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オリンパスE-420【第6回】
ハイスピードイメージャAFを検証する

Reported by 小山 安博


今回のレンズはキットレンズのZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6

 E-420の上位機種に当たるE-520の発売日が5月29日に決まったようだ。E-420に比べ、ボディ内手ブレ補正とボタンに割り当てられた機能が多いといった特徴はあるが、コンパクトさではE-420の方が小型軽量。画質的には同等なので、自分の撮影スタイルに応じてE-420かE-520を選択するといいだろう。E-420にボディ内手ブレ補正が内蔵されれば鬼に金棒だが、両方購入して使い分けるという手もあるかもしれない。

 さて、E-420の特徴といえば、強化されたライブビュー機能。特に重要なのが「ハイスピードイメージャAF」と呼ばれる新たなAF方式の採用だ。新しいといっても、ベースとなるのは主にコンパクトデジカメで使われていたコントラストAF。

 コントラストAFと位相差AFの違い、ハイスピードイメージャAFの機能に関してはここでは割愛するが、いずれにしてもコントラストAFの難点はAF測距のスピードが位相差AFに比べて劣る点。コンパクトデジカメと比較したデジタル一眼レフのメリットの1つが高速なAFであり、コントラストAFはそれをスポイルしてしまう。

 その問題の解消を狙ったのがハイスピードイメージャAFだ。対応レンズが現時点で6本だけというのは課題だろう。非対応レンズの場合は自動的に「ハイブリッドAF」になり、コントラストAFでだいたいのピント合わせを行なった後、シャッターボタン全押しで撮影する瞬間に位相差AFを行なうため、その分1枚の撮影時間が長くなってしまう。ただ、対応レンズを使えばハイスピードイメージャAFは快適なライブビュー環境を実現してくれる。

 では、実際にハイスピードイメージャAF対応レンズと非対応レンズでは差があるのだろうか。テストでは、ストップウォッチを使い、半押しでAFを行い、ピントが合った時の電子音を聞いてからそのまま全押しする、という簡易のテストを実施した。撮影されたストップウォッチの時間が、シャッターボタン半押しから撮影されるまでの全体の時間となる。誤差を考え、1回ごとに手動でフォーカスを大きく外しながら全部で10回試行し、その平均値を求めた。

AF方式 ボディ レンズ 平均時間
位相差AF(光学ファインダー) E-420 ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 1.227秒
ハイスピードイメージャAF E-420 ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 2.657秒
ハイブリッドAF E-420 ZUIKO DIGITAL 14-45mm F3.5-5.6 3.227秒
Aモード(E-330のフルタイムライブビュー) E-330 ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 2.387秒


計測に使ったもうひとつのレンズ、ZUIKO DIGITAL 14-45mm F3.5-5.6。E-300、E-500、E-330時代のキットレンズだ。コントラストAFには非対応

 ハイブリッドAFで使ったのは、コントラストAFに対応していないE-330のキットレンズ「ZUIKO DIGITAL 14-45mm F3.5-5.6」。参考としてE-330のAモードでの結果も併記した。ZUIKO DIGITAL 25mm F2.8でもテストしたが、結果は14-42mm F3.5-5.6とあまり変わらないレベルだった。繰り返しになるが、今回は手作業でストップウォッチ開始→半押し→全押しまで行っており、かなりおおざっぱなテスト。特に時間は撮影状況によっても大きく異なるので参考値として欲しい。

 こうしてみると確かにハイスピードイメージャAFよりもハイブリッドAFは遅い。ハイスピードイメージャAF+位相差AFの結果よりは速いのは、あらかじめコントラストAFでだいたいのピント合わせを行なっているからだろうか。逆にコントラストAFでジャスピンまで追い込まない分、コントラストAFの動作時間が短くてすむ、というのがあるかもしれない。

 約2.7秒というハイスピードイメージャAFの動作時間が速いかどうかは人それぞれかもしれないが、高速とまではいえないものの、使っていてストレスを感じない現実的なレベルに仕上がっていると思う。

 意外だったのはE-330の約2.4秒。これは大デフォーカス状態からのAFに時間がかかったためで、ピントが合った状態から連続してのAFは高速だった。これに対してハイスピードイメージャAFは、ピントが合った状態でも同じように鏡胴が前後してピント合わせを行なうため、全体の時間がかかってしまう。

 これは動きのないストップウォッチの撮影だったが、実際の撮影環境だとまた違う。特に動体を撮影するのは難しく、動きが不規則だともうお手上げ。子どもや動物などの動き回る被写体はあきらめた方が賢明だ。

 もう1点気になったのが、位相差AFとハイスピードイメージャAFで最短撮影距離が異なっている点。筆者が撮影したところ、位相差AFでピントが合うギリギリの距離でも、ハイスピードイメージャAFに切り替えるとピントが合わないのだ。その差はほぼ1cm。

