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【伊達淳一のデジタルでいこう!】
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実売25,000円以下! エントリーモデルの実力(前編)
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Reported by
伊達 淳一
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コンパクトデジカメで最大の激戦区は、実売3万円台半ばから4万円台後半の価格帯だ。各社を代表する最新鋭のスタイリッシュコンパクトがこの価格帯に集中している。黎明期からデジカメに散財し続けてきたヒトバシラーから見れば「これだけ完成度が高く、デザインや作りも良くなったデジカメが実売4万円前後で買えるなんて、幸せな時代になったものだ」と感慨にふけってしまうが、カメラにさほど興味のない人は「たかかコンパクトカメラごときに4万円も払いたくない。もっと安いデジカメでいいや」と思うのではないだろうか?
ただ、カメラ本体の予算が実売3万円以上あれば、それなりにスタイリッシュなモデルも選択肢に残ってくるが、型落ちの処分価格ではなく、実売3万円未満の廉価モデルとなると、かなり選択肢は限られてくるし、デザインもおしゃれとは言い難い。デジカメにそこそこ興味を持っている人には、まったく興味のないカテゴリーではなかろうか? 正直な話、ボクもこのクラスのデジカメは、店頭でちょっと触ったことがある程度で詳しくは知らない機種がほとんどだったりする。
しかし、実売3万円未満の廉価モデルは、もうひとつのデジカメ激戦区だ。国内だけでなく、ワールドワイドの市場を考えれば、むしろ実売3万円未満の廉価モデルこそ、各メーカーのシェアを左右する主戦場だとも言える。そこで、型落ちになり激安で叩き売られている機種ではなく、現行機種でできるだけ廉価なモデル6機種を集め、コンパクトカメラとしての使い勝手や写りを比較してみることにした。
今回ピックアップしたのは、オリンパス FE-150(22,800円)、キヤノン PowerShot A430(取り扱いなし 17,000円前後)、キヤノン PowerShot A530(18,200円)、ニコン COOLPIX L3(24,900円)、松下電器 LUMIX DMC-LS2(21,800円)、富士フイルム FinePix A500(17,500円)の6機種。カッコ内の価格は、ポイント還元制の大手ネットショップ価格(2006年5月11日調べ、税込)で、いずれも実売25,000円を下回っている。また、付与されたポイント+αで256MBのメモリカードくらいは買えるので、かつての銀塩コンパクトカメラと比べても、まあまあのお手頃価格と言えるだろう。
| COOLPIX L3 | LUMIX DMC-LS2 | FinePix A500 |
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実売価格 | 25,000円前後 | 22,000円前後 | 19,000円前後 |
撮像素子 | 1/2.5型5.1MP | 1/2.5型5MP | 1/2.5型5.1MP |
焦点距離(35mm換算) | 38-116mm F3.2-5.3 | 35-105mm F2.8-5 | 38-114mm F3.3-5.5 |
最短撮影距離 | 10cm | WIDE:5cm/TELE:30cm | 10cm |
光学ファインダー | × | × | ○ |
液晶モニター | 2型(8.6万ピクセル) | 2型(8.6万ピクセル) | 1.8型(7.7万ピクセル) |
シャッター | 4-1/1,500秒 | 8-1/2,000秒 | 2-1/1,500秒 |
感度 | AUTO(ISO50-200) | AUTO/80-400 | AUTO/100-400 |
撮影コマ数 | 約200コマ | 250コマ/420コマ | 100コマ/400コマ |
内蔵ストロボ | WIDE:3.0m/TELE:1.75m | WIDE:3.7m/TELE:2.1m | WIDE:3.1m/TELE:2.0m |
撮影時の露出情報表示 | × | ○ | × |
動画撮影モード | 640×480、320×240 160×120 | 320×240 | 320×240、160×120 |
動画撮影時のズーム | デジタル2倍 | × | × |
動画音声記録/再生 | ○/○ | ×/× | ×/× |
寸法(幅×奥行き×高さ) | 91×26×60.5mm | 110.5×30.9×53.5mm | 93×27.5×60mm |
質量(本体のみ) | 約120g | 約138g | 約126g |
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| CAMEDIA FE-150 | PowerShot A530 | PowerShot A430 |
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実売価格 | 23,000円前後 | 20,000円前後 | 17,000円前後 |
撮像素子 | 1/2.5型5MP | 1/2.5型5MP | 1/3型4MP |
焦点距離(35mm換算) | 32-96mm F2.8-4.8 | 35-140mm F2.6-5.5 | 39-156mm F2.8-5.8 |
最短撮影距離 | WIDE:20cm/TELE:50cm | WIDE:5cm/TELE:33cm | WIDE:5cm/TELE:25cm |
