デジカメ Watch

【新製品レビュー】ニコン D200(ハードウェア編)

~ニコンの見識が感じられる名機
Reported by 根本 泰人

 「デジタル一眼レフカメラの正統」という力強いメッセージとともに登場したニコン D200は、2005年12月16日の発売日以前から人気が沸騰し、16日には大手量販店では発売日より1カ月以上前に予約した人の手にしか、このD200を渡すことができなかったという。当然現在も、同時発売の「AF-S DX VR Zoom Nikkor ED 18-200mm F3.5-5.6 G」ともども品薄が続いており、特にこの魅惑的高性能レンズの供給不足は深刻な状況と聞く。

 最近のニコンのデジタル一眼レフのラインナップは、プロ用最高級機としてのD2X/D2H、普及上位機のD70S、普及入門機のD50と、いずれも発売されて1年以内の新機種で上と下はしっかりとおさえられているが、その中間のプロやハイアマチュア層をターゲットとしたカメラとしては2002年発売のD100であった。D100は性能面では約2年前に出たD70に追い越されてしまっている部分もあったのに、3年以上放置されて、昨秋に販売終了していた。

 D50/D70sでデジタル一眼レフに習熟した層がより高性能なデジタル一眼レフカメラを必要とした場合、いきなり実売40万円を越えるD2Xでは性能は素晴らしくとも価格面やサイズ/重量などで躊躇せざるを得ないだろう。このため20万円前後の価格帯と推測された新しいニコンの主戦機たるD200に、期待と関心が高まっていったのは当然のことと言えよう。

 今回のテストは、発売日以前にニコンから借り受けたD200+AF-S DX Zoom Nikkor ED 18-70mm F3.5-4.5 Gと、私が購入したD200とVR 18-200mmの2台で実施した。本当は最初からVR 18-200mmレンズでテストを行ないたかったのだが、ニコンからはこのレンズを借り受けることができなかったのは残念である。また、バッテリーパックDB-200やマグニファイングアイピースDK-21Mも自費で購入して使用してみた。なお、ニコンから借りたD200はファームウェアAが1.00であったが、私のD200は1.01にバージョンアップしていた。なお両者ともファームウェアBは1.00である。


サイズ、実測重量、ハンドリング

D2XよりMB-D200をつけたD200のほうが背が高い
 ボディのみの公称重量は約830g。実測ではボディ(接眼目当てDK-21、モニターカバーBM-6、三角環付き)のみが約850g、専用リチウムイオン電池EN-EL3e搭載で約930g。レンズは、DX 18-70mm(フード込み)単体で約410g、VR 18-200mm(フード込み)単体で約590g。D200のボディはマグネシウム合金製で、ボディ各所にシーリングを行ない、防滴/防塵性能を高めてあるのが大きなアピールポイントである。

 さて、手に持つとずっしりとした重量感を感じるボディである。だが撮影の際には、無理なくホールディングできるグリップのおかげでカメラをしっかり構えることができる。特にDX 18-70mmやVR 18-200mmを装着した際の重量バランスが非常によい。そしてその全体の重量感は手ブレに対する安心感を与えてくれ、シャッターを切った時の感触のよさなど全体の作動感の気持ちよさにも関係していると思う。

 個人的にはD2Xを常用していることもあり、薬指・小指あたりにゆとりがあるD2Xのグリップ感のほうが良いのだが、D200は背丈がはるかに低いのでこれはやむをえない。なおバッテリーパックMB-D200を装着すると、グリップ部が下に広がるので持ちやすくなるが、小指のあたりにつなぎ目の段差があるのがやや気になるし、背がD2Xより高くなってしまう。

 MB-D200は単体で約230g(バッテリーなし)、縦位置シャッターと縦位置時の前後のコマンドダイアル、AF-ONボタンを備えていて、バッテリーとして単三型電池も使用できる。


マウント

マウント部。反射ミラーが従来のニコンのデジタル一眼より小さいことがわかる
 D200のマウントは、1959年に発売されたニコンF以来の伝統不変のニコンFマウントであることは言うまでもない。不変といっても実際に装着できるレンズはCPU内蔵レンズと、非CPUレンズの中でAi対応されたレンズやレフレックスニッコールなどとなるが、F3AF用レンズのように使用できなかったり使用上の制限があるレンズも存在する。

 D200はD1シリーズやD2X/D2H同様、Ai連動環をマウントに備えるため、過去の膨大な種類のニッコールレンズ資産を活用できるのは実に素晴らしい。Ai対応レンズの場合、D2系同様焦点距離と開放絞り値を入力すると、マルチパターン測光まで対応する。それまでのD100やD70系/D50では、フォーカスエイドは機能しても、測光機能が働かないので使用に大きな制約があった。

 D200は個性的なMFレンズの描写を楽しむことができるし、サードパーティ製のMFレンズで遊ぶこともできる。個人的な希望としてはニコンF5で行なった連動爪の可倒式改造を、もちろん有償でよいからD2X/D2Hともども実施してもらえないだろうか。そうすれば、Ai改造されていないレンズまで装着できる。露出機能は動作しないにしても、オールドニッコールの活用範囲が拡大する。


ファインダー

DK-21Mを装着したところ
 光学ガラス製のペンタプリズムを採用し、ファインダー倍率は約0.94倍とD2系の約0.86倍より約10%大きく、ファインダー像が大きく撮影対象がよく見えるファインダーである。D70/D50系の約0.75倍との違いは実に大きい。ただし視野率は約95%で、約100%のD2系とは格の違いがある。

