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【新製品レビュー】オリンパス μ-40 DIGITAL

~2.5型の大型液晶と生活防水が特徴の500万画素機
Reported by 中村 文夫

 「大型液晶モニター」と「薄型ボディ」。現在売れ筋のデジタルカメラの条件だが、オリンパスのμ-40 DIGITALは、これに「生活防水」という他社にない機能を付加するなど独自性を打ち出している。


雪の中でも安心して使える生活防水

 生活防水機能は、フィルムカメラの時代からオリンパスが得意とする分野である。特にオリンパスの場合、外観が普通のカメラと変わらないところが良い。いくら防水だからといって、見た目が無骨になってしまっては持つ喜びが半減してしまう。

 μ-40 DIGITALの防水性能はJIS保護等級4。いわゆる防沫型と呼ばれるタイプで、「いかなる方向からの水の飛沫によっても有害な影響を受けることがない」というもの。つまり水しぶきを浴びても大丈夫ということだ。水中カメラではないので完全な防水機能は期待できないが、プールサイドやスキー場などでも安心して使うことができる。今回のレポートでは、たまたま昨年の大晦日に首都圏で降った雪の中で使う機会を得たが、雪を気にせず撮影することができた。


視野角の広い液晶モニター

 大型液晶を採用した最近のデジカメでは、光学ファインダーを省く機種が増えている。μ-40 DIGITALも例外ではなく、撮影は液晶モニターを見て行なうことになる。ここで問題になるのはその見え具合だ。搭載するのは2.5型、21.5万画素のハイパークリスタル液晶。上下左右の視野角が160度と従来品に比べて2倍以上広く、斜めから覗き込んでも鮮明な画像が得られる。輝度も高いので屋外での撮影に有利だが、極端な逆光ではやや輝度不足を感じることがあった。






記録メディアはxDピクチャーカード。専用バッテリーとともに底部に収納する。カバーには防水用パッキングが取り付けられている DC IN(左)、ビデオ出力を兼ねるUSB miniコネクタ(右)。カバーは防水のためゴムパッキングされている

主流の500万画素CCDと光学3倍ズームレンズを搭載

 有効画素数は500万。最近のコンパクトタイプのデジカメでは主流になりつつある画素数である。レンズは焦点距離5.8~17.4mmの光学3倍ズームで、35mm判換算では35~105mmに相当。ズーム比を低く抑えているためディストーションが少なく、建物などを撮っても歪むことがない。ただし、絞り開放だと周辺部の描写が甘くなる傾向がある。

 AFは被写体が画面中央になくても自動的にフォーカスエリアが動くiESP(Intelligent Electro Selective Pattern)マルチAFを採用。ほとんどの場面で的確にピントが合うが、画面が暗かったり被写体がフラットなときに迷いが生じやすい。こんなときは、スポットAFに切り替えた方が良いようだ。


短い起動時間

 このカメラを初めて手にし電源スイッチをONにしたとき、起動時間の速さに驚いた。公称値では1秒以下となっているが、スイッチをONにしたとたんに開くレンズバリアの素早い動きや、ほとんど待ち時間なしに画像が現れる液晶モニターといい、起動時間の短さではクラス最速と呼べるのではないだろうか。とにかく、「撮りたい」と思ったものを見つけてからスイッチを入れても、チャンスを逃がすことが少ない。まるでフィルムカメラを使ってスナップを撮るような感覚で撮影ができるのだ。この秘密は画像処理エンジン「TruePic TURBO」にある。また凹凸のない「トップシェルバリア」によるスライド式のレンズバリア部の構造も起動速度のアップに貢献しているようだ。


シンプルで使いやすい操作系

 操作系は、静止画撮影、ムービー撮影、再生などの機能をモードダイヤルで選び、十字キーで詳細を設定する方式。撮影中に操作するのは、基本的に十字ボタンとズームボタンのみとなる。ボタン類のレイアウトも適切で操作性は高い。さらに十字ボタンを操作したとき液晶モニターに現れる表示も大きく分かりやすい。また撮影モードの状態で十字ボタン左上のQUICK VIEWボタンを押すと、撮影した画像を即座に再生できる。


