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【新製品レビュー】松下電器 LUMIX DMC-FZ5

~CCDを大型化した光学式手ブレ補正12倍ズーム機
Reported by 安孫子 卓郎

 DMC-FZ1、FZ2、FZ3と進化し続けるLUMIXシリーズの中堅高倍率ズーム機に、新機種「DMC-FZ5」がラインナップされた。「手ブレ補正」と「光学12倍ズームレンズ」といったインパクトはそのままに、新たに500万画素CCDを搭載したのが今回の特徴だ。DMC-FZ10/20の影に隠れがちだったFZ一桁台の高倍率ズーム機だが、使い勝手はどう変わったのだろうか。


外観

 200万画素で登場した「DMC-FZ1」からの流れをくむボディ。500万画素搭載モデルとしてはすでに「DMC-FZ20」があるが、サイズ的にはFZ3の後継であり、1/2.5型500万画素CCDと光学12倍ズームレンズを搭載していることを考えると、コンパクトなボディに驚かざるを得ない。シルバーとブラックのカラーリングを用意するが、いずれも小ささが生きるカラーである。

 また、フードをつけて左手を添えると、ちょうど良くホールディングでき、良く考えられたデザインである。パームグリップの大きさも適度であり、背面の親指を添える部分にはボタン類がなく、持ちやすい作りとなっている。

 グリップ上部にシャッターボタンとズームレバーがついており、筆者としてはこの方式が最も使いやすい。モードダイヤルはP/A/S/Mとマクロ、動画、シーン、フルオート、再生がある。特徴のひとつは、マクロがモードダイヤルに割り付けられていること。といってもシーンモードのように各種設定が固定されるのではなく、メニュー操作も可能なので、いわゆるマクロボタンと機能的には変わりない。ちなみに、モードの並び順はP/A/S/M。メーカーによってはP/S/A/Mという順番もあるが、筆者としては「Pの次はA」が正しいと考えている。





 内蔵ストロボは背面のボタンでポップアップする。筆者の場合、ストロボモードを強制発光にしておいて、使いたいときに手動でポップアップさせる使い方を基本としているため、手動ポップアップを最も支持している。

 ただ残念なのは、ポップアップ量が少ないこと。フードをつけるとワイド側でケラレるのは内蔵ストロボとしてはそう珍しいことではない。しかし、FZ5では3倍強までズームしないとケラレる。大きくポップアップさせることは難しいと思うが「もう少し上がってくれれば」という思いは残る。

 なお、フードを外せば、ワイド端でも(マクロ域でなければ)ケラレることはない。これはストロボを使う場合の一般的な注意事項なので、FZ5だけの問題ではないことを付け加えておこう。


CCDとレンズ

 撮像素子は1/2.5型の有効500万画素CCD。カラーフィルターは原色で、記録解像度は最大2,560×1,920ピクセル。前モデルと同じく画像処理LSI「ヴィーナスエンジンII」を搭載し、輝度信号の生成をグリーンからのみではなく、レッド、ブルーからも行なう。斜め方向の解像度を向上させているという。水平・垂直方向でも約10%アップの解像度を得ているとのことだ。

 レンズは光学式手ブレ補正機構内蔵の光学12倍ズーム。35mm判換算での焦点距離は36~432mm相当で、明るさはF2.8~3.3。従来このシリーズは、F2.8のコンスタントズームを採用していたが、今回はテレ端で1/2段くらい暗くなる。その代わりFZ20の大きなボディから、FZ3と同等の小さなボディに500万画素が収まったわけで、1/2段暗くなったデメリットよりも、小さくなったメリットの方が大きいだろう。またF3.3でも、他社の光学10~12倍ズームクラスと比較すれば明るいほうで、明るさによるアドバンテージは保持している。

 ズームの音も割に静か。速度的にもほどよいズーム速度であり、遅すぎていらいらすることもなく、速すぎて使いにくいこともなく、絶妙の選択である。従来機と同じように花形フードが付属して好ましいのだが、もう一息なのは装着性。フードそのものはワンタッチだが、フードを支えるアダプター部分の取り付けが、指標はついているがわかりにくく、目立つようにつけてもらいたかった。また撮影中、割りに簡単にはずれてしまうこともあり、もうひと工夫してもらいたい部分である。

