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オリンパス E-510【第6回】
悩ましい2本の広角ズームレンズ

Reported by 北村 智史


 広角レンズをどうしようか、というのは、オリンパスユーザーの共通の悩みなのではないかと思う。現状では、「ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F4」と「ZUIKO DIGITAL 11-22mm F2.8-3.5」の2本の広角ズームがあるが、これがどっちもどっち的シロモノだったりするからだ。

 ちなみに各社のいわゆるAPS-Cサイズのデジタル一眼レフ用広角ズームの平均値は、35mmフィルムカメラ換算の焦点距離が17.3~33.3mm相当。大きさは最大径83.4×長さ85.3mm、重さ436.4gといったところ。お値段は税込み10万3687.5円となる。

 その数字と比べると、ED 7-14mmのスペックは並外れている。大きさは最大径86.5×長さ119.5mm、重さは780gと弩級だし、お値段も24万7,000円。大手量販店のオンラインショップ価格で19万8,000円(ポイント10%還元で実質17万8,200円)もする。大きい重い高いの3悪がばっちりそろっているのである。

 ニコンD3と同時に発表された「AF-S 14-24mm F2.8 G ED」(最大径98×長さ131.5mm、1,000g、税込み28万5,600円)が登場したおかげで、最大・最重量・最高価格の座は譲り渡したものの、対応画面サイズと開放F値の分を差し引いて考えれば、やはりED 7-14mmの3悪は揺るぎない(サイズだけならシグマの「15-30mm F3.5-4.5EX DG Aspherical」は長さが132.5mmもあるが、重さは620gしかないし、価格は9万3,450円だ)。


ED 7-14mmを装着したE-510。ある程度の覚悟がないと持ち歩くのがしんどいレンズである 11-22mmを装着したE-510。広角の物足りなさを除けば使い勝手はいい

 ついでに書くと、ED 7-14mmに画角で勝てるのは、フィッシュアイを除けば、フルサイズのカメラにシグマの「12-24mm F4.5-5.6 EX DG Aspherical HSM」の組み合わせだけで、フルサイズ機で最安のキヤノンEOS 5Dとの組み合わせでも実売40万円コース。つまり、35mmフィルムカメラ換算で14mm相当、もしくはそれ以上の広角が欲しい人には、ED 7-14mmはもっともフレンドリーな選択肢だったりするのである。ちょっとびっくりですけど。

 ただし、サイズと重さが相当なので、軽量級のE-510やE-410に装着したときのアンバランスさもかなりのものになる。片手でひょいと持てるダブルズームの2本と違って、持ち上げるにも「よいしょ」と声が出そうになる。まあ、望遠レンズ同様、レンズを下から支えるようにして持てばいいだけだし、重さがある分、いったん構えてしまえば安定もする。望遠レンズと違って手ブレを抑える苦労も少ないから、撮るのが苦になることはない。とはいえ、ダブルズーム2本の合計の2倍に近い重さにはやっぱりめげてしまう。


左からZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F4、同11-22mm F2.8-3.5、同ED 14-42mm F3.5-5.6。コンパクトなED 14-42mmに比べると11-22mmは大きいが、ED 7-14mmはさらにでかい。重いんである
 一方の11-22mmは、大きさと重さが最大径75×長さ92.5mm、485gで、価格も11万1,300円。まあまあ世間並みの数字である。実売は8万9,000円(ポイント10%還元で実質8万100円)。ボディが軽いだけにウェルバランスとは言いがたいところもあるが、ED 7-14mmに比べれば快適そのものだ。

 問題は画角。各社の広角ズームが16mmから18mm相当の画角をカバーしているのに、こっちは22mm相当ではいまいち未満でしかない。画面比率が4:3のフォーサーズは、一般的な3:2比率の画面に比べて遠近感が弱まってしまうこともあって、画角の物足りなさは抜群だ。

 とはいえ、標準ズームのED 14-42mmよりも3mm(35mmフィルムカメラ換算では6mm相当)短い分、広角らしさはそれなりに味わえる。それに歪曲収差が格段に少ないので、撮っていて気持ちがいいのは確かである。スナップ撮影などが目的なら画角が広すぎない11-22mmのほうが使いやすいだろうし、純粋にE-510ユーザー向けの広角レンズとしてならおすすめだと思う。

 次に控えているレンズが目に入らなければ、の話である。なにしろ、年内発売希望のアレと同時発売になればいいな的ニューレンズの「ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4 SWD」が登場すると、11-22mmの位置付けは、今よりもっと微妙になってしまう。

 筆者としては、年内発売希望のアレとED 12-60mmはサンタさんお願いリストの上位にあがっているアイテムで、そうすると、11-22mmは手を出しにくいことになる。もちろん、広角の1mmが決してばかにできないことは理解しているつもりだが、その1mmのためにレンズを1本買うのは切なすぎるというわけだ。

 なんだかもう、帯に短したすきに長しを絵に描いたような状況なんである。一応、オリンパスのレンズ開発ロードマップには、スタンダードタイプの超広角ズームが載っているが、予定としてはまだ先。あとはシグマに「10-20mm F4-5.6 EX DC HSM」のフォーサーズマウントを発売してくれるように嘆願書を書くとかの手もあるが、スタンダードの超広角ズームが出たら、と思うとちょっと望み薄かなぁとも思う。