多彩なシーンプログラムを搭載

SCENEボタンを押すと選択画面が現れる。次に目的のシーンを選びOKボタンを押すと作例が一瞬大きく表示され、説明の文章が現れる。写真は説明文が表示された状態
 μ-40 DIGITALは計20種類にもおよぶシーンプログラムを内蔵している。シーンの選択は簡単で、「SCENE」と印刷された十字ボタンの上方向を押すと、液晶モニターに選択画面が現れるので、これを見ながら目的のシーンを選びOKボタンを押す。このとき画面には作例が表示されるうえ、文章による説明も現れるので、初心者でも選びやすいだろう。なお絞り優先AEやシャッター優先AEなど,幾分上級者向きの露出モードは搭載していない。

 シーンプログラムの1つ、「ショット&セレクト」は、連続撮影したカットの中から必要なカットだけを残す機能だ。そのうち「ショット&セレクト1」を選ぶと、1.5コマ/秒の連写スピードで最大4カットを撮影。「ショット&セレクト2」の場合は、1カットごとにAFとAEをあわせながら、0.5コマ/秒のスピードで最大200枚の撮影ができる。この機能を用いた場合、撮影が終わると消去する画像を選択する画面が現れるので、要らない画像を1カットずつ削除すればベストショットが残るという仕掛けだ。必要なカットを選ぶのではなく不要なカットを捨てるという発想はとても合理的で、デジカメの使われ方をよく研究したオリンパスらしい機能といえるだろう。


実用的なスーパーマクロ

 μ-40 DIGITALでは、通常のマクロのほかスーパーマクロ機能も備えている。通常のマクロの最短撮影距離が20cm(撮影範囲約7×5.3cm)であるのに対し、スーパーマクロのときは被写体に約7cm(撮影範囲約2.7×2cm)まで近づいて撮影できる。このときレンズの焦点距離は望遠側に自動的にセットされるので、高倍率の接写が可能。撮影距離も長く保たれるので、カメラの影が被写体に写り込む心配もない。


遊び心にあふれた画像編集機能

 カメラ内で処理する編集機能は、いわばデジタルフィルターのようなものだ。画像をモノクロやセピアに変えたり、ソフトフォーカスや魚眼レンズで撮ったような効果を楽しめる。中でも楽しかったのは「フィッシュアイ」。本物の魚眼レンズのように対角線画角180度の画が写るわけではないが、撮影した画像にディストーションを強調した魚眼レンズ的な効果を与えることができる。いわば疑似魚眼のようなものだが、ペットなどをアップで撮影しこの機能を使えば、いわゆる「鼻デカ写真」も簡単に作ることができる。


画像編集は、撮影済みの画像に対して行なう。加工後の画像は別ファイルで保存される カレンダー再生機能を使うと、撮影した日付ごとに画像の管理ができる

 最近は記録メディアの値段が下がり、コンパクトデジカメユーザーの間でも、大容量記録メディアを使うケースが増えている。ここで問題になるのが、大量に撮影した画像の管理だ。μ-40 DIGITALの場合、「カレンダー再生機能」を利用することで、撮影した日付による管理がカメラ内で可能。長期の旅行などで役立つ機能だ。また「アルバム再生機能」も搭載し、テーマごとにアルバムを作成して登録すれば、目的の画像を呼び出しやすい。さらに、カメラに付属するソフト「OLYMPUS Master」へもアルバム形態のままコピーできる。


作例

※作例のリンク先は、特に記載がない限り、撮影した画像データをリネームしたものです。縦位置のものは、サムネールのみ回転していますが、拡大画像はあえて回転せずに掲載しています。クリックすると撮影した画像が別ウィンドウで表示されます。

※キャプション内の撮影データは、画像解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/ISO感度/露出補正値/焦点距離です。


