デジカメ Watch

【新製品レビュー】マイクロソフト Digital Image Pro 10

~簡単操作で整理、調整、加工ができる画像管理/加工ソフト
Reported by 佐藤 希以寿

 デジタルカメラを買ったら写真を撮りすぎて収拾がつかない! とか、家族みんなでパソコンに画像をしまうようにしたら逆に整理に時間を取られる、写真は撮りっぱなしになってしまって日の目を見ない、といったことに思い当たる方は居ないだろうか?

 カメラがデジタルカメラになって、撮影に悩まなくても良くなったのだけれど、撮った画像データが本当にこの画質でよいのか分からない、もっと明るい方がよいのではとか、プリントが汚いのはプリンターが悪いの? カメラが悪いの? と、「何をどうして良いのか、何が良く分かっていないのか、そこが分からない」なんていうことに陥った方に非常に強い味方になってくれるソフトを紹介しよう。


基本的な特徴

 写真は撮るのも撮られるのも楽しい、それはなんと言っても「生きた証を残したい」と言う、人の基本的欲求に依るモノだから……。でも楽をしたいというのも基本的欲求。我が子可愛さで写真を撮りまくったのは良いけれどどの様に整理して良いか途方に暮れるなんて言うこともよくあること。

 マイクロソフトの「Digital Image Pro 10」は写真の整理、保管から画質の調整、デザイン処理までを非常に簡単な設定で進めてくれるソフトだ。しかも写真撮影のセオリーといえる基本を無視して撮影しても露出や色合いの修正もしてくれるし、いい加減に撮影してしまって傾いている建物も真っ直ぐに直してくれる。

 確かにありがたいソフトなのだがこのために写真の撮り方がずさんになっては困る。カメラはキッチリと両手で構えて、撮影した画像の調子はカメラのモニターで確認、露出や構図に問題があったらその場で補正をして撮り直しておこう。

 このような心がけで居ても上手く写ってくれないこともある、そんなときにDigital Image Pro 10で綺麗な写真に直してもらおう。少々小言めいたことを書いたが、携帯電話のカメラ機能のように「お手軽」が売りの撮影器具が普及してくると次第に「写真=お手軽」と言う条件付けが進行してしまう。「写真を撮られると魂を抜かれる」とかつて信じた人たちが居たそうだが、本来は「魂を込めて写真を撮る」と解すべきだろう。


写真を一覧で選ぶ

 仕事で写真を撮っている人はそれなりの整理方法は確立しているだろう。仕事の場合はクライアント別・撮影日別・撮影場所別等々と言った何らの繰り返しに似た共通点が見えてくる。この共通点でファイル分け、メディア分け等の方法を採れば自ずと整理が付いてくる。

 困るのは家庭の写真だ、家族の人数だけ行事があり、しかも写っている人たちが錯綜し合って絡み合った複雑なストーリーを展開してくれる。だから「お父さんの写っている写真」、とか「幼稚園の行事」と言った「キーワード」を覚え込ませて、探し出すときの条件付けにすることが出来たら大変便利だ。

 Digital Image Pro 10にはDigital Image Library 10が一緒にインストールされる。このLibraryが使用できるのなら写真の整理は次のように行なうと便利だ。少々容量の大きなHDDを用意する、このHDDに何でも良いから撮った写真は無条件で入れてしまう。

 いざ整理、となったらDigital Image Library 10を立ち上げて写真を保存したHDDを指定する。写真は小さな表示(=サムネイル)として画面一杯に並ぶ。このときに、同時にある決め事で整理が終了している。それは撮影日による仕分け。デジタルカメラの日付の設定が間違っていなければ、撮影時の情報がそのまま継承されここで整理の要因とされて仕分けされる。これが基本仕分けだが、もちろん条件の追加もできる。「キーワード」「フラグ(=目印)」「お気に入り度」の各条件を追加し、必要ならばキーワードに新しく項目を増やすこともできるのでこれらの条件で、たくさんある写真の寄せ集めが可能になるのだ。


仕分けの為のキーワードは追加もできる キャプション「グループをより分ける仕分けの方法は細かく用意されている

 Digital Image Library 10でできる写真の整理はこればかりではなく、CD-Rに写真のバックアップを作る、写真を集めてストーリーを作るプログラムも用意されている。