光学ファインダー | × | ○ | ○ |
液晶モニター | 2.5型(23万ピクセル) | 1.8型(7.7万ピクセル) | 1.8型(7.7万ピクセル) |
シャッター | 1/2-1,000秒(夜景:2秒) | 15-1/2,000秒 | 1-1/2,000秒 |
感度 | AUTO(ISO64-256/320) | AUTO/ISO80-800 | AUTO/ISO64-400 |
撮影コマ数 | - | 約90コマ/360コマ | 約90コマ/360コマ |
内蔵ストロボ | WIDE:4m/TELE:2.5m | WIDE:3.5m/TELE:2.2m | WIDE:3.0m/TELE:2.0m |
撮影時の露出情報表示 | × | × | △ (スローシャッター時のみ) |
動画撮影モード | 320×240、160×120 | 640×480、320×240 | 640×480、320×240 |
動画撮影時のズーム | × | デジタル2倍 | デジタル2倍 |
動画音声記録/再生 | ○/○ | ○/○ | ○/○ |
寸法(幅×奥行き×高さ) | 90×24.5×55mm | 90.4×43.2×64mm | 103×40.2×51.8mm |
質量(本体のみ) | 約125g | 170g | 160g |
■ 実売価格
6機種の中で実売価格がもっとも安いのは、PowerShot A430で、ポイント還元制の大手量販店でも18,000円弱、ネットを探せば16,000円を切っているお店もあるようだ。また、PowerShot A530やFinePix A500も2万円を大きく切っていて、かつてのトイカメラ並の価格で売られている。しかし、レンズはズームで、ピント合わせはもちろんAF、液晶モニターも装備、USB接続キットも同梱されていて、画素数も400~500万画素というのだから恐れ入る。こんな価格で売って採算が取れるのか、心配になってしまうほどだ。
■ デザイン
デザインや質感の高さでは、FE-150がダントツだ。この価格帯のデジカメには珍しくメタルボディを採用し、液晶モニターも2.5型23万画素と大きく高精細。電源もリチウムイオンバッテリーで、今回ピックアップした6機種の中では、もっともスリムでコンパクトだ。
また、COOLPIX L3も、プラスチックボディながらデザインが可愛くコンパクト。FinePix A500も、プラスティックボディなりに親しみやすいデザインで、このサイズで光学ファインダーも装備、ボディの厚みもそれほど気にならない。松下電器DMC-LS2は、ちょっと横幅があるものの高さや厚みが抑えられており、結構スタイリッシュに見える。
PowerShot A530は、グリップがあるのでカメラをしっかりホールディングできるが、その分ボディは厚く、ポケットに入れるには少々きびしいサイズ。PowerShot A430は、高さは抑えられているものの、ボディの厚みが40mm以上あり、ボテッとして見える。やはりボディ厚は30mm以下でないと、いまどきのコンパクトカメラとしては野暮ったい印象は否めないところだ。
■ 液晶モニター
最近のデジカメは、コンパクトデジカメだけでなくデジタル一眼レフまで、液晶モニターが大型化されている。しかし、価格の安い廉価モデルで真っ先にスペックダウンさせられるのも液晶モニターで、液晶の画面サイズが小さく、液晶の解像度も低いので、かなり見映えが悪くなる。
そんな中で、FE-150だけは、2.5型23万ピクセルと、このクラスに似つかわしくない贅沢な液晶モニターを装備している。なにしろ上位機種のμ710でさえ、2.5型とはいえ11.5万ピクセルしかなく、完全に上下が逆転してしまっている。
ちなみに、今回ピックアップした残りの5機種はというと、COOLPIX L3と松下電器 LUMIX DMC-LS2が2.0型8.6万ピクセル、PowerShot A530とA430、FinePix A500が1.8型7.7万ピクセルで、“とりあえず液晶モニターが付いています”というレベル。液晶モニターに関しては、FE-150以外は“安かろう悪かろう”と言わざるを得ない。廉価モデルとはいえ、画素数が10万ピクセルを大きく下回っているのは不満だ。
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左からCAMEDIA EF-150、PowerShot A430、PowerShot A530、COOLPIX L3、LUMIX DMC-LS2、FinePix A500
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■ バッテリー
液晶モニターと並んで、コストダウンに直結するのがバッテリーだ。リチウムイオンバッテリーを採用すると、ボディの小型化には有利だが、リチウムイオンバッテリーパックやチャージャー(またはACアダプタ)が必要となるので、それだけ割高に付く。一方、汎用の単3アルカリ電池やニッケル水素充電池を電源にすれば、お試し用の単3アルカリ電池を同梱するだけで済むので、(メーカーにとっては)安上がりだ。
ユーザーの立場から見ても、汎用の単3アルカリ電池が使えるのは便利だ。不意に電池切れになっても、駅の売店やコンビニエンスストアで替えの電池を入手できるからだ。電池寿命やランニングコスト面では、ニッケル水素充電池のほうが優れているが、一般的なニッケル水素充電池は時間が経つにつれ自己放電するので、デジカメを使用する前の晩に充電するのがベスト。
