ボディの外観はシルバーとパールホワイトの2色に分かれたツートンカラー。洗練されたデザインの中に高級感をも感じます。パールホワイト部にはラメが入り、細かく輝きます。
しかも19.5mmの奥行きというコンパクトサイズに、液晶モニターは3型と超大型。この大きな液晶モニターは、撮影した画像を見るだけだけではなく、アイコンに直接触れて操作するタッチディスプレイ式になっています。さらに、モニター上で写真を加工することができるという、ちょっと珍しい機能も備わっています。価格はオープンプライス。実勢価格は4万円台です。
■ シャープな沈胴レンズを奥行き19.5mmのボディに搭載
外観はとてもシンプルで、操作ボタンは上面の電源ボタン、シャッターボタン、ズームレバーといった各操作部、そして背面の再生ボタンとメニューボタン。これだけです。他の操作は液晶モニターのタッチパネルで行ないます。ホールド感は良く、右手親指が当たる部分に小さな突起と縦長の滑り止めや、ボディ前面のカメラ名が刻印されたパーツなどにより、滑りにくい作りになっています。
1/2.5型の636万画素(有効600万画素)CCDを搭載し、レンズは6.2~18.6mm(35mmフィルム換算37.5~112.5mm相当)の光学3倍ズーム。レンズの開放F値はF2.7~5.2。そして、ペンタックスが独自に開発したレンズ収納機構「スライディング・レンズ・システム」により、コンパクトでスリム、かつ高画質を実現しています。
レンズの色収差はほとんど見られません。200%に拡大して四隅を見ると、わずかに滲んだように見られる程度。歪曲収差は広角側でタル型収差が見られ、望遠側でも若干同様の収差が見られます。しかし、直線的なものを撮影しなければ感じない範囲です。特に望遠側では全くといっていいほど気になりません。
記録画素数は6M(2,816×2,112ピクセル)、5M(2,592×1,944ピクセル)、4M(2,304×1,728ピクセル)、3M(2,048×1,536ピクセル)、2M(1,600×1,200ピクセル)、640(640×480ピクセル)の6種類。圧縮率はS.ファイン、ファイン、エコノミーの3種類。撮影した画像にもよりますが、記録画素数6MでS.ファインを選んだ場合、256MBのメモリーカードがあれば約69枚の撮影が可能です。
感度はオートのほか、任意でISO80/160/320/400から選べます。感度を上げるほどざらつきがでるので、なるべく低感度をお薦めしますが、暗い場所では感度を高めにして手ブレや被写体ブレを防ぎましょう。拡大するとISO320からノイズを感じ、ISO400ではざらつきが見られますが、大きくプリントするのでなければ十分に綺麗に写ります。しかし、暗いシーンではISO400でもブレの可能性がでくるので、もう1段、高感度に設定できるようになるといいですね。
記録メディアはSDメモリーカードと約12MBの内蔵メモリ。電源はリチウムイオンバッテリー。CIPA規格の測定基準では約130枚撮影可能なのですが、液晶モニターが大型のためか、あれこれフレーミングをしたり、再生して確認したりしていると、およそ半日の撮影でバッテリーがなくなってしまいました。泊まりがけで旅行に行く時は充電器を持っていくことをお薦めします。
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レンズは独自のスライディング式。本体の薄型化に貢献している
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焦点距離は37.5~112.5mm相当、F2.7~5.2
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記録メディアはSDメモリーカード
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シンプルな上面の操作部
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■ とっても楽しい「デジタルエフェクト」
液晶モニターは3型の大型TFT液晶モニターです。約23万画素なので、大型ながら解像度もあり、とても色鮮やかな印象。大きな液晶モニターは写真を撮る時だけでなく、再生して確認する時にも有利。上下約105度、左右約110度までの広視野角タイプで、写真の再生はもちろん、このカメラではモニターを使って画像の加工ができるので、液晶モニターの精度は重要なポイントになります。
指で触れると指紋はつきますが、光沢のあるフィルターのためか、柔らかい布などでさっと拭き取ることができます。また、カメラストラップに取り付け可能な、スタイラスペンも付属しています。
各機能の呼び出しはメニューボタンとタッチパネルに分かれています。メニューボタンからは、記録サイズ、画質、ホワイトバランス、感度、AF、測光方式や露出補正、シャープネス、彩度、コントラストといった基本項目を選択します。一方、撮影モード、ストロボモード、ドライブモード、フォーカスモードなどは液晶モニターから選びます。
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撮影時の情報表示
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設定メニューのトップメニュー
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よく使う機能を登録できる撮影ツールバー
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登録画面。ほかのペンタックス機のグリーンボタン(Fn)にあたる
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撮影1メニュー
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感度設定
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撮影2メニュー
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露出補正