 ニコンの一眼レフカメラのファインダーの見えの良さには高い定評があるわけだが、このD200もなかなか優れたファインダーである。なかなか、と書いたのは、液晶フィルムを使用しているために若干コントラストが低めで、D2系と比べるとやはり明るさと鮮明さで一歩譲るためである。

 だが、その液晶フィルムによって実現されている機能は、十分魅力あるものだ。一つはAF点の位置を明確に表示する機能で、大きな四角状のマークは誰にでもはっきり視認できるだろう。ただ個人的にはもう少し線が細く目立たないほうが良いと感じることがある。

 次に、構図決定に非常に便利な格子線表示が可能である。ニコン F80が登場したときに初めて見て、スクリーンを交換せずに簡単に格子線表示のON/OFFができることに感動したことを思い出す。F80に比べれば液晶フィルムの透過度も格段に向上していることは、今回見比べてみてよくわかった。そのほか、バッテリーの残量警告やCFカードの装填警告、白黒モード撮影警告をファインダーの左下に表示でき、警告を見落としにくくなっている。これは表示しないように設定することも可能だ。

 D200のクリアマットスクリーンIIはピントの山がつかみやすいので、MFレンズを装着した場合のピント調整もやりやすい。これも非常に優れた点である。それからファインダー下部に表示される撮影情報の表示は、フォントの大きさが適切で、また字体も読みやすいものである。

 以上のように、このD200のファインダーは見え味ではD2系に劣るものの、機能の豊富さやファインダー倍率ではD2系を越えており、もちろんD70/D50系より格段に優れたファインダーであると言えよう。他社の一眼レフと比べても、総合的なファインダーの良さが際だつ感じである。

 なお同時に発売されたファインダー倍率を1.2倍に拡大するDK-21Mであるが、私が眼鏡をかけているためか、視野の周囲の像が若干にじむように見え、また四隅がかなり見えにくくなってしまった。接眼レンズをもっと大きくするなど改善の余地があるように感じた。


液晶モニター

クラス最大のモノクロ液晶パネル
 D200は背面のカラー液晶モニターと、右肩に撮影情報を表示するモノクロ液晶パネルを装備している。モノクロ液晶パネルはクラス最大で、文字も大きく各種の撮影情報が容易に確認できる。何より良いのは、電源をOFFにしていても撮影可能コマ数が常時表示されていることである。

 ところで撮影中に、この右肩の液晶パネルが見ずらくなることがある。そうした場合に、背面のカラー液晶パネルに撮影情報を表示することができるようになると便利ではないかと思う。ただし上部液晶は今のままにして欲しい。背面液晶表示だけだと、いちいち背面をのぞき込む必要があって情報の確認がしずらい。

 カラー液晶モニターは2.5型低温ポリシリコンTFT液晶で約23万画素と、D2系とほぼ同じスペックだが、視野角は170度と広がって見やすくなっており、また発色がよりきれいになったと感じられる。ただし日中の屋外など周囲が明るい環境では、モニターの明るさを最大にしてもまだ暗く感じられ、直射日光が直接当たるような状況では画像の確認も難しくなってくる。


電源

バッテリーチェック画面
 ボディ単体では7.4V、1,500mAhのEN-EL3eを1個内蔵できる。このリチウムイオンバッテリーはD70などと同じEN-EL3系なので、電圧とサイズは同じだが、EN-EL3やEN-EL3aはD200には物理的に挿入できず、使用できなくなっている。反対にこのEN-EL3eをD70などに使用することは問題ない。

 このEN-EL3eはいわゆるインフォリチウムバッテリーで、バッテリー残量は%単位で把握でき、また使用開始してからの撮影枚数や、バッテリーの劣化度合いが表示される。このバッテリー残量をワンボタン操作で表示できるようにして欲しい。いちいちメニューの中からセットアップメニューを呼び出して、さらに電池チェックの項目を選択するのは面倒である。

 ところでD200は、このEN-EL3eで公称1,800コマの撮影が可能とうたわれている。サブで常用するD70の約2,500コマに比べてやや少ないという感じのデータだが、実際に使用したところ、何度も公称値の半分くらいしかもたなかった。これは使い始めでモニターを頻繁に見たり、メニューの設定を変更していることも影響しているかもしれないが、それにしても減り方が速い印象である。

 D200を使用している何人かの友人に尋ねてみたが、皆私と同じ意見、つまりバッテリーの減りが早めということであった。また内蔵フラッシュを多用すると、さらにバッテリーの減りが早い。


撮像素子と画質設定

 D200の撮像素子は、23.6×15.8mmの原色CCDで、ニコンがDXフォーマットと言うところのAPS-Cサイズである。有効画素数は約10.2メガピクセル。

 ニコンはD2H系の自社製撮像素子であるLBCAST以外はソニー製のセンサーで、D70/D50系とこのD200は原色CCD、D2XはCMOSを採用している。それが特に色再現性にどのような違いを生むのか強く関心をもつところであるが、メーカー側としてはこのD200はD2系と同じ色再現となるように調整してあるそうである。実際に撮影した画像を見て感じることは、D200はD2系よりも色がよりきれいに再現されるということだ。「きれい」というのは感覚的な表現であるから、評価する言葉としては適切ではないかもしれないが。D200は画質に大きな影響を与えるローパスフィルターを新規に開発し、特に周辺画質の低下をおさえてあるという。

