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オリンパスE-3【最終回】
最後にいろいろ気になることなど

Reported by 北村 智史


 E-3を買ってから3カ月近く(新製品レビューのときから数えれば4カ月になる)使ってきて、いちばん気になっているのは、パワー(電源)スイッチの位置である。「あ、いいな」と思ってカメラを構えたまではいいが電源がオフのままだった、なんて経験は誰にでもあると思う。

 そういうときに、E-410やE-510はカメラを構えたままファインダーから目を離さずに電源をオンにできる。右手で操作できる位置にスイッチがあるからだ。が、E-3のは背面下部。手探りでオンにすることはできなくはないが、位置的にふだんの親指の場所から遠いこともあって、ファインダーから目を離さずにというのが難しい(筆者が左目利きのせいもある。顔が邪魔になるからだ)。で、結局、1度カメラを下ろしてスイッチを入れてから構え直すという手間をかけることになる。

 もちろん、電源なんか入れっぱなしにしてスリープにしておけばいいという考えもある。スリープならシャッターボタン半押しなどで復帰するし、バッテリーも節約できる。ただ、物理的に電源オフにしたほうが気分的に安心だし、レンズ交換の際に電源をオフにする習慣もある(マクロレンズは電源を切ってからレンズを外すようにしないと、鏡胴が伸びたままになってしまうから)。で、頻繁に電源をオフにするわけだが、そうすると今度は電源を入れるときに面倒な思いをすることになる。

 同じフォーサーズでもE-410やE-510、パナソニックの2機種は、上面や背面の上部にスイッチがあるし、ニコンとペンタックスはシャッターボタンの外周のリングがスイッチになっているので、カメラを構えてから電源をオンにするのは簡単にできる。そういうのと比べると、E-3の電源スイッチの位置は、やはりよろしくないと思ってしまうのである。


E-3の背面。電源スイッチは右下にある

 ちなみに、Kissシリーズ以外のキヤノンEOS(背面下部)とソニーα(背面左手肩。これはミノルタ時代から)の電源スイッチも筆者は嫌いである。まあ、文句を言って直るものでもないと思うけれど、使いはじめてからずっと気になっていて、慣れるように努力もしてみたのだけれどなかなか慣れない。

 同じように気になっているのがFnボタンである。筆者は縦位置グリップを常用している関係で、AEL/AFLボタンとFnボタンの入れ替え機能をオンにしている(パワーバッテリーホルダーHLD-4には縦位置用のAEL/AFLボタンがないので、Fnボタンとの入れ替えをオンにしないと縦位置撮影時に“親指AF”が使えなくなるのだ)。が、ボディのFnボタンは、やや上向きの面に設けられているので、少しばかり押しづらく感じてしまうのである。筆者は手が大きいほうだし、慣れたおかげであまり気にならなくなったが、手の小さな人には指が届きづらいかもしれない。これはAFターゲットボタン(測距点選択などを行なうボタン)にも同じことが言える。

 まあ、こういうハード系の問題(ただの愚痴ですけど)はどうしようもないが、ソフト系の問題はファームウェアのアップデートで直せるものもあるので頑張ってもらいたいと思っている。


 個人的になんとかしてもらえないかなぁと思っているのは、前にも書いたとおり、十字キーの単独操作での測距点の選択である。撮影時には十字キーは遊んでいるのだし、せっかく11点に増えた測距点を効率よく選択できる操作法を盛り込まないのはもったいない。

 それと、マニュアル露出時のダイヤルの回転方向もどうにかして欲しい。E-510の長期レポートのときにも書いたが、AE時の露出補正では、親指側のメインダイヤルを右に回す(左から右に指を動かして操作する)と指標はプラス側を指している右方向に移動する。それに対して、マニュアル露出時にメインダイヤルを右に回すとシャッター速度が速くなるから、バーグラフ上の指標は左方向に移動するのである。

 問題は、露出を増やしたい(画面を明るくしたい)ときに、AE時はメインダイヤルを右に回せばいいのに対し、マニュアル露出時は左に回さなくてはいけないこと。すごく気持ちが悪いし、誤操作の種にならないはずがない。

 で、オリンパスの方とお話させていただいたときに聞いてみたところ、右に回すとシャッター速度が上がる(つまり露出が減る)というのはシャッターダイヤル時代からの伝統で、電子ダイヤルに変わった今も右に回すと高速側というのは全メーカー共通なのだそうだ。一方、バーグラフなどの表示は右がプラスになるのが基本(ニコンは逆ですけど)。

