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【河田一規のデジカメナビ】富士フイルム FinePix F30
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~圧倒的な高感度画質
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Reported by
河田 一規
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富士フイルムのFinePix F30(以下、F30)はFinePix F10、FinePixF11(以下、F11)に続く同社高感度コンパクトシリーズの最新機。画素結合などを使わないフル解像度のまま、ISO3200という超高感度撮影を可能としているのがウリである。ちなみにフル解像度でISO3200というのはコンパクト機としては世界初だという。
主要スペックは、レンズが8~24mm(35mm判換算で36~108mm相当)の光学3倍ズーム。撮像素子は1/1.7型有効630万画素スーパーCCDハニカムHR。液晶モニターは2.5型といった感じだ。
■ 性能重視のボディサイズ
F30のデザインは従来からあるF11に比べるとだいぶ印象が変わった。
F11はフロントが角形基調、逆に背面は丸みのある、ある意味メリハリのハッキリとしたデザインだったのに対し、F30はボディの随所に丸みを取り入れたものになったのだ。よく言えばスタイリッシュになった感じだが、個性というかパワー感はF11の方があったように感じる。確かにオシャレ度は上がったけれど、ちょっと平凡というか月並みな印象もしてしまうのだ。もちろん、あくまでも個人的にそう感じてしまうだけかもしれないが。
外装はほとんどの部分がアルミ製で、質感はなかなか高い。特に背面から右手側側面はL字型に一体成形されたモノコック構造となっており、継ぎ目を減らしてスッキリ見せると共に、剛性を確保している。
ボディカラーはちょっとチタンカラーぽいシルバーのみだが、このクラスであれば、ブラックとかガンメタといったハードなイメージのカラーリングを欲しがる人も少なくないだろう。
ボディサイズに関しては決して大きくはないが、最近の薄型機に比べると厚みはそれなりにある方だ。これはコンパクト機としては大きめの1/1.7型CCDを搭載していることや、撮影可能枚数を確保するために、やや大きめな電池を採用しているためで、小型軽量さよりも性能を重視した設計の結果である。このあたりのコンセプトはF11の頃と何ら変わっていない。
■ 多彩なISO感度設定が可能
F11ではボディ右手側前面に明確なグリップ部があったけれど、F30はそれがなくなり、ホールディングのしっかり感はやや薄れた。ただ、右手の置き場所はちゃんと確保されているし、ボディがそれほど薄型でないことも手伝って、ホールディングは特に悪くは感じられなかった。
ボディ表面は滑らかすぎてやや滑りやすいけれど、右手親指の当たるボディ背面に設けられたドット状の滑り止めラバーが功を奏し、取り落としそうな気配は感じなかった。ただ、この滑り止めラバードットのすぐ近くにあるAF合焦等のステータス表示用LEDは、場所的に親指で隠してしまいがちなので、別のところにあったほうがよかったと思う。
操作は特に変わったものではなく、ただ撮るだけなら初めてでもそれほど迷わず使うことができるけれど、モードダイヤルのアイコンは見ただけでは意味がよく分からないので、この部分は取説を1度は熟読しておく必要がある。主要操作はF11とほとんど同じだが、F30では露出補正キーが独立し、露出補正がよりクイックに行なえるようになっているのは便利に感じた。
また、F11にもあった「F」ボタンによるF-モードメニュー設定はF30でも健在で、色調をスタンダードからリバーサル調の高彩度なものに簡単に切り替えられるほか、ISO感度の設定もここで素早く切り替えることができる。
ISO感度は撮影モードでオート(モードレバーで赤いカメラアイコン)を選んだときはAUTO ISOしか選べないが、撮影モードをマニュアル等に切り替えると、ISO100~3200までの感度を手動選択できるほか、AUTO ISO時の最高感度を400もしくは1600の2種類から選択することができる。
なお、起動速度はカタログ値では約1.4秒だが、ストップウォッチによる手動計測でも約1.7秒とかなり速い(電源スイッチを入れてからライブビューが表示されるまで)。レリーズタイムラグもカタログ値で0.01秒と短く、レスポンスに関しては文句なしである。
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ボディ右下に単独の露出補正ボタンが設けられている。このボタンを押して十字キーの上下ボタンを操作することで簡単に露出補正が可能だ
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F11ではシャッターボタンと同軸上にあったモードレバーが、F30ではダイヤルとして独立した。やや簡単に動いてしまうので注意が必要だ
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ズームキーは一般的なシーソースイッチ式。ズーミング速度はなかなか速い
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撮影時のモニター画面。この状態からシャッターボタンを半押ししてAFロックすると、画面上部に表示されている情報が消え、代わりにシャッター速度と絞り値が表示される
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撮影メニューはライブビュー画像にオーバーレイ表示される
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ホワイトバランス選択画面。白い紙を読ませるマニュアルホワイトバランスも選べる
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F-モードメニューでF-クロームを選ぶと、彩度とコントラストの高いリバーサルフィルム風の色調になる
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感度選択もF-モードメニューにある。AUTO時の最高感度がISO400まで、ISO1600までの2種類から選べる
