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ペンタックスK20D【第2回】
新機能「ダイナミックレンジ拡大」を検証

Reported by 中村 文夫


 ダイナミックレンジ拡大機能は、K20DとK200Dで初めて採用された機能だ。簡単に説明すると白トビと黒ツブレを抑えダイナミックレンジを拡大する機能で、ダイナミックレンジ拡大をオフにしたときに比べ、ダイナミックレンジが2倍に広がったように見えることから、この名前が付いた。

 ペンタックスの場合、画面の中の白トビ、黒ツブレししている部分を検出。そこを抑える処理を行なっているが、一部分だけを補正したのでは画が不自然になる。そこで画面全体に手を加える処理を行なっている。実は、このレポートを始める以前、【新製品レビュー】ペンタックス「K20D」の時に、この機能を検証したが、それほど劇的な差は見られなかった。

 だが、その後ペンタックスの技術者が撮影したダイナミックレンジ拡大の比較映像を見る機会を得て、眼からウロコが落ちた。私は白トビという言葉を聞いて、白いものを撮影して比較すれば、差が出ると思い込んでいたのだが、実は明るい色であるY(黄色)のほうが差が出やすいのだという。ちなみにこのとき見せられた画像はコダックのカラーチャートを撮影したもの。そこで私も同じチャートを使って検証してみることにした。

  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 作例下の撮影データは、使用レンズ/記録解像度(ピクセル)/露出モード/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。


テストチャートによる比較(白トビの検証)

 画面中央やや右寄り、マルの中にC、Y、Mと表示された部分を見比べて欲しい。+1.3EVまではほとんど差はないが、+2EVを越えると差が歴然としてくる。

●+1.3EV

 デジタルカメラとしては、かなり思い切った補正量だが、ダイナミックレンジ拡大:オン/オフの差は意外と少ない。


ダイナミックレンジ拡大:オフ

ダイナミックレンジ拡大:オン

※共通設定:DA 16-45mm F4 ED AL / 4,672×3,104 / ハイパーマニュアル / 1/50秒 / F6.3 / +1.3EV / ISO200 / WB:マニュアル / 45mm


●+2EV

 CとMの差はそれほどでもないが、ダイナミックレンジ拡大:オフのYは色が薄くなってしまい、かろうじて白抜き文字が読める程度まで色味が失われている。これに対しダイナミックレンジ拡大をオンにした画像は、ちゃんとYの色味が保たれている。


ダイナミックレンジ拡大:オフ ダイナミックレンジ拡大:オン
※共通設定:DA 16-45mm F4 ED AL / 4,672×3,104 / ハイパーマニュアル / 1/40秒 / F5.6 / +2EV / ISO200 / WB:マニュアル / 45mm


●+2.7EV

 ダイナミックレンジ拡大の画像は、Yの文字が判別できるが、オフの画像は丸い部分が完全にとんでしまい文字があったことすら分からない。またCとMも、ほんの少し薄くなっている(Exifでは露出補正+2となっているが、マニュアル露出で+2.7EVになるよう調節)。


ダイナミックレンジ拡大:オフ ダイナミックレンジ拡大:オン

※共通設定:DA 16-45mm F4 ED AL / 4,672×3,104 / ハイパーマニュアル / 1/30秒 / F5 / +2.7EV / ISO200 / WB:マニュアル / 45mm


●+3.4EV

 ダイナミックレンジ拡大オンの画像もYが完全にとび、文字が判読できなくなった。またダイナミックレンジ拡大オフの画像では、マルが背景のグレーと同化。ダイナミックレンジ拡大機能はグレーにも効果があることが分かる。Cはそれほどでもないが、ダイナミックレンジ拡大:オフではMもかなり薄くなっている(Exifでは露出補正+2となっているが、マニュアル露出で+3.4EVになるよう調節)。


ダイナミックレンジ拡大:オフ ダイナミックレンジ拡大:オン

DA 16-45mm F4 ED AL / 4,672×3,104 / ハイパーマニュアル / 1/25秒 / F4.5 / +3.4EV / ISO200 / WB:マニュアル / 45mm


テストチャートによる比較(黒ツブレの検証)

 グレースケールをモニターで比較してみたが、ダイナミックレンジ拡大オン/オフの差は、どの露出でも、ほとんど差がない。強いて違いを上げればダイナミックレンジ拡大オンの画像は、コントラストがやや低めで、隣り合ったスケールとの境界がはっきりしない。念のためにプリントアウトして比較してみたが、結果は同じだった。

●-1.3EV


ダイナミックレンジ拡大:オフ ダイナミックレンジ拡大:オン
DA 16-45mm F4 ED AL / 4,672×3,104 / ハイパーマニュアル / 1/125秒 / F10 / -1.3EV / ISO200 / WB:マニュアル / 45mm


●±0EV(参考)


