スタイリッシュなボディに生活防水というコンセプトを貫いてきたμ DIGITALシリーズ。フラッグシップとなる最新の「μ 800 DIGITAL」は、有効800万画素CCD、ISO1600までの増感、2.5型液晶モニターなど、夏商戦を見据えた豪華な仕様で登場した。その実力はどうなのだろうか。
■ 見やすい23万画素の2.5型液晶モニター
外観はレンズが完全に収納されるトップシェルバリアを採用し、やや丸みを帯びたデザイン。最近流行の薄型とはいいがたいものの、すべての人が薄型好みというわけでもあるまい。本体重量は181g。バッテリー、メディア、ストラップ込みでも200gほど。思い起こしてみれば、初代IXY DIGITALに触れて「軽い」と驚いたときの重量が190gだった。そう考えれば、本機もそこそこの軽さといえる。
ボディカラーはシルバーとダークブルーが用意されているが、少し気になるのが背面の塗装だ。ダークグレーなので、GUIDE、QUICK VIEWなどの白文字表記が光の具合でかなり読みづらくなる。もう少し工夫がほしい部分だ。
液晶モニターには2.5型、23万画素の高精細液晶を採用している。最近、2.5型液晶が増えており「大きいことは良いこと」と歓迎しているが、たいてい11万画素程度の表示にとどまっている。その点、本機は23万画素と高精細な液晶を採用しており、視力のよい若い人でも十分満足して鑑賞できるだろう。
背面は、液晶モニター以外の余白がすべてボタンやコマンドダイヤル、ズームレバーなどで埋め尽くされている。背面に指を置かなくても上下をつまめば持てるが、コマンドダイヤルを上部に持っていくなどして、少しは指を置けるスペースもほしかった。ただコマンドダイヤルを上に配置すると、カメラを出し入れしているうちにダイヤルが動くケースが多い。誤動作を防ぐ意味では、背面への設置もやむを得ない選択だろう。
撮像素子は1/1.8型の有効800万画素CCD。画素数アップもここまでくると、そろそろ2/3型では1,000万画素の声も聞こえてきそうだ。いずれは1/1.8型でも大台に乗る勢いだが、そこまでのニーズがコンパクト機にあるのかどうかは、やや疑問である。むしろ500万画素でよいので、秒5コマとか秒8コマなどの高速連写に対応したり、フル画素のまま感度を上げてノイズを減らすなどの工夫をした方がよいのではないだろうか。
現在、そうした基礎体力的な魅力はデジタル一眼レフカメラが担っているが、液晶モニターが使えて小型軽量なコンパクト機にもユーザーニーズはあるだろう。念のために補足すると、画素数が増えたから悪い、という意味ではない。もはや画素数アップは特別な魅力とはならず、ごく普通のバージョンアップに過ぎないということである。
搭載レンズは35mm判換算の画角で38-114mm相当、F2.8-F4.9というごく平均的な仕様。筆者の好みでいえば、ワイド側38mm相当の画角は狭く感じるので、せめて35mm相当よりは広くしてもらえるとありがたい。
■ 9画素混合による高感度モード「ブレ軽減オート」を搭載
|
プログラムオートなどで最高ISO1600まで設定可能
|
起動はボディ上部のPOWERボタンで行なう。押してからレンズが動き出すまでに若干の間があるためもたつく印象を受けるが、実際には1.8秒ほどの時間であり、決して遅い方ではない。レンズの繰り出しや収納はキビキビしており心地良い。ズーム速度もスムースだ。
撮影モードは、プログラムAE、シャッター速度優先AE、絞り優先AE。それにシーンモード19種類である。加えて、「ブレ軽減オート」という撮影モードもコマンドダイヤルに割り付けられている。
このモードにすると画素数が2,048×1,536ピクセルの300万画素に減り、代わりにISO800以上に自動で増感する。結果的に手ブレが少なくなるというモードだ。300万画素でも使えないことはないのだが、機能限定を伴うモードだけに、コマンドダイヤルに割り付けてまでして宣伝するものかどうか疑念も残る。
記録画素数の減少は9画素を混合して高感度を実現しているため。確かにISO1600でも、ノイズそのものは少な目といえる。ただ解像力としては、リアル300万画素というにはもの足りない。ジャギーも目立つ。9画素混合で300万画素になるのは今ひとつ理解しにくい仕様だが、あまり300万画素という数値を当てにしない方が良いだろう。
