キヤノンIXY DIGITAL 50は、コンパクトタイプのキヤノンIXYシリーズの中で上位に分類される製品である。有効画素数は400万。A4判程度にプリントするには十分な画質であると同時に画像1カット当たりのファイルサイズは最大でも2MB程度と、撮影後の画像管理もそれほど苦にならない。
さらに3倍ズームを搭載しながらフラットなボディスタイルを実現。ボディ外装にステンレスを採用するなど、高級感のあふれるスタイリングも大きな特徴になっている。
■ UAレンズの採用で小型化を実現
搭載するレンズは、焦点距離5.8~17.4mmの3倍ズーム。35mm判換算だと35~105mmになる。このレンズはカメラの電源をOFFにすると完全にフラットになるが、この秘密は世界最高の屈折率を誇る屈折ガラスで作られた非球面レンズ「UA(Ultra high refractive index Aspherical Lens)」にある。このため光学系を外部に逃がすことなくストレートに沈胴することが可能になり、光軸のズレによる画質低下を追放した。
実際に使用してみて強く感じたのは、ディストーションが非常に少ないことだ。最近のコンパクトタイプのデジカメはズーム比の高倍率化と光学系のコンパクトさを優先するあまり、この点が犠牲になっている製品が多いが、あえてズーム比を3倍にとどめ、ディストーションを低く抑えたことは高く評価できる。
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高屈折率ガラスによる非球面を2枚採用することで超薄型の光学系を実現
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レンズを沈胴させた状態
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■ コンパクトデジカメで初めてDIGIC IIを採用
DIGIC IIとはEOS-1Ds Mark IIに採用された最新鋭の映像エンジンのことだ。IXY DIGITAL 50は、コンパクトタイプのデジカメとして初めてこれを採用。処理能力が高まったことで、高画質だけでなく、起動時間の短縮やAFスピードの向上など、あらゆる面での高性能化が実現した。
中でもオートホワイトバランスの性能は優秀で、いろいろな条件で撮影してみたが、ほとんどのケースで肉眼に近い自然なイメージを得ることができた。またカメラの縦/横位置を検出するSIセンサーを内蔵しているので、縦位置/横位置で撮影しても空の色や明るさがバランス良く再現される。
■ 起動速度は1.3秒
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立ち上がりは速いが、電源スイッチのストロークがやや深いこともあり、きちんと押さないとONにならない
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起動速度も1.3秒と短く、電源をOFFにして持ち歩いていても、とっさの撮影でチャンスを逃がすことながない。ただし電源スイッチボタンのストロークがやや深いため、押し方が不完全だとスイッチがONにならないことがある。恐らく誤操作を防ぐためにこうなっているのだろう。
AFは9点測距によるAiAFを採用。シャッターボタンを半押しするとカメラが自動的にAFエリアを選択、ピントの合う位置が液晶モニターに緑色の枠で表示される。ほとんどの場合、カメラが的確なエリアを選んでくれるが、AiAFをOFFにすれば中央のエリアでピント合わせをすることが可能。フォーカスロックを併用すれば、より厳密なピント合わせができる。
■ コンパクトながら高い操作性を確保
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十字キーは大きく、感触も良い。中央のボタンで設定画面に切り替わる。また測光、連写、ストロボ、マクロ/遠景モードの切り替えは十字キーのみで可能
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ボディのコンパクトさと操作性の高さは相反するものだ。しかもIXY DIGITAL 50の場合、2型という大型液晶モニターを搭載しているため、操作部に使えるスペースはさらに狭くなっている。だがこのカメラを実際に手にしてみると、まったくといっていいほど違和感がない。これは各操作部の形状とレイアウトが優れているからだ。
特に大型の十字キーはクリック感がしっかりしていてとても気持ちよく操作ができる。また各ボタンに割り振られた機能も上手く整理され、必要な機能をすぐに呼び出し設定することができる。
またこのカメラの光学ファインダーは対物窓が撮影用レンズのほぼ真上にあるので、パララックスが少ない。最近ではあまり注目を浴びることのない光学ファインダーだが、この点にはとても好感が持てる。
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光学ファインダーの対物窓は撮影レンズのほぼ真上にあるので、パララックスが非常に少ない
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記録メディアはSDメモリーカード。ボディ底部に専用バッテリーとともに収納する
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外部インターフェイスはボディ側面にある。カバーは樹脂製だがメッキが施してあるので、金属のように見える
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バッテリーチャージャーはコードレスタイプ。ボディと同サイズなので携帯に便利だ
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ファンクションセットボタンを押しながらスイッチをONにすると時計モードになる
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カメラの向きを変えるとSIセンサーにより縦/横が切り替わる
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軽くカメラを振ると表示の色が変わる
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■ 作例
※作例のリンク先は、特に記載がない限り、撮影した画像データそのものです。縦位置のものは、サムネイルのみ回転していますが、拡大画像はあえて回転せずに掲載しています。クリックすると撮影したの画像が別ウィンドウで表示されます。
※キャプション内の撮影データは画像解像度(ピクセル)/露出時間/絞り/露出モード/ISO感度/露出補正値/ホワイトバランス/レンズ焦点距離です。
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【広角端】2,272×1,704 / 1/640(秒) / F2.8 / プログラムAE / オート / 0 / オート / 5.80(mm)
