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【新製品レビュー】リコー Caplio R3

~手ブレ補正をはじめ過不足ないスペック
Reported by 安孫子 卓郎

 光学7.1倍ズームレンズをコンパクトなボディに収め、しかも広角端の焦点距離は35mm判換算で28mm相当。さらに同社初となるCCDシフト方式の手ブレ補正機構を搭載するなど、豪華なスペックで話題をさらったCaplio R3。その使い勝手と画質を見てみよう。


シリーズ一連の印象を覆すボディデザイン


 一見するとオーソドックスな外観だが、よく見るとグリップ部が若干手前にカーブを描いている。従来リコーの持っていたデザインとは別形状で、他社と比べても珍しい形状といえるだろう。その大きな理由と思われるのが、バッテリーの変更だ。

 従来は単三電池にこだわり、リコーといえば単三電池というイメージがあったが、R3ではついにリチウムイオン充電池専用になっている。おそらく多数のユーザーが1日で撮影するのは、多くて100枚程度だろう。例外的に200~300枚というレベルもありえるが、CIPA基準で310枚というレベルを達成したR3ならほぼ問題ないと考えている。





 とはいうものの、単三電池仕様のデジタルカメラが少なくなってきただけに、個人的には若干残念に思うところもある。まあそれはコンパクトデジカメ全体を見渡したときの話で、この機種に限定すれば、リチウムイオン充電池で正解だろう。

 ボディサイズもR1/R2に比べて小さくなり、本体重量も15gほど軽くなっている。家庭用ハカリで計測したところ、バッテリーは30gほど。アルカリ電池2本で50g程度なので、撮影時重量では従来機より35g程度軽くなった。バッテリーの充電は専用のチャージャーで行なう。ケーブルがなく、直接コンセントに差し込むタイプなので、コンパクトで携帯性に優れている。

 撮像素子は1/2.5型の有効513万画素CCD。最大出力は2,592×1,944ピクセル。この秋の主力は1/2.5型では600万画素機になっているが、500万画素と600万画素では実用的な差はほぼ無い。画素数を増やしたいのなら、コンパクトなら1/1.8型の700万画素や800万画素。あるいは一眼レフを考慮したほうが良く、1/2.5型の中で比較するならば、画素数が500万画素にとどまったことによる実質的なデメリットは、個人的にないと判断している。600万画素機と同列に考えて購入検討をしてよいだろう。

 レンズの焦点距離が4.6~33mmで、画角は35mm判フイルムに換算すると28~200mmに相当する。同社のRシリーズやGXシリーズでおなじみのステップズームという機能もあり、28 / 35 / 50 / 85 / 105 / 135 / 200mm(35mm判換算)の7段階に固定することが可能だ。

 筆者のような立場では、作例写真を撮るのに便利な機能だが、一般的にはあまり使い勝手が良くない。ステップズームにしてしまうと一気にズーミングすることができず、何度もボタンを押さないと大きくズームできないためだ。もちろんキャンセルすれば普通のズームとして使うこともできる。明るさは広角側でF3.3、望遠側でF4.8。広角側はF2.8を標準として確保してほしい。


撮影時画面 ステップズーム設定

 リコーといえば1cmマクロだが、この機能は健在。面白い絵作りが行なえるし、コンパクト機がデジタル一眼レフに勝る部分でもある。この機能だけでも、買いたくなる魅力はある。

 AFはコンパクトデジカメとしては平均的レベル。テレ側でピントを外すケースも見られたが、他社製品に比較して特に劣ることはない。コンパクトデジカメとしては平均的だろう。もちろん一眼レフほどの性能はないのだが、比較するには無理がある。

 メディアはSDメモリーカード。MMCと、26MBの内蔵メモリーも使える。静止画はJPEGで、シーンモードの文字にするとTIFFになる。以前から文字モードはTIFFなのだが、白黒二値の割には容量もとるしハンドリングも悪い。JPEG記録にしてくれたほうが、デメリットよりメリットのほうが多いだろう。

 液晶モニターは2.5型で、約11.4万画素の透過型アモルファスシリコンTFT液晶。屋外ではやや色が薄く見えるが、2.5型になったのは現在の標準仕様ともいえるだろう。ただ表示画素数が11.4万画素なのはもう一歩。20万画素以上の製品が多くなってきており、精細さに差を感じざるを得ない。