とはいえWebなどで縮小して使うときなど利便性もある。基本的にはISO400までのデジカメであると考えて、800と1600はおまけと考えれば、お得だといえる。ISO1600を当てに買うとやや問題を感じるかもしれない。
なお、ブレ軽減オート以外に、シーンモードの「パーティショット」、「寝顔」も画素混合の対象になる。
|
|
|
ブレ軽減オートに切替えた瞬間
|
シーンモードの「パーティショット」
|
シーンモードのひとつ「寝顔」
|
●ISO感度別の作例
※作例のリンク先は、撮影した画像データそのものです(ファイル名のみ変更してあります)。クリックすると撮影した画像が別ウィンドウで表示されます。
※キャプション内の撮影データは、画像解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値(F)/露出補正値(EV)/ISO感度/焦点距離です。
|
|
|
3,264×2,448 / 1/2(秒) / 2.8 / 0 / 64 / 8
|
3,264×2,448 / 1/3(秒) / 2.8 / 0 / 100 / 8
|
3,264×2,448 / 1/5(秒) / 2.8 / 0 / 200 / 8
|
|
|
|
2,048×1,536 / 1/20(秒) / 2.8 / 0 / 800 / 8
|
2,048×1,536 / 1/40(秒) / 2.8 / 0 / 1600 / 8
|
【参考:夜景モード】
3,264×2,448 / 1/3(秒) / 2.8 / 0 / 64 / 8
|
|
|
|
3,264×2,448 / 1/500(秒) / 4 / 0 / 64 / 8
|
3,264×2,448 / 1/500(秒) / 4.5 / 0 / 100 / 8
|
3,264×2,448 / 1/800(秒) / 5.6 / 0 / 200 / 8
|
|
|
|
2,048×1,536 / 1/1600(秒) / 8 / 0 / 800 / 8
|
2,048×1,536 / 1/2,000(秒) / 8 / 0 / 1600 / 8
|
|
■ 露出補正メニューの裏技
以前のオリンパスは、十字キーの左右で露出補正が行なえて便利だった。しかし最近はメニューの中に入っていたり、ボタンを押しながらコマンドダイヤルの操作になったりと、次第に使いにくくなっている。μ DIGITAL 800も露出補正などよく使う機能がメニュー内にあってひと手間かかるのだが、ちょっとした裏技がある。
例えば露出補正の設定を出したままシャッターを半押しにすると、設定メニューが一時消えて撮影モードに入る。撮影後、書き込みが終了してバッファが空くと、それまで出していた露出設定メニューがそのまま現れる。もちろんその後に設定値を変更して撮影が可能。露出補正のほか、ホワイトバランス、ISO感度、AF方式などで使える。
複数項目を変更する場合には通常のメニュー操作が必要だが、露出や感度だけ変えて撮影する場合に都合が良い。表示を出したままにしておくことは、煩わしいと言えば煩わしいが、慣れてしまうと結構便利に使える。
シーンモードにすると、露出補正、ホワイトバランスなどは変更できるが、ISO感度が変更できなくなる。例えばスポーツモードにすると、一般のモードよりは早めに増感するようだが、ISO400まで増感して最大限シャッタースピードを稼ぎたいと思っても、そこまで増感してくれない。オリンパスが最適と思う設定に自動でしてくれるのはよいのだが、その後ユーザーが任意で変更したいと考えるなら、それには対応するべきであろう。
また、残念ながらオートブラケットができない。確かに連写速度が秒1.3コマと遅めなので、この速度でオートブラケットを行なうことには(構図が変わってしまうなど)疑問の余地も残る。ただラチチュードが狭く、適正露出を得ることがアマチュアには困難なコンパクトデジカメでは、オートブラケットを活用する方策も残してはどうだろうか。メーカーとしては、オートブラケットの存在を宣伝すると「適正露出が得られないのか」と思われて困るのだろうか。なかなか表に出しにくい機能かもしれないが、ユーザーとしては賢く利用したい機能のひとつだ。ちなみに連写モードには、300万画素で秒4コマという高速モードもある。
|
|
|
撮影時メニュー例1
|
撮影時メニュー例2
