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【河田一規のデジカメナビ】松下電器 LUMIX DMC-FZ7

~魅力的なオールマイティ機
Reported by 河田 一規

 LUMIX DMC-FZ7(以下、FZ7)は光学12倍ズームと、1/2.5型600万画素CCDを搭載する高倍率モデル。松下電器のLUMIXシリーズには他にもDMC-TZ1やDMC-FZ30という高倍率機があるけれど、TZ1はEVFレスのコンパクト指向だし、FZ30は1/1.8型800万画素CCD搭載の本格指向ということで、機能的に見るとFZ7はちょうど両者の中間に位置するモデルとなる。


見た目はマイクロ一眼レフ

 まずは外観から見ていこう。

 他社の高倍率ズーム機はレンズを左手側に寄せた、いわゆるL字型ボディを採用することが多いが、FZシリーズはレンズをボディの真ん中に置いたスタイルを以前からかたくなに守っている。このため、見た目はオーソドックスな一眼レフに近く、デザイン的には、昔から慣れ親しんだカメラらしいカメラという感じだ。

 ただ、姿写真からは想像しにくい所だが、大きさ的には一般的な一眼レフより3回りほど小さく、実際に手に取ると一眼レフのミニチュアのようにも見える。

 他社の手ブレ補正機能付き光学12倍ズーム+1/2.5型CCD機に比べてもその小型軽量さは圧倒的で、例えばソニーのDSC-H1は本体のみ438g、キヤノンPowerShot S2 ISが本体のみ405gなのに対して、このFZ7は本体のみ310g。電池とメディアを装填した状態でもわずか357gしかない。EVFをちゃんと備えた高倍率機としてはかなり小型といえるだろう。





ホールディングはやや工夫が必要

モードダイヤルや手ブレ補正機能のスイッチなど、操作系は概ね見るだけで機能が理解できる。松下電器ならではのスライド式パワースイッチの使い勝手もよい
 実際にFZ7を構えてみればすぐにわかることだが、これだけ小型だとホールディングはそれなりに工夫が必要だ。

 普通の一眼レフのようにレンズ鏡胴を左手で下からつかむような構え方だと、グリップを持つ右手と左手がかなり干渉してしまって持ちにくいのだ。他社の高倍率機にL字型ボディが多いのは、この干渉を避ける目的もあるのだが、前述のとおりFZシリーズの場合はレンズがボディ中央にある→右手側グリップとの距離が短い→右手と左手がぶつかる。というわけだ。したがって、左手はレンズ鏡胴の下からではなく、上から被せるようにつかんだ方が右手とぶつからずにホールドしやすい。

 ボタン類の配置は特に変わったところもなく初見でも迷わず操作できた。

 面白いのは十字キーとは別にジョイスティックを備えていることで、これを長押しするとホワイトバランス、ISO感度、画像サイズ、画質の4項目がショートカットとして表示され、そのままジョイスティックの上下左右で選択、プッシュで決定操作できる。このジョイスティックはグリップを握ったまま右手の親指で操作できるので、操作性も抜群である。

 なお、絞り優先AEやシャッター速度優先AE、マニュアル露出時にはこのジョイスティックを使って絞りやシャッター速度を設定できる他、マニュアルフォーカス時にはジョイスティックでフォーカシングも行なえる。


十字キーはメニュー操作の他、撮影モードでは露出補正やストロボモード、セルフタイマー設定などへのショートカットキーとなる。銀色に光っているのがジョイスティック ジョイスティックを長押しするとこの画面が出る。メニューに入らなくてもホワイトバランスとISO感度設定がクイックに行なえるのは便利

メニューの内容は単純明快でわかりやすい方。撮影関係のメニューはご覧の通り最上段が赤で表示される 一方、再生系メニューは最上段がグリーンとなり、視覚的にも瞬時に判断しやすいよう工夫されている

