デジカメ Watch

【新製品レビュー】ニコン COOLPIX7900 画質評価編

~顔認識AF機能を搭載した700万画素コンパクトデジカメ
Reported by 根本 泰人

 ここで掲載した画像は特に注釈のない場合、画素数は最大サイズ700万画素3,072×2,304ピクセル、ISO50固定、測光はマルチパターン測光、画質はファイン、ピクチャーカラーと彩度調整は標準、階調補正、輪郭強調、ホワイトバランスはオートである。


※作例のリンク先は、撮影した画像データそのものです。縦位置のものは、サムネールのみ回転していますが、拡大画像はあえて回転せずに掲載しています。クリックするとオリジナル画像が別ウィンドウで表示されます。

※キャプション内の撮影データは、特に記載がないかぎり絞り値/露出時間/焦点距離です。


レンズ性能

 標準設定で撮影した結果は、広角端38mmから望遠端114mmにいたるまで、絞り開放から画面最周辺部まで非常にシャープな印象がある。コントラストは明快で、メリハリのついた鮮明な画像だ。階調の再現性も良いと思う。

 たとえば私が良く撮影する浅草寺の本堂の屋根の最上部の瓦の重なりは、7~800万画素級のコンパクトデジカメではなかなか分解してくれない難しい被写体である。ところがCOOLPIX7900(以下E7900)は広角端でも、この瓦の積み重なった状況がかなり細かいところまではっきりわかる。114mm望遠端では、完全に1枚ずつに解像している。


【広角端】画面全体にたいへんシャープ
F4.8 / 1/370(秒) / 7.8mm
【望遠端】瓦部分のものすごく細かい描写で解像力の高さが一目瞭然
F8.2 / 1/120(秒) / 23.4mm

 周辺光量の低下は、広角端でも望遠端でも絞り開放からわからなかった。歪曲収差については、広角端ではたる型の歪曲収差がかなり目立つが、望遠端ではほとんど歪曲が認められなかったので、歪曲を嫌う被写体は望遠端で撮影すると良い。

 色収差はニコン自慢のEDレンズ採用の効果が効果的に発揮されており、どの画角でも最周辺部までわからない。ピクセル等倍以上に強拡大すると、広角端の画面周辺部で空など明るい部分の境界部に紫色のにじみらしきものがほんのかすかに認められる場合があるが、まああら探しと言ってよい。

 最近のコンパクトデジカメとしては、さほど倍率が高くない3倍ズームであるから性能も高くできるのだろうが、総合的にみてE7900に搭載されているこのニッコールEDレンズは、1/1.8型700万画素CCDの性能に見合うきわめて優れた性能をもっていると評価できる。さすがニッコールだ。


【広角端】広角端ではかなり樽型歪曲が目立つ
F2.8 / 1/8.2(秒) / 7.8mm
【広角端】金色のビルの表面に写り込む雲の微妙な影のトーンが良く出ている
F4.8 / 1/606.7(秒) / 7.8mm

【望遠端】F8.2 / 1/157.6(秒) / 23.4mm 【望遠端】望遠端での描写も鮮明。色収差と歪曲収差はまったくないと言って良い
F8.2 / 1/224.4(秒) / 23.4mm

画素数変化

 E7900で設定可能な画素数は7Mの3,072×2,304、以下2,592×1,944(5M)、2,048×1,536(3M)、1,024×768、640×480の5種類。いずれも撮影結果の印象は大変安定している。

 画像サイズは説明書には掲載されていなかったので、ファインモードの実測で順に約2.5MB、約1.9MB、約1.0MB、約280KB、約127KBである。


【3,072×2,304(7M)】F4.8 / 1/704.2(秒) / 7.8 【2,592×1,944(5M)】F4.8 / 1/666.6(秒) / 7.8mm

【2,048×1,536(3M)】F4.8 / 1/677.5(秒) / 7.8mm 【1,024×768】F4.8 / 1/621.8(秒) / 7.8mm

【640×480】F4.8 / 1/647.6(秒) / 7.8mm

圧縮率変化

 JPEGはファイン(約1/4)、ノーマル(約1/8)、ベーシック(約1/16)の3種類の圧縮率設定が可能。それぞれ700万画素の時のデータ量の目安は、それぞれ約730KB、約1.3MB、約2.5MBである。