|
撮影時メニュー例3
|
売りのひとつがガイド機能である。GUIDEボタンを押すと、「明るく写したい」などの項目が表示され、選択すると露出補正のやり方などがガイド表示される。残念ながら、じゃあ露出補正をしようと思うと、トップメニューに戻って通常の露出補正の手続きが必要となる。
ガイド表示から直接その項目操作が行なえればベストだったのだが、今回はそこまでは至らなかったようだ。とはいうものの、中にはマニュアルを持ち歩いて使い方を調べながら撮影するというような方もいる。ガイド機能がどれだけ便利なのかは使う人次第なのであるが、あって悪いことではない。WindowsがF1にヘルプを割り当てているように、全機種で統一されるようなら、よい試みであろう。
再生表示はDISPボタンを押すごとに、基本情報のみ、撮影データ付き、さらにヒストグラムも加わった表示と3種類に切り替わる。ヒストグラム表示モード以外では、数秒待つとデータが消えて画像のみの表示になる。最初からデータなしで、画像のみを表示する選択肢はない。データはともかく写真を見たいこともあるだろうから、表示なしも選択できるようにしてもらいたいところだ。
スライドショー再生にすると、BGM付きでデータ表示無しのスライドショーが始まる。また再生モードから、赤目軽減、セピア、モノクロといった加工をカメラ内で行ない、別ファイルに出力することもできる。
なお、付属ソフトの「OLMPUS Master」では、画像の取り込み、閲覧、スライドショーの作成などが行なえる。またパノラマモードで撮影した画像の合成をここで行なえる(オリンパス製xDピクチャーカードが必要)のだが、困ったことがひとつある。
保存先として、デフォルトのカレンダーフォルダに加えて、任意のフォルダを選べる。このとき、任意のフォルダに保存し、さらに別のパノラマ合成をしようとすると、保存先がカレンダーフォルダに戻ってしまう。このカレンダーフォルダの場所が実に深い階層にあり、ファイル名を指定して検索でもかけないと、後から見つけ出すのが困難なほどである。おそらく初心者には簡単に見つけ出せないだろう。保存先を一度指定したならば、記憶してそこが第一選択になるような仕様に変更してほしい。
■ まとめ
μ DIGITALシリーズの伝統である生活防水付きを踏襲するも、コントラストや彩度などを任意設定できないなど、思わぬ機能の省略が目に付く。以前のオリンパスはシンプルな操作性とフルスペックで使いやすかったのだが、今回はあまり日本市場向きの改良とはいえないのではないだろうか。ものとしては悪くないのだが、日本市場を重視した製品開発も、今後期待したい部分である。
■ 作例(ISO感度以外)
●画角
|
|
【広角端】3,264×2,448 / 1/500(秒) / 4 / 0 / 64 / 8
|
【望遠端】3,264×2,448 / 1/640(秒) / 5.6 / 0 / 64 / 24
|
●露出補正
|
|
|
3,264×2,448 / 1/160(秒) / 2.8 / 0 / 64 / 8
|
3,264×2,448 / 1/160(秒) / 2.8 / -0.3 / 64 / 8
|
3,264×2,448 / 1/200(秒) / 2.8 / -0.7 / 64 / 8
|
|
|
|
3,264×2,448 / 1/250(秒) / 2.8 / -1 / 64 / 8
|
3,264×2,448 / 1/320(秒) / 2.8 / -1.3 / 64 / 8
|
3,264×2,448 / 1/400(秒) / 2.8 / -1.7 / 64 / 8
|
|
|
|
3,264×2,448 / 1/500(秒) / 2.8 / -2 / 64 / 8
|
|
|
●ホワイトバランス
|
|
|
【オート】3,264×2,448 / 1/500(秒) / 3.2 / 0 / 64 / 8
|
【晴天】3,264×2,448 / 1/500(秒) / 3.2 / 0 / 64 / 8
|
【曇天】3,264×2,448 / 1/500(秒) / 3.2 / 0 / 64 / 8
|
|
|
|
【電球】3,264×2,448 / 1/500(秒) / 3.2 / 0 / 64 / 8
|
【蛍光灯1】3,264×2,448 / 1/500(秒) / 3.2 / 0 / 64 / 8