しかし、デジカメにそれほど興味のない人が、それほど電池のメンテナンスに神経を使うとは思えない。たまにデジカメを持ち出しては見たものの、ニッケル水素充電池が自己放電していて、わずか2~3枚で電池切れという憂き目に合う可能性が高い。そういう意味では、リチウムイオンバッテリーも、バッテリー残量を把握し、バッテリー残量が少なくなったらしっかり充電しておく必要がある、という点では同じ。したがって、汎用の単3アルカリ電池でそれなりの枚数が撮れるデジカメが、ものぐさなユーザーやそれほどデジカメのメンテナンスに気を配らないユーザーにはお勧めだ。
今回ピックアップした6機種の中で、FE-150だけがリチウムイオンバッテリーを採用していて、チャージャーで充電する方式。残りの5機種はすべて単3型電池2本で動作し、汎用のアルカリ電池も使用可能だ。
CIPA準拠の撮影枚数(単3型アルカリ電池)を見ると、松下電器 LUMIX DMC-LS2が約250枚(オキシライド電池時)、COOLPIX L3が約200枚と、かなり電池の持ちがイイ。また、FinePix A500は約100枚、PowerShot A430は約90枚、同PowerShot A530は約90枚と、アルカリ電池での撮影枚数はやや心許ないが、ニッケル水素充電池を使えばどの機種も360~400枚は撮影できるので、サンヨーの「eneloop」のように自己放電の少ないニッケル水素充電池を使えば、電池のメンテナンスにさほど神経を使わなくて済むはずだ。
なお、オリンパスFE-150のCIPA準拠の撮影コマ数は、カタログや取扱説明書には明記されていないが、オリンパスに問い合わせたところ、約160枚撮影可能とのこと。旅行などにはやや心許ないスペックだが、スリムコンパクトとしてはごく標準的な数値だ。
【お詫びと訂正】記事初出時、FE-150の撮影可能枚数についての記述を、編集部で誤って掲載しておりました。正しくは約160枚です。お詫びして訂正させていただきます。
■ 撮像素子とレンズ
今回ピックアップした6機種の中で、PowerShot A430だけは4メガピクセルの1/3型CCDを採用しているが、A430以外の5機種はいずれも5メガピクセルの2.5型CCDで、撮像素子のスペックとしてはほぼ横並び状態だ。
PowerShot A530とA430はズームが光学4倍で、他の4機種よりも(わずかながら)望遠に強い。実写サンプルを見ても、レンズ性能の高さがうかがえ、撮像素子の能力を最大限に引き出せている。ただ、その分、ボディが厚めだ。
ワイド端の画角はFE-150が32mm相当ともっとも広く、次に35mm相当のPowerShot A530と松下電器 LUMIX DMC-LS2が続く。COOLPIX L3とFinePix A500は38mm相当とちょっと狭め、PowerShot A430は39mm相当でもっとも広角撮影に弱い。
開放F値(レンズの明るさ)は、ワイド端でF2.8、テレ端でF5.6程度が、コンパクトカメラとして標準的なスペックだが、COOLPIX L3とFinePix A500はワイド端でF3.2ないしF3.3とやや暗め。逆にPowerShot A530はF2.6とわずかながら明るめだ。レンズが明るいほうが、同じ感度でより速いシャッタースピードで撮影できるので、手ブレ、被写体ブレに強くなる。
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COOLPIX L3 ワイド端
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COOLPIX L3 テレ端
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LUMIX DMC-LS2 ワイド端
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LUMIX DMC-LS2 テレ端
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FinePix A500 ワイド端
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FinePix A500 テレ端
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CAMEDIA FE-150 ワイド端
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CAMEDIA FE-150 テレ端
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PowerShot A530 ワイド端
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PowerShot A530 テレ端
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PowerShot A430 ワイド端
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PowerShot A430 テレ端
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■ 高感度とブレ低減
もはや“スリムで大画面”だけで売れる時代は終わり、“高感度”と“手ブレ補正”が最近のコンパクトデジカメのトレンド。とはいっても、廉価モデルにこうした要素を求めるのはちとキビシイかと思いきや、松下電器 LUMIX DMC-LS2には、しっかり光学式手ブレ補正が搭載されている。実売2万円台前半の廉価モデルで、手ブレ補正の恩恵が受けられるとは驚きだ。ただ、レンズは“ライカ認証”ではなく、レンズ前面には“LUMIX DC VARIO”と刻まれている。写りにどれだけの違いがあるかは不明だが、このあたりが上位機種のFXシリーズと廉価モデルの差だ。