 なおモニター上で圧縮率の異なる画像の違いを観察すると、ピクセル等倍ではベーシックの時にほんのわずかシャープさが損なわれている印象がある程度の差しかない。しかし200~300%程度に拡大すると、建物と空の境界の部分や木の枝の部分に、圧縮にともなうノイズと画像の乱れが発生していることがはっきりとわかり、圧縮率が高いものほど不鮮明になってくることがわかる。

 いままで私がテストしたデジカメの中には、圧縮率の変化による画質の差がまったくわからないカメラも少なくなかったが、このデジカメは教科書通りにまじめにきちんとカメラ内部で画像処理していることがよくわかる結果となった。つまり用途による画質の設定が重要で、最良の画質を得たいならば必ずファインモードを選択しなければならない。


【ファイン】F4.8 / 1/606.7(秒) / 7.8mm 【ノーマル】F4.8 / 1/606.7(秒) / 7.8mm

【ベーシック】F4.8 / 1/688.7(秒) / 7.8mm

ISO感度変化

 撮像感度はISO50から400まで4段階の設定が可能である。もっとも低感度のISO50の画像は全体に美しいが、空のような階調が均質な部分を観察するとかすかにノイズが現れている。拡大するとはっきりわかる。ISO100は、ISO50とほとんどかわらないきれいな画像である。

 ISO200になると、空のざらざら感がはっきりし、また暗部にノイズが目立ってくる。さらにISO400になると画面全体にノイズが乗ってきて、荒れてくる。しかし画面全体の鮮明さは、まだ維持されている。

 以上の結果から、このカメラもできるだけISO感度を低くして撮影したほうが結果が良い。通常はISO100以下が好ましく、最良の画質を得るためにはISO50に固定する必要がある。


【ISO50】F4.8 / 1/460(秒) / 7.8mm 【ISO100】F4.8 / 1/666.6(秒) / 7.8mm

【ISO200】F4.8 / 1/1,250(秒) / 7.8mm 【ISO400】F4.8 / 1/2,000(秒) / 7.8mm
※このコマは露出制御範囲を超えたため、露出オーバー

コントラスト等調整

 E7900は階調補正(コントラスト)をオート以外に3段階設定できる。


【オート】F4.8 / 1/486.3(秒) / 7.8mm 【+1】F4.8 / 1/472.5(秒) / 7.8mm

【標準】F4.8 / 1/474.3(秒) / 7.8mm 【-1】F4.8 / 1/480(秒) / 7.8mm


 輪郭強調は同様にオート以外、4段階設定できる。


【オート】F4.8 / 1/464.6(秒) / 7.8mm 【強】F4.8 / 1/485.4(秒) / 7.8mm

【標準】F4.8 / 1/463.8(秒) / 7.8mm 【弱】F4.8 / 1/450(秒) / 7.8mm

【なし】F4.8 / 1/458.7(秒) / 7.8mm


 彩度は3段階設定できる。


【+1】F4.8 / 1/462.1(秒) / 7.8mm 【標準】F4.8 / 1/448.8(秒) / 7.8mm

【-1】F4.8 / 1/514.4(秒) / 7.8mm

ホワイトバランス変化

 ホワイトバランスのマニュアル設定は太陽光、電球、白色蛍光灯(FL1)、昼白色蛍光灯(FL2)、曇天、晴天日陰、スピードライト(ストロボ)の9種類が可能で、さらに白の被写体を基準として調整可能なプリセットもできる。あらかじめ用意されているモードで晴天下で撮影し、色がどのように変わるか見てみた。通常はオートで撮影する機会が多いと思うが、色再現をできるだけ正確にするためにはプリセットモードやホワイトバランスブラケティングも活用したい。