 で、結果として、マニュアル露出時には右に回すと指標が左に動くというヘンテコなことになっていて、でもAE時には右に回すとプラスになる仕様なわけで、こんがらがりやすい状況になっているのである。

 まあ、伝統は伝統で尊重すべきところもあるが、不自然な部分は直せばいい。メインダイヤルを右に回すとシャッター速度が遅くなり、サブダイヤルを左に回す(操作としては左から右に動かすことになる)と絞りが開いていくというプログラムを作って、オン/オフの切り替えがカスタム機能でできるようにすればいいと思う。

 どうしてこんな話を書いたかというと、ニコンはバーグラフのプラスとマイナスが世間と逆に、右がマイナスになっているからである。そのため、マニュアル露出時に親指側のメインコマンドダイヤルを右に回すとバーグラフの指標は右に移動する。つまり、指の動きと表示が一致しているのである。だから、右に回すと左に動くというのがよけいに不自然に感じられたのである。


 ほかにも、格子状の被写体でピントが合わないことがある(どピンボケなのに合焦マークが出ちゃったりするのだ)とか、ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8-3.5 SWDの遠距離側でピントがアマくなるとか、ライブビュー時のタイムラグがかなり大きい(某誌でテストしたら表示の遅れが0.15秒くらい、シャッターボタン全押しからのタイムラグが0.65秒くらいあった)とか、AdobeのソフトでRAW現像すると画面がずれてしまう現象とか、あげていけばいくらでもケチのつけどころはある。

 が、今までのフォーサーズ機と見比べたらもう元には戻れません的に大きくて見やすいファインダー像の幸せさとか、測距点が11点に増えて便利になったとか、AFスピードがよそに負けないくらいにアップしたとか、三脚を使ってのライブビュー撮影で可動式液晶モニターがすごくラクチンだとかのいいところもたくさんある。

 以前からのオリンパスユーザーには買い替えなり買い増しなりをぜひともおすすめしたいし、ほかのメーカーのユーザーにも(フォーサーズの写りのよさを知ってるけど、ボディが弱いからなぁ、と敬遠していた人なら)一見の価値は間違いなくある。重いのはどうしてもダメという人に無理強いはできないけれど(電池とメディア別で810gというのは万人向けとは言いがたい)、そうでないなら買って損はしないと思う。


現像ソフトによる違い

 あまり気にする人はいないかもしれないが、RAW画像と同時記録のJPEG画像は、若干だが画面がズレる。でも、たいていの場合、そのズレはすごく小さくて、例えばOLYMPUS Studio 2で現像した画像は同時記録のJPEG画像よりも左に1ピクセル、上に1ピクセルだけズレる程度だ。

 でも、Adobeのソフトだと、どういうわけか、これがものすごく大きくなる。Photoshop CS3でレイヤーにして重ねてみたら、上に6ピクセル、右に28ピクセルくらいズレている。3,648ピクセル分の28ピクセル(パーセントで言えば約0.77%である)にすぎないのだから無視できるレベルだけれど、つい気になっちゃうのである。

 ついでなので、OLYMPUS Studio 2の「歪み補正」機能を使ってみたのも載せてみる。補正のレベルは「自動」に設定している。12-60mmの広角端の歪曲収差はけっこう気になりやすいが、この機能を使うとあまり気にならないレベルにはなってくれる。でも、レンズのデータがわかっているんだから、もっとぴっちり補正してくれてもよさそうに思う。

  • 作例下の撮影データは、使用レンズ/記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。


オリジナルのJPEG画像
ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4 SW / 3,648×2,736 / 1/500秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:晴天 / 12mm
OLYMPUS Studio 2で現像した画像
ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4 SWD / 3,648×2,736 / 1/500秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:晴天 / 12mm

Photoshop Lightroomで現像した画像
ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4 SWD / 3,648×2,736 / 1/500秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:晴天 / 12mm
OLYMPUS Studio 2の「歪み補正」機能を使用した画像
ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4 SWD / 3,648×2,736 / 1/500秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:晴天 / 12mm

作例

 先日、ムスメ関係のイベントがあって、そのときの設定から戻し忘れるというドジを踏んでしまった。

 デジカメWatchの仕事は基本的にJPEGのもっとも画質が高い(=圧縮率が低い)モードで撮ることにしているのだが、オリンパスのJPEGは、Super Fineがやたらとファイルサイズが大きいので、プライベートではRAW+Basicで撮っている(画像チェック用に使っているPhoto Mechanicがオリンパスの圧縮RAWにはまだきちんと対応してくれてないので同時記録なのである)。

 FineとかNormalならまだしも、さすがにBasicの画像をお見せするのもアレなので(画像によってはブロックノイズとかも出ちゃってたりするので、今回はOLYMPUS Studio 2で現像したものを掲載する。

