この2カ月ほど、α350の長期リアルタイムレポートを連載させて頂き、さまざまな犬や猫たちを撮影してきました。テーマが得意な犬猫だったこともありますが、大変に楽しい連載でした。なんと言っても、ローアングルがしやすく、AFが実用的なクイックAFライブビューでの撮影は快適そのものです。
ただしα350には、まだ改善するべき部分があります。例えば連写が遅いこと。高感度特性がいまひとつであること。液晶モニターの動きが横位置にしか対応しないことなどです。
ただ、犬猫の撮影に関していえば撮りやすさは抜群であり、このカメラでしか撮れない写真もたくさんありました。連写の速い快適なカメラでも、這いつくばらねば撮れず、苦労するカメラがほとんどです。這いつくばるのも晴れた日のコンクリートの上なら良いのですが、地面が濡れていたり、泥の上だったりしたときに、それでも這いつくばって撮影している人はごくわずかです。
また、α350と同じように、可動式液晶モニターとライブビューの両方を実現した機種もありますが、α350のクイックAFライブビューのような素早い撮影は行なえません。C-AFが使えるということもありますが、少しくらいの動きであればS-AFでも、ピントがあったらそのままシャッターを押すだけでも、ずいぶんカバーしてしまえるものです。こんな芸当は、ほかの機種ではできません。すべてに満足できるナンバーワン機種とはいえませんが、現在、犬猫を撮るならオンリーワンの撮りやすさであることは確かです。
- 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
- 作例下の撮影データは、使用レンズ/記録解像度(ピクセル)/露出モード/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。
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DT 18-70mm F3.5-5.6 / 4,592×3,056 / 絞り優先AE / 1/200秒 / F3.5 / 0EV / ISO100 / WB:曇天 / 18mm
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DT 18-70mm F3.5-5.6 / 4,592×3,056 / 絞り優先AE / 1/1,000秒 / F3.5 / 0EV / ISO100 / WB:曇天 / 18mm
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DT 18-70mm F3.5-5.635mm F1.4 G / 4,592×3,056 / 絞り優先AE / 1/1,000秒 / F3.5 / 0EV / ISO100 / WB:曇天 / 18mm
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レンズ選択肢の面では、もう一段の充実が望まれます。35mm F1.4やPlanar T* 85mm F1.4 ZA、あるいはSonnar T* 135mm F1.8 ZAなどすばらしいレンズ群がありますが、簡単には買えない価格設定です。
一方デジタル専用のズームもラインナップされていますが、ほとんどがF値可変で望遠端の開放F値がF5.6かF6.3。24-105mmと16-80mmがF4.5ですが、明るいとは言えません。F2.8のズームはVario-Sonnar T* 24-70mm F2.8 ZA SSMと70-200mm F2.8 Gがありますが、値段も高く、フルサイズ対応とあって何よりも重たいです。値段の高さは一時の我慢ですが、重たいのはその後ずっとついて回る上、軽快に撮影したい犬猫には大きな問題と考えます。重たいと持ち歩きがおっくうになる可能性があり、持ち歩く機会が減れば、値段もその分割高に感じられるでしょう。奥様に「たまにしか使わないのにこんな高いレンズを買って」と、怒られてしまうかもしれません。
フルサイズ機を今年中にリリースする予定のソニーですが、α350を始めとするAPS-Cに対応機種を割り切って、17-50mm F2.8や50-150mm F2.8といったスペックの、明るく軽量なレンズをリリースしてほしいと思います。それらと85mm F1.4や35mm F1.4を組み合わせれば、最高の犬猫用システムができあがるのではないでしょうか。犬猫のような動く被写体には、手ブレ補正も有効ですが、明るいレンズでシャッタースピードを稼ぐことが、とても大切だからです。
■ 今週のαレンズ
●35mm F1.4 G
最終回に使用したレンズは、ミノルタ時代から知られる「35mm F1.4 G」です。ほどよい大きさで、かつ質感の高い、ぐっとくる手応えのレンズです。
筆者は、この35mm F1.4こそAFが必要なスペックだと考えています。35mmなのでそこそこ被写界深度が深く、ということはピントの山がつかみにくい焦点距離です。しかしF1.4と明るいため、それなりに被写界深度が浅く、すぐにピンぼけも起こしてしまいます。最短撮影距離で花マクロ撮影などをするときには、MFでもピントがつかめるのですが、距離数mのレベルになると、ピントが合ってるのか、合ってないのか、大きなファインダースクリーンのカメラで見ても、わかりにくいのが35mm F1.4というスペックです。動いているものを撮るにはAFが便利だということはのぞいても、AFがありがたく感じられるレンズです。
α350では35mm判換算で焦点距離50mm相当に近い画角となり、標準的に使えるレンズと言えます。ボディとのバランスも良く、使っていると手放したくなくなるレンズです。ただ定価はPlanar T* 85mm F1.4 ZAの18万9,000円より高価な19万7,400円ですから、それを考えてしまうとなかなか手の出しにくいのが難点でしょうか。まずは85mm。ゆとりができたら35mm F1.4という順番かなと思います。