【オート】F4.8 / 1/553(秒) / 7.8mm 【太陽光】F4.8 / 1/544.6(秒) / 7.8mm

【電球】F4.8 / 1/517.5(秒) / 7.8mm 【白色蛍光灯】F4.8 / 1/515.4(秒) / 7.8mm

【昼白色蛍光灯】F4.8 / 1/530(秒) / 7.8mm 【曇天】F4.8 / 1/543.4(秒) / 7.8mm

【晴天日陰】F4.8 / 1/523(秒) / 7.8mm 【スピードライト】F4.8 / 1/520(秒) / 7.8mm

【オート】この作例は蛍光灯下で黄色い花をホワイトバランスオートで撮影したものだが、自然な感じに補正されている
F2.8 / 1/7.9(秒) / 7.8mm

ピクチャーカラー

 E7900にはピクチャーカラーとして、標準、ビビッド、白黒、セピア、クールの5種類の設定ができる。このうちクールは、一見すると白黒のように見えるが、プルーに着色されていることがわかる。


【標準】F4.8 / 1/487.3(秒) / 7.8mm 【ビビッド】F4.8 / 1/474.3(秒) / 7.8mm

【白黒】F4.8 / 1/470(秒) / 7.8mm 【セピア】F4.8 / 1/486.3(秒) / 7.8mm

【クール】F4.8 / 1/490(秒) / 7.8mm

ノイズ

 ノイズ除去をONにすると、長時間露出の際に生じるノイズを軽減するという。具体的に動作を開始する露出時間がわからなかったので、夜景で試してみた。


【ノイズ除去OFF】F2.8 / 2(秒) / 7.8mm 【ノイズ除去ON】F2.8 / 2(秒) / 7.8mm

 両者とも2秒の長時間露出であるが、ノイズ除去OFFの場合でも予想以上にノイズが少ない綺麗な画像となっていることがわかる。このためノイズ除去ONにした画像と、違いがわからない結果となってしまった。もっと厳しい条件では、ノイズ除去ONの効果がはっきりわかる場合があるのかもしれない。


測光方式

 E7900は256分割マルチパターン測光、中央重点測光、スポット測光、AFスポット測光が可能だが、そのうちAFスポット測光以外のモードで露出を比較してみた。


【マルチパータン測光】F4.8 / 1/515.4(秒) / 7.8mm 【中央重点測光】F4.8 / 1/483.5(秒) / 7.8mm

【スポット測光】F4.8 / 1/421.5(秒) / 7.8mm

 画像の中央部付近に暗い影の部分があり、その影響を受けて若干異なる露出結果となった。スポット測光が一番画像が明るいが、それはその暗い部分が測光エリアにもっとも影響を与えやすい位置にあったためである。いろいろな条件で撮影した結果で判断すると、通常の撮影ではマルチパターン測光で安定した結果が得られると言える。さすがにニコンはマルチパターン測光の元祖だけのことはある。

 逆光で撮影した場合、マルチパターン測光では太陽が入ってもかなり明るく補正するため、撮影結果はかなり良好であった。ただし、画面全体が均一に明るい、あるいは暗い場合にはマルチパターン測光でも露出が大きくずれる場合があるので、撮影結果を液晶モニターで確認して露出補正することが必要である。


シーンモード

 このE7900は4種類のアシスト機能付きシーンモードと、12種類のシーンモードが用意されていて、いずれもカメラまかせで最適な撮影ができるという。今回はカメラをテストする期間が短かったため、風景モードと夜景モード、ポートレートモードの顔認識AFのテストしかできなかった。ここでは夜景モードについて述べる。

 夜景モードであるが、おもしろい結果になった。今までテストした他メーカーのデジタルカメラでは、夜景モードにすると通常のオート撮影では長時間撮影ができない場合に長時間露出が可能になるとか、長時間露出が可能でもノイズ除去機能がONになるとか、あるいは意識的に通常撮影より露出時間を長くして夜景を明るめに描写するという設定になっていた。