効果の高い手ブレ補正機構

 リコーとして初めてとなる手ブレ補正を搭載しており、手ブレ補正の効果は確かにある。やや動作音が気にはなるが、メリットに比べれば大した問題ではない。手ブレ補正なしのモデルに比べると、販売価格に相応の開きがでるが、肝心の場面でブレていては、「安物買いの銭失い」になりかねない。リコーのデジカメを検討しているのなら、手ブレ補正つきのR3は真っ先に候補としてあげてよい機種だろう。

 本体の起動終了ともにまずまず高速で、ストレスを大きく感じることはない。沈胴式レンズのため、屈曲光学系のように「0.x秒」で起動するわけにはいかないものの、実用上、全く問題は感じない。ただ起動時も終了時も、結構大きな音がするので、静かな場所だと目立つかもしれない。


 撮影モードは大きく分けて、通常撮影(Pモード)とシーンモードに分かれる。シーンモードは、ポートレート、スポーツ、遠景、(人物入り)夜景、斜め補正、文字、(デジタル)ズームマクロ、高感度の8モードで、シーンモードへの切替は十字キーの上に割り付けられている。

 ただちょっと不便なのは、このメニューの選択が循環しないため、たとえば一番最後の高感度モードを選択し、再び通常撮影に戻したいときなど、また順に戻ってこなくてはならない。他のメニュー操作も循環せず、メニューの奥にたどり着いてから同じメニューの数だけまた戻るのは面倒だ。

 絞り優先、シャッタースピード優先、マニュアルといった基本的な撮影モードはないが、今日、コンパクトデジカメに望まれている機能からしてみると、あまり重要ではない部分だろう。リコーには一眼レフがないため、リコー単体で考えればこれらの基本撮影モードを搭載したほうがよいともいえるのだが、消費者の立場から見ればコンパクトにそこまで要求する時代ではないだろう。

 静止画のシャッタースピードは1秒から1/2,000秒まで。動画では1/30秒から1/2,000秒までとなる。それ以外にメニューの中にある長時間露光の設定をすれば、1、2、4、8秒の露光が行なえる。

 リコーは従来からこの方式を採用しているが、他社のように普通に長時間露光を設定できるほうが便利であることは確か。打ち上げ花火なら2秒や4秒など時間を区切ってもよいのだが、夜景の場合だと始めのカットは暗い道路で、次のカットは明るいネオンでと、露光時間を変えたい場面も多い。ただしスペックとしては、8秒まで露光できれば一応十分。星空を撮るには不足するが、夜景ならばほとんどカバーできるだろう。

 また、0.5EV間隔で3枚のAEオートブラケットが可能だ。ONにしておくと、1回のシャッターで自動的に3枚連写をする。これもブラケット撮影をしたいのに、いちいち連写モードに切り替えて、3回シャッター押さねばならないデジカメも多い中、賢い設定である。余分な変更なくブラケットが使えるのは使い心地がよい。

 連写速度は秒あたり2~3コマ程度。コンパクトデジカメとしては平均的だが、どうも連写モードにすると自動的に増感してしまうようで、ISOオートだと相当に明るい場面でもめいっぱい増感しており、1/2,000秒・F5.5・ISO209とか、1/1,620・F5・ISO感度322などという撮影データが出てきた。なぜあえて絞る仕様にしたのか不思議。当然ノイズも増えており、必要以上の増感をするメリットは理解できない。ただし連写モード時に感度をISO64などに固定することもできる。


Caplioシリーズ伝統のISO800

 感度はISO64/100/200/400/800から設定できる。800になるとノイズも増えてくるが、理解して使う分にはないよりあるほうがよい。画素数を600万画素に増やすよりも、500万画素のままでISO800に設定できるほうが、ユーザーメリットは大きいだろう。

 むしろ気になるのは、低感度でも割にノイズが目立つこと。高感度ではノイズが増えてもそれなりに許容できるが、低感度ではもう少しノイズが少なくても良さそうに思う。もちろんWeb掲載用に縮小したり、プリントしたりする分には問題になることはないだろう。

 ホワイトバランスは、屋外、曇天、白熱灯、白熱灯2、蛍光灯、任意設定から選べる。任意設定もモードを呼び出して、DISPボタンで簡単に登録できるので、比較的使いやすいといえるだろう。

 また、3枚のWBブラケットも可能である。これらの設定はパワーOFFでクリアされるが、基本的にはよい考えだろう。常時ブラケットするように設定を保持できてもよいが、そうしたニーズは比較的少数派だろう。