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このタッチ式液晶モニターの特徴を活かしているのが、付属のタッチペンを使った加工機能「デジタルエフェクト」です。写真の加工といえば、撮った写真をPCに取り込んでから専用ソフトで加工するのが一般的。しかし、本製品では撮影した写真の加工がカメラの中でできます。
その機能をざっとあげてみると、「リサイズ」、「トリミング」、「お絵描きモード」、「スタンプ」、「フレーム合成」、「カラーフィルタ」(白黒、セピア、カラー8色、白黒+赤、白黒+緑、白黒+青)、「明るさフィルタ」、「デジタルフィルタ」(ソフト、イラスト、スリム)、「赤目補正」など。実にさまざまな楽しみ方が用意されています。デジタルエフェクトは何度でもやり直せますし、別名で保存すれば同じ写真からいろいろな作品が作れます。
気に入った写真を再生表示し、液晶モニターをタッチして「モードパレット」を選ぶと、左2段目にパレットのアイコンが表示されます。それを選ぶと加工モードに入れます。特に「お絵描きモード」は、写真に文字やイラストを書くことができるので、とても楽しいですよ。書き込むには付属のスタイラスペンを使います。
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再生モードパレット
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デジタルエフェクト選択画面
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◆デジタルエフェクト作例
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再生画面を付属のペンでなぞると文字やイラストが描けます。線の太さ、色、ボケ具合が選べます
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フレームを付けてみました。本体に7種類のフレームが収録されていますが、ペンタックスのHPから新たなフレームもダウンロードできます
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写真の明るさも修正できます。こちらは元画像
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明るくした例です。あまりにも明るすぎたり、暗すぎる写真は補正できません
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ボタン1つでモノクロにしたり、セピアにしたり。これはセピア
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モノクロにした画像です。カラーとは違ってレトロな感じになります
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赤、緑、青色を残し、そのほかをモノクロ化するモードも。赤い色だけを強調させ、いちごを目立たせています
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鉛筆で描いたようなエフェクトの一種。アート感覚で、写真をさまざまに楽しむことができます
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赤一面の写真をハート形に切りとってマイスタンプとして保存し、スタンプのように貼付けました。さらにペンで書き込んでいます
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撮影モードからペットモードを選び、白猫にセット。収録されているかわいいハートのフレームで囲みました。いろいろな機能を併せて使いましょう
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フレーム合成は7種類。撮影後にフレームを付けるほか、あらかじめ選んでおけばフレームの中にしっかりと被写体が収められます
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■ タッチパネルを使ったマニュアルフォーカスも
測光方式は撮像素子によるTTL測光で、分割、中央部重点、スポットが選べます。また、±2EVまでの露出補正が可能で、ほとんどの条件をカバーしてくれますし、1/3ステップなので、細かな露出設定も可能です。
基本はプログラムモードでOKですが、シーンに合わせてモードを選ぶとそれぞれの状況に合わせた設定になります。例えば、風景モードでは近景から遠景までシャープに写るように、絞りが絞り込まれます。また、スポーツモードでは速いシャッター速度が選択され、被写体の動きを写し止めることができるという具合です。
ペットモードではペットの毛色を選択すると露出補正がかかり、黒ツブレや、白飛びを低減します。白、黒、グレーを犬と猫のそれぞれから選べますが、犬と猫では描写に違いはありません。
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撮影モードパレット
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フォーカスモード
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フォーカスモードの1つ、パンフォーカスモードでは、ピントが手前から奥まで合っているように見えるよう絞り値が大きくなります。また、マニュアルフォーカスモードもあり、オートフォーカスが効きにくいシーンで有効です。操作は液晶モニター上でタッチしながら可能。画面の中心部のフレームが表示され、拡大されます。それを見ながら最短撮影距離から無限遠までのグラフをタッチします。部分を拡大するので画像が若干見にくいのですが、おおよその見当をつけてピントを合わせることができます。
撮影距離は標準で40cm~無限遠まで。マクロモードにすると広角側固定になって15~40cmです。標準では画面に花をいっぱいに入れられませんが、マクロモードで画面いっぱいに大きく写すことができます。デジタルマクロではシベのアップも可能ですが、実画素数が減って画質に影響するため、光学でさらに寄りたいところです。
■ まとめ