※作例は個人での鑑賞用です。写真などの著作権は著作者に帰属します。無断転用、無断転載は著作権法違反となります。


発色が鮮やかで、手描きの絵の質感もよく再現されている
2,560×1,920 / 1/160(秒) / F13.0 / 64 / 0 / 11.51(mm)
広角側で撮影すると周辺部の像の甘さが目立ちやすい。この作例では特に画面上部両端の流れが気に掛かる
2,560×1,920 / 1/320(秒) / F3.1 / 64 / 0 / 5.80(mm)

外光と蛍光灯によるミックス光で撮影。このカメラのオートホワイトバランスは信用できる
2,560×1,920 / 1/10(秒) / F3.1 / 64 / 0 / 5.80(mm)
寒々した感じの色合いがオートホワイトバランスでも良く出ている
2,560×1,920 / 1/30(秒) / F3.3 / 64 / 0 / 7.04(mm)

開放付近だと周辺部の描写が甘くなる傾向がある
2,560×1,920 / 1/640(秒) / F4.8 / 64 / 0 / 14.75(mm)
輝度差の激しい条件で撮影。シャドウ部の再現性があまり良くなく、全体にメリハリが欠ける印象を受ける
2,560×1,920 / 1/250(秒) / F4.1 / 64 / 0 / 11.51(mm)

逆光ぎみだがiESP測光により適度な露出が得られた
2,560×1,920 / 1/40(秒) / F3.1 / 64 / 0 / 5.80(mm)
ランの花びらや赤いリボンの発色は偏りがなく自然
2,560×1,920 / 1/100(秒) / F3.1 / 64 / 0 / 5.80(mm)

ISOオートで撮影したところ自動で250に。ノイズはほとんど発生していない
2,560×1,920 / 1/2(秒) / F3.2 / 250 / 0 / 6.47(mm)
スーパーマクロモードで撮影。シャープさ、質感表現ともに申し分ない
2,560×1,920 / 1/250(秒) / F5.2 / 200 / 0.3 / 17.40(mm)

江戸東京博物館で降雪時と普段の状態を比較。雪が降っているときのカットは暖色系に再現
2,560×1,920 / 1/40(秒) / F3.4 / 64 / 0 / 7.72(mm)
こちらは晴れの江戸東京博物館
2,560×1,920 / 1/100(秒) / F3.8 / 64 /0 / 9.55(mm)

生活防水なので雪の中でも安心して使うことができる。ストロボをオンにしたので降る雪が静止して写った
2,560×1,920 / 1/40(秒) / F3.3 / 80 / 0 / 7.04(mm)
シーンをショーウィンドーに設定して撮影。ストロボ発光がキャンセルされガラスの写り込みを防ぐことができた
2,560×1,920 / 1/13(秒) / F3.1 / 200 / 0 / 5.80(mm)

シーンプログラムを「夕日」に設定。夕陽を浴びた部分の赤が強調されたうえ、画面全体の色調も鮮やかになる
2,560×1,920 / 1/250(秒) / F3.4 / 64 / 0 / 7.72(mm)
左と同じ被写体をオートホワイトバランスで撮影
2,560×1,920 / 1/200(秒) / F3.4 / 64 / 0 / 7.72(mm)

フィッシュアイ加工前
2,560×1,920 / 1/20(秒) / F4.1 / 64 / 0 / 11.51(mm)
画面中央部が拡大されるとともに、周辺部が圧縮され魚眼レンズ風になった。あらかじめ画面の上下に空きを作っておくと良いだろう
2,560×1,920 / 1/20(秒) / F4.1 / 64 / 0 / 11.51(mm)


URL
  オリンパス
  http://www.olympus.co.jp/
  製品情報
  http://olympus-imaging.jp/lineup/digicamera/mju40d/

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中村 文夫
(なかむら ふみお) 1959年生まれ。学習院大学法学部卒業。カメラメーカー勤務を経て1996年にフォトグラファーとして独立。カメラ専門誌のハウツーやメカニズム記事の執筆を中心に、写真教室など、幅広い分野で活躍中。クラシックカメラに関する造詣も深く、所有するカメラは300台を超える。1998年よりカメラグランプリ選考委員。

2005/01/19 00:49
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