 三脚+MFなら関係ないし、ライブビュー時に手持ち・最短撮影距離で撮るのも難しいので、頻繁に問題になるわけではないが、やはり気になる部分ではある。公式にはこの差はないので、何が原因かはちょっと分からない。

 ただ、ライブビュー+ハイスピードイメージャAFが便利なのには変わらない。特に威力を発揮するのがスナップ撮影だ。やや効きは弱い感じはするものの、8人までの顔検出機能も搭載し、これを組み合わせることで、友達とのちょっとしたランチ、旅行や飲み会、街角スナップなど、気軽に撮影したいという要望にしっかり応えてくれる。ファインダーをのぞかずに撮れるので、人物の自然な表情も押さえやすいのもうれしいところだ。

  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 作例下の撮影データは、使用レンズ/記録解像度(ピクセル)/露出モード/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。





ハイスピードイメージャAFの検証

 光学ファインダーでの位相差AF(左)とハイスピードイメージャAFの最短撮影距離での撮影。きっちり三脚に設置して少しずつ被写体を前後させると、ハイスピードイメージャAFでは1cmほど後に動かすとピントが合った。手持ちだと体のブレもあってきっちり1cmにはならないが、やはり位相差AFの方が寄れる。


ZUIKO DIGITAL 25mm F2.8 / 2,736×3,648 / 絞り優先AE / 1/50秒 / F4.5 / 0EV / ISO800 / WB:オート / 25mm ZUIKO DIGITAL 25mm F2.8 / 2,736×3,648 / 絞り優先AE / 1/50秒 / F4.5 / 0EV / ISO800 / WB:オート / 25mm

位相差AF(光学ファインダー)
ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 2,736×3,648 / 絞り優先AE / 1/50秒 / F5.6 / +1EV / ISO200 / WB:オート / 14mm
ハイスピードイメージャAF
ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 2,736×3,648 / 絞り優先AE / 1/100秒 / F5.6 / +1EV / ISO200 / WB:オート / 14mm




 同じルートで泳ぐオタリアを狙った。ちょうど水面から顔を上げた瞬間を狙ったのだが、位相差AFではきちんと狙えたものの(左)、ハイスピードイメージャAFでは追いつかなかった


位相差AF(光学ファインダー)
ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 3,648×2,736 / 絞り優先AE / 1/160秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 42mm
ハイスピードイメージャAF
ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 3,648×2,736 / 絞り優先AE / 1/160秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 42mm




 ハイスピードイメージャAFで動きの速い被写体を撮影するのは、不可能とまではいわないもののかなり難しい。逆に動きが少ない被写体なら得意。姿勢の自由度が増して、むしろライブビュー+ハイスピードイメージャAFの方が撮影しやすい。


ハイスピードイメージャAF
ZUIKO DIGITAL 25mm F2.8 / 2,736×3,648 / 絞り優先AE / 1/80秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 25mm




 顔検出でピント合わせをしたMicrosoftのビル・ゲイツ会長。隣のマイクロソフト樋口泰行社長は検出できず。ちょっと横向きだと検出しないし、一度検出してもすぐに外れてしまったりして顔検出の効きはちょっと弱めという感じだ。


ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 3,648×2,736 / マニュアル露出 / 1/200秒 / F5.6 / 0EV / ISO800 / WB:オート / 42mm




一般作例

ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 3,648×2,736 / 絞り優先AE / 1/320秒 / F6.3 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 42mm ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 3,648×2,736 / 絞り優先AE / 1/200秒 / F13 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 14mm

ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 2,736×3,648 / 絞り優先AE / 1/800秒 / F6.3 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 42mm ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 2,736×3,648 / 絞り優先AE / 1/500秒 / F6.3 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 14mm

ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 2,736×3,648 / 絞り優先AE / 1/100秒 / F7.1 / 0EV / ISO100 / WB:晴天 / 14mm ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 2,736×3,648 / 絞り優先AE / 1/125秒 / F10 / -0.7EV / ISO100 / WB:オート / 42mm

ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 2,736×3,648 / 絞り優先AE / 1/400秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 42mm ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 2,736×3,648 / 絞り優先AE / 1/200秒 / F9 / 0EV / ISO100 / WB:晴天 / 14mm


URL
  オリンパス
  http://www.olympus.co.jp/
  製品情報
  http://olympus-imaging.jp/product/dslr/e420/
  オリンパスE-420関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2008/03/14/8123.html
  気になるデジカメ長期リアルタイムレポート(E-420)
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm2008.htm#e420



小山 安博
某インターネット媒体の編集者からライターに転身。無節操な興味に従ってデジカメ、ケータイ、音楽プレーヤー、コンピュータセキュリティなどといったジャンルをつまみ食い。軽くて小さいものにむやみに愛情を感じるタイプ。デジカメ、音楽プレーヤー、PC……たいてい何か新しいものを欲しがっている。

2008/05/23 14:41
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