3型の大きな液晶モニターを装備しながら、ポケットにすっぽり入ってしまうサイズ。そして、タッチパネル式の液晶モニター。それらの利点を活かして、撮った写真に文字や絵を描いたり、スタンプを貼付けるなど、とっても楽しい機能がOptio T10の特徴でしょう。
しかし「遊び」ばかりが先行しているわけではなく、カメラとしての機能も充実しています。レンズは非常にシャープ。発色も自然な鮮やかさでとても美しい画像が得られます。
日頃はデジタル一眼レフカメラばかり使用している私自身、今回の撮影でOptio T10の美しい絵づくりに驚きました。撮影から加工までをカメラ内で完結できるなど、「写真を楽しむ」ことを感じさせてくれる1台です。
■ 作例
※作例のリンク先ファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
※写真下の作例データは、記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。
◆歪曲収差
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2,816×2,112 / 1/160秒 / F4.3 / 1EV / ISO80 / WB:オート / 6.2mm
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2,816×2,112 / 1/100秒 / F5.2/ 0.7EV / ISO80 / WB:オート / 18.6mm
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◆感度
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2,816×2,112 / 1/15秒 / F2.7 / 1EV / ISO80 / WB:オート / 6.2mm
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2,816×2,112 / 1/30秒 / F2.7 / 1EV / ISO160 / WB:オート / 6.2mm
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2,816×2,112 / 1/60秒 / F2.7 / 1EV / ISO320 / WB:オート / 6.2mm
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2,816×2,112 / 1/80秒 / F2.7 / 1EV / ISO400 / WB:オート / 6.2mm
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◆マクロ
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標準モード
2,816×2,112 / 1/13秒 / F5.2 / -0.7EV / ISO80 / WB:オート / 18.6mm
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マクロモード
2,816×2,112 / 1/15秒 / F5.2 / -1.7EV / ISO80 / WB:オート / 6.2mm
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デジタルマクロ
2,816×2,112 / 1/13秒 / F5.2 / -0.7EV / ISO80 / WB:オート / 18.6mm
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◆コントラスト
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コントラスト低
2,816×2,112 / 1/80秒 / F2.7 / 0.3EV / ISO80 / WB:オート / 6.2mm
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コントラスト標準
2,816×2,112 / 1/80秒 / F2.7 / 0.3EV / ISO80 / WB:オート / 6.2mm
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コントラスト高
2,816×2,112 / 1/80秒 / F2.7 / 0.3EV / ISO80 / WB:オート / 6.2mm
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◆シャープネス
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シャープネスソフト
2,816×2,112 / 1/30秒 / F4.6 / -0.3EV / ISO80 / WB:オート / 15.3mm
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シャープネス標準
2,816×2,112 / 1/30秒 / F4.6 / -0.3EV / ISO80 / WB:オート / 15.3mm
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シャープネスハード
2,816×2,112 / 1/30秒 / F4.6 / -0.3EV / ISO80 / WB:オート / 15.3mm
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◆撮影モード
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自動的にカメラが絞り込む「風景」モード。手前から奥までボケずにくっきりします
2,816×2,112 / 1/640秒 / F4.3 / 0.7EV / ISO400 / WB:オート / 6.2mm
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ペットモードの「白猫」を選択。AEカメラは白いものを暗く写しがちですが、このモードなら本来の明るさで撮影できます