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【望遠端】2,272×1,704 / 1/320(秒) / F4.9 / プログラムAE / オート / 0 / オート / 17.40(mm)
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ディストーションが少ないので、広角側で撮影しても像が歪まない
2,272 ×1,704 / 1/50(秒) / F2.8 / プログラムAE / 50 / 0 / オート / 5.80(mm)
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完全な逆光だが、フレアによる画質低下は意外と少ない
2,272 ×1,704 / 1/160(秒) / F3.2 / プログラムAE / オート / 0 / オート / 7.10(mm)
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やや朝靄がかかっているが、青空が自然な色合いに再現された
2,272 ×1,704 / 1/250(秒) / F4 / プログラムAE / 50 / 0 / オート / 12.12(mm)
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パステルカラーの車を日陰で撮影
2,272 ×1,704 / 1/80(秒) / F2.8 / プログラムAE / 50 / 0 / オート / 5.80(mm)
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雨上がりの条件だが赤いボディカラーが鮮やかに再現された
2,272 ×1,704 / 1/40(秒) / F3.5 / プログラムAE / 50 / 0 / オート / 8.46(mm)
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室内の照明をノーフラッシュで撮影。タングステンライトが暖かみのある色で写った
2,272 ×1,704 / 1/25(秒) / F3.5 / プログラムAE / 50 / 0 / オート / 8.46(mm)
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ミックス光で照明されたショーウィンドーを撮影。色調はニュートラルだ
2,272 ×1,704 / 1/50(秒) / F3.5 / プログラムAE / 400 / 0 / オート / 109(mm)
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青い照明で照らされた店を撮影。実際よりもやや青が弱くなった
2,272 ×1,704 / 1/13(秒) / F3.5 / プログラムAE / 400 / 0 / オート / 8.46(mm)
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太陽が雲間から顔を出した瞬間に撮影。ホワイトバランスはオート2,272 ×1,704 / 1/500(秒) / F4.9 / プログラムAE / 50 / 0 / オート / 17.40(mm)
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こちらは太陽が雲に遮られた状態。同じくホワイトバランスはオート。ホワイトバランスの特性が良くわかる
2,272 ×1,704 / 1/200(秒) / F4.9 / プログラムAE / 50 / 0 / オート / 17.40(mm)
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ホワイトバランスをくもりに設定。色づき始めたツタの葉が自然に写った
2,272 ×1,704 / 1/25(秒) / F3.2 / プログラムAE / 50 / 0 / くもり / 7.10(mm)
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ホワイトバランスを太陽光に設定。機体の白と青空のバランスが良い
2,272 ×1,704 / 1/400(秒) / F5.6 / プログラムAE / 50 / 0 / 太陽光 / 5.80(mm)
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同じ被写体で縦/横で撮影。露出は同一
2,272 ×1,704 / 1/640(秒) / F4.9 / プログラムAE / 50 / 0 / オート / 17.40(mm)
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横位置で撮影したこのカットでは遊覧船の白がややトビ気味に
2,272 ×1,704 / 1/400(秒) / F5.6 / プログラムAE / 50 / 0 / 太陽光 / 5.80(mm)
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こちらに向かってくる列車に気付き、急いで電源スイッチを入れシャッターを切ったところ、ギリギリで列車の鼻先を画面に収めることができた
2,272 ×1,704 / 1/400(秒) / F5.6 / プログラムAE / 50 / 0 / くもり / 5.80(mm)
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■ URL
キヤノンのホームページ
http://canon.jp
製品情報
http://cweb.canon.jp/camera/ixyd/5040/
関連記事 キヤノン、薄型ボディと大型液晶の「IXY DIGITAL 50/40」(PC)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0922/canon1.htm
■ 関連記事
・ 【1st Shot】キヤノン IXY DIGITAL 50 実写画像(2004/10/18)
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中村 文夫 (なかむら ふみお)
1959年生まれ。学習院大学法学部卒業。カメラメーカー勤務を経て1996年にフォトグラファーとして独立。カメラ専門誌のハウツーやメカニズム記事の執筆を中心に、写真教室など、幅広い分野で活躍中。クラシックカメラに関する造詣も深く、所有するカメラは300台を超える。1998年よりカメラグランプリ選考委員。 |
2004/10/29 00:28
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