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F-モードメニューで画面サイズも設定変更できる。3:2比率でFINE相当の低圧縮率が選べないのは残念
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内蔵メモリーからxD-ピクチャーカード、あるいはxD-ピクチャーカードから内蔵メモリーへの画像コピーが可能。内蔵メモリーは約10MB
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■ 低反射で見やすい液晶モニター
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2.5型液晶モニター。PC用の液晶ディスプレイなどに使用されているCVフィルムが使われており、屋外などでも光源が反射しにくく画像確認はしやすい
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F30の液晶モニターは2.5型。3型モニター搭載機も増えてきた昨今、特に大きいという印象はないけれど、ボディとのバランスを考えるとこのくらいの大きさがちょうど良いように感じる。使われている液晶パネルは10万画素程度の廉価版ではなく、約23万画素の高解像度版である。このため、拡大再生などを行なったときも、クリアなまま画像を確認することができる。
特徴的なのはモニター表面に富士フイルム製の「CVフィルム」というものが使われていて、光の反射を抑えられていること。確かに反射が少ないので屋外でも見やすいし、屋内でも天井の明かりが表面に写り込んだりせず、モニターの視認性はなかなか高い。
視野角についてはカタログなどには明記されていないので、試しに手元にあったソニーのサイバーショット DSC-T9と比べてみたが、上下左右ともにT9の方が視野角は広かった。
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角度ごとの視野角の変化。特に視野角が広いタイプではなさそうだ
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拡大再生は最大解像度の2,848×2,136ピクセルの場合、最大で約4.5倍。せっかく高精細な液晶モニターなのだから、もうちょっと高倍率まで拡大できたらよかったのだが
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■ 余裕ある電池容量
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同梱の電池はNP-95リチウムイオン充電池。記録メディアは別売のxD-ピクチャーカードを使用する
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F30に同梱されている電池はNP-95というリチウム充電池で容量は3.6V、1,800mAh。最近のコンパクト機としては大きめで、容量的にも余裕がある。CIPA規格による撮影可能枚数も580枚と、スタミナはバッチリだ。小さなことだが、正方向でしかボディへ挿入できないバッテリー形状も好ましい。
ただ、単独のバッテリーチャージャーが同梱されておらず、ACアダプター経由の本体内充電になってしまうのは使い勝手の上でどうだろうか。確かにPCとボディを直結してデータを転送する際などにはACアダプターは便利だけれど、カードリーダーで取り込む人にはほとんどメリットはない。旅行などに持ち出すにはかさばるうえ、フル充電まで4時間と充電時間が長いのも気になるところである。別売りでバッテリーチャージャー(BC-65S)も用意されているが、これはできれば同梱して欲しかったと思う。
一方、富士フイルム製なので記録メディアは当然ながらxD-ピクチャーカードが採用されている。
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充電はACアダプターを使った本体内充電。ACアダプターそのものはさほど大きくないけれど、1次側と2次側の両コードがあるため、旅行の時などにはかさばる存在となるだろう。なお別売でバッテリーチャージャーも用意されている
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金メッキされたUSB端子はAV端子も兼ねる。USBの下はACアダプター入力
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■ メリハリのあるクリアな画質
描写性能は相当に高い。
色味は同社独特のやや濃度の感じられるこってり系の再現だが、決して不自然ではなく、多くの人がキレイと感じられる絶妙なさじ加減。F-モードメニューでFinePixカラーをF-クロームに切り替えると、彩度とコントラストが明確に高くなったかなりハデ目の絵になるが、デフォルトのFinePixカラー:スタンダードで撮る限り、“ハデだけど派手すぎない”ちょうどいい色合いなのだ。
レンズ性能も満足できるシャープネスを備えており、画面周辺でも流れないし、歪曲も少なめだ。
そしてF30の真骨頂とも言える高感度特性は、コンパクトとは思えないほどハイレベル。掛け値なくISO800が充分に実用になる低ノイズ・高画質である。
今回は参考までに普段愛用しているソニーのサイバーショット DSC-T9と感度ごとに比較してみたが、ISO100の時点でもすでにF30の方が圧倒的に低ノイズであり、その差は感度を上げるほど広がるばかり。T9の最高感度であるISO640よりも、F30のISO3200の方が低ノイズなのだ。
ちなみにT9は現行機だけど最新機種というわけではないし、CCDサイズも1/2.5型と、F30よりも小さい。ボディサイズもかなり差があるわけで、手ブレ補正機構のあるなしなど、カメラとしてのコンセプトも異なる。そんな2台をくらべるのがそもそもナンセンスなわけで、ここはあくまでも参考までに見て欲しい。
※作例のリンク先は撮影画像です。
【F30】
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ISO100
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ISO200