 画質設定については、D200はカメラ側で用意してある6種類の仕上がりを設定することができる。それは標準、ソフトに、鮮やかに、より鮮やかに、ポートレート、白黒である。また任意に仕上がり状態を設定できるカスタマイズ設定も可能である。また別に色空間としてsRGBとAdobe RGBが選択できる。

 標準撮影は、それだけ見るとコントラストや彩度がすこし強めに感じられる設定で、くっきり感がある画像だと思う。多くの人に美しいと感じられる設定になっていると言えるのではないだろうか。

 発色については、デジカメWwatchに掲載されている開発者インタビューでは、D2Xに揃えてあるということだが、私も含めて何人かのプロの率直な意見はD2XよりD200は色が良いというものである。ということは、今ニコンのデジタル一眼レフの中で一番色が良いカメラということになるわけだが。

 そのほかのモードも作例を見ていただければわかるが、レタッチを前提にするならソフト設定したものからスタートするほうが処理しやすいだろう。あるいはカスタマイズで自分の好みのスタート点を探して設定して欲しい。

 白黒の設定画像だが、ハーフトーンのなめらかな再現が好印象である。モノクロプリント出力に重点をおいたプリンタで印刷すれば、相当にきれいなモノクロプリントが得られるそうであると感じた。


標準
AF-S DX ED 17-55mm F2.8 G(17mm) / ISO100 / 1/640秒 / F5.6
ソフトに
AF-S DX ED 17-55mm F2.8 G(17mm) / ISO100 / 1/640秒 / F5.6
鮮やかに
AF-S DX ED 17-55mm F2.8 G(17mm) / ISO100 / 1/640秒 / F5.6

より鮮やかに
AF-S DX ED 17-55mm F2.8 G(17mm) / ISO100 / 17mm / 1/640秒 / F5.6
白黒
AF-S DX ED 17-55mm F2.8 G(17mm) / ISO100 / 17mm / 1/640秒 / F5.6

 カスタマイズ設定では、輪郭強調(シャープネス)、階調補正(コントラスト)、カラー設定(色再現)、彩度設定、色合い調整(色相)を個別に設定できる。このなかでカラー設定はニコン独自のもので、カラーモードIは人肌の色合いやグラディエーションを自然に再現するモード、カラーモードIIは色空間がAdobeRGBの時に設定でき、もっとも色域が広く素材性を重視して自分でソフトで調整する場合に適当なモード、カラーモードIIIは風景に適し、青空や緑を鮮やかに再現する。


ピント合わせ

 マルチCAM1000オートフォーカスモジュールは、D200のために新たに開発された測距素子である。フォーカスエリアは11点とD2Xと同じだがその配置は異なり、D2Xより四隅の測距点が中心部によっていて、全体として菱形に近い。測距位置を示す小さな四角点も、画面の中で目立ちすぎず、かといってわかりにくくもない。

 AF制御は非常に多彩である。まず11点のうち左右の中ほどの上下3点を1つにまとめて、全体で7点とし個々の測距領域も広いをワイドフォーカスエリアにできる。これは動体を追う場合に好適だという。また測距点の使い方を、1つの測距点のみを使う「シングルエリアAF」、撮影中の被写体が設定した測距点をはずれても他の測距点からの情報でピントを合わせ続ける「ダイナミックAF」、隣り合う複数のAFエリアを1つのグループとして構成した5つのグループを選択し、その中心の測距点でピントをあわせ一時的にピントがはずれた場合でも周囲の2~4点がサポートする「グループダイナミックAF」、それとすべての測距点の中で一番手前にあると判断した測距点でピントが合う「至近優先ダイナミックAF」から選べる。

 さらにグループダイナミックAFはグループ内の測距点の構成を2種類設定でき、その上、至近優先設定も可能である。正直な印象としてかなり複雑であり、またマニュアルの説明も前半部だけでは不十分で、後半部のカスタムメニューの設定部を熟読する必要がある。

 それからピントを合わせた被写体が一瞬フォーカスエリアからはずれた場合、レンズがそれに追随して新たなAF動作を行なうことを避けるAFロックオン機能が搭載されている。D2系にもすでに搭載されているが、D200では3段階のレベル調整が可能に進化している。

 なお実際に撮影している中で、合焦表示が出た場合ピントの不安を感じることはまったくなく、実際の撮影結果も素晴らしいものであったが、一部のレンズで被写体によっては合焦表示が出にくいものがあった。また中心部の測距点では合焦するが、周辺部の測距点では合焦しないレンズもあった。さらにサードパーティ製レンズの中に、特定の焦点距離で合焦表示が出ても撮影結果がピンぼけになるものがあった。これらのレンズもまったく同じ条件でD2Xに装着して撮影すると問題がなかったので、D200との相性の問題ということなるのだろうか。


測光

 マルチパターン測光の元祖であるニコンは、D2X系とD200ではそれまでの3D-RGBマルチパターン測光をIIとしてさらに機能強化を図っている。従来のマルチパターン測光では露出アンダーになりがちな全体的に白い被写体なども、ハイライト部の輝度や面積を測定して評価するアルゴリズムを追加することで、露出の狂いを低減しているという。

