D300のベース感度はISO200だ。設定可能な感度はISO200~3200。そのほかに高感度設定としてISO6400に相当するHI 1までと、低感度設定としてISO100に相当するLO 1までが設定可能だ。
D3の低ノイズレベルがあまりにもセンセーショナルだっただけにその影に隠れてしまっているが、D300の高感度域におけるノイズレベルの低さも特筆すべきもので、それまでのニコンデジタル一眼レフのものを大きく凌いでいる。しかし、今回のリアルタイムレポートでは、その高感度域ではなく、あまり注目されることのない低感度域について検証してみたいと思う。
仕事柄、カメラやレンズのブツ撮影をすることが多い。光源としてよく使用するのがストロボだ。ジェネレータとヘッド(発光部)が一体になったモノブロックタイプとそれぞれが別個となった一般的な外部ストロボを所有するが、最近ではもっぱら手軽にセットアップできるモノブロックタイプを持ち出すことが多い。いずれのストロボの場合もちょっと困るのが光量の強さである。撮影はもちろんデジタルカメラだから、ブツ撮影といえども回折現象を考えるとあまり絞り込みたくない。通常はF11までで、状況によってF16としたいところである。
ところが、ストロボの発光量を最小に調整してもメーターはそれ以上の小さなF値を示すこともある。ベース感度がISO100のキヤノンEOS 1D系や40Dのときでこうであるから、ベース感度がISO200のD300をブツ撮影で使うと、それよりもさらに小さなF値を示すのである。
そこで通常はNDフィルターの登場となるのだが、最も手軽に済ませるために低感度設定域にISO感度を設定してみた。しかしながら、低感度設定には気になることがある。取扱い説明書を見ると、低感度に設定した場合、ベース感度とくらべやや硬調な仕上りになると記されているのだ。ではどの程度硬い仕上りなのか、検証してみることにした。
検証は太陽光によるものと、ストロボによる撮影で行なった。ベース感度のISO200のほか低感度設定のLO 0.3(ISO160相当)、LO 0.7(ISO125相当)、LO 1.0(ISO100相当)で撮り比べている。
※作例下の撮影データは、記録解像度/露出モード/露出時間/絞り値/露出補正値/ホワイトバランス/レンズ/実焦点距離を表します。
※サムネールをクリックすると、等倍の画像を開きます。
●太陽光1
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ISO200
4,288×2,848ピクセル / プログラムAE / 1/250秒 / F9 / 0EV / WB:オート / 22mm
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LO 0.3
4,288×2,848ピクセル / プログラムAE / 1/250秒 / F8 / 0EV / WB:オート / 22mm
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LO 0.7
4,288×2,848ピクセル / プログラムAE / 1/320秒 / F9 / 0EV / WB:オート / 22mm
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LO 1.0
4,288×2,848ピクセル / プログラムAE / 1/250秒 / F8 / 0EV / WB:オート / 22mm
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●太陽光2
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ISO200
4,288×2,848ピクセル / プログラムAE / 1/250秒 / F8 / 0EV / WB:オート / AF-S DX 17-55mm F2.8 G ED / 17mm
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LO 0.3
4,288×2,848ピクセル / プログラムAE / 1/250秒 / F8 / 0EV / WB:オート / AF-S DX 17-55mm F2.8 G ED / 17mm
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LO 0.7
4,288×2,848ピクセル / プログラムAE / 1/200秒 / F7 / 0EV / WB:オート / AF-S DX 17-55mm F2.8 G ED / 17mm
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LO 1.0
4,288×2,848ピクセル / プログラムAE / 1/200秒 / F7 / 0EV / WB:オート / AF-S DX 17-55mm F2.8 G ED / 17mm
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●ストロボ
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ISO200
2,848×4,288ピクセル / マニュアル露出 / 1/125秒 / F10 / -0.7EV / WB:5,260K / AF-S DX 17-55mm F2.8 G ED / 55mm
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LO 0.3
2,848×4,288ピクセル / マニュアル露出 / 1/125秒 / F9 / -0.7EV / WB:5,260K / AF-S DX 17-55mm F2.8 G ED / 55mm
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LO 0.7
2,848×4,288ピクセル / マニュアル露出 / 1/125秒 / F8 / -0.7EV / WB:5,260K / AF-S DX 17-55mm F2.8 G ED / 55mm
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LO 1.0
2,848×4,288ピクセル / マニュアル露出 / 1/125秒 / F7 / -0.7EV / WB:5,260K / AF-S DX 17-55mm F2.8 G ED / 55mm
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LO 1.0
2,848×4,288ピクセル / プログラムAE / 1/250秒 / F8 / 0EV / WB:オート / AF-S DX17-55mm F2.8 G ED / 17mm
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あくまでも個人的な主観であるが、当初考えていたほど強い硬調ではないように思える。たしかにベース感度の画像と比較してしまうと違いは明確に理解できるものであり、低感度設定域で撮影した画像はハイライト部や黒ツブレしているところが、ベース感度で撮影した画像にくらべ多いのは確か。ダイナミックレンジも、当然のことなのだがわずかに狭くなっている。トーンカーブで見ると、山の両端がベース感度のものよりも少し狭いことで、数値的にもわかる。
そのため、コントラストの低いフラットな階調の被写体などでは、この低感度設定域で撮影してみてもよさそうだ。少しメリハリが付き、ヌケのよい感じとなることだろう。
ただ、前述したようなストロボ撮影によるブツ撮りでは微妙。余計なコントラストを付けたくないときも多いし、例え明暗比を付けたとしても、被写体でも黒ツブレになるようなことは避け、階調をなるべく保持したいこともある。うんと光を柔らかくして使用するといいのかもしれないが、気分的には光量が多いときは低感度設定域にするよりも、NDフィルターを使用するほうが、やはりよいように感じる。ちなみに、ノイズレベルについてはベース感度と同じ。低感度になったからといってもこの設定域となるとより良好になるようなことはない。
ちょっと気になっていた低感度設定域。ベース感度によるものとのコントラストのわずかな違いは避けられないものの、画像そのものは実用といっても問題のないレベルである。高感度設定域にくらべその用途はより限られたものになるかと思われるが、興味ある向きは1度試してみてみるといいだろう。
■ URL
ニコンD300関連記事リンク集
http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2007/08/24/6897.html
大浦タケシ (おおうら・たけし)1965年宮崎県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、二輪雑誌編集部、デザイン企画会社を経てフリーに。コマーシャル撮影の現場でデジタルカメラに接した経験を活かし主に写真雑誌等の記事を執筆する。プライベートでは写真を見ることも好きでギャラリー巡りは大切な日課となっている。カメラグランプリ選考委員。 |
2008/05/07 15:34
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