ワザありの2.5型液晶モニター

ディスプレイ横にあるLCDモードボタンを長押しすると、このようにLCDモード選択画面になる
 従来のFZ5は液晶モニターが1.8型だったが、FZ7の液晶モニターは2.5型にグレードアップした。今となっては2.5型でも普通の大きさなのでインパクトは薄いけれど、ボディサイズが小さいだけに、ひときわ液晶が大きく見えるのも確かだ。

 ちなみに画素数は11.4万画素ということでスペック的には価格相応といった感じだし、ボディサイズとコストを優先したためか、上位機種であるFZ30に搭載されているフリーアングル式にもなってはいない。が、実はこの液晶モニターにはハイアングルモードという面白いワザが仕込まれているのだ。一般に液晶モニターは視野角があまり広くないので、斜め下方向から見ると色味が反転したようになってしまうのだが、FZ7に搭載されているLCDモードスイッチで「ハイアングル」を選択すると、何と、下方向からでもハッキリクッキリ見える!

 残念ながらローアングルや左右方向からの見え方は改善されないけれど、ハイアングルだけでも有るのと無いのでは雲泥の差であり、フリーアングルではない液晶モニターとしてはなかなか画期的な装備であると感じた。また、これとは別に、LCDモードを「パワーLCD」にすると、液晶の輝度が上がり、晴天の屋外でもモニターを確認しやすくなる機能も備えている。


通常モードでは下方向から液晶モニターを見るとこんな感じに見えにくいが……
LCDモードを「ハイアングル」にすると、このように正面から見たのと変わらないくらい明快に見える

液晶に表示される情報はこんな感じ。これは再生時だが、撮影時にもリアルタイムでヒストグラムが表示させられる。もちろん、撮影時に表示が邪魔になるようなら表示を消すことも可能
拡大再生の最大倍率は16倍。ピントやわずかなブレも確認することが可能だ

良好な電池の持ち

付属のリチウムイオンバッテリー。容量は710mAh
 他社の同クラス高倍率ズーム機は単三電池を採用する機種が多いけれど、FZ7は専用のリチウムイオン充電池を使用する。スタミナの方は液晶モニター使用で約320枚(CIPA規格)、EVF使用で約340枚となかなかのスペックである。実使用でも電池はかなり持つという印象を持った。最近の薄型機に比べれば大きめの電池なので、容量的には比較的余裕があると思う。付属の充電器を使用した場合、フル充電までは約2時間である。

 記録メディアは松下電器なのでもちろんSDメモリーカード。MMCも使用可能だが、その場合は静止画のみしか記録できない。

 レンズフードはアダプターとフード本体の2分割式で、アダプターの先端にはフィルターを装着することも可能だ。


付属の充電器はDE993。折りたたみコンセントタイプ
記録メディアはSDメモリーカード

付属フードは花型タイプ
アダプターとフード本体は分割する。アダプター側先端にはフィルターも装着可能

レスポンスは及第点

 カタログによると撮影間隔はAFを含まずで0.5秒、レリーズタイムラグは0.008秒ということだが、各種レスポンスはなかなか良好で、使っていてもイライラするようなことはほとんど無かった。

 起動は電源スイッチを入れてから液晶が点灯し、AF可能状態になるまで、手動計測で約2.5秒と、こちらも待たされ感は少ない。

 高倍率機では望遠側でAFがもたつく機種もあるが、その点もよく解決されており、最望遠側でもAFの合焦はかなりスピーディである。


やや派手だが明快で好ましい色再現

レンズはDCバリオエルマリート 6-72mm F2.8-3.3。35mm判換算では36-432mm相当。小型だが開放F値は明るい
 作例を見ても分かるとおり、初期設定の色再現はかなり派手めになる。特に色乗りが濃厚になったりはしないので、発色そのものは軽快な印象で、好ましく感じる人は多いと思う。ホワイトバランスも良好であり、特に色味が偏ることもない。

 この色味ではやや軽すぎると思った人は撮影メニューのカラーエフェクトから「ウォーム」を選べば、もう少しヨーロッパ調の暖色傾向の発色とすることも可能だ。

 レンズはライカブランドのDCバリオエルマリートだが、広角から望遠まで、どの焦点距離で使ってもシャープさに不満はなく、満足できる解像感を得ることができた。いまやルミックスの代名詞ともいえる手ブレ補正に関しても熟成が進んだ印象で、望遠端での撮影も昼間であれば、多少曇っていても安心して手持ちで行なえる。