 ただし使用するレンズによってマルチパターン測光のモードが変わるため、もっとも高精度な測光を期待するのであれば、レンズは距離情報をカメラに伝達できるDタイプあるはGタイプのレンズを使用する必要がある。AFレンズでもSタイプでは距離情報が伝わらないため、RGBマルチパターン測光となるからである。

 そのほかにD200は中央部重点測光、スポット測光が可能で、中央部重点測光は測光範囲を6、8、10、13mmおよび画面全体平均に設定できる。またスポット測光はCPU内蔵レンズではAF点に連動して測光位置が移動できるなど、測光についてはD2系と同等の機能を持ち、非常に充実している。


3D-RGBマルチパターン測光
AF-S DX ED 17-55mm F2.8 G (17mm) / ISO100 / 1/640秒 / F5.6
中央部重点測光
AF-S DX ED 17-55mm F2.8 G (17mm) / ISO100 / 1/1,000秒 / F5.6
スポット測光
AF-S DX ED 17-55mm F2.8 G (17mm) / ISO100 / 1/800秒 / F5.6

 この撮影結果でわかるように、測光方式によって露出がかなり変動している。D200は撮影者の意図によって、露出を自由にコントロールできるわけだが、カメラまかせにしたい場合には3D-RGBマルチパターン測光が、安定して良い結果を得られると言えるだろう。

 さらにこれもD2系同様MFレンズの中でもAi対応レンズ(改造レンズも可)や非Aiでも装着可能なレンズでは、レンズの焦点距離と開放F値を設定することで、マルチパターン測光が可能となる。デジカメWatchでのD200の初報にはレンズ情報を保存できるのは1本のみと書いてあるため、レンズを換えるたびにいちいち焦点距離と絞りを設定しなければならないように思うが、実はそうではなくてあらかじめ設定されている焦点距離ごとに1つの開放F値を記憶できるようになっている。例えば28mm F2.8レンズと50mm F1.4レンズを併用する場合、あらかじめ28mmではF2.8を、50mmではF1.4を設定しておけば、レンズを交換した時には焦点距離を変更すると絞り値も自動的に設定される。もちろん同じ28mmでF2とF3.5を使う場合には、交換の都度絞り値を設定しなければならないが。

 それからこれらの値はメニューから設定するのではなく、ボディ前面右手側下にあるファンクションボタンをカスタムメニューf4で「FVロック・レンズ情報設定」に設定すると、ファンクションボタンを押しながら、メインコマンドダイアルで焦点距離、サブコマンドダイアルで開放F値を簡単に設定できるので、MFレンズを多用する人はこの設定をお勧めする。


レンズ情報設定画面 マウント左下のファンクションボタンとコマンドダイアルでレンズの焦点距離と開放F値を入力したほうが、操作が速い

 ところで撮影された画像について平均的に明るい、あるいは暗いと感じる場合、カスタム設定b7で基準露出の変更ができる。マルチパターン測光、中央部重点測光、スポット測光それぞれ個別に1/6段ステップで±1段までの調整が可能だ。こうした細かい設定ができることは、D200の優れた点の1つである。これもD2系と同じになっている。


感度とノイズ除去

 D200のISO感度はISO100から1600までの範囲で設定できる。ステップ幅は1/3、1/2、1段階の設定が可能である。ISO1600に対しては、さらに+1EVまでの増感設定もできる。また高感度ノイズ除去という機能があり、ISO400~800の範囲で強弱3段階で設定できる。ISO800を越えると強制的に高感度ノイズ除去機能はONとなる。

 日中での風景撮影の結果では、低感度のISO100~200の画像は、ノイズが認められないと言ってよい。ISO400になると空の青色にわずかだがノイズがのってくるが、拡大率を上げてもまず気になるようなことはない。

 ISO800になると、空や道路など一様なトーンのところにノイズがわずかに目立ってくる。ISO1600になるとさらにノイズが増えて画面全体がざらざらしてくるのだが、画像の品位はまだ十分に保たれていて、拡大率が小さいならばさほど目立たない。


ISO100
AF-S DX ED 17-55mm F2.8 G (17mm) / 1/320秒 / F8
ISO200
AF-S DX ED 17-55mm F2.8 G (17mm) / 1/640秒 / F8
ISO400 高感度ノイズ除去ON(標準)
AF-S DX ED 17-55mm F2.8 G (17mm) / 1/1,250秒 / F8

ISO800 高感度ノイズ除去ON(標準)
AF-S DX ED 17-55mm F2.8 G (17mm) / 1/2,500秒 / F8
ISO1600 高感度ノイズ除去ON(標準)
AF-S DX ED 17-55mm F2.8 G (17mm) / 1/5,000秒 / F8
ISO1600+1EV増感 高感度ノイズ除去ON(標準)
AF-S DX ED 17-55mm F2.8 G (17mm) / 1/8,000秒 / F8

 ISO1,600時に高感度ノイズ除去を強、標準、弱に設定したテストでは、ノイズ除去が弱では画面全体に細かいノイズがはっきり認められるが、画像の細部は意外と鮮明でディテールも比較的良くわかる。標準になるとノイズのパターンがやや大きくなったように感じられ、空などでもノイズは少なくなったように見える。しかし細部のディテールがやや失われ、細かな部分が解像しにくくなっていることもわかる。強にするとさらにノイズが少なく見えるが、野原の草などのディテールがかなり失われてしまい、建物の細部も解像しなくなる。