ISO感度設定 スローシャッター速度制限も可能

便利なADJ.ボタンとAFターゲット

 特徴的なのは背面のADJ.(アジャスト)ボタン。一度押すと露出補正、もう一度押すとホワイトバランスのショートカットメニューが表示され、以後の3度目押しと4度目押しのそれぞれに任意の項目をセットできる。設定可能なのは、ISO感度、画質、フォーカス、シャープネス、測光方式、連写、オートブラケット、音声付き静止画のON/OFF。

 最近、メーカーが重要な機能を考えてボタンを配置するのではなく、ユーザー自身がニーズに応じてボタン配置を選択できるかどうかが重要になってきた。というのも、本体の小型化と液晶モニターの大型化から、ボタンスペースが狭いコンパクトデジカメが増えてきたからだ。少なくとも中級クラス以上の機種なら、カメラの操作性が機種の良し悪しに結びつくので、こうした配慮は必須条件になりつつある。


ADJ.ボタン(露出補正) ADJ.ボタン(ホワイトバランス) ADJ.ボタン設定

 またマクロモードにすると、ADJ.メニューの最後にAFのターゲット移動の機能が出てくる。マクロにおいてはフォーカスロックして構図を変えると、ピントのずれが大きくなるためにターゲット移動は重要である。

 マクロモードを解除するとターゲット移動も解除されて中央に戻るが、これもまた正しい考えだ。マクロ以外では被写界深度が深いため、中央でピントを合わせてフォーカスロックして構図を変えても問題がない。逆にターゲットが動いたままだとどこでピントを合わせるのかをとまどってしまう人も多いだろう。このあたりの作りは、さすがに「マクロのリコー」でよく練られている部分だ。


AFターゲット機能
 またマクロボタンは十字キーの下に割り振られた単独のボタンなので、一発でON/OFFを切り替えられる。他社では一度押すと確認モードに入り、もう一度押して変更に移る機種があるが、リコーのように押したらON、もう一度押せばOFFというほうが、わかりやすい。また中央に大きなアイコンでマクロモードが表示されるので、設定の確認も行ないやすい。

 頻繁に変更したい機能をADJ.ボタンに設定できるので、メニュー操作を必要とするケースが少ない。そういう意味では、メニューの完成度があまり重要ではなくなっている。カスタマイズ性を高めることでユーザーはもちろん、メーカーも余分な手間が減り、共にメリットのあるところだ。

 ひとつ不満なのは、露出補正が一発でできないこと。ADJ.ボタンでショートカットメニュー呼び出せるたり、ショートカットメニューを開いたまま撮影できることを考えても、ダイレクトに露出補正を行なうボタンがほしかった。十字キーの左にはストロボモード、右にはあまり役に立っていないリターンキーが割り付けられているので、露出補正を十字キーの左右に、ストロボモードはADJ.ボタンにと、ここまでカスタマイズできれば文句の付け所はなかっただろう。

 私の意見に反対の方もおられると思うが、意見が分かれること自体が、カスタマイズの重要さを示している。すべての人が私に賛成ならば、はじめからそのようにボタン配置を決めればよいだけのこと。意見が異なるすべての人が満足できるよう、カスタマイズ性能は高めてほしいところだ。

 動画は動画はMotion JPEGのAVI、音声はWAV。320×240ピクセルで30fpsが最大になる。現在はVGAで30fpsが当たり前になってきているだけに、やや見劣りするスペックだ。Webで使うにはこれくらいのほうがちょうど良かったりもするが、動画に関してはもうひとがんばりほしい部分である。


まとめ

 手ブレ補正が付いて、レンズは28~200mm相当、1cmマクロに2.5型液晶モニターと、一通りそろって過不足のない機種といえる。リコーのデジカメとしてはスペックから見て最も買い得感の高い機種となっており、1cmマクロの機種で何か探しているのなら、まずはR3が最初の検討対象となるだろう。


作例

※作例のリンク先は撮影画像をリネームしたものです。
※キャプション中の作例データは、記録解像度/露出時間/シャッター速度/レンズF値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/35mm判換算相当の焦点距離を表します。


●画角


2,592×1,944 / 1/760秒 / F3.3 / 0EV / ISO64 / オート / 28mm 2,592×1,944 / 1/189秒 / F4.8 / 0EV / ISO71 / オート / 200mm

