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プライベートラボを担当する宮澤氏(右)と、エプサイトフロアリーダーの野本輝之氏
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東京・新宿のエプソンイメージングギャラリー「エプサイト」で11月15日から「プライベートラボ」がサービスを開始した。エプサイトといえば写真展会場のイメージが強いが、プライベートラボは作品制作に必要な入出力機が揃ったクリエイティブルームで、エプサイトの専門家の支援を得ながらユーザー自身が自由にプリント制作を行なえる場だ。
「個人がなかなか購入しづらい製品を体験できるようにしたい」(PI企画推進部・宮澤正俊係長)ということで、現在、プリンターはB0ノビ対応の「MAXART PX-9500」と、A3ノビ対応の「MAXART PX-5500」を用意している。さらにA2対応の「MAXART PX-5800」も導入する予定だという。
正式なサービス開始は来年1月からを予定し、年内はトライアル期間としている。そのため現在の利用料金は消耗品代のみ(エプサイト会員への登録が必要)。消耗品の料金は同社ホームページのプライスリスト( http://www.epson.jp/epsite/labo/pricelist.htm )を参照してほしいが、B0ノビのプリントがPX/MCプレミアムマット紙ロールなら1,230円、プロフェッショナルフォトペーパー(厚手光沢・厚手半光沢とも)なら2,530円で利用できるのだ。
来年から時間当たりの利用料がかかるといっても、自宅ではできない大判インクジェットプリントの魅力を体験し、プリントについての疑問を解消するには、もってこいの窓口だろう。
■ B0プリントを体験
この日の利用者は、午前中が年配の女性で昔の写真を大きく伸ばしたいと訪れた。亡くなったご主人の写真が見つかり、ちょうど法事があるので、その時に飾るということだ。プリントサイズは当然、B0だった。
スキャナはエプソンの「GT-X900」があるので、フィルム、プリント原稿だけでも利用できるが、この方はデータを用意して来場している。B0サイズだと、出力だけで約45分かかってしまうため、ラボではプリント作業に集中したいと考える人が多いようだ。
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テストプリントをチェックする住中氏。自宅での染料系プリンタと大きな違いはなかったようだ
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午後の利用者は、美術家の住中浩史氏。公立中学校の課外授業で使う作品を出力するためだという。作品は今の自分と過去の自分をテーマにしたもの。学校の教室での授業時間や、休み時間に生徒たちが遊んでいるシーンを撮影した作品だが、よく見ると全員の役を住中氏が演じている。教室にEOS 20Dを固定し、衣装や髪型を変えて1名分ずつを撮影し、パソコン上で合成したのだ。「自宅では、エプソン PM-3300Cをずっと使っています。今回は大きいプリントを制作してみたかったので、ネットでこのサービスを知り、早速予約を入れました」と住中氏は話す。
データをパソコンに入れて、まずはテストプリントをA4サイズに出してみる。自宅で使っているプリンタは染料系なので、顔料系の出具合は気になるところだ。さくっとプリントしてOK。さて本番だ
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現代美術では写真をメディアに使うアーティストが増えてきた。住中浩史氏もその一人だ
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A4ペーパーでテストプリント
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ペーパーをセットする宮澤氏
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順調にPX-9500は働いてくれているようだ
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できあがったばかりのプリントを手に満足そうな住中氏。自らの作品をプリントしてみないと、B0が持つ迫力は実感できないだろう
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住中氏が用意してきたデータは1点が約800MB。大判プリントする時に、どのぐらいのデータを用意したらいいかはよく寄せられる質問のひとつだ。「B0でしたら、200~240dpi程度あればいいと思います。先日、2GBほどのデータを出力した方がいらっしゃいましたが、コンピュータがデータをスプールする時間が延々かかってしまいました」と宮澤氏。
住中氏のプリント作業は問題なくスムーズに進み、この日、4点の作品を出力した。基本2時間に最大延長2時間を使い、無事完了。「撮影には中判カメラも使い、自宅の暗室でカラープリントを制作することもあります。デジタルの方が変化の過程が見続けられ、最後まで自分で関われる良さがあると思います」。今回、プライベートラボでPX-9500を試し、よりその思いを強くしたようだ。
■ プリントに関するセミナーや、プリントのエキスパートのアドバイスも
プライベートラボの利用は、基本的なパソコン操作ができる人が対象となる。ただし、初めて使うシステムだから、操作法がわからない時にはエプサイトのスタッフにたずねれば教えてもらえる。
現在のところ、利用者のほとんどがPX-9500でB0プリントを出力することが目的。そして利用者が共通に持っている悩みは「自分の操作法は正しいのか」という疑問だという。「私のやり方は間違っていませんか? と聞かれることが少なくない」と宮澤氏。そして「実際に間違った知識を正しいと思い込んでいる方がいます。それはプロの方にもいらっしゃいますよ」と続ける。
その知識はメーカーのホームページや、製品の解説書に書かれているものであることが多いのだが、どこかで誤って刷り込まれてしまったようだ。その中の質問で多いのが、「スキャニングした時の画像サイズと解像度の設定」と、「モノクロプリントの出力の仕方」だという。これまで開催してきたEPSON NEW PHOTO FORUMでも同様な質問が集まることで、こういった疑問に関しては、エプサイトを会場にしたセミナーを開くことにした。「今後扱っていくテーマは、プライベートラボを運営していく中で吸い上げていきます」。
作品の表現力を高めたい人には、エプサイトでプロ写真家のプリントを手がけてきた「エプサイトデジタルクリエーター」が有償でアドバイスを行なう。ここでは「立体感を出したい」、「部分的に彩度を上げたい」などの具体的なイメージに対し、対処法をアドバイスしていく。
この部分のサービス内容も今後のニーズに合わせて柔軟に対応していく考えだ。「プライベートラボを始めて意外だったのは、使いたいペーパーの種類をうかがうと、『こんなに種類があるのか』と驚かれ、どれにしようか悩まれる方が多かったことです」と岩本氏と宮澤氏は口を揃える。
専門誌でもデジタルプリントの特徴として、プリントできるペーパー(メディア)の種類の豊富さを指摘していると思うが、きちんと伝わっていないのだろうか。いや、知識としてはわかっていても、実際に自分が使う段になって気づくことなのかもしれない。知識だけで納得せず、まずは「プライベートラボ」でデジタルイメージングの世界を体験してみよう。プリンタとの付き合い方がきっと変わるはずだ。
■ URL
エプソン
http://www.epson.jp/
エプサイト
http://www.epson.jp/epsite/
市井 康延 (いちいやすのぶ)1963年東京生まれ。最近、気になる街の風景をデジタルカメラで撮り始めた。突然、街が変わっていることが多く、なくなってしまった光景がもったいないと思うようになったからだ。撮り始めると、これまでと街が少し違う表情に感じられる。写真展めぐりの前には東京フォト散歩( http://photosanpo.hp.infoseek.co.jp )のチェックを忘れずに。開催情報もお気軽にお寄せください。 |
2006/12/08 19:21
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