ISO1600 高感度ノイズ除去 弱
AF-S DX ED 17-55mm F2.8 G (17mm) / 1/5,000秒 / F8
ISO1600 高感度ノイズ除去 標準
AF-S DX ED 17-55mm F2.8 G (17mm) / 1/5,000秒 / F8
ISO1600 高感度ノイズ除去 強
AF-S DX ED 17-55mm F2.8 G (17mm) / 1/5,000秒 / F8

 夜景撮影で、ISO感度変化とノイズの変化を調べてみた。ISO100~200はノイズはほとんど認められず、とてもきれいな夜景が撮影できている。ISO400では暗部や淡い光芒に、ノイズがわずかに認められるようになるが、全体としてはとても良好である。

 ISO800になってもISO400と大きく変わらない。全体にまだ十分きれいである。ISO1600以上では暗部でノイズがはっきりしてくるが、画像の品位が良く保たれていると言える。このD200は高感度でも夜景がきれいに撮影できるカメラと言えるのではないだろうか。しかしISO1,600+1段増感までいくと、さすがに全体にノイズの現れ方が目立って汚い感じになってくる。


ISO100
AF-S DX ED 18-70mmF3.5-4.5G (18mm) / 1.6秒 / F3.5
ISO200
AF-S DX ED 18-70mmF3.5-4.5G (18mm) / 1/1.3秒 / F3.5
ISO400 高感度ノイズ除去ON(標準)
AF-S DX ED 18-70mmF3.5-4.5G (18mm) / 1/2.5秒 / F3.5

ISO800 高感度ノイズ除去ON(標準)
AF-S DX ED 18-70mmF3.5-4.5G (18mm) / 1/5秒 / F3.5
ISO1600 高感度ノイズ除去ON(標準)
AF-S DX ED 18-70mmF3.5-4.5G (18mm) / 1/8秒 / F3.5
ISO1600+1EV増感 高感度ノイズ除去ON(標準)
AF-S DX ED 18-70mmF3.5-4.5G (18mm) / 1/20秒 / F3.5

ホワイトバランス

 ホワイトバランスはオートにした場合約3500~8000Kという広範囲な自動調整が行われる。オート以外に6種類の設定が用意され(個々に微調整が可能)、色温度を指定する設定もできる。さらにプリセット設定では、白あるいはグレーの被写体を撮影してホワイトバランスを設定でき、またメモリーカード内の画像と同じホワイトバランスとしたり、RAWデータのホワイトバランスをNikon Capture 4.4で調整した結果をカメラに転送して設定値とすることもできる。撮影時にホワイトバランス・プラケティング撮影を行えば、ホワイトバランスを微妙に変化させた複数の画像を同時に得ることが可能だ。

 以下には、微調整なしの場合の個々のホワイトバランス値での撮影結果を示す。撮影時刻は午後1時半過ぎであった。当然ではあるが快晴下であるから晴天とオートがホワイトバランスが良いが、太陽が少し西に傾いて色温度が少し下がっているためかオートでの撮影結果のほうがより自然な色味に感じられる。


オート
AF-S DX ED 17-55mm F2.8 G (17mm) / ISO100 / 1/640秒 / F5.6
電球
AF-S DX ED 17-55mm F2.8 G (17mm) / ISO100 / 1/640秒 / F5.6
蛍光灯
AF-S DX ED 17-55mm F2.8 G (17mm) / ISO100 / 1/640秒 / F5.6

晴天
AF-S DX ED 17-55mm F2.8 G (17mm) / ISO100 / 1/640秒 / F5.6
ストロボ
AF-S DX ED 17-55mm F2.8 G (17mm) / ISO100 / 1/640秒 / F5.6
曇天
AF-S DX ED 17-55mm F2.8 G (17mm) / ISO100 / 1/640秒 / F5.6

晴天日陰
AF-S DX ED 17-55mm F2.8 G (17mm) / ISO100 / 1/640秒 / F5.6

 続いて室内の蛍光灯下での撮影結果を示す。照明はナショナルのパルック昼光色蛍光灯である。蛍光管は交換して約半年だが、蛍光灯を覆う白色ディフューザーの影響で色温度が偏っている可能性がある。

 オートと蛍光灯設定での7段階の微調整値で撮影してみたが、微調整といってもそのホワイトバランスの違いは非常に大きい。今回の条件では0(白色蛍光灯)の設定ではやや青く、-1(昼白色)の設定ではやや黄色く感じられた。一番白色が自然に感じられたのはオートの設定であった。オートで撮影した画像は肌色も良い感じであると思う。

 以上の結果から、どの蛍光灯の設定にしたらよいかわからない、あるいは迷った場合はもちろん、ともかく1コマはオートを信頼して撮影しておくと良いだろう。


オート
AF-S DX VR ED 18-200mm F3.5-5.6 G (22mm) / ISO400 / 1/20秒 / F4.5
蛍光灯+3
AF-S DX VR ED 18-200mm F3.5-5.6 G (22mm) / ISO400 / 1/20秒 / F4.5
蛍光灯+2
AF-S DX VR ED 18-200mm F3.5-5.6 G (22mm) / ISO400 / 1/20秒 / F4.5

蛍光灯+1
AF-S DX VR ED 18-200mm F3.5-5.6 G (22mm) / ISO400 / 1/20秒 / F4.5
蛍光灯0
AF-S DX VR ED 18-200mm F3.5-5.6 G (22mm) / ISO400 / 1/20秒 / F4.5
蛍光灯-1
AF-S DX VR ED 18-200mm F3.5-5.6 G (22mm) / ISO400 / 1/20秒 / F4.5