 なお、FZシリーズの特徴である光学式手ブレ補正には、常時補正効果が得られる「モード1」と、シャッターを押すときだけ効果が出る「モード2」の選択が可能。モード2の方が効果が強いという。基本的には常時モード1で撮影する方が良いだろう。

 マクロはワイド側で5cm、テレ側で1mからの近接撮影が行なえる。432mm相当で1mの近接撮影能力はかなりのもの。昆虫などの接近すると逃げてしまう被写体や、山などでルート外に咲いている高山植物を撮影するときには大変役に立つ。一眼レフより遙かに軽装備ですむことから、特に登山家に支持されそうだ。

 ISO感度はオート、またはISO80/100/200/400相当の切り替えが可能。高感度にするとそれなりにノイズが増え、画像が荒れてくるのは致し方ない。ただISO400にしても従来よりは改良が加えられており、夜景などでは使えるようになってきた。

 オートにしても極端にスローシャッターになるまで増感しない機種もあるが、FZ5では素直に増感してくれる。増感が嫌なら固定すれば良く、オートにする以上は自動的に増感するべきなので、松下電器の選択は正しいと判断したい。


液晶モニターとEVF

 液晶モニターは1.8型13万画素低温ポリシリコンTFT液晶で視野率は約100%。ほぼレンズの真後ろについており、視差がなくて見やすい。もうひと回り大きければ、という思いは残るものの、これ以上大きくしてボタン類を移動させると、ホールディングのために指をかけるスペースがなくなってしまう。「DMC-FX7」などとはコンセプトも違うので、1.8型にとどまったこともやむを得ない。屋外での視認性はまずまずのレベルだが、EVFがあるので問題はない。

 光学ファインダーはなく、0.33型11.4万画素のEVFを採用し、±4ディオプターの視度調整が付いている。視野率は約100%。最近は一眼レフを見慣れているので、0.33型のEVFだと小さい印象は否めないが、慣れてしまうと悪くはない。筆者はワイド側で撮影するときは液晶モニターを、テレ側で撮影するときはEVFをメインとしており、お奨めである。


バッテリーとメディア

 バッテリーはFZシリーズ共通のリチウムイオン充電池で、7.2V、680mAh。CIPA基準で300枚の撮影が可能だ。以前は680mAh程度では持ちが悪く、小容量の印象があったが、最近の機種は省電力化が進んでおり、実際FZ5でも相当の使い出がある。海外旅行などでなければ、いきなり予備を買う必要は少ないだろう。

 充電器も直接コンセントに差し込むタイプ。ケーブルが必要なくコンパクトなので、旅行に持っていってもほとんどかさばらない。

 メディアはSDメモリーカード、またはMMC。保存形式はJPEG(ファインとスタンダード)、TIFFである。約5MBの「ファイン」で計測したところ、KingMax 512MBで高速連写モードで4枚撮影しても、ほぼ1秒程度で書き込みが終わる。4枚連写を繰り返しても全く問題ない。

 TIFFにすると連写はできなくなるが、2~3秒で書き込みが終わる。メディア容量を気にしないのなら、書き込み速度的にはTIFFモードも常用できる範囲だ。


メニュー

 メニューボタンで呼び出した後は、撮影とセットアップの2つのタブに別れている。カーソルボタン下で項目に入り、対象項目では右で設定、下で選択、右で設定となり、標準的でわかりやすい。特に、どこからでもシャッター半押しで撮影モードに復帰できるのが良い。

 カーソルボタン上で呼び出す露出補正やオートブラケットなどでも同じで、メニューを再度押して消す必要はなく、そのまま撮影に復帰できる。

 ホワイトバランスはオートのほかに、「晴天」、「曇り」、「白熱灯」、「フラッシュ」、「セットモード」を装備。「蛍光灯」がないが、オートで十分という判断なのだろうか。

 任意設定のセットモードは、ホワイトバランスの選択項目の一番下にあり、簡単に設定できるのはありがたい。ただしメニューは循環せず、上と下で行き止まる。もし循環できれば、オートモードから上ボタン一発で任意設定に入れるため、より使いやすかったろう。