写真の基本的調整

 必要な写真をDigital Image Library 10上で選択し、Digital Image Pro10に移動すると「写真トレイ」に選択された写真が全て収容されている。ここから調整が始まる。

 Digital Image Pro10の作業に必要な項目は「基本タスク」の中に収納されており、項目を上から順に「必要」「不必要」の判定をして行けば修正に必要な作業は全てクリアーされるようになっている。もちろん全部使用する必要は全くないので誤解の無きように……。

 修正項目の一番初めに出てくる修正が「自動補正」のグループだが、これは全くの自動で行なわれるために写真によっては「ん? 何か変わったの? 」と言うこともあり得る。変わりゆく条件を自分で確認したい場合は、次の項目「補正」の使用をお勧めする。「カラーバランス彩度の補正」「露出と光の補正」共に、先に紹介した「自動補正」の項目がそのまま含まれ、とりあえず自動で補正して不足部分をマニュアルで補正すると、不慣れな人でも方向違いの補正をしなくてすむ。

 作例の処理をしながら詳細を紹介してみよう。作業は微妙に霞んで見えた富士山の写真を「露出と光の補正」を使用して調整を試みる。

 初めに「コントラストの自動補正」を使用して調整の方向を確認しよう。「もう少し何とか……」と不満がある場合は、「明るさ」の調整スライダーを各部調整をすると下に有る「トーンカーブ」が連動し操作の状況を表示してくれる。


自動でもハイライトを抑え、階調を整えている状況は、ひとつの結論として問題のない調整だ トーンカーブの調整と同じ事を行なえるのだが、白を暗く・黒を明るくする作業ができる点が有利

霞んで見える富士山が…… 霞が取れたようにクッキリとした画像に変貌

 画面に映り込んでしまった「余計なモノ」を除去するのなら「スマート消去」。排除したいモノを選択エリアとして取り囲み「塗りつぶし」をクリックすると「保護色」のように囲まれた絵が周りに溶け込んで消えてしまう。こちらも作例で紹介しよう。

 本来はメインで撮影した人物なので消去する必要はないのだが、こんなに大きく写した人物も消せるのか、トライしてみた。


消去したい対象の周囲を囲む 始めにこちらを見せられると何もないモノがオリジナル、と勘違いしそうなくらい綺麗に消えてしまう

 呆れるくらい簡単に、しかも見事に消えてしまった。ただし、レンガの壁のような細かな柄があるような状況では背景のパターンが歪んで処理されてしまうことがあるので注意。

 もう一点、似たようなツールなのだが「ブレンドブラシ」を紹介したい。基本的には電線を消すと言った画面の邪魔者の処理に使用することが多いと思うのだが、作例では逆のことを行ってみた。絵の中の主役を増殖させる作業に使用してみよう。


ブラシの大きさを決め、コピーを開始する開始点をクリック、移植先でドラッグをすると… 背景にしっかり馴染んだ白鳥の編隊が完成

 ブラシの使い始めは周囲が馴染んでいなかったのに、クリックを離した瞬間に周囲にしっかり馴染んでしまう。作業を繰り返せば「白鳥の編隊」が完成。この馴染ませがポイントだ。

 「書式」という項目に注目のツールが有るのでこちらも見ていただきたい。項目タイトル「書式」という名前は少々馴染まない表現なのだが内容には影響がないので目をつむろう。「写真の傾きを修整」と言うツールが入っている、傾いて撮ってしまった写真をきちっと真っ直ぐにする優れモノだ。

 操作はいたって簡単、操作画面上で「真っ直ぐ」で有って欲しいところに線を引く、マウスのクリックを離すとその瞬間に斜めであったモノが垂直に立っているように写真は回転され、はみ出してしまう部分の切り取りまで表示してくれる。


傾いて写っている煙突をなぞる様にガイドを引く ガイドが垂直になるように画面は自動で回転をしている

 細かにツールの説明をしたいのだが全てを紹介していると本1冊分の情報量になってしまうので主要なものの紹介のみとさせていただこう。「基本タスク」には入っていないのだが「特殊効果」のプルダウンメニューの方に「透明化」「透明化ブラシ」がある。「透明化ブラシ」が画像の簡単合成に使用できるので、その紹介をしたい。