蛍光灯-2
AF-S DX VR ED 18-200mm F3.5-5.6 G (22mm) / ISO400 / 1/20秒 / F4.5
蛍光灯-3
AF-S DX VR ED 18-200mm F3.5-5.6 G (22mm) / ISO400 / 1/20秒 / F4.5

露出モード(PASM)、シャッター速度

 エントリークラスのD70/D50系ではニコンでいうところのデジタルイメージングプログラム、いわゆるシーンモードがいろいろ用意されているが、プロ・ハイアマチュア向けのD200では、露出モードはD2系同様P、A、S、Mの4種類しか用意されていない。このカメラを使うレベルの人なら、それで十分であると私も思う。

 ただ、このD200には仕上がり設定という画質に関してシーンモードに似た設定機能があるが、それをいちいちメニューを呼び出して設定変更するのを煩わしいと感じることがある。それにこのD200はカメラには詳しくないが機能の優れた良いカメラが欲しいというレベルの人にも十分お勧めできるカメラであるから、そういう層にはシーンモードを備えた方がより魅力的ではないかと思ったりするのだが。

 シャッター速度は30~1/8,000秒、バルブで、十分なレンジがある。シャッターユニットは約10万回のシャッター動作が可能とされており、またミラーバランサーにより瞬時にミラーを停止させるというニコンF5時代からのきわめて高度なメカニカル制御を導入しているD200のシャッターの切れ感は、それなりに素晴らしいものである。

 ここでも「それなりに」と書いたのは、実はD2Xと併用するとD2Xのほうがシャッターの切れ感が一段と優れていることを感じてしまうからである。さすがに価格が倍以上するD2Xは、当然といってよいのだが、D200よりも各部の動作感がさらに優れていることをD200のおかげで改めて認識することとなった。なおD200が悪いといっているわけではないので、念のため。

【お詫びと訂正】記事初出時、「シャッターユニットは10万回以上の動作を保証」と記述しておりましたが、より発表時のニュースリリースに近づけた記述に変更させていただきました。


動作モード、連写性能

 D200は巻き上げの動作モードとして、1コマ撮影、秒間1~4コマに設定できる低速連続撮影、最高約秒間5コマの高速連続撮影、セルフタイマー撮影、ミラーアップ撮影が設定できる。秒間3コマでは連写性能に不満を感じることが多いが、これが秒間5コマになると実用上十分と感じるから不思議である。そしてさらに重要なのことは、連続で何コマ撮れるかである。連写速度が速くても撮影コマ数が少ないと肝心な瞬間を逃しかねない。D200は内蔵バッファの容量が大きく、公称値ではRAWで22コマ、JPEG・ノーマルでは54コマとクラス最大級である。
 秒間5コマの連続撮影速度と、合焦性能、露出のばらつきなどを見るため、いつものようにホームに進入してくる電車を撮影した。レンズはAF-S DX VR ED 18-200mmF3.5-5.6Gで、最長200mm(35mm判換算300mm)、 ISO400、絞り開放F5.6でシャッター速度1/500~1,000秒となった。AFは中央一点で、AF-Cモードである。また手持ちなのでVRはONとした。

 作例は27コマ連写したが、うち6コマを掲載する。高速で移動する被写体に300mm相当の望遠という非常にシビアな条件下なのに、27コマのほぼてがジャスピンになった。撮影時間は撮影データに記録されている時刻から約5.1秒間であったことがわかる。結果として秒間約5.3コマと、公称値を若干上回る結果が出た。




 ところでD2系に続いて装備された便利な撮影モードが、ミラーアップ撮影である。一度シャッターボタンを押すとミラーアップが行なわれ、もう一度シャッターを押すとシャッターが切れる。またミラーアップしてから約30秒たっても2度目のシャッターボタンが押されない場合、シャッターが自動的に切れる。ミラーによる振動が完全に収まったと判断してからシャッターを切れるので、振動を嫌う撮影での結果が良い。もちろん電子ケーブルレリーズも併用できる。


ストロボ

 D200の大きな魅力のひとつは、内蔵ストロボを備えていることである。これはD2系に対するアドバンテージのひとつである。最新のi-TTL調光システムの発光精度の高さは優れたもので、D200はいろいろなシーンでとりあえず一発ストロボをたいてみることをお勧めしたい。特に日中シンクロのおもしろさを知ると、内蔵ストロボの有用さを一層感じることになるはずだ。

 さて、D200のシンクロ同調速度は1/250秒で十分といいたいところだが、実はD70/D50系は1/500秒なのである。なぜかはそれぞれのカメラのハードの解説記事を読めばわかるだろうが、この一段のシャッター速度の違いによる絞り値の自由度の違いのため、日中シンクロの撮影でD70/50系のほうが背景とのバランスが良い場合がある。D2系も1/250なのだが、これらのカメラが下位機に負ける数少ない弱点である。

 なお、D200の内蔵ストロボはISO100相当時ガイドナンバーは約12で、18mmレンズの照射角をカバーする。テスト撮影した結果では18mmレンズの範囲は十分カバーしていたが、ISO100設定だと暗いシーンでは近距離は問題ないが遠くに光が届かないのはやむを得ない。ISO400にするとガイドナンバーは約24となり、開放F値F3.5のレンズでも約7mまでは光が十分届くから、ノイズレベルとの兼ね合いだがISO400~800で撮影すると総合的な結果が良いはずだ。

