LUMIX DMC-LX3には「暗部補正」という機能があり、OFF、弱、中、強の設定が選べます。明暗比の高い被写体などにおいて、シャドー部がつぶれて階調性が失われてしまうような場合、暗部のトーンを持ち上げることで階調性を出してくれる機能です。要するに黒つぶれを救済してくれるわけです。
こうしたシャドー部の黒つぶれ対策は、従来、プラスに露出補正をすることで行なっていたのですが、露出補正は全体が明るくなり、すでに明るい部分が白トビするケースがありました。暗部補正は全体ではなく、いわば暗い部分だけを露出補正してくれるような機能です。
ただ、本当の露出補正ではなく、カメラの中でのレタッチですから、暗部の画質だけをみると露出補正に劣ります。それでも写真全体を見ると、明部も暗部もバランスが取れるため、全体的には露出補正よりもよい結果が得られます。
各社とも最近装備し始めている機能で、これにはダイナミックレンジを拡張するようなネーミングがつけられている場合もありますが、機能的には同じ原理です。ストレートで誤解を与えない表現なので、パナソニックの「暗部補正」というネーミングはとても好ましいと思いますが、キャッチコピーとしては弱い気もします。
筆者がこの機能を必要だと感じるケースは、日中のお寺や神社です。屋根がせり出しているため、空を一緒に写すと、空が露出オーバーで白くなるか、屋根の下が暗くなってしまうかどちらかの状態を避けられませんでした。そんなときにこの機能を使うわけです。空を色濃く描写するためにマイナスに露出補正をしておき、同時に暗部補正でシャドー部のトーンを持ち上げることで、両方を綺麗に写せます。
暗部補正を強にすれば、シャドーのトーンが大きく持ち上げられて明るくなりますが、上げすぎると不自然さも出てきます。じゃあどれくらいにしたらよいのかはケースバイケースです。弱と中の間にはっきりした差を感じることから、「元々の画質そのままに、多少の補正を入れたい」なら弱、「コンパクトデジカメのダイナミックレンジの狭さをカバーしつつ、極端な補正は行なわない」なら中。このあたりが常用設定かなと思います。お寺や神社についていろいろと試してみた感想としては、-1.3EVを基準に前後をブラケットし、それぞれ暗部補正、中と強を試してみると良さそうです。
サムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。
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DMC-LX3 / 2.2MB / 3,968×2,232 / 1/250秒 / F2.8 / ISO80 / WB:晴天 / 24mm(35mm判換算)
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DMC-LX3 / 2.1MB / 3,968×2,232 / 1/400秒 / F2.8 / ISO125 / WB:晴天 / 24mm(35mm判換算)
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暗部補正:中・±0EV
DMC-LX3 / 2.1MB / 3,968×2,232 / 1/400秒 / F2.8 / ISO125 / WB:晴天 / 24mm(35mm判換算)
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暗部補正:強・±0EV
DMC-LX3 / 2.2MB / 3,968×2,232 / 1/400秒 / F2.8 / ISO125 / WB:晴天 / 24mm(35mm判換算)
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暗部補正:オフ・-1EV
DMC-LX3 / 2.0MB / 3,968×2,232 / 1/500秒 / F3.2 / ISO80 / WB:晴天 / 24mm(35mm判換算)
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暗部補正:弱・-1EV
DMC-LX3 / 2.1MB / 3,968×2,232 / 1/500秒 / F3.5 / ISO125 / WB:晴天 / 24mm(35mm判換算)
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暗部補正:中・-1EV
DMC-LX3 / 2.2MB / 3,968×2,232 / 1/400秒 / F4 / ISO125 / WB:晴天 / 24mm(35mm判換算)
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暗部補正:強・-1EV
DMC-LX3 / 2.2MB / 3,968×2,232 / 1/500秒 / F4 / ISO125 / WB:晴天 / 24mm(35mm判換算)
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暗部補正:オフ・-2EV
DMC-LX3 / 1.7MB / 3,968×2,232 / 1/640秒 / F4 / ISO80 / WB:晴天 / 24mm(35mm判換算)
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暗部補正:弱・-2EV
DMC-LX3 / 1.9MB / 3,968×2,232 / 1/800秒 / F4 / ISO125 / WB:晴天 / 24mm(35mm判換算)
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暗部補正:中・-2EV
DMC-LX3 / 2.1MB / 3,968×2,232 / 1/800秒 / F4 / ISO125 / WB:晴天 / 24mm(35mm判換算)
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暗部補正:強・-2EV
DMC-LX3 / 2.1MB / 3,968×2,232 / 1/800秒 / F4 / ISO125 / WB:晴天 / 24mm(35mm判換算)
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本来の使い方とは違いますが、露出をマイナス設定にして常用し、暗部補正を中や強にして、よりダイナミックな表現を試みるような使い方も、あり得ると思います。ファミリー向けの使い方ではありませんが、作品を目指したいときには、頭に入れておいてもよいテクニックではないでしょうか。
余談ですが、ダイナミックレンジを擬似的に広げる方法として、HDRという技法が注目されています。明るく撮った画像と暗く撮った画像を合成し、通常得られるより広いダイナミックレンジを作り出そうという技法です。ただ2枚以上の画像を合成しますから、三脚などを使って固定して撮影する必要があります。
そこでRAW画像から、明るく現像した画像と暗く現像した画像を合成することが行なわれていますが、この方法はマイナス補正をして撮影し、暗部補正をかけた場合と、原理的には同じかなと思います。
HDRの場合は外部のソフトで行ないますが、手間がかからないのはカメラ内の暗部補正です。この分野は、これから先もまだまだ進歩しそうです。2つの撮像素子で露出を変えて撮りわけるような可能性も考えられます。注目される技術でしょう。
サムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。
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DMC-LX3 / 1.1MB / 3,968×2,232 / 1/400秒 / F2.8 / +1EV / ISO80 / WB:曇天 / 60mm(35mm判換算)
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DMC-LX3 / 1.6MB / 3,968×2,232 / 1/160秒 / F2.8 / 0EV / ISO80 / WB:曇天 / 60mm(35mm判換算)
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DMC-LX3 / 1.6MB / 2,232×3,968 / 1/500秒 / F2.8 / -0.3EV / ISO80 / WB:曇天 / 60mm(35mm判換算)
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DMC-LX3 / 2.1MB / 2,736×3,648 / 1/320秒 / F2.8 / 0EV / ISO80 / WB:曇天 / 60mm(35mm判換算)
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DMC-LX3 / 1.3MB / 3,968×2,232 / 1/800秒 / F4.5 / 0EV / ISO80 / WB:晴天 / 24mm(35mm判換算)
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■ URL
パナソニック
http://panasonic.co.jp/
製品情報
http://panasonic.jp/dc/lx3/
気になるデジカメ長期リアルタイムレポートバックナンバー(DMC-LX3)
http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm2008.htm#lx3
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安孫子卓郎 (あびこたくお)
きわめて頻繁に「我孫子」と誤変換されるので、「我孫子ではなく安孫子です」がキャッチフレーズ(^^;。大学を卒業後、医薬品会社に就職。医薬品営業からパソコンシステムの営業を経て脱サラ。デジタルカメラオンリーのカメラマンを目指す。写真展「デジタルカメラの世界」など開催。現在パソコン誌、写真誌等で執筆中。 |
2008/10/16 01:05
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