 画像を重ねたい場合は、まず基本となる画面を「写真トレイ」上でクリックして表示させる、その後に重ねたい画像を同じく「写真トレイ」で選び、今度は表示している先の画面上にドラッグアンドドロップする。これで2枚の写真が重なって表示をされることになり、その重なり具合は「スタック」に表示される。重なった写真をドラッグして位置を合わせ、プルダウンメニューから「透明化ブラシ」を選択、その作業画面に移動する。ブラシのサイズ、周囲のボケ具合、透明度の設定をして不要部分を「塗る」様になぞると上の写真が「透明」になり下の写真が見えてくる。不要部分をなぞり終えると「合成」は完成だ。


写真トレイから第2の画像をドラッグアンドドロップするだけで重ねの準備が出来る 重なりの状況がここに表示される

特殊効果-透明-透明化ブラシを選ぶ 不要な部分を塗り潰すようになぞる

飛行機の周囲が消え、合成は完成

飾るための写真を作ろう

 Digital Image Pro 10の機能として、整理、調整、加工と3つの流れに分けられる。その3番目の加工、合成というレベルを超えグラフィック的に写真を変えてみようとする機能だ。

 作例では写真の集合処理(=コラージュ)を行なってみよう。「基本タスク」の一番初めの項目「クイックリンク」に入っている「コラージュの作成」をクリックしてみよう。

 「写真トレイ」に収容されている写真は、選択をしていなければ全てコラージュに使用される。コラージュをするにはテンプレートを選び「次へ」をクリック、これだけでテンプレートに沿ったコラージュが完成。ただし写真の配置は勝手に選ばれているので写真の移動、入れ替えは必要になる。配置に問題がなければ「完了」をクリックでコラージュという写真の編集は終了。


選ぶのはテンプレート、何枚構成の画面にするかを選ぶ 基本は自動で配置が終了してしまっているので不満がある場合は自分で入れ替えが必要になる

配置された写真の表示位置が意に添わない場合は写真をスライドさせて位置を調整、位置を変えるときは同じページ上なら写真をドラッグして重ねることで位置が交換され、新たな写真に変えたい場合は写真トレイから写真をドラッグアンドドロップして配置する

 写真は綺麗に調整したし、その写真はコラージュしてみた、タイトルも入った。このままのプリントも良いがもう一押し、フレームを付けてみよう。

 Digital Image Pro 10にはフレームデータ等の素材が収録されたCDが付いている。フレームもこのCDに入っているが「基本タスク」「輪郭」「台紙とフレーム」を選んで表示された見本をクリックすれば自動で呼び込み表示してくれる。重ねる写真をフレーム内にドラッグすれば後はサイズの調整で完成。


選ぶのに苦労するほど様々な素材が用意されている 先ほど作った写真をフレーム内にドラッグして合成を行なう、サイズ調整で完成

 家族のイベントなどがあった後に、このような写真の編集は如何だろうか? これをプリントして壁にピンアップしただけでも和やかな気分になれるのではないだろうか。ぜひ一度お試しいただきたい。


ファミリーフォトは他人がなんと言おうと家族の大事な思い出、飾って楽しみたい


URL
  マイクロソフト
  http://www.microsoft.com/japan/
  製品情報
  http://www.microsoft.com/japan/pictureit/dip/



佐藤 希以寿
(さとう けいじゅ)広告写真家としてモデルから商品・建築まで広範囲な撮影を行なう。業務用デジタルカメラが登場した直後からデジタル撮影を開始。広告写真撮影の業務のほか、デジタルセミナー、写真学校などの講師も。

2004/12/03 00:34
デジカメ Watch ホームページ
・記事の情報は執筆時または掲載時のものであり、現状では異なる可能性があります。
・記事の内容につき、個別にご回答することはいたしかねます。
・記事、写真、図表などの著作権は著作者に帰属します。無断転用・転載は著作権法違反となります。必要な場合はこのページ自身にリンクをお張りください。業務関係でご利用の場合は別途お問い合わせください。

Copyright (c) 2004 Impress Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.