 作例の天丼はアベイラブルでもホワイトバランスの精度が良く、かなりきれいに撮れていると思うが、内蔵フラッシュONでは全体が自然な雰囲気でより美味しそうである。光の配分が適切で、とても良く調光されていることがわかる。またISO800でもあまりノイズが気にならない。


AF-S DX ED 18-70mm F3.5-4.5 G(29mm) / ISO800 / 1/30秒 / F3.8 / ストロボなし AF-S DX ED 18-70mm F3.5-4.5 G(29mm) / ISO800 / 1/60秒 / F5 / 先幕シンクロ

 次はベビーローライドスコープの写真であるが、上部からの照明だけなので内蔵フラッシュを発光させない場合には正面が暗いが、内蔵フラッシュを発光させると全体に光がまわることがわかる。ただし背景が白なので、作例は+1EV補正をかけているがまだ補正不足である。またフラッシュONでは、金属部の反射が気にはなる。なおいずれもISO1,600で撮影しているが、暗部でノイズが目立つものの全体としては画像の品位が保たれている。D200はノイズ特性が向上していると言える。


AF Micro 55mm F2.8 S / ISO1,600 / +1EV / 1/25秒 / F8 / ストロボなし AF Micro 55mm F2.8 S / ISO1,600 / +1EV / 1/60秒 / F8 / 先幕シンクロ

 内蔵ストロボを使用するときには、フードやレンズ先端によるケラレに注意しよう。例えばレンズキットのAF-S DX ED 18-70mm F3.5-4.5 Gをフードをつけたまま撮影すると、18mm広角端では画面下部に確実にケラレが生じるし、AF-S DX VR ED 18-200mm F3.5-5.6 Gではフードをつけない場合でも18mm広角端で1m以内では画面下部にケラレがでる。

 なお内蔵ストロボは、スピードライトSB-600/800を離れて設置した際に、この外部ストロボをワイヤレスで発光制御できるコマンダーとしても機能する。


再生機能

 撮影された画像は撮影後の画像確認設定をONにしておけば、撮影後瞬時に背面の液晶モニターに表示され、そこで削除したり画像を拡大したりヒストグラムを確認するなどの処理ができる。

 CFカードに記録された画像もすぐに呼び出すことができ、1コマ再生以外に4コマあるいは9コマのインデックス再生もできる。ただしモニターが大きいのだからインデックス再生は16コマモードがあると、多数の画像をめくる時により便利ではないかと思う。

 1コマ再生時、画像のみの標準表示と、ファイル情報を併記した表示以外に、撮影情報表示(複数面)、ヒストグラム表示、RGBヒストグラム表示、ハイライト表示、GPSデータ表示が可能だが、これらの表示の有無をメニューで任意に設定できる。ところで撮影情報表示をさせる場合、複数の画面に渡るのだが、モニター画面の広さをいかしてうまく1面で表示できるようにならないだろうか。なんども画面をめくる操作が面倒である。

 拡大は画像サイズがLの場合、最大で25倍まで大きくすることができる。25倍では画像はぼやけてくる。倍率可変は拡大表示モードに入る操作と拡大操作が異なるが、これは慣れれば問題ない。ただ一発でピクセル等倍で表示できる操作があるとよいと思う。


合焦点表示 4画面インデックス表示

ヒストグラム表示 RGBヒストグラム表示

拡大表示エリアの設定 拡大表示

最大拡大表示(約25倍)

その他機能

多重露出の作例
 ニコンD200に内蔵された機能は、銀塩カメラ時代とは比べものにならないほど多くのものがあり、ともかくカタログや説明書を読んで理解するだけでも大変である。その中で意外とおもしろい機能が、多重露出だろうか。D200は10コマまでの画像を連続して重ねて写し込むことができ、その際自動的にゲインを調整して明るさが整った画像が得られる。多重露出は撮影者のアイデア次第で、非常におもしろい写真を作ることができる。

 また撮影後にCFカードに記録されたRAWデータ画像2枚を使用して、元画像は残したままでD200の中で画像合成することもできるという。これも撮影者のアイデアでユニークな作品づくりが可能だろう。

 またD2系と同様、他社製のGPSユニットを装着して撮影位置情報を画像データとしてもたせることも可能である。学術調査などで活用できる機能だろうが、使い方を工夫すれば自分の撮影場所のデータベースを作ることもできるのではないだろうか。


操作性について

 ニコンのデジタル一眼の電源スイッチは、すべてシャッターボタン回りの回転式レバーに統一されていて、迅速簡単確実である。起動時間は約0.15秒とD2系を上回る。スイッチを入れると同時に撮影可能と言って良く、文句のつけようがない。しかしレリーズタイムラグは約50msと、D2Xの約37msより遅く、これが先に書いたレリーズ感の違いにも現れているのではないだろうか。

 ニコンのカメラのシャッターボタンの感触は定評があり、このD200も半押しの感覚がつかみやすく、シャッターを切る際の重さも適度である。もちろんスムーズな感触で申し分ない。

 D200の背面各部の操作ボタンは大きめの円形に統一された。各部のボタンは押しやすい。またマルチセレクターなど、レバー類の操作もしやすく、クリックの重さなども適切である。つまりこのカメラは操作感に関しては実に良く検討されていて、気に障る部分がほとんどない。個人的には背面上部のAF-ONボタンや、前部のプレビューボタンがもう少し大きい方が操作しやすいと思う程度であった。