 露出補正はカーソルボタン上で呼び出して、左右で1/3ステップで設定できる。筆者は直接カーソルボタンの左右についている方がベストだと思っているが、この方式でも一発で呼び出せるため、使いにくくはない。

 オートブラケットモードにはカーソルボタン上を2度押しで入り、右でステップ幅(1/3、2/3、1EV)を選択、左で解除・変更する。オートブラケットでは、一度シャッターを押すと自動的に3枚が連続して撮影されるので便利だが、コマ間はわずかに間隔があく。


通常表示 露出補正 オートブラケット

撮影1 撮影2 撮影3

シーンモード1 シーンモード2 シーンモード3

起動とAF速度

 電源のON/OFFは、背面のスライド式スイッチで操作する。斜めに設置され、バッグの中で勝手に起動することはない。押しボタン式よりも明確に起動させられるのが好感触である。起動、終了ともに所要時間は2秒程度。レンズが沈胴式なので多少時間がかかるが、実用的には問題ないだろう。

 もっと早くという場合は、「セットアップメニュー」内で「パワーセーブ」をOFFに設定できるので、こちらで対応すれば良い。パワーセーブまでの時間を10分にするなど、長くするのもひとつの手だ。

 AFモードは9点、3点、1点、スポットの4種類から選べるが、その中でもFZ5からは中央1点のみの高速AFモードを搭載しているのが特徴。

 AFの速さ自体はコニカミノルタのジェットAFのほうが速いように思えるが、FZ5も遅くはない。残念なのは9点AF時にフォーカスポイントを任意に選択できないこと。必ず自動選択になってしまう。

 なお、AFの動作開始をシャッター半押しから、FOCUSボタンに切り替えることもできる。同じ位置の被写体を何度か撮影する場合に便利だ。たとえば卒業式で証書を受け取る生徒を撮影するような場合、生徒の位置は決まっている。その都度AFを動作させていると、うっかり外す可能性がある。この場合、ピントの位置がなるべく移動しない方が便利だ。

 シャッタースピードは8秒から1/2,000秒まで。絞り優先、シャッター速度優先、マニュアルの各露出モードのとき、「EXPOSURE」ボタンを押して設定モードに入り、十字キーの上下で絞り、左右でシャッター速度を変更するが、マニュアルを読まないとわかりにくい。

 コマンドダイヤルがないためにこのような仕様になるわけだが、ボディサイズが小さいため、やむを得ないのかもしれない。

 連写は秒3コマの「高速」、秒2コマの「低速」、約秒2コマの「フリー連写」がある。ファインでの「高速」および「低速」連写は共に最大4コマまで。スタンダードの場合はそれぞれ7コマまでとなる。フリー連写はメディア容量いっぱいまで連写を続けるモードで、連写速度はカード書き込み速度に依存する。書き込みはどのモードでもほぼ瞬時に終わるので、常用しても問題はないだろう。


シーンモードとカラーエフェクト

 「夜景」、「夜景ポートレート」、「流し撮り」、「花火」、「パーティー」、「雪」、「ポートレート」、「スポーツ」、「風景」の9種類。シーンモードにすると、ホワイトバランス、ISO感度、測光モードなどの変更はできず、設定できるのは記録解像度やAFモードなどに限定される。

 十字キー右でシーンモードの設定に入るが、反対の左を押すとヘルプが表示され、わかりやすい。

 また、カラーエフェクトとして「ウォーム」、「クール」、「セピア」、「白黒」の色彩効果をつけることが可能。それ以外に、画質調整として「ヴィヴィッド」、「ナチュラル」も選択できる。これらは撮影時に適用される。再生時にも後から加工ができればさらに良かっただろう。


まとめ

 従来から松下電器は、ヴィーナスエンジンの解像度の高さを宣伝してきたが、200万画素ではポテンシャルは高くてもパフォーマンスとして画像上に具現化することができない。500万画素となることで、持てる能力をようやく発揮できるようになったといえるだろう。

 デジタル一眼レフも低価格化してきており、高級コンパクトの位置付けは難しくなりつつある。しかし、本機のように小型軽量で高倍率の手ブレ補正付きズームレンズを搭載している機種は、現行のデジタル一眼レフの技術では実現していない。一眼レフに劣る部分もあるが、別の価値を持つカテゴリーとして、将来的にも存在価値を認められるだろう。