 関係ない話だけれど、作例を撮りに行って見かけるデジタル一眼レフといえばキヤノン、ニコンがほとんどで、オリンパスのデジタル一眼レフを見かけたことはあまりなかった。液晶モニターの向きを変えて撮ってたりすると、「その液晶モニターはいくらくらいするんですか?」とかすっとんきょうなことを聞かれることもあったほどで(デジタル一眼レフの液晶モニターが動かせるなんて思いもよらなかったらしい)、世間の認知度の低さにめげそうになることも多い。

 それが今回は、どうしたことか、E-410を持ってる人に「E-3どうですか?」とか聞かれたかと思えば、E-3を3台もぶら下げてる人(3本のレンズを使い分けてた)を見かけたりしてびっくりした。特異日だったのかもしれない。

  • 作例下の撮影データは、使用レンズ/記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。
  • リンク先はすべて、OLYMPUS Studio 2でRAWからJPEGに現像したファイルです。


霜柱を見つけて撮ってました。うんこ座りして。で、何枚か撮って顔を上げたら、まわりで同じようにうんこ座りしてるのが5、6人いました
ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2 Macro / 2,736×3,648 / 1/400秒 / F8 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 50mm
晴れてるのに風が強くて寒かったけど、おかげで空はオリンパスの色
ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4 SWD / 2,736×3,648 / 1/400秒 / F8 / -0.7EV / ISO100 / WB:オート / 12mm

寒桜はようやく咲きはじめ。カメラは三脚で固定できても風が吹くと、花はフレームから出ていってしまう。で、戻ってきたところを大忙しでピントを合わせて撮った
ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8-3.5 SWD / 3,648×2,736 / 1/250秒 / F8 / -2.7EV / ISO100 / WB:晴天 / 200mm
こちらはマクロレンズで手持ち。花も揺れるがカメラも揺れる。20枚くらい撮ってなんとか見られるのが2、3コマ。へたな鉄砲なんだから数打たなきゃ当たりっこないんである
ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2 Macro / 2,736×3,648 / 1/160秒 / F5.6 / -0.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 50mm

50mmマクロでめいっぱい寄ったところ。もう少し深度が欲しかったけれど、F4で撮ったのは手ブレで全滅だった
ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2 Macro / 2,736×3,648 / 1/25秒 / F2.8 / +0.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 50mm
ピントが合ってると言っていいかどうか迷ってしまう。合ってるとしても細かいゴミが目立ってるだけのような気もするけど
ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2 Macro / 3,648×2,736 / 1/50秒 / F2.8 / +0.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 50mm

梅は満開まではいかないけど、そこそこの開花状況。広角でめいっぱい寄ってみた。12-60mmに限らず、オリンパスの標準ズームは寄れるのでうれしい
ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4 SWD / 3,648×2,736 / 1/250秒 / F8 / -0.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 12mm
冬枯れ真っ盛りなのに、ツタだけはめいっぱい元気なグリーンである
ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8-3.5 SWD / 2,736×3,648 / 1/250秒 / F5.6 / -0.7EV / ISO100 / WB:晴天 / 130mm

空気がクリアなので、月もくっきり。クレーターのでこぼこ感がズイコーデジタルならでは(嘘)。コントラストをもっと上げると見映えがよくなるかも
ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8-3.5 SWD / 2,736×3,648 / 1/160秒 / F8 / -0.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 200mm
カメラとレンズを支える手の甲を地面に置いてライブビュー撮影。持ってたのがE-3だったから撮ってみようと思ったカットである。
ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8-3.5 SWD / 3,648×2,736 / 1/400秒 / F8 / -1.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 200mm

冬の晴れた日に順光でマイナス補正して、RAW現像時にちょっと細工をすればたいていのカメラでこんな青空は撮れる(というか“つくれる”)。でも、なにもせずにこれだけクリアな青空が撮れるのは、やっぱりオリンパスだと思う
ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4 SWD / 2,736×3,648 / 1/250秒 / F8 / -0.7EV / ISO100 / WB:晴天 / 12mm


URL
  オリンパス
  http://www.olympus.co.jp/
  製品情報
  http://olympus-imaging.jp/product/dslr/e3/
  オリンパスE-3関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2007/10/18/7222.html
  気になるデジカメ長期リアルタイムレポート(現在進行中・2008年終了分)
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm2008.htm



北村 智史
(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。最初に買ったデジタルカメラはキヤノンPowerShot S10。 ブログ:http://ketamura08.blog18.fc2.com/

2008/02/15 00:02
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