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35mm F1.4 G / 4,592×3,056 / 絞り優先AE / 1/2,000秒 / F1.4 / 0EV / ISO100 / WB:曇天 / 35mm
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35mm F1.4 G / 4,592×3,056 / 絞り優先AE / 1/320秒 / F1.4 / 0EV / ISO100 / WB:曇天 / 35mm
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35mm F1.4 G / 4,592×3,056 / 絞り優先AE / 1/250秒 / F1.4 / 0EV / ISO100 / WB:曇天 / 35mm
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35mm F1.4 G / 4,592×3,056 / 絞り優先AE / 1/1,600秒 / F1.4 / 0EV / ISO100 / WB:曇天 / 35mm
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35mm F1.4 G / 4,592×3,056 / 絞り優先AE / 1/2,500秒 / F1.4 / 0EV / ISO100 / WB:曇天 / 35mm
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35mm F1.4 G / 4,592×3,056 / 絞り優先AE / 1/1,250秒 / F1.4 / 0EV / ISO100 / WB:曇天 / 35mm
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35mm F1.4 G / 4,592×3,056 / 絞り優先AE / 1/500秒 / F1.4 / 0EV / ISO100 / WB:曇天 / 35mm
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35mm F1.4 G / 4,592×3,056 / 絞り優先AE / 1/400秒 / F1.4 / 0EV / ISO100 / WB:曇天 / 35mm
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35mm F1.4 G / 4,592×3,056 / 絞り優先AE / 1/1,250秒 / F1.4 / 0EV / ISO100 / WB:曇天 / 35mm
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■ 最後に
しばらく前、レース用の鳩が数十羽、羽を切られて飛べないようにされ、捨てられていたというニュースがありました。ひどい話があるものだと思いましたが、もし捨て猫や捨て犬の話がニュースでとり上げられたなら、毎日のニュースの大部分はそれだけで埋まってしまうことでしょう。毎日毎日、たくさんの猫や犬が捨てられ、悲惨な死を遂げているというのが、日本の文化レベルの現実であります。
この連載中、アルファ(偶然にもアルファという名前でした)ちゃんという元捨て犬に出会いました。フリスビーの練習中に近寄ってきて、保護された犬だそうです。警察に届けたのですが、1週間で保健所に送られて殺されてしまうとのことで、保護した方がそのまま引き取って育ててくれることとなりました。たくさんの犬や人に囲まれても平気で遊べるフレンドリーな良い犬ですが、警察への届け出はなく、捨てられてしまったと思われます。現在は新しい家で幸せに暮らしていますから、あえて写真は掲載しませんが、アルファつながりの、不思議な出会いだったかもしれません。
犬猫を撮影する中で、被写体は物ではなく、命ある生き物であることをしっかり受け止めて、心して撮影してゆきたいものだと思っております。
■ URL
ソニー
http://www.sony.co.jp/
製品情報
http://www.sony.jp/products/Consumer/dslr/products/body/DSLR-A350/
気になるデジカメ長期リアルタイムレポート(α350)
http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm2008.htm#a350
ソニーα350関連記事リンク集
http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2008/02/05/7906.html
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安孫子卓郎 (あびこたくお)
きわめて頻繁に「我孫子」と誤変換されるので、「我孫子ではなく安孫子です」がキャッチフレーズ(^^;。大学を卒業後、医薬品会社に就職。医薬品営業からパソコンシステムの営業を経て脱サラ。デジタルカメラオンリーのカメラマンを目指す。写真展「デジタルカメラの世界」など開催。現在パソコン誌、写真誌等で執筆中。 |
2008/07/01 00:00
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