ダイナミックレンジ拡大:オフ ダイナミックレンジ拡大:オン
DA 16-45mm F4 ED AL / 4,672×3,104 / ハイパーマニュアル / 1/80秒 / F8 / 0EV / ISO200 / WB:マニュアル / 45mm


実写による比較

ダイナミックレンジ拡大機能は、Fn(ファクション)ボタンでISO感度設定を選び、再度Fnボタンを押すとオンになる。これが利用できるISO感度の下限は200。ダイナミックレンジ拡大機能で白トビを抑制すると、トビ際を寝かすことになり、そのままだと暗い方にしわ寄せが行く。場合によっては感度を変更する必要が生じるので下限に余裕がとってある
 赤、白、黄を主体とした被写体を選び、ダイナミックレンジ拡大:オン/オフで撮り比べてみた。テストチャートの場合、差の出やすい条件を人為的に作ったので、撮影結果に大きな影響が出たが、実際の撮影では、ひと目でダイナミックレンジ拡大を使ったことが分かるような条件に巡り会うことは、それほどない。

 したがって、比較作例に顕著な差は認められないが、わざと露出オーバーにしてハイキーな描写を狙ったときなどには、この効果が威力を発揮。いわばダイナミックレンジ拡大機能は、ふだんは目立たないようにしているが、いざというときに活躍する頼もしい助っ人のような存在である。

 感度の下限がISO200に設定されるというデメリットはあるが、常時オンにしておけばフィルムカメラと同じ感覚で撮影が可能。デジタルカメラがまた一歩フィルムカメラに近づいたという意味で、画期的な機能と言えるだろう。


ダイナミックレンジ拡大:オフ、カスタムイメージ:雅(MIYABI) ダイナミックレンジ拡大:オン、カスタムイメージ:雅(MIYABI)
※共通設定:A Macro 50mm F2.8 / 3,104×4,672 / 絞り優先AE / 1/200秒 / F4.5 / +0.3EV / ISO200 / WB:マニュアル / 50mm


ダイナミックレンジ拡大:オフ、カスタムイメージ:雅(MIYABI) ダイナミックレンジ拡大:オン、カスタムイメージ:雅(MIYABI)
※共通設定:DA 16-45mm F4 ED AL / 4,672×3,104 / 絞り優先AE / 1/40秒 / F8 / +0.3EV / ISO200 / WB:マニュアル / 21mm


ダイナミックレンジ拡大:オフ、カスタムイメージ:鮮やか ダイナミックレンジ拡大:オン、カスタムイメージ:鮮やか

※共通設定:DA 16-45mm F4 ED AL / 4,672×3,104 / 絞り優先AE / 1/160秒 / F8 / +0.3EV / ISO200 / WB:マニュアル / 45mm


ダイナミックレンジ拡大:オフ、カスタムイメージ:雅(MIYABI) ダイナミックレンジ拡大:オン、カスタムイメージ:雅(MIYABI)
※共通設定:A Macro 50mm F2.8 / 3,104×4,672 / 絞り優先AE / 1/30秒 / F6.3 / +1.3EV / ISO200 / WB:マニュアル / 50mm


 下の作例はハイキー表現を意図して+2EV補正。白い花びらのトーンが、白トビするギリギリのところで再現され爽やかなイメージになった。プリントしたときの印象はリバーサルフィルムからダイレクトプリントしたときに近い。


ダイナミックレンジ拡大:オン、カスタムイメージ:ナチュラル
A Macro 50mm F2.8 / 4,672×3,104 / 絞り優先AE / 1/20秒 / F9 / +2EV / ISO400 / WB:マニュアル / 50mm

まとめ

 ダイナミックレンジ拡大機能は、白トビに対して絶大な効果があり、色味についてはY、M、Cの順番で強い効果が発揮されることが分かった。また黒ツブレに対しては、それほど効果が得られなかったが、今回の検証だけで結論を出すのは尚早だ。この件にについては実際の撮影を積み重ね、より多くのデータを確認する必要がありそうだ。

 いずれにしてもこの機能は、フィルムカメラの再現性をデジタルで実現することを念頭に開発されたもの。ハイライトに弱いというデジタルカメラの弱点を克服する意味で、優れた機能と言えるだろう。



URL
  ペンタックス
  http://www.pentax.co.jp/
  製品情報
  http://www.pentax.jp/japan/imaging/digital/slr/k20d/
  ペンタックスK20D関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2008/02/05/7800.html
  気になるデジカメ長期リアルタイムレポート(K20D)
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm2008.htm#k20d



中村 文夫
(なかむら ふみお) 1959年生まれ。学習院大学法学部卒業。カメラメーカー勤務を経て1996年にフォトグラファーとして独立。カメラ専門誌のハウツーやメカニズム記事の執筆を中心に、写真教室など、幅広い分野で活躍中。クラシックカメラに関する造詣も深く、所有するカメラは300台を超える。1998年よりカメラグランプリ選考委員。

2008/04/28 17:56
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