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【伊達淳一のレンズが欲しいッ!】
オリンパスZUIKO DIGITAL ED 18-180mm F3.5-6.3

Reported by 伊達 淳一

E-500に装着すると、大きさ的にもデザイン的にも非常にマッチする
 オリンパスのホームページを見ると、ZUIKO DIGITALレンズは、松(SUPER HIGH GRADEシリーズ)・竹(HIGH GRADEシリーズ)・梅(STANDARDシリーズ)の3つにランク分けされている。

 “松”レンズは、ZUIKO DIGITAL ED300mm F2.8やED 35-100mm F2.0、ED 7-14mm F4など、オリンパスの技術の粋を集めて作られた最高級レンズだ。防塵・防滴処理が施されたプロ仕様のレンズで、レンズ鏡胴に“プラチナライン”と呼ばれるシルバーの化粧リングが象徴としてデザインされている。キヤノンで言えばLレンズの赤はちまきのようなものだ。

 また、“竹”レンズは、松レンズほどではないが、高い光学性能とマニュアル操作性を重視して設計されたレンズで、ED 50-200mm F2.8-4.0やED 14-54mm F2.8-3.5、ED 11-22mm F2.8-3.5など、開放F値や近接撮影能力を重視した設計で、防滴、防塵処理も施されている。

 そして、“梅”レンズは、E-300/E-500レンズキットの14-45mm F3.5-5.6や45-150mm F3.5-4.5など、コストパフォーマンスを最重要視したレンズだ。鏡胴に距離目盛はなく、防塵・防滴処理も省かれているが、AF時にフォーカスリングは回転せず、S-AFで合焦後にそのままMF操作も行なえるなど、他社の廉価レンズに比べ、作りがいい点に好感が持てる。

 今回、取り上げるED 18-180mm F3.5-6.3もこの“梅”レンズに該当するレンズで、35mmカメラ換算で36-360mm相当の画角をカバーする高倍率ズームだ。発表当初は2006年春発売予定ということだったが、予想よりも発売が早まり、2006年1月27日に発売されることが決まった。メーカー希望小売価格は63,000円で、実売価格は5万円前後とカメラメーカー純正の高倍率ズームとしては、それなりにお手頃価格ではあるが、レンズキットの標準ズームにプラスαするには微妙なところ。新規ユーザー獲得のためにも、E-500と18-180mmズームのレンズキットをお得な価格設定で発売してほしいところだ。


ズームワイド端とテレ端における鏡胴の長さを比較 左からZUIKO DIGITAL 14-45mm F3.5-5.6、ZUIKO DIGITAL ED 18-180mm F3.5-6.3、シグマ18-200mm F3.5-6.3DC(キヤノンマウント)。キットレンズやシグマ18-200mmズームよりも半周りほど鏡胴が太く、全長も長めだ 付属のフードも35mm相当の画角に合わせ、設計されているので、シグマ18-200mmズームのフードと比べ、大型でより懐が広くなっている

 これまでのZUIKO DIGITALとは違って、レンズ鏡胴にレンズ型番を示すシルバーのプレートが省かれているが、E-500ボディに装着してみると型番プレートがないほうがスッキリしてマッチするように思う。ズームリングは適度な粘りとトルク感があり、少し重めの操作感ながら高倍率ズームとしてはなめらかな動きだ。

 レンズの自重で鏡胴が伸びてしまうのを防ぐため、ズームワイド端でロックするレバーが設けられているが、少なくとも冬期には出番がなさそうだ。また、これまでZUIKO DIGITALのフードは撮影時と収納時で装着する角度が違う3点支持方式のフードが採用されているが、この18-180mmズームは他社と同様、2点支持になっているので、フードを180度回転させればどちらでも装着できるのは便利だ。

 ところで、高倍率ズームといえば28-300mm相当の画角をカバーしているのが一般的なので、ワイド端の画角が36mm相当というのが気になる部分だ。理想を言えば、14-150mm F3.5-5.6なんてレンズを出してくれればフォーサーズシステムにピッタリの高倍率ズームだし、ワイド端が18mmスタートならせめてテレ端の焦点距離も他社並みの200mmあれば400mm相当の超望遠撮影ができるのに、とも思うが、まあ、いろいろと“大人の事情”があるのだろう。好意的に見れば、ズーム倍率を欲張らないことで、一定の画質レベルを維持しようとしたとも考えられる。ともあれ、利便性に優れた高倍率ズームという選択肢が増えたことだけでも、フォーサーズユーザにとって歓迎すべき話だ。


画角変化

18mm 60mm 180mm

歪曲収差&周辺光量チェック

18mm 50mm

100mm 180mm

 開放F値はF3.5-6.3と暗めだが、キットの標準ズームもF3.5-5.6なので特別暗いわけではない。ただ、360mm相当というテレ端の画角と標準設定では最高感度がISO400というE-300やE-500の仕様を考えると、ズームテレ端でブレずに撮影できるシーンは限られてくる。

 撮影初日は、このレンズがどれくらいお手軽簡単撮影に向いているかを確かめるため、感度設定をAUTO、露出モードをプログラムAEにして撮影してみたが、ちょっと暗くなると絞り開放になるため、多少甘さが残る描写だ。画質を重視するなら、ワイド端でF5.6、テレ端ならF8くらいまで絞って撮影すると、グンと引き締まったシャープな描写になってくる。