 個人的にはED 12-60mmと組み合わせられる8mmか9mmの単焦点レンズが出てくれるといちばんうれしいんだけれど、単焦点の広角レンズなんて、優先順位低そうだもんねぇ。出るのは溜め息ばかりである。


作例

  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 作例下の撮影データは、使用レンズ/記録解像度(ピクセル)/測光方式/露出時間/絞り値/露出補正値(マニュアル露出時は省略)/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。
  • 一部を強調のため1行に記した場合もあります。
  • すべてノイズフィルタをオフ、シャープネスを-2、NATURALで撮影しています。


●画角の違い

 2本の広角ズームの広角端で撮り比べてみた。7mmの画角の広さは圧倒的で、この違いを見ると、文句なしでED 7-14mmが欲しいと思ってしまう。まあ、重さと値段に耐えられればだけれど。

 ついでに12mmの画角でも撮ってみた。もちろん、ED 12-60mmの広角端を想定してのことだが、11mmと12mmの画角差は案外に大きい。とはいえ、この1mmのためだけに11-22mmを買うのはやっぱりためらわれる。

 14mmの2枚はオマケ。ED 7-14mmの14mmとED 14-42mmの14mmは同じ画角(ということになっている)だが、歪曲収差の量の違いなどもあって、けっこう違って見えたりする。


7mm(14mm相当)
7-14mm F4 / 3,648×2,736 / マニュアル露出 / 1/40秒 / F8 / ISO100 / WB:晴天
11mm(22mm相当)
11-22mm F2.8-3.5 / 3,648×2,736 / マニュアル露出 / 1/40秒 / F8 / ISO100 / WB:晴天

12mm(24mm相当)
7-14mm F4 / 3,648×2,736 / マニュアル露出 / 1/40秒 / F8 / ISO100 / WB:晴天
14mm(28mm相当)
7-14mm F4 / 3,648×2,736 / マニュアル露出 / 1/40秒 / F8 / ISO100 / WB:晴天

14mm(28mm相当)
ED 14-42mm F3.5-5.6 / 3,648×2,736 / マニュアル露出 / 1/40秒 / F8 / ISO100 / WB:晴天

●ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F4


超広角といっても、普通に構えて普通に撮れば、普通に写るものだったりする
7-14mm F4 / 3,648×2,736 / プログラムAE / 1/125秒 / F7.1 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 7mm
左右の上隅の崩れ方が嫌な感じ。絞ればよくなるような気もする
7-14mm F4 / 3,648×2,736 / プログラムAE / 1/50秒 / F5 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 7mm

レンガの凹凸感がよく出ている。思ってたよりピントが手前にきてたりするけど
7-14mm F4 / 3,648×2,736 / プログラムAE / 1/50秒 / F4.5 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 7mm
広角端のほぼ最短撮影距離(0.25m)。ピントが合っている部分はシャープでいいのだが、背景が流れたようなボケ方をするのが難点。ここは好きになれないところだ
7-14mm F4 / 3,648×2,736 / プログラムAE / 1/60秒 / F5 / +1EV / ISO100 / WB:オート / 7mm

広角端で近接撮影ということもあって、タル型の歪曲が目に付く。が、ズームであることを考えれば文句なし
7-14mm F4 / 3,648×2,736 / プログラムAE / 1/50秒 / F5 / +0.7EV / ISO100 / WB:オート / 7mm
ほとんど広角端でしか撮っていなかったりする。これは数少ない広角端以外のカット
7-14mm F4 / 11mm / 3,648×2,736 / プログラムAE / 1/20秒 / F4 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート

●ZUIKO DIGITAL 11-22mm F2.8-3.5


広角端の物足りなさはどうしようもないが、普通の広角としての使い勝手はいい。
11-22mm F2.8-3.5 / 3,648×2,736 / プログラムAE / 1/80秒 / F4 / +0.3EV / ISO100 / WB:オート / 11mm
ED 7-14mmに比べると、描写が多少柔らかめな感じがする。シャープネスを-1にするといいかも
11-22mm F2.8-3.5 / 3,648×2,736 / プログラムAE / 1/125秒 / F5.6 / +0.7EV / ISO100 / WB:オート / 11mm

画面の端のほうを見ると、少し倍率色収差が残っているのがわかるが、量的には少ない部類
11-22mm F2.8-3.5 / 3,648×2,736 / プログラムAE / 1/200秒 / F6.3 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 11mm
11-22mm F2.8-3.5 / 3,648×2,736 / プログラムAE / 1/40秒 / F3.2 / 0.3EV / ISO100 / WB:オート / 11mm

広角ズームを2本借りたら、途端に曇天つづきである。なんか切ない
11-22mm F2.8-3.5 / 3,648×2,736 / プログラムAE / 1/160秒 / F6.3 / +0.3EV / ISO100 / WB:オート / 11mm
住友三角ビルの中央部はてっぺんまで見えるガラス天井になっている。7mmなら真下から全体が写せるが、11mmだとここが限界
11-22mm F2.8-3.5 / 3,648×2,736 / プログラムAE / 1/15秒 / F2.8 / +0.7EV / ISO100 / WB:オート / 11mm


URL
  オリンパス
  http://www.olympus.co.jp/
  製品情報
  http://olympus-esystem.jp/products/e510/
  気になるデジカメ長期リアルタイムレポートバックナンバー(E-510)
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm2007.htm#e_510
  レンズ交換式デジタルカメラ機種別記事リンク集(E-510)
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/link/dslr.htm#e510


( 北村 智史 )
2007/09/03 00:08
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