●ISO感度

 猫の作例はISO800から撮り始め、徐々に感度を落としたもの。この時はしゃがんでの撮影で、体勢はかなり不安定。ISO100や64に落としたものはかなりブレて掲載できないと思っていたが、手ブレ補正の効果で耐えられる画像になっている。手ブレ補正の効果は絶大だとの印象を受けた。


2,592×1,944 / 1/24秒 / F4.6 / -0.7EV / ISO64 / オート / 58mm 2,592×1,944 / 1/34秒 / F4.6 / -0.7EV / ISO100 / オート / 58mm 2,592×1,944 / 1/79秒 / F4.6 / -0.7EV / ISO200 / オート / 58mm

2,592×1,944 / 1/164秒 / F4.6 / -0.7EV / ISO400 / オート / 58mm 2,592×1,944 / 1/310秒 / F4.6 / -0.7EV / ISO800 / オート / 58mm

 さすがに200mm相当で1/8秒ではブレる。しかも歩道橋の上なので、足場自体も多少揺れていた。手すりに両肘を付いていたとはいえ、基本的には望遠側での夜間手持ち撮影は無理がある。広角側なら、都会の夜景は手持ちでも使えそうな印象。手ブレ補正機構なしではとてもここまでゆかないだろうから、やっぱり効果はあるというご参考までに。


2,592×1,944 / 1/8秒 / F3.3 / 0EV / ISO64 / オート / 28mm 2,592×1,944 / 1/8秒 / F3.3 / 0EV / ISO100 / オート / 28mm

2,592×1,944 / 1/9秒 / F3.3 / 0EV / ISO200 / オート / 28mm 2,592×1,944 / 1/17秒 / F3.3 / 0EV / ISO400 / オート / 28mm

2,592×1,944 / 1/42秒 / F3.3 / 0EV / ISO800 / オート / 28mm

●マクロ

 左の写真は連写モードの増感のため、ノイズが乗ってしまった。連写モードでは感度を固定するほうがよい。


2,592×1,944 / 1/810秒 / F5.5 / -0.7EV / ISO322 / オート / 32mm 2,592×1,944 / 1/39秒 / F3.6 / -1EV / ISO168 / オート / 32mm

●ホワイトバランス


2,592×1,944 / 1/870秒 / F3.3 / 0EV / ISO64 / オート / 28mm 2,592×1,944 / 1/810秒 / F3.3 / 0EV / ISO64 / 晴天 / 28mm

2,592×1,944 / 1/810秒 / F3.3 / 0EV / ISO64 / 曇天 / 28mm 2,592×1,944 / 1/810秒 / F3.3 / 0EV / ISO64 / 白熱灯(白熱電球) / 28mm

2,592×1,944 / 1/810秒 / F3.3 / 0EV / ISO64 / 白熱灯2(白色蛍光灯) / 28mm 2,592×1,944 / 1/810秒 / F3.3 / 0EV / ISO64 / 蛍光灯(冷白色蛍光灯) / 28mm

●連写

※すべて2,592×1,944 / 1/2,000秒 / F5.5 / -0.7EV / ISO209 / オート / 32mm




●斜め補正モード


【元画像】1,280×960 / 1/36秒 / F3.3 / 0EV / ISO161 / オート / 28mm 【適用後】1,280×960 / 1/36秒 / F3.3 / 0EV / ISO161 / オート / 28mm

【元画像】1,280×960 / 1/36秒 / F3.3 / 0EV / ISO161 / オート / 28mm 【適用後】1,280×960 / 1/36秒 / F3.3 / 0EV / ISO161 / オート / 28mm

●そのほか


2,592×1,944 / 1/164秒 / F4.8 / 0EV / ISO200 / オート / 200mm 2,592×1,944 / 1/810秒 / F3.3 / 0EV / ISO64 / オート / 28mm

2,592×1,944 / 1/32秒 / F3.3 / 0EV / ISO81 / オート / 28mm


URL
  リコー
  http://www.ricoh.co.jp/
  製品情報
  http://www.ricoh.co.jp/dc/caplio/r3/

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安孫子 卓郎
(あびこたくお) きわめて頻繁に「我孫子」と誤変換されるので、「我孫子ではなく安孫子です」がキャッチフレーズ(^^;。大学を卒業後、医薬品会社に就職。医薬品営業からパソコンシステムの営業を経て脱サラ。デジタルカメラオンリーのカメラマンを目指す。写真展「デジタルカメラの世界」など開催。現在パソコン誌、写真誌等で執筆中。

2005/11/14 00:01
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