作例

※作例のリンク先は、撮影した画像データそのものです(ファイル名のみ変更してあります)。縦位置のものは、サムネールのみ回転していますが、拡大画像はあえて回転せずに掲載しています。

※クリックすると撮影した画像が別ウィンドウで表示されます。

※キャプション内の撮影データは画像解像度(ピクセル)/露出時間/レンズF値/ISO感度/露出補正値/焦点距離です。



●ISO感度

 増感すると共にノイズは増えてディティールが失われ気味になるのは当然なのだが、比較的良く押さえられている。このサイズの撮像素子としては、「上」の評価を下して良いだろう。


【ISO80】2,560×1,920 / 1/50(秒) / F2.8 / 80 / -0.33 / 36(mm) 【ISO100】2,560×1,920 / 1/60(秒) / F2.8 / 100 / -0.33 / 36(mm)

【ISO200】2,560×1,920 / 1/125(秒) / F2.8 / 200 / -0.33 / 36(mm) 【ISO400】2,560×1,920 / 1/125(秒) / F4.0 / 400 / -0.33 / 36(mm)

●ワイド端とテレ端


【ワイド端】2,560×1,920 / 1/500(秒) / F5.6 / 80 / 0 / 36(mm) 【テレ端】2,560×1,920 / 1/800(秒) / F6.3 / 80 / 0 / 432(mm)

●ボケ

 口径食で円周ボケが出ている。といっても被写界深度が深いので、遭遇するケースは少ないだろう。この手のボケは万人にお勧めとはいえないが、筆者的には是非残してほしい「味」のあるレンズだと思う。


2,560×1,920 / 1/125(秒) / F3.3 / 80 / -0.66 / 432(mm) 2,560×1,920 / 1/60(秒) / F3.3 / 80 / -0.33 / 432(mm)

2,560×1,920 / 1/100(秒) / F3.3 / 80 / -0.66 / 432(mm)

●マクロ

 テレマクロとワイドマクロ、それぞれに適した使い方があるので、使い分けたいところだ。テレマクロなら背景が大きくボケるから、被写体が浮かび上がるような写真が撮れるのに対し、ワイドマクロは風景を取り入れた作品が撮影できる。高山植物など、背景に山並みを入れて撮るような場合に、ワイドマクロが活躍する。


2,560×1,920 / 1/250(秒) / F4.0 / 80 / 0 / 432(mm) 2,560×1,920 / 1/100(秒) / F3.3 / 80 / 0 / 432(mm)

2,560×1,920 / 1/100(秒) / F2.8 / 80 / 0 / 36(mm)

●逆光・順光

 順光できれいなのは当然として、逆光でもフレアやゴーストが比較的少なく、レンズの質、コーティングなどは良好と判断できる。「LEICA DC VARIO-ELMARIT」の名前なりの画質は確保されている。


2,560×1,920 / 1/2,000(秒) / F8.0 / 80 / -1.33 / 36(mm) 2,560×1,920 / 1/400(秒) / F4.5 / 80 / 0 / 36(mm)

●夜景

 シーンモードの夜景で撮影しているが、ISO80相当のままで長時間露光になっている。今回は三脚に据えて撮影した。

 「三脚の場合は手ブレ補正をオフに」といったこともいわれるが、筆者はいつでも「オン」のままで撮影している。それで問題が起きたことは一度もなく、むしろ三脚でも起きる微妙なブレも補正してくれるように感じている。


2,560×1,920 / 90(秒) / F6.3 / 80 / 0 / 36(mm) 2,560×1,920 / 120(秒) / F6.3 / 80 / 0 / 93(mm)


URL
  松下電器産業
  http://matsushita.jp/
  製品情報
  http://panasonic.jp/dc/fz5/

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安孫子 卓郎
(あびこたくお) きわめて頻繁に「我孫子」と誤変換されるので、「我孫子ではなく安孫子です」がキャッチフレーズ(^^;。大学を卒業後、医薬品会社に就職。医薬品営業からパソコンシステムの営業を経て脱サラ。デジタルカメラオンリーのカメラマンを目指す。写真展「デジタルカメラの世界」など開催。現在パソコン誌、写真誌等で執筆中。

2005/03/14 00:01
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