 ところがこのE7900は通常撮影の設定でも4秒までの長時間露出が可能であり、作例を参照していただければわかるように夜景はそれなりに綺麗に写る。では夜景モードにするとどうなるかというと、むしろ露出が切りつめられて夜景らしい暗めの雰囲気の画像になるのである。さらに通常撮影ではホワイトバランスの補正が強力にきいて、提灯の白熱電灯の照明が白色に近くなっているが、夜景撮影ではホワイトバランスがオートのままでも補正が夜景向きになるためか白熱電灯は黄色く、これも夜景らしい調子に描写されている。さらにノイズ除去であるが、常時ONに設定されるわけではなく、ユーザーが設定したモードのままであった。

 いずれのモードでも撮影された画像は、ノイズも少な目で期待以上に美しい仕上がりであったが、夜景を明るく撮りたいならば通常モードで撮影したほうが良い。色の再現も含めて夜景らしい感じが欲しい場合には、夜景モードが適切である。なお、かなり暗い条件でもAFは正確に作動した。


【通常撮影モード/ノイズ除去ON】F2.8 / 1/1.4(秒) / 7.8mm 【夜景モード/ノイズ除去ON】F2.8 / 1/3.1(秒) / 7.8mm

【通常撮影モード/ノイズ除去OFF】F2.8 / 1/3.3(秒) / 7.8mm 【夜景モード/ノイズ除去OFF】F2.8 / 1/15(秒) / 7.8mm

 2組の写真のそれぞれの写り方がかなり違うことがわかる。実際の雰囲気は、夜景モードで撮影したものにかなり近い。


顔認識AFの動作

 さて、いよいよ顔認識AFである。この世界初の機能は、すでに説明したとおり画面の中の人間の顔を識別し、そこにピントを合わせるというものである。撮影予定画像をリアルタイムでモニターして画像処理が可能なデジタルカメラだから実現できる機能であり、銀塩フィルムカメラでは思いもよらないものだ。こうした画像識別技術が発展すれば、ますますデジタルカメラの可能性は広がっていくことだろう。

 顔認識AFを機能させるには、アシスト機能付きシーンモードのポートレートモードを選択し、そこでメニューボタンを押すと表示されるアシスト機能設定の中の顔認識AFのアイコンをマルチセレクターで選択してOKボタンを押す。顔認識AFが動作し始めると、画面中で人物の顔があるとカメラが判断した場合、液晶モニター上の顔の部分に赤い枠が表示され顔を認識していることがわかる。画面上のどこに顔があっても、また構図が縦位置でも横位置でも、多少傾いていても認識するという説明がある。

 もちろん画面上で認識できる顔の大きさには限界があり、説明書では人物の上半身程度から近い場合となっている。今回のテストでも人物が小さくなると認識しづらくなり、全身像くらいになるとまったく顔認識AFは動作しなかった。顔認識AFが動作しない場合には通常のAF機能が動作するが、人物が画面の端のほうにいる場合には、ピントが背景にあってしまうことになったりする。また、顔が横に向くとある位置から認識しなくなる。目が2つ見えていないとだめなようである。


人物を認識したところ。赤い枠が顔と重なっている 人物が端にいっても、赤い枠線が追随してピント合わせを行う。なおこの画面では枠線が二重になっているが、たまたま枠線が移動したタイミングで撮影したため

横向きの顔の認識は、このくらいが限界。目が2つ見えていないと難しいようだ 完全に横を向いてしまうと、当然認識しない

 2人並んだ場合両方を認識するが、カメラの反応を見ていると認識しやすい顔としにくい顔があるようだ。また、眼鏡やマスクといったもので顔を覆うと認識の精度が落ち、あるいは認識しなくなることもわかった。黒縁の眼鏡よりは銀縁の眼鏡のほうが、顔認識のヒット率は高かった。


二人並んでいるが、両方の顔を同時に認識した。ピントも合っている。スピードライトはオート
F2.9 / 1/60.1(秒) / 8.5mm
黒めがねをかけたほうの人物は、認識したりしなかったりする。眼鏡をかけていない人物には、常に赤枠が出て合焦する。スピードライトはオート
F2.9 / 1/60.1(秒) / 8.5mm

