムAE / 1/30秒 / F3.2 / ISO200 / 0EV / WB:オート

3,008×2,000ピクセル / 絞り優先AE / 1/45秒 / F3.2 / ISO400 / 0EV / WB:オート 3,008×2,000ピクセル / プログラムAE / 1/90秒 / F5.6 / ISO200 / 0EV / WB:オート

3,008×2,000ピクセル / 絞り優先AE / 1/350秒 / F3.2 / ISO200 / 0EV / WB:オート
3,008×2,000ピクセル / 絞り優先AE / 1/90秒 / F5.6 / ISO200 / 0EV / WB:オート

3,008×2,000ピクセル / プログラムAE / 1/90秒 / F5.6 / ISO200 / 0EV / WB:オート 3,008×2,000ピクセル / 絞り優先AE / 1/500秒 / F3.2 / ISO200 / 0EV / WB:オート

3,008×2,000ピクセル / 絞り優先AE / 1/750秒 / F3.2 / ISO200 / 0EV / WB:オート

高感度作例

3,008×2,000ピクセル / プログラムAE / 1/15秒 / F3.2 / ISO800 / 0EV / WB:オート
3,008×2,000ピクセル / プログラムAE / 1/15秒 / F3.2 / ISO3200 / 0EV / WB:オート

3,008×2,000ピクセル / プログラムAE / 1/20秒 / F3.2 / ISO3200 / 0EV / WB:オート
3,008×2,000ピクセル / プログラムAE / 1/15秒 / F3.2 / ISO800 / 0EV / WB:オート

3,008×2,000ピクセル / プログラムAE / 1/45秒 / F3.2 / ISO800 / 0EV / WB:オート 3,008×2,000ピクセル / プログラムAE / 1/8秒 / F3.2 / ISO3200 / 0EV / WB:オート

3,008×2,000ピクセル / プログラムAE / 1/90秒 / F5.6 / ISO1600 / 0EV / WB:オート


URL
  ペンタックス
  http://www.pentax.co.jp/
  ニュースリリース
  http://www.pentax.co.jp/japan/news/2006/200624.html
  製品情報
  http://www.digital.pentax.co.jp/ja/35mm/k100d/

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山田 久美夫
1961年横浜生まれ。1979年よりフリーカメラマンに。1983年よりカメラ専門誌「アサヒカメラ」で執筆開始。日本カメラグランプリ選考委員。「電塾」運営委員(http://www.denjuku.gr.jp/)。作品集「Natural」(1994年)、「ドイツ・色と光」(2000年)などを出版。1999年より「DigitalCamera.jp」(http://www.digitalcamera.jp/)を運営。

2006/07/14 00:00
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