2,816×2,112 / 1/40秒 / F5.2 / ISO320 / WB:オート / 18.6mm
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パーティーの記念や自分が作ったお菓子を撮影するときに便利な「料理」。通常より鮮やかに写るので、美味しそうに見えますよ
2,816×2,112 / 1/13秒 / F2.7 / ISO160 / WB:オート / 6.2mm
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「夜景」を選ぶとスローシャッターになります。手ブレをする可能性があるので、三脚があるといいですね
2,816×2,112 / 1/3秒 / F2.7 / ISO80 / WB:オート / 6.2mm
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シャッター速度がなるべく速くなる「スポーツ」。動きの速いものでもシャープに写し止めます
2,816×2,112 / 1/200秒 / F5.2 / 0.3EV / ISO400 / WB:オート / 18.6mm
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通常のプログラムモードでは1/30秒に。水しぶきの描写が違います
2,816×2,112 / 1/30秒 / F5.2 / 0.3EV / ISO80 / WB:オート / 18.6mm
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◆そのほか
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葉を逆光でクローズアップ。葉脈にご注目ください。とてもシャープなので驚きました。色もデジタルとは思えない美しさです
2,816×2,112 / 1/30秒 / F2.7 / 0.3EV / ISO80 / WB:オート / 6.2mm
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ハマオモトの葉を逆光で狙いました。広角で迫ると迫力が出ます。葉脈もくっきりとシャープです
2,816×2,112 / 1/80秒 / F4.3 / 0.3EV / ISO80 / WB:オート / 6.2mm
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黄色いカサを部分的にクローズアップ。露出補正が±2EVまであるので、ほとんどの被写体をカバーできます
2,816×2,112 / 1/125秒 / F5.8 / 1.3EV / ISO400 / WB:オート / 10.7mm
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ピントを合わせたいものがワイドフォーカスエリアの外にあるときは、フォーカスロックが使えます。しかし、接写の場合はピントが外れるのでマニュアルに切り替えましょう
2,816×2,112 / 1/320秒 / F4.3 / 0.3EV / ISO80 / WB:オート / 6.2mm
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赤から青、そして紫色へ……。夕焼け空の微妙な色合いが忠実に再現されました
2,816×2,112 / 1/250秒 / F4.3 / -1.3EV / ISO160 / WB:オート / 6.2mm
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広角は背景がボケにくいのですが、絞りを開けて、手前の被写体に迫れば結構ボケます。絞りは開放のF2.7
2,816×2,112 / 1/20秒 / F2.7 / ISO80 / WB:オート / 6.2mm
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白飛びがなく、花びらの質感が良く出ています。ぜひ拡大してご覧下さい!
2,816×2,112 / 1/160秒 / F2.7 / 0.3EV / ISO80 / WB:オート / 6.2mm
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遠くにある被写体は望遠でズームアップ。手ブレ補正機能が付いていないので、特に望遠側ではブレに注意
2,816×2,122 / 1/250秒 / -0.3EV / F4.1 / ISO80 / WB:オート / 12.8mm
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マクロモードでカタバミの花に迫りました。マクロモードの最短撮影距離は15cm。選択すると自動的に広角側にセットされます
2,816×2,112 / 1/200秒 / F2.7 / 0.3EV / ISO160 / WB:オート / 6.2mm
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■ URL
ペンタックス
http://www.pentax.co.jp/
製品情報
http://www.digital.pentax.co.jp/ja/compact/optio-t10/
■ 関連記事
・ ペンタックス、タッチパネル式3型液晶搭載の「Optio T10」(2006/02/16)
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吉住 志穂 (よしずみ しほ)1979年東京生まれ。日本写真芸術専門学校卒業後、竹内敏信事務所に入社。
2005年4月に独立。現在、自然の「こころ」をテーマに、花や風景の作品を撮り続けている。『月刊カメラマン』、『デジタルフォト』で連載中。日本自然科学写真家協会(SSP)会員。フジクロームクラブ講師、ズイコーアカデミー講師。http://www.geocities.jp/shihoyoshizumi/ |
2006/06/16 01:00
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