人物を左右入れ替えても同じで、眼鏡をかけていないほうの人物をよく認識し合焦する
スピードライトはオート
F2.9 / 1/60.1(秒) / 8.5mm
黒めがねにマスクをかけてもらったが、この位置でもまったく顔を認識しない。ピントは背景に合ってしまっている。スピートライトはOFF
F2.8 / 1/4.9(秒) / 7.8mm

 もっと時間があれば、例えばマネキンや人形ではどうかテストして見たかったが、今回はそこまで余裕がなかったのは残念である。人物でいろいろテストした結果としてはほぼすぐに顔を認識するが、特に問題がなさそうな状況で人物の顔を認識するまで時間がかかったり、突然見失ったりするなど顔認識AFの動作が読めないこともあり、さらに認識精度が向上することを期待したい。


一般作例

郵便局の集配用バイク。ピントがとてもシャープ
F5.4 / 1/79(秒) / 10.6mm
塀にかけられたパンジーの花。シャドー部は良く描写されているが、花の白い部分などハイライト部が飛んでしまっている
F4.8 / 1/265.3(秒) / 7.8mm

同じ位置から花だけアップに。広角端と同様、やや露出はオーバー気味のようだ
F6.8 / 1/62.3(秒) / 17mm
広角端は周辺部に直線を入れると樽型の歪曲が気になる
F4.8 / 1/570(秒) / 7.8mm

様々な看板の色が鮮やか。右側の白いビルのハイライトは飛んでしまっている
F2.8 / 1/1.8(秒) / 7.8mm
マクロモード、広角端の最短撮影位置(レンズ先端から約4cm)。中心部はシャープだが、四隅はかなり甘い。また歪曲収差もかなりある

マクロモードで望遠端の最短撮影距離付近。よく整った描写だが、手持ち撮影でごくわずかに手ブレしているようだ。手ブレ防止機能が欲しくなる
F4.9 / 1/53.1(秒) / 23.4mm
マクロでもピントが良く合う
F4.6 / 1/54.8(秒) 21.3mm

これも良くピントが合っているが、立体的な被写体ではもっと絞って被写界深度を深くしたい場合に、このカメラではこれ以上絞れないのが残念である
F4.6 / 1/98(秒) / 21.3mm

プリント時画質評価

 コンパクトデジカメとはいえ、700万画素のこのE7900を購入するユーザー層は、当然A4サイズ以上の大サイズのプリントを得ることもあるだろう。今回は、いつも評価に使用しているエプソンのPX-G900とA3ノビ対応のPX-G5000を使用してプリントしてみた。

 このE7900は最大で7M(3,072×2,304)で記録できるわけだが、300dpiの密度で印刷した場合には約26×20cmのサイズに印刷できることになる。A4サイズは210×297mmであるから、300dpiではA4より一回り小さいサイズになる。実際にはもっと解像度が低くてもプリントではきれいに見えるので、A3ノビが細部まできっちり描写できて欲しいところだ。

 まず2L判以下のプリントであるが、700万画素では当然オーバースペックであり、得られたプリントはシャープさは文句なく十分で、元々コントラストが強めの見ばえがする画像であるため、プリントはそのままで美しい。もちろん2Lサイズ以下のプリントで良いであれば700万画素に設定する必要はなく、300万画素(2,048×1,536)でも十分だ。

 それどころかA4サイズのプリントでも、このE7900の300万画素で撮影した画像で十分きれいなプリントが得られるのである。もちろんそれ以上の画素数なら申し分ないが、500万画素、700万画素で撮影した画像をプリントアウトした結果と至近距離で細部を入念に比べて、その差がわずかにわかる程度である。300万画素級のデジカメで、このE7900の300万画素のA4プリントに及ばないデジカメもかなりある。

 いよいよG5000でA3ノビにプリントした時であるが、これもとてもハイレベルな結果だった。700万画素と言われて十分納得できるだけの解像感がしっかりとある。コントラストの再現性も良い。このためA3ノビで印刷したプリントを至近距離で観察しても破綻がない。通常の写真鑑賞の用途なら、まず満足できるすばらしいプリントと言って良いと思う。

