オリンパスが10月4日に発表した「P-11」は、PictBridge対応フォトプリンタとして2003年10月に発表した「P-10」の後継となるフォトプリンタである。デザインが大幅に変更されたほか、印刷速度の向上が図られている、もちろん完全フチなし印刷は継承しており、家庭における大量印刷も現実的な1台となっている。
■ ドラム回転方式により本体内だけで印刷が完了
すでに9年に渡って個人向けの昇華型フォトプリンタをリリースし続けているオリンパス。今年発売された「P-11」は、2003年に発売された「P-10」の後継となるモデルで、PictBridgeによるデジカメからのダイレクトプリントに特化したモデルだ。
P-10から大きくデザインは変更されたものの、その特徴の多くは継承している。まず、前面部にデジカメと接続するUSB Aポートや各種LED、給紙トレイを装備する。このLEDは、電源LED、デジカメとの通信状態を示すアクセスLED、用紙関連のトラブルを警告するPAPER LED、インクカートリッジ関連のトラブルを示すRIBBON LEDの四つに集約された。
一方で、P-10が備えていた、印刷中にどの色を印刷しているかを表示する窓が廃止されている。本製品はドラム回転方式により、本体外に用紙をはみ出させることなく印刷が可能であるのが売りだが、用紙が出てくるまでは印刷が正しく行なわれているか不安になるという一面もあった。そのために印刷中に動きをつけることを目的として、そのようなユニークがギミックが施されていたわけだ。本製品では印刷速度の向上もあって、ここまでのギミックが必要ないとされたのか、印刷中にアクセスLEDがゆっくり点滅する、わりと一般的な仕組みへと変更されている。
用紙トレイについては、L判と葉書サイズ兼用のP-10と同一のものが利用される。本製品の用紙トレイは最大50枚をセットでき、しかも、トレイが完全に本体内に収納される仕組みになっている。用紙をむき出しにせず多くの枚数をセットしておける点は、本製品の大きな魅力のひとつといえる。
ちなみに排紙は本体上面から行なわれる。P-10のときは排紙トレイが剥き出しの状態だったのだが、P-11ではカバー上のトレイへと変更され印刷時に空ける必要が生じている。これは、デザイン向上のためでもあるのだろうが、上面というレイアウトを考えれば、ホコリ避けの目的のほうが大きいと推測できる。
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前面部にはデジカメと接続するUSB Aポートや各種LEDのほか、完全にカバー内に収納される給紙トレイを備える
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用紙トレイはL判/葉書兼用で、ガイトを付けてL判用紙を使用する。用紙枚数はL判/葉書とも最大50枚まで収納できる
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排紙トレイは上面のカバーを開けると表れる。先代のP-10では排紙トレイが剥き出しだったが、ホコリ避けのためにこうした仕様に変更されたのだろう
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ただ、左側面は、デザインを重視してしまったために実用性を低下させた印象を受ける。左側面にはインクカートリッジの収納口や、PCと接続するためのUSB Bポート、ACアダプタの接続コネクタが用意されるが、それらを利用するには側面カバー全体を外さなければならないのだ。
確かに、ケーブル止めが付いていて、電源ケーブルやUSBケーブルがすっきりと収納できる点では評価できる。ただ、100枚用というサプライが用意されている本製品ならではの大胆さだとは思うのだが、インクカートリッジ交換の度に側面パネルを外すというものものしい作業が必要になるのははっきりいって面倒で、ここはもう少しシンプルに交換できるよう改良を望みたい。
さて、Windows用のドライバで行なえる設定は昇華型らしくシンプルなものだ。用紙関連の設定以外では、色合い調整、ハード/ノーマル/ソフトの3段階が用意されるシャープネス調整、オーバーコートの有無といったところである。ちなみに、2~16分割のレイアウト印刷機能も用意されており、こちらはフチあり印刷を指定した場合にのみ設定が可能となっている。
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インクカートリッジは本体左側面のカバーを外すことで脱着を行なえる。側面カバーは軽くスライドさせるだけで開けられるものの、若干ながら本体を浮かす必要がある
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側面カバー内にはPCと接続するUSB Bポートと、電源コネクタも備える。同じくカバー内に設けられた結束部と、側面カバーの切り欠き部と通って本体外へ伸ばせる仕組みだ
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ACアダプタはケーブルと分離するタイプ。大きめの部類に入るといっていい
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ドライバの設定画面では、用紙サイズやフチあり/なしの指定に加え、シャープネスの設定や、オーバーコートの指定を行なえる。またフチあり印刷を指定した場合は2~16分割印刷も可能だ
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ドライバの設定画面からは色合いの設定も行なえる
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■ バランスを重視した色合いやシャープネス
それでは、実際に印刷した結果を紹介したい。ここでは、すべてニコン D70(JPEG/Fine/L)で撮影した画像を、PictBridgeを利用してダイレクトプリント。エプソンの「PM-A850」を使い600dpiでスキャンしたものを、トリミングした上で提示している。この際のトリミングには多少余りを持たせているので、本製品によるトリミング量の参考にしてほしい。なお、テストに使用した画像は下記に掲載した。
http://dc.watch.impress.co.jp/cda/special/2005/12/20/2928.html
まずは、色合いについてだが、やや赤味が弱い印象は受けるものの、極端な緑被りもない。彩度はやや弱めなので派手さはないが、かといって地味すぎないバランスの取れた色合いといえる。レベル補正も最小限に留めているようで、暗部の極端な持ち上げは見られず、この点は原画に忠実に映る。
解像感についても、太い髪の毛やはっきり文字などは解像感のあるシャープな描写がなされており申し分ないレベルにあるのだが、一方で肌のしわや細かな文字などはソフトな印象を受け、アンシャープマスクのしきい値を上げたときのような絵作りを行うようになっている。好みはあるだろうが、あまい雰囲気と呼ぶほどのソフトさはないので、おそらく、これがオリンパスなりのバランス感覚なのではないだろうか。
■ この路線にプラスしてバリエーションモデルも期待
ちなみに、印刷に要した時間は、
D70からのPictBridgeを利用して印刷:36秒
PCから印刷:38秒
と、個人向けプリンタとしては極めて高速な印刷が可能となっている。
インクカートリッジ交換については苦言を呈したものの、トータルで見るとP-10から確実な進化を遂げたといっていい。印刷速度はもちろん、50枚収納の用紙トレイやサプライ品のラインナップに魅力もあり、家庭でわりと多くの枚数を印刷する人であっても満足できるのではないだろうか。こうしたシンプルな機能な製品の魅力はもちろん今後も継続して欲しいと願う一方で、今後は基本仕様をそのままにカードリーダーなどを搭載するなど機能面の強化を図った製品展開にも期待したい。
■ URL
製品情報
http://olympus-imaging.jp/lineup/digicamera/printer/p11/
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・ オリンパス、世界最速の昇華型ダイレクトプリンタ「P-11」(2005/10/04)
多和田 新也 1976年岐阜県生まれ。2002年より,主に自作ユーザー向け記事を中心にライターとして活動している。野鳥を中心に自然に親しむのを趣味とするが,写真撮影に使っているNikon D1H+Nikkor 500mm/F4P(と三脚)に押し潰されそうになる程度の体力しか持たないあたりが
悩みの種。 |
2005/12/26 00:00
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