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富士急ハイランドのグレートザブーンは見ている人も濡れてしまうのが醍醐味。作例撮影中のEOS-1D Mark IIIも見事にずぶ濡れ。でもこの程度ではビクともしないタフさが1D系の魅力のひとつです
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発売から約2カ月を経た7月31日、最初のアップデートとなる最新ファームウェア(Ver.1.1.0)が公開されました。
「特定の操作をした際の動作異常が改善された」らしいのですが、筆者はまだその異常に出会っていません。でも今後いつその異常に見舞われるかわからないので、ファームアップウェアアップデートで予防しておくのは安心です。
AFがらみではAIサーボAF撮影も改善されています。これも滅多に使わない機能なので効果のほどがわからないのですが、多少なりとも良くなったのであれば歓迎です。
それから、液晶モニターの再生画像の見えも改善されました。筆者が2台所有するEOS-1D Mark IIIのうち、1台をアップデートし、もう1台はアップデートしないでコピーした同じ画像を再生して見比べてみましたが、アップデートした方はシャープネスが若干強くなってより鮮明に見えるようになりました。なかなか喜ばしい改善です。
ところで、拡大再生でも見比べてみましたが今度はほとんど見分けが付きません。キヤノンのHPでは拡大再生時については言及されていなかったので、サポートに問い合わせてみたところ「拡大再生時も設計上はシャープネスを上げているが、実際の見え方は通常再生時よりは差が出ない」とのことでした。
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異常が現れることもあるので、まずは1台だけアップデートして様子見
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1台はまだ初期ファームウェアのまま。アップデートした1台が特に問題ないので、こちらも近々アップする予定
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アップデート後の液晶モニターで見たドドンパ。わかりにくいかもしれないが、実機では明らかにシャープネスが上がって鮮明に見やすくなった
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初期ファームウェアのままのボディで再生。新ファームと比べるとシャープネスが弱く眠い
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アップデートしたボディで最大倍率で拡大再生してみたが、初期ファームと比べても見分けが付かない。サポートセンターによると、改善されたはずだが……
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初期ファームでの拡大再生。拡大再生時は常に画面のどの部分が拡大されているかの指標が表示(画面右下)されるが、これが邪魔。拡大率や拡大部分変更時のみに表示されればいいのだが……
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さて、1D系の主要性能のひとつである連写性能。EOS-1D Mark IIIはさらにこの性能に磨きをかけ、初代EOS-1Dの8枚/秒、2代目・2代目半のEOS-1D Mark II/Mark II Nの8.5枚/秒から一気に10枚/秒を達成し、デジタル一眼レフでは最速、クイックリターンミラー一眼レフとしては最速だった銀塩のEOS-1Vと同等となりました。
この連写機能をどう使うかは被写体や各撮影者の目的によってさまざまでしょう。でもカメラの連写性能は速ければ速いに越したことはありません。速すぎるのであれば設定を変えて速度を落とせばいいだけですし(筆者も通常の人物撮影では6枚/秒に設定)。人間は贅沢なもので、最初は10枚/秒の連写速度に驚きましたが、ちょっと慣れると「こんなものかな」とも思えてきました。技術的には色々壁があるのかもしれませんが、メーカーには今後も速さの追及を続けて欲しいものです。
一度この速さに慣れてしまうと、少しでも遅くなると違和感を覚えてしまいます。何を言いたいのかというと、レンズの絞り羽根の駆動が10枚/秒に追いつかず、絞りすぎると最高速の連写速度が得られないのです。
EOS-1D Mark IIでは8.5枚/秒だったので、けっこう絞り込んで始めて連写速度の低下が起こっていましたが、EOS-1D Mark IIIでは連写速度が上がったため、場合によっては1段絞っただけでも連写速度が低下しまいます。「多少速度が落ちても従来機よりは速いから良いのでは?」という考え方もありますが、撮影のフィーリングも大切なので、F値で変化してしまう連写速度は考え物です。