また最高感度は、PowerShot A530のISO800がもっとも高感度で、PowerShot A430と松下電器 LUMIX DMC-LS2、FinePix A500の3機種はISO400まで。FE-150とCOOLPIX L3は、感度は自動設定のみで、手動で感度を変えられない仕様だ。ちなみに、FE-150の最高感度はISO256、COOLPIX L3はISO200までだが、FE-150はシーンモードの“ブレ低減”にすればISO320まで最高感度が高くなる。
ただ、いくら感度が高くても、画質が伴わなければ意味がない。どの機種も高感度になればなるほど、ノイズが増加し画質は低下してくるが、最近はノイズリダクションでザラザラ感を低減している機種が増えている。高感度ノイズはカラーノイズと輝度ノイズに大別されるが、カラーノイズを低減するとシャドー部の彩度が低下しやすいし、輝度ノイズを強引に目立たなくすると、ローコントラスト部分のディテールが喪失してしまう。高感度画質を比較する際は、単にノイズの有無を見るだけでなく、ノイズ低減と引き換えに解像感が喪失していないかをよくチェックすることが肝心だ。
ISO400で撮影できる4機種でISO400時の画質を比較してみると、PowerShot A530がもっとも解像感があり、ノイズの粒が揃っている。PowerShot A430も解像感はしっかりあるものの、A530に比べるとカラーノイズが多め。撮像素子のサイズが1/3型と小さい分、高感度に弱くなっているようだ。また、従来のキヤノンのコンパクトデジカメよりもカラーノイズを抑える処理をしているようで、シャドー部で少し彩度が低くなる傾向はあるが、全体にスッキリした描写だ。
一方、LUMIX DMC-LS2とFinePix A500の2機種は、ザラザラ感を低減するために輝度ノイズをぼかす処理がやや強めにかかっているが、カラーノイズもボケて大きくなってしまっているので、かえってうるさい感じがするし、解像感も微妙に低下している。個人的には、輝度ノイズを低減して損なわれた解像感をシャープネスで補う、という処理は好きではない。
■ COOLPIX L3
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ISO AUTO
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■ LUMIX DMC-LS2
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ISO80
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ISO100
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ISO200
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ISO400
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■ FinePix A500
■ CAMEDIA FE-150
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ISO64(夜景)
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ISO200(AUTO)
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ISO320(ブレ低減)
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■ PowerShot A530
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ISO400
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ISO800
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■ PowerShot A430
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ISO64
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ISO100
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ISO200
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ISO400
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※後編に続く
後編では、フルオート機としての使い勝手や実写性能を検証します。
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伊達 淳一 1962年生まれ。千葉大学工学部画像工学科卒業。写真、ビデオカメラ、パソコン誌でカメラマンとして活動する一方、その専門知識を活かし、ライターとしても活躍。黎明期からデジタルカメラを専門にし、カメラマンよりもライター業が多くなる。自らも身銭を切ってデジカメを数多く購入しているヒトバシラーだ。 |
2006/05/30 00:00
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