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ISO400
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ISO800
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ISO1600
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ISO3200
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【T9】
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ISO80
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ISO100
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ISO200
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ISO400
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ISO640
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■ まとめ
最近は高感度をうたい文句にしたコンパクト機が数多く登場しているけれど、その多くは画像処理段階で後処理的にノイズを消していることもあり、ノイズ除去に伴うディテールの劣化がどうしても避けられない。これに対してF30のスーパーCCDハニカムはもともと光電変換量に優れたCCD構造に加えて、画像エンジン段階の後処理も相当に巧みに行なわれており、ノイズが少ないだけでなくディテールの損失も最小限に抑えられている。
印象的には、こと高感度画質においてはコンパクト機にライバルはなく、むしろ一眼レフと比較したくなるほどである。ISO800~1600でもこれだけ低ノイズであれば、手持ちで撮影できるシーンがかなり多くなるはずで、その場の光を活かすために、なるべくストロボを使いたくない人にとっては非常に魅力的なカメラだ。
また、感度を上げていっても色味の変化が最小限に抑えられているのも優れているところで、その意味でも「使える高感度機」といえる。
FinePixカラーの「クローム」と「スタンダード」は彩度の落差がやや大きくて、個人的には両者の中間ポジションも欲しくなったが、簡単な操作で切り替えできるので、花などをちょっと派手目に撮りたいときなどは結構重宝した。最近の薄型機を見慣れた目にはやや分厚く感じるボディだが、その実力はかなりハイレベル。実はテスト後に筆者も買ってしまったほど。やはりこの圧倒的な高感度画質の魅力は大きい。
※画像下のデータは画像サイズ / 露出時間 / 絞り / ISO感度 / 露光補正値 / ホワイトバランス / レンズ焦点距離です。
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2,848×2,136ピクセル / 1/350秒 / F5 / ISO100 / 0EV / WB:オート / 24mm
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2,848×2,136ピクセル / 1/600秒 / F5 / ISO100 / 0EV / WB:オート / 8mm
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2,848×2,136ピクセル / 1/80秒 / F2.8 / ISO1600 / 0EV / WB:オート / 8mm
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2,848×2,136ピクセル / 1/52秒 / F2.8 / ISO1600 / 0EV / WB:オート / 8mm
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2,848×2,136ピクセル / 1/240秒 / F5 / ISO100 / 0EV / WB:オート / 24mm
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F-B&Wモード
2,848×2,136ピクセル / 1/350秒 / F4.5 / ISO100 / 0EV / WB:オート / 8mm
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F-クロームモード
2,848×2,136ピクセル / 1/140秒 / F5 / ISO200 / 0EV / WB:オート / 24mm
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F-スタンダードモード
2,848×2,136ピクセル / 1/125秒 / F5 / ISO200 / 0EV / WB:オート / 24mm
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2,848×2,136ピクセル / 1/450秒 / F4.5 / ISO100 / 0EV / WB:オート / 8mm
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■ URL
富士フイルム
http://fujifilm.jp/
製品情報
http://fujifilm.jp/personal/digitalcamera/finepixf30/
■ 関連記事
・ 【実写速報】富士フイルム FinePix F30(2006/04/25)
河田 一規 (かわだ かずのり)1961年、神奈川県横浜市生まれ。結婚式場のスタッフカメラマン、写真家助手を経て1997年よりフリー。雑誌等での人物撮影の他、写真雑誌にハウツー記事、カメラ・レンズのレビュー記事を執筆中。クラカメからデジタルまでカメラなら何でも好き。最初に買ったデジカメはソニーのDSC-F1。 |
2006/06/09 01:04
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