|
【蛍光灯2】3,264×2,448 / 1/500(秒) / 3.2 / 0 / 64 / 8
|
|
|
|
【蛍光灯3】3,264×2,448 / 1/500(秒) / 3.2 / 0 / 64 / 8
|
|
|
|
|
|
【オート】3,264×2,448 / 1/500(秒) / 2.8 / -0.7 / 64 / 8
|
【晴天】3,264×2,448 / 1/500(秒) / 2.8 / -0.7 / 64 / 8
|
【曇天】3,264×2,448 / 1/500(秒) / 2.8 / -0.7 / 64 / 8
|
|
|
|
【電球】3,264×2,448 / 1/500(秒) / 2.8 / -0.7 / 64 / 8
|
【蛍光灯1】3,264×2,448 / 1/500(秒) / 2.8 / -0.7 / 64 / 8
|
【蛍光灯2】3,264×2,448 / 1/500(秒) / 2.8 / -0.7 / 64 / 8
|
|
|
|
【蛍光灯3】3,264×2,448 / 1/500(秒) / 2.8 / -0.7 / 64 / 8
|
|
|
●マクロ
マクロモードとスーパーマクロモードを選択できる。マクロモードはワイド側20cm、テレ側30cmから無限遠までだが、スーパーマクロにするとワイド端固定で、3~50cmでの撮影が行なえる。焦点距離が固定になったとしても、より接近できる工夫は歓迎したい。
|
|
【マクロ】3,264×2,448 / 1/400(秒) / 4.9 / -0.7 / 64 / 24
|
【スーパーマクロ】3,264×2,448 / 1/500(秒) / 3.2 / -0.7 / 64 / 8
|
|
|
【スーパーマクロ】3,264×2,448 / 1/500(秒) / 3.2 / -1 / 64 / 8
|
【スーパーマクロ】3,264×2,448 / 1/25(秒) / 2.8 / -0.7 / 64 / 8
|
●雨の日と生活防水機能
皆さんは雨の日に撮影するだろうか。生活防水機能の付いたデジカメを手に入れない限り、わざわざ雨の日に撮影することは少ないだろう。しかし雨の日は、晴れや曇りと違って新鮮な写真が撮れるものである。
ちょっとした初心者向きフォトコンテストに応募する場合は、雨の日を狙い目として撮影しておくと、他の人と差別化できる。そんな楽しみを持っている方には、生活防水機能は面白い裏技として活躍してくれるだろう。
|
|
3,264×2,448 / 1/200(秒) / 2.8 / -0.7 / 64 / 8
|
3,264×2,448 / 1/100(秒) / 2.8 / -0.3 / 64 / 8
|
|
|
3,264×2,448 / 1/160(秒) / 2.8 / -1.3 / 64 / 8
|
3,264×2,448 / 1/30(秒) / 2.8 / -1.3 / 64 / 8
|
●パノラマ
※「OLYMPUS Master」を用いて作成したパノラマ写真です。オリジナルファイルは解像度8,711×2,713ピクセル、ファイルサイズ7.35~9.64MBになりますが、掲載の都合上、以下のリンク先はPhotoshopで1,024×319ピクセルにリサイズしたものです。
■ URL
オリンパス
http://www.olympus.co.jp/
製品情報
http://olympus-imaging.jp/lineup/digicamera/mju800d/
|
安孫子 卓郎 (あびこたくお)
きわめて頻繁に「我孫子」と誤変換されるので、「我孫子ではなく安孫子です」がキャッチフレーズ(^^;。大学を卒業後、医薬品会社に就職。医薬品営業からパソコンシステムの営業を経て脱サラ。デジタルカメラオンリーのカメラマンを目指す。写真展「デジタルカメラの世界」など開催。現在パソコン誌、写真誌等で執筆中。 |
2005/06/28 00:34
・記事の情報は執筆時または掲載時のものであり、現状では異なる可能性があります。
・記事の内容につき、個別にご回答することはいたしかねます。
・記事、写真、図表などの著作権は著作者に帰属します。無断転用・転載は著作権法違反となります。必要な場合はこのページ自身にリンクをお張りください。業務関係でご利用の場合は別途お問い合わせください。
|
|