 ところでボタン類の配置については、一点だけ気になったことがある。それはボディ左肩上部の3つのボタンの機能である。もちろんD200だけで見た場合、使う頻度が高いISOとホワイトバランスとクオリティを操作しやすいここに割り当ててあることに異論はなく操作上もとても良いのだが、D2系と混用するとD2系はここにシンクロとオートブラケティングとコマンドロックが割り当ててあるためとまどうことがある。開発された時期が違うカメラであるし、D2系は背面下部にサブパネルがあってそこに表示される情報とISOなどの操作ボタンが適切に配置されているわけだが、カメラの操作系は上位機から下位機までで完全に統一するのは難しいことだと感じた次第。とはいっても、基本的な操作系については、ニコンの各カメラは他社に比べて良く揃っているといえると思う。

 なおメニュー設定により、コマンドダイヤルの回転方向やメインとサブの機能の入れ替えたり、ボタンを押したときの動作をホールドモードにしたりといろいろなことができるのもD200の特徴で、自分の好みにカメラを合わせられるわけだ。


メニュー設定

 D200のメニュー表示の構成や内容はD2系とほぼ同じであるが、背面の液晶に表示されるフォントは一回り大きくなっていて、とても見やすくなっている。ただしそのため表示行数は減っている。また表示項目はまとめられる内容ごとにわかりやす色分けされていて、これも見やすい。項目数は膨大だが、ヘルプ機能があり機能の説明をしてくれるので、一度マニュアルを読んで機能の詳細を理解していれば、とまどわなくて済むのではないか。

 メニュー選択操作は基本的にセレクターボタンで行ない、コマンドダイアルを併用するように設定することもできる。メニュー項目数が膨大と言ってもよいので、コマンドダイアルを併用すると移動する操作が速くなる。ただし絞り優先モードで撮影している場合サブコマンドダイアルで絞り値を変更するわけだが、背面のモニターが点灯しているとサブコマンドダイアルでモニター表示モードが変わってしまい、絞り値が動かせなくなる。撮影時に何度もこれで困ったので、コマンドダイアルを再生/メニューモードで使用するに設定した場合、この絞り値変更機能との干渉がないように設定できるようにならないだろうか。

 なお撮影メニューの設定やカスタム設定は、それぞれ設定値を4種類登録でき、それぞれの設定に名前をつけることもできる。使用しているうちに自分にとって使いやすい設定値が決まってくると思うので、それを登録しておくと良い。

 またメニューの5番目のモードとして、最近変更したメニュー項目についてまとめて表示ができるようになっており、直近の変更をただちに確認し再調整できるのは、たいへん有り難い。設定できる内容が膨大であるから、変更した箇所をいちいち覚えているだけでも大変であるが、この機能のおかげで本当に助かっている。優れたアイデアである。


撮影メニュー カスタムメニュー

セットアップメニュー 最近設定した項目の表示

総評

 20万円以下のデジタルカメラという区分が適切かどうか議論があるかもしれないが、写真を趣味にする人が入手しようと即座に決断できる範囲としてはほぼ上限ではないかと思う金額の中では、カメラのスペック上も実際に得られる画質においても現時点では最高であることに異論を持つ人はいないと思う。もちろん使用感も素晴らしい。

 あらゆる面で非常に良くまとまったカメラで、ニコンというメーカーの見識あるいは良心というものが強く感じられる点も見事である。間違いなくニコンの名機と言われるカメラになるだろう。

 数少ない弱点としては、バッテリーの持ちがニコンのデジタル一眼レフにしては意外と良くないこと、体力に自身がない人にとっては重いことだろうか。また明るい戸外では液晶モニターが見づらい点も、まだ改良の余地がある。

 知人の有名写真家が「D200の唯一の欠点はフルサイズでないこと」と言い切っていたが、たしかにそういう見方もあろう。いよいよ次はフルサイズだろうか。D200の完成度の素晴らしさからいって、期待は高まるばかりである。



URL
  ニコン
  http://www.nikon.co.jp/
  製品情報
  http://www.nikon-image.com/jpn/products/camera/digital/slr/d200/
  レンズ交換式デジタルカメラ(D200)
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/link/dslr.htm#d200

関連記事
ニコンD2X/D70によるニッコールレンズ簡易描写性能テスト(2005/11/15)



根本 泰人
(ねもと やすひと)クラシックカメラの収集が高じて有限会社ハヤタ・カメララボを設立。天体写真の冷却CCD撮影とデジタル画像処理は約10年前から、デジカメはニコンE2/E900から。趣味は写真撮影、天体観測、ラン栽培、オーディオ(アンプ作り)等。著書「メシエ天体アルバム」アストロアーツ刊ほか。カメラ雑誌、オーディオ雑誌等に寄稿中。 http://www.otomen.net
http://www.hayatacamera.co.jp

2006/05/01 00:01
デジカメ Watch ホームページ
・記事の情報は執筆時または掲載時のものであり、現状では異なる可能性があります。
・記事の内容につき、個別にご回答することはいたしかねます。
・記事、写真、図表などの著作権は著作者に帰属します。無断転用・転載は著作権法違反となります。必要な場合はこのページ自身にリンクをお張りください。業務関係でご利用の場合は別途お問い合わせください。

Copyright (c) 2006 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.