 そこで、撮影2日目はできるだけ絞って撮影しようと思い、ブレ低減のため一脚を持って行くことにした。フットワークは鈍くなるが、開放F値の明るい望遠ズームを荷物にプラスαすることを考えれば似たようなものだし、刀のようにズボンのベルトに差しておけば、三脚ほど荷物にはならない。それなりに気合を入れて撮影しようというときには便利なアイテムだ。ただし、被写体ブレを防ぐにはある程度のシャッタースピードも必要で、あまりにシャッタースピードが遅くなるようなら、多少ノイズが増えることを覚悟して感度を高くするか、描写の甘さに目をつぶり絞り開放で撮影する諦めの良さも肝心だ。

 それに、モニター等倍やそれ以上の倍率で鑑賞してアラ探しをするよりも、どんな写真を撮るかがもっとも大切なこと。どんなに高性能なカメラ、レンズでも、気楽に撮影に持ち歩く気にならないほど巨大で重いと、まさに“宝の持ち腐れ”状態だ。そういう意味では、E-500と18-180mmズームは、カメラメーカー純正の組み合わせとしては非常に軽量で、コンパクトなのが魅力。特に、E-500ブラックボディにこのレンズを装着すると、なかなかの見栄えの良さだ。ワイド端の画角が36mm相当というのがちょっと残念だが、予算に余裕があるのなら11-22mmを組み合わせれば、ほぼ一般的な撮影には不足のない画角をカバーできる軽量なシステムを組めると思う。


作例

※作例のリンク先は撮影画像をコピーしたものです。
※写真下の作例データは、シャッタースピード/絞り値/露出補正/ISO感度/レンズ焦点距離を表します。


1/400 / F5.7 / EV0 / ISO100 / 95mm 1/320 / F6.3 / EV0 / ISO400 / 180mm

1/200 / F8.0 / EV0 / ISO100 / 18mm 1/250 / F7.1 / EV0 / ISO100 / 105mm

1/160 / F8 / EV0 / ISO100 / 18mm 1/200 / F9 / EV0 / ISO100 / 18mm

1/200 / F8 / EV-0.3 / ISO100 / 23mm 1/4000 / F5.1 / EV0 / ISO100 / 51mm

1/500 / F8 / EV0 / ISO200 / 60mm 1/400 / F7.1 / EV-0.3 / ISO200 / 55mm

1/250 / F7.1 / EV-0.3 / ISO200 / 124mm 1/320 / F7.1 / EV0 / ISO200 / 180mm

1/500 / F5.6 / EV-0.3 / ISO200 / WB:18mm 1/250 / F7.1 / EV0 / ISO200 / 180mm

1/320 / F6.3 / EV0 / ISO200 / 180mm 1/250 / F10 / EV0 / ISO100 / 38mm

1/200 / F11 / EV0 / ISO100 / 18mm 1/320 / F11 / EV0 / ISO100 / 18mm

1/100 / F11 / EV0 / ISO100 / 180mm 1/200 / F7.1 / EV0 / ISO100 / 77mm

1/500 / F6.3 / EV0 / ISO100 / 180mm 1/500 / F6.3 / EV0 / ISO100 / 180mm

1/250 / F10 / EV0 / ISO100 / 18mm 1/200 / F7.1 / EV0 / ISO100 / 41mm

1/100 / F8 / EV0 / ISO100 / 135mm 1/80 / F7.1 / EV-0.3 / ISO200 / 180mm

1/100 / F7.1 / EV-0.7 / ISO200 / 124mm 1/100 / F8 / EV0 / ISO200 / 95mm

1/50 / F8 / EV-0.3 / ISO200 / 180mm 1/250 / F9 / EV-0.3 / ISO200 / 114mm

1/100 / F8 / EV0 / ISO200 / 41mm 1/125 / F8 / EV0 / ISO200 / 77mm

1/200 / F8 / EV0.3 / ISO400 / 124mm 1/200 / F8 / EV0 / ISO400 / 47mm

1/160 / F8 / EV0 / ISO400 / 65mm 1/160 / F8 / EV0 / ISO400 / 18mm

1/200 / F8 / EV0 / ISO400 / 33mm 1/320 / F8 / EV0 / ISO400 / 180mm

1/320 / F8 / EV0 / ISO400 / 65mm 1/160 / F8 / EV0 / ISO400 / 114mm

1/200 / F8 / EV0 / ISO400 / 180mm 1/250 / F8 / EV0 / ISO400 / 180mm

1/640 / F8 / EV0 / ISO400 / 114mm 1/13 / F5.6 / EV0 / ISO200 / 20mm

1/15 / F4.5 / EV-0.3 / ISO200 / 18mm 1/4 / F3.5 / EV-0.3 / ISO400 / 18mm

1/5 / F5 / EV-0.3 / ISO400 / 18mm 1.3秒 / F5 / EV-0.3 / ISO100 / 18mm

1/6 / F4.0 / EV0.3 / ISO400 / 18mm 1/6 / F3.5 / EV0.3 / ISO400 / 18mm

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伊達 淳一
1962年生まれ。千葉大学工学部画像工学科卒業。写真、ビデオカメラ、パソコン誌でカメラマンとして活動する一方、その専門知識を活かし、ライターとしても活躍。黎明期からデジタルカメラを専門にし、カメラマンよりもライター業が多くなる。自らも身銭を切ってデジカメを数多く購入しているヒトバシラーだ。

2006/02/01 02:35
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