 総じて、高倍率ズーム機としてはボディサイズも含め、かなり魅力度の高い機種であり、旅行などへ持って行くオールマイティ機としては最適だと思う。


ISO感度別作例

 ISO80からISO1600まで感度を変えながら撮影してみた。通常の絞り優先AEやプログラムAEではISO80~400までだが、シーンモードで「高感度」を選んだときはISO800とISO1600も設定できるようになる。

 これで見ると、高感度モードのISO800、1600はISO400よりもノイズは少ないが、それと引き替えに輪郭がかなり甘くなることが分かる。


※作例のリンク先は撮影画像をコピーしたものです。

※写真下の作例データは、記録解像度/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/35mm判換算焦点距離を表します。


【ISO80】
2,816×2,112ピクセル / 1/6秒 / F3.2 / 0EV / ISO80 / WBオート: / 71mm
【ISO100】
2,816×2,112ピクセル / 1/8秒 / F3.2 / 0EV / ISO100 / WBオート: / 71mm

【ISO200】
2,816×2,112ピクセル / 1/15秒 / F3.2 / 0EV / ISO200 / WBオート: / 71mm
【ISO400】
2,816×2,112ピクセル / 1/30秒 / F3.2 / 0EV / ISO400 / WBオート: / 71mm

【ISO800】
2,816×2,112ピクセル / 1/40秒 / F3.2 / 0EV / ISO800 / WBオート: / 71mm
【ISO1600】
2,816×2,112ピクセル / 1/60秒 / F3.6 / 0EV / ISO1600 / WBオート: / 71mm

一般作例

反射率の高い高輝度な被写体を画面に入れてもまったくフレアぽくならず、コントラストの高い画像となる
2,816×2,112 / 1/800秒 / F8.0 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 59mm
どの焦点域でもピントのシャープさがほとんど変わらないうえ、周辺まで乱れが少ないのはレンズが良いからだろう
2,816×2,112 / 1/640秒 / F8.0 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 104mm

広角36mm相当。枝部分の再現は見事。解像感はかなり高い
2,816×2,112 / 1/400秒 / F7.1 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 36mm
同じ場所から最望遠で撮影。望遠側でもAF速度は速く、迷うことなく合焦するので使っていても気分がよい
2,816×2,112 / 1/400秒 / F7.1 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 432mm

デフォルトでの色再現はあまり深みはないものの、彩度とコントラストの高い明快な印象。やや演出色ではあるが、多くの人が好ましく感じると思う
2,816×2,112 / 1/500秒 / F8.0 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 53mm
このくらい近い被写体だとちょっとAFに時間がかかる。リスの頭がわずかに被写体ブレしているが、手ブレ補正により望遠側であるにもかかわらず、手ブレはない
2,816×2,112 / 1/100秒 / F4.0 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 432mm

色味の偏った場合でもオートホワイトバランスの働きは正確
2,816×2,112 / 1/500秒 / F5.6 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 64mm
ISO200+手ブレ補正で夜景撮影に挑戦してみた。10カットほど撮影したが、風が強い日だったこともあり、何とかブレずにすんだのはこの1枚だけ。シャドー部の多い夜景ではISO200でも高感度ノイズは少し目立つ。画質が必要ならやはりISO80+三脚が絶対なのは言うまでもない
2,816×2,112ピクセル / 1/2.5秒 / F3.2 / 0.33EV / ISO200 / WB:オート / 84mm

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河田 一規
(かわだ かずのり)1961年、神奈川県横浜市生まれ。結婚式場のスタッフカメラマン、写真家助手を経て1997年よりフリー。雑誌等での人物撮影の他、写真雑誌にハウツー記事、カメラ・レンズのレビュー記事を執筆中。クラカメからデジタルまでカメラなら何でも好き。最初に買ったデジカメはソニーのDSC-F1。

2006/04/18 01:36
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