 カメラの標準設定そのままのプリントでも相当きれいだが、画像処理ソフトで自分の好みの調子に仕上げれば、さらに満足できるプリントが得られるだろう。撮影した結果を700万画素でA3ノビ4サイズに直接印刷するならば圧縮率はベーシックでも十分きれいだが、後処理するならやはりファインモードで撮影したい。残念なことにRAWモードで撮影することができないため、画像記録でできるだけ画質低下を少なくしたいからである。

 実際、同じ被写体を600万画素のニコンD70でRAWで撮影し、RAWのままNikon Capture4で処理して同じA3ノビに印刷したプリントと比較すると、D70の文句のつけようがない素晴らしい結果に比べてE7900はやはりわずかながら見劣りする。それはたとえば建物のエッジや樹木の葉の重なりなどにJPEG画像特有の圧縮による情報の欠落が認められることや、暗部の再現性、階調のなめらかさ、ノイズの多少など、D70との差として現れている。

 もちろん繰り返しになるが、適切な鑑賞距離で眺めれば十分に美しいプリントだ。個人的には、この性能があるならば常用デジカメにしたいと思っている。


総評

 私の交友関係にはカメラ好き、写真好きが圧倒的に多い。そうした友人たちが持つデジカメ中で、シェアがもっとも高いのはニコンである。複数台デジカメを持っている友人は必ずといって良いほど、ニコンのデジカメを1台以上持っている。一般的なデジカメのシェアとは違うのはいろいろな理由があるだろうが、共通しているのはレンズのシャープさと撮影した画質の良さという評価だ。

 今回テストしたE7900も、顔認識AFといった世界初の機能に目を奪われがちだが、それよりも700万画素級コンパクトデジカメとして非常に画質が整っている点にこそ大きな魅力がある。撮影結果に特に手を入れずにプリントした結果でもニコンD70に比べてもさほどは見劣りしないから、特にニコンD70~D2Xクラスの一眼レフデジカメを常用する人の常時携帯用サブカメラとして価値が高い。

 たしかにズームは3倍しかなく、手プレ補正もなく、最近流行のスペックからは遅れている印象は否めないが、しかしニコンらしいまじめな作りが好印象で、携帯性も悪くないから、カメラにうるさい人、特にニコンファンの常用デジカメとしてお勧めできる。私もこのE7900にするか、単三電池が使用できるE7600にするか、正直迷っている。

 ただ、絞りが2段しかなく露出モードもプログラムのみであるため、絞りやシャッターの効果を生かした写真を撮ることが困難なことや、ズーム広角端で歪曲が目立つことなど、改良して欲しい点はいくつかある。

 この絞りが2段階しかないことについては、実はニコンのホームページで、E4300の開発に関する説明の中に理由が明記されている。

ニッコール千夜一夜物語 COOLPIX4300
http://www.nikon.co.jp/main/jpn/profile/about/history/nikkor/n22j.htm

 しかし接写時に特に深い被写界深度が必要な場合など、E7900の絞り制御ではやはり不満が残る。現在も愛用しているE995などの撮影時の自由度の高さを、このクラスに求めることは無理なのであろうか? せっかくの高画質をより生かす方向で、さらに良いデジカメを開発して欲しい。



URL
  ニコン
  http://www.nikon.co.jp/
  製品情報
  http://www.nikon-image.com/jpn/products/camera/digital/coolpix/7900/

関連記事
ニコン、顔認識AFを備えた「COOLPIX7900/5900」(2005/02/16)



根本 泰人
(ねもと やすひと)クラシックカメラの収集が高じて有限会社ハヤタ・カメララボを設立。天体写真の冷却CCD撮影とデジタル画像処理は約10年前から、デジカメはニコンE2/E900から。趣味は写真撮影、天体観測、ラン栽培、オーディオ(アンプ作り)等。著書「メシエ天体アルバム」アストロアーツ刊ほか。カメラ雑誌、オーディオ雑誌等に寄稿中。 http://www.otomen.net
http://www.hayatacamera.co.jp

2005/04/21 01:12
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