幸い筆者は日頃は10枚/秒もの連写を必要としていないのでそれほど大きな問題ではありませんが、スポーツなど撮影されている方は、どう折り合いを付けるかの思案が必要でしょう。
どうしてもより高速での連写が必要な場合、使用するレンズも吟味しなければなりません。例えば焦点距離50mmで撮影したい場合、単焦点レンズの50mm F1.4を用いるよりも、開放F値が暗いズームレンズの方が(その開放F値以上では)単焦点レンズよりも高速で連写できてしまいます。普段はズームレンズが不要でも、高速連写のためにはズームレンズが必要というのもおかしな話です。同じような話が同焦点距離のレンズでも絞って連写したい場合は、開放F値の暗いレンズの方が有利となります。
せっかくの連写性能が、レンズ側のボトルネックで制限されてしまうのはもったいない話です。現状のレンズでは改善は難しいかもしれませんが、今後新たに出すレンズについては多少なりとも改善されることを望みます。
とりあえずの解決策として、プレビュー状態で予め絞り込んだまま連写ができれば、どんなレンズでもどんなF値でも最高速での連写ができると思います。かつてのFDレンズは機械式のプレビューだったのでこの方法が使えましたが、電気仕掛けのEFレンズではプレビューボタンを押したままシャッターを切ると、プレビューが解除され、レリーズ毎に絞り羽根を閉じたり開いたりします。プレビュー状態のままだと色々制限もありますが、それでも最高速での連写を必要とする場合もあるでしょう。メーカーには是非ご検討願いたいと思います。
■ レンズと絞り値の違いによる連写枚数の差
EOS-1D Mark IIIとEOS-1D Mark IIの秒間連写枚数を計測しました。レンズはEF 50mm F1.4とEF 24-70mm F2.8 L USM。
条件は、マニュアル露出、1/8,000秒、途中でバッファが一杯にならないようにJPEGスモール・圧縮率最大、10秒以上の連写。Exifの撮影時刻を見て10秒間に撮影できた枚数から、秒間の連写枚数を割り出しています。
絞り値別の連写枚数
使用レンズ |
EF 50mm F1.4 |
EF 24-70mm F2.8 L |
使用ボディ
| Mark III |
Mark II |
Mark III |
Mark II |
F1.4 |
10 |
8.5 |
― |
― |
F2 |
9.8 |
8.5 |
― |
― |
F2.8 |
9.8 |
8.5 |
10.0 |
8.5 |
F4 |
8.8 |
8.5 |
9.8 |
8.5 |
F5.6 |
8.0 |
8.0 |
9.2 |
8.5 |
F8 |
7.6 |
7.6 |
9.0 |
8.5 |
F11 |
7.0 |
7.0 |
8.5 |
8.5 |
F16 |
6.6 |
6.6 |
7.8 |
7.8 |
F22 |
6.5 |
6.5 |
7.3 |
7.3 |
■ 作例
富士急ハイランドのグレートザブーンをF値を変えて連写しました。カメラを固定し、グレードザブーンが通り過ぎるまでを撮影しています。
シャッター幕の動作時間が連写速度に影響を与えないようにしたかったので、ストロボ同調速度の1/300秒を根拠に、絞っても1/500秒以下にならないようISO感度を調整して露出を一定にしました。使用レンズはEF 24-70mm F2.8 L USMです。
- リンク先は3,888×2,592ピクセルの撮影画像(JPEG)です。
- クリックすると別ウインドウで等倍画像を開きます。
●F2.8
・撮影枚数:計45枚
●F5.6
・撮影枚数:計40枚
●F11
・撮影枚数:計37枚
●F22
・撮影枚数:計31枚
撮影協力:富士急ハイランド
http://www.fujiq.jp/
■ URL
キヤノン
http://canon.jp/
製品情報
http://cweb.canon.jp/camera/eosd/1dmk3/
ファームウェアダウンロードページ
http://web.canon.jp/imaging/eos1dm3-j/firmware.html
気になるデジカメ長期リアルタイムレポート(EOS-1D Mark III)
http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm2007.htm#eos_dmk3
レンズ交換式デジタルカメラ機種別記事リンク集(EOS-1D Mark III)
http://dc.watch.impress.co.jp/static/link/dslr.htm#1dmk3
